ダンジョンで神様を嫁にする為に神を目指すのは間違っているだろうか   作:白人

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豊饒の女主人にて

 

「うっ、こっここは?」

 

「目が覚めましたか?ノヴァさん。」

 

目が覚めると、何故か、シルさんが居た。

 

「ああ、シルさん。ここは何処ですか?あと僕は、どうしてここで寝て居たんですか?」

 

「ここは、豊饒の女主人の2階にある従業員用の休憩室ですよ。貴方が、モンスターと戦って、倒れたところを連れて来たんです。」

 

そう言われて、やっと何があったのか思い出す。

 

「ヘスティアは!ヘスティア様は、何処ですか‼︎」

 

直ぐに、僕はあの時結局、安全な場所に逃がすことができなかった彼女のことを聞く。

 

「ふふふっ、安心してください、ノヴァさん。彼女なら、貴方の隣に寝ていますよ?」

 

「えっ!」

 

僕は、隣のベッドを見る。

そこには、僕に掛けられているものと同じ、フカフカの布団と真っ白なシーツだけがあった。

 

「あれっ?居ませんけど…、」

 

再び僕は、シルさんに問うと、彼女は何が面白いのか、必死に笑いを堪えながら言った。

 

「ふっふふ、ノッノヴァさん、もう少し下です。」

 

下?下って何だろう?

 

僕は、そう思いながらも視線を少し下げる。

 

「%$€~^#%*〜〜〜〜〜〜‼︎‼︎⁉︎」

 

なんと、そこには天使がいた。可愛い。

安心しきった顔で、僕の服の裾を掴んで眠っているようだ。凄く可愛い。

寝顔が愛らしい。果てしなく可愛い。結婚しよう。

 

おっと、思考が逸れてしまった。

そろそろ、そこで笑い死に掛けている、この酒場の従業員に詳しい話を聞こう。

 

「あの、シルさん。そろそろ良いでしょうか?」

 

「あはっえはっうっ、ははい、良いですよ〜ふふっ、」

 

この人、流石に失礼過ぎやしないだろうか。

まぁ、これだけ笑われても、何故か怒る気にならないのが、彼女の長所なのだろう。

 

「ふう〜、それで、ノヴァさん?何が聞きたいんですか?」

 

ひとしきり笑ったシルさんは、まるで、何事もなかったかのように話を進める。

 

「えっと、僕はダイダロス通りで、意識を失った筈なんですけど、どうやって僕をここに?」

 

「それは、私がノヴァさん達を見つけた時に、偶然、逃げたモンスターを追ってきた他のファミリアの冒険者の方が来て、ノヴァさんとヘスティア様をここまで運んでくださったんです。」

 

そうなのか、親切な人もいるものだ。

 

「そうなんですか、その冒険者の方には、いつかお礼しなきゃなぁ〜。僕らをここまで運んでくださった冒険者の方って、誰だか分かりますか?」

 

その人にも、前に僕を助けてくれたアイズさんと一緒で、お礼を言いに行かないと…。

 

「ふふっ、驚かないで聞いてくださいよ〜?なんと!あの、【剣姫】です!」

 

ケンキさんか、よし、覚えたぞ!

これなら、何処かでバッタリ会っても、直ぐにお礼を言えるな。

 

「へえ〜。」

 

「何ですか!その反応は‼︎」

 

僕は、なんで怒られてるんだ?

 

「あの、その方って有名なんでしょうか?」

 

僕は、とりあえず聞いてみる。

 

「えええぇぇぇ〜〜〜〜⁉︎【剣姫】を知らないんですか⁉︎」

 

「はい、すみません。何分オラリオに来て、まだ日が短いんです。」

 

知らなかっただけで、この反応だ。

きっと凄く有名な人なんだろう。

 

「良いですか?【剣姫】の偉業は数多く有りますが、一つ挙げるなら、まず、僅か半年でランクアップした現在のレコード・ホルダーであることです。」

 

レコード・ホルダー………。

その言葉を聞くと、凄く微妙な気分になるんだけどなぁ〜。

だって僕、一週間だし…。

 

「次に、挙げられるのが、18階層の迷宮の孤王(モンスター・レックス)であるゴライアスの単独討伐でしょうか。この他にも数々の偉業を成し遂げられた、まさに生ける伝説です!」

 

それは、素直に凄い!

迷宮の孤王(モンスター・レックス)っていうのは、確かレイドを組んで、複数のパーティーで同時に戦って、やっと、ギリギリで勝てるという正真正銘の化け物みたいな奴だったはずだ。

それを、一人で倒すなんて…凄いな!ケンキさん。

 

「うっ、ううぅん。」

 

話し声が大き過ぎたのか、眠っていたヘスティア様を起こしてしまう。

 

「すみません、ヘスティア様。起こしちゃったみたいで、」

 

「ノヴァ君?あれっ?僕は何でこんなところで寝てるんだ?」

 

ヘスティア様は、寝惚け眼で状況を確認しているようだ。

 

「僕は、確かノヴァ君を送り出して、その後、力尽きて路地で眠った筈じゃあ…。」

 

ショォォッックッ‼︎

まさか、ヘスティア様。

あの後、眠っちゃってたんですか⁉︎

じゃあ、僕があの時、頑張った意味って……。

 

僕が一人で項垂れていると、

 

「ノヴァ君‼︎無事だったんだね‼︎僕は、心配してたんだよ〜!怪我は⁉︎怪我は無いかい?ノヴァ君⁉︎あと一体ここは、何処なんだ〜〜‼︎」

 

「おっ落ち着いてください。ヘスティア様!僕に大きい怪我があったら、傷が開きますよ!」

 

僕は、慌ててヘスティア様を落ち着かせる。

 

「おおっと、ゴメンよ。ノヴァ君、大丈夫かい?」

 

この慌て様を見ると、やっぱりあの時、頑張っておいて良かったと思う。

でも、結構な怪我をしてたと思うんだけど…。

ケンキさんがポーションを使ってくれたのかな?

だとしたら、本当に頭が上がらないな。ケンキさんには…、

 

とりあえず僕は、ヘスティア様の疑問に答えていく。

 

「ここは、豊饒の女主人っていう酒場の従業員用の休憩室らしいですよ?」

 

「何でそんな所に?」

 

ヘスティア様の疑問も最もだろう。

起きたらいきなり、知らない酒場の一室で眠っていたんだから。

 

「それは、こちらのシルさんが、他のファミリアの冒険者の人と一緒に運んできてくださったからです。」

 

「?こちらって、どちらだい?」

 

何言ってるんだ?

ここに、シルさんが…っていない⁉︎

一体、何処に?

 

「あっ!」

 

其処には、床に転がって大笑いしながら、死に掛けているシルさんの姿があった。

 

「ハァ、ハァハァ、おおっお二人は、私を笑い殺されるおつもりなんですか?」

 

「全然、そんなつもり有りませんけどぉ‼︎」

 

薄々感じてたけど、シルさんってもしかして…笑い上戸?

 

「はじめまして、ヘスティア様。この酒場の従業員の一人で、シル・フローヴァと申します。」

 

変わり身早ッ‼︎

さっきまで大爆笑してたのに、もう普通に自己紹介してる…。

 

「あっああ、よろしく!僕は、ノヴァ君のファミリアの主神であるヘスティアさ!」

 

ヘスティア様も、あまりに変わり身の速さに驚いてるようだ。

 

「ところで、()()ノヴァ君とはどういう関係なんだい?」

 

あれ?あれあれ?

コイツはもしかして、噂に名高い、YAKIMOCHIでは有りませんか?

そうかそうか。

ついに、ヘスティア様も僕との間に、ヤキモチを妬いてくれる様になったのか…。

結婚までの道は近いぞ‼︎

 

「あら〜‼︎()()大切なお客様であるノヴァさんに、()()ファミリアの主神様が、一体何をお聞きしたいのでしょうか〜?」

 

うわぁ〜。あの人、性格悪ッ‼︎

あの反応、明らかにヘスティア様を揶揄って、面白がってるじゃないか。

でも、そう言われてちょっと涙目になるヘスティア様、超可愛いぞ!良いぞ!もっとやれ!

 

「なッ⁉︎ぼっ僕とノヴァ君の関係は、唯のファミリアの主神と眷族の関係とは違うぞ!そっそう、しっ将来を誓い合った仲だ‼︎」

 

「んなッ⁉︎」

 

その言葉に、今度は僕らが驚く番だ。

 

「そう!彼は、初めて僕と会った時にこう言ったんだ。『一目惚れしました‼︎ 僕と結婚してください‼︎』ってね!僕もあの時は、いきなりでびっくりしたけど、今なら…「ストォォォォ〜〜〜〜ッップ‼︎待って!待つんだ‼︎落ち着いて‼︎」」

 

全く。こんな場所でいきなり、何てことを口走ろうとするんだ‼︎

このチビ神様はッ‼︎

危うく、僕らの関係がシルさんに……

 

「あっあのッ‼︎だっ大丈夫ですよ‼︎私、口固いですから!ホント、絶対誰にも言いませんから〜〜〜〜‼︎」

 

彼女は、顔を真っ赤にしてそう叫びながら、部屋を飛び出して行った。

 

「あっ、ああぁぁ〜〜。」

 

行ってしまった。

どうしよう、コレ……。

いや、別にどうもしなくても、良いんじゃないか?

そうだ!ヘスティア様との事で、恥ずかしがる事もない‼︎

むしろ周りに周知される事で、ヘスティア様に寄って来る悪い虫を払うことができるかもしれない!

大丈夫さ!

これは、良いことだったんだ‼︎

例え、豊饒の女主人に相当、来づらくなったとしても‼︎

 

そうと決まれば、僕の腕の中で真っ赤になって、先程、自分で言いそうになったことを思い出し、更に、赤くなっている我が主神様を落ち着かせよう。

 

「ヘスティア様?」

 

ビクッ⁉︎

 

凄いな。

僕が声を掛けただけで、さっきよりもっと顔が赤くなって、今では茹でダコの様だ。

 

「大丈夫ですよ?さっきのは、そうですね。素直に嬉しかったです。貴女も僕と同じ気持ちだって思えるから…。」

 

其処まで言うと、彼女は恥ずかしそうだが、少し緊張を解いた様だ。

 

「僕は、貴女のことが好きですよ。例え…、誰が何と言おうと…。」

 

そう言うと、僕の可愛い女神様は、顔真っ赤にしたまま…

 

「うん。」

 

と、ただ小さく一度、頷くのであった。

 

 

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