ダンジョンで神様を嫁にする為に神を目指すのは間違っているだろうか 作:白人
今、僕は朝起きて、夢を見ているらしい。
矛盾してるって?
でも、そうとしか言えない事態に陥っているんだ。
まず、記憶を整理しよう。
昨夜、僕は未曾有の大危機を回避したことに大喜びして、そのままソファに行って寝ったはずだ。
そして、僕は今ソファにいる。
うん。ここまでは何も問題ない。
むしろここからが大問題だ。
今、僕の上に天使がうつ伏せで眠っている。
寝顔が可愛い…っじゃなくて!
うつ伏せ、ここ重要だ。テストに出るよ。って何言ってるんだ‼︎僕は!
…コホン。
というのが、僕の今の状況だ。
というか、神様?
何でベッド空いてるのにここで寝てるんですかね?
えぇ?なになに?
ノヴァ君もうじゃが丸くんはいらないよ〜。だって?
フッ、可愛い過ぎるじゃないか。
とっても名残惜しいけど、そろそろ僕もいかないと、すみません、神様。
行ってきまーす!
所変わって、ギルドにて、
「あの〜、すいません。僕、冒険者になりたいんですけど。」
エルフであるらしいキレイな受付嬢さんにそう話しかける。
「あっ!はい。ただ今!えーっと、君が冒険者になりたいって言ったのかな?」
何故か少し心配そうな目で見られる。
「はい。僕がそう言いました。」
「君は、どうして冒険者に?」
何でそんなこと聞くんだろう?
いや、もしかしたら冒険者になる上で、重要なことなのかもしれない。
「はい。僕は、神様と結婚する為に、冒険者になりに来ました。」
「へっ?」
?何か可笑しなことを言っただろうか?
いや、待て!
ここは、冒険者ギルドだぞ!
ダンジョンで一攫千金とか、そういうことを言うべきだったんじゃないか⁈
クソ!失敗した!
これで、冒険者になれなかったら、神様に合わせる顔がないぞ…。
「ウフフッアッハッハハハーーーハアー可笑しっ。」
僕は、その夢を笑われて少しムッとしていると、
「あぁ、ごめんごめん。今何度か聞いてきて、そんなこと言った人は初めてだったからついね?」
それでも納得出来なかったけど、悪気は無さそうなので黙っておく。
まぁ、冒険者になるのにこんなことを言う人は、僕以外に居ないだろうし…。
「あっ、本当にごめんね?」
「いえ、気にしてませんよ。まぁ、僕以外にこんなことを言う人は居ないでしょうから。」
「そう言ってくれると助かるよ。それじゃあ、冒険者登録に移るね?まず、君の名前から聞いていこうか。」
いや、まぁ…いいんだけど、さっきの笑い声ですごい周りから見られてるんだけど、いいんだろうか?
「はい。僕の名前は、ノヴァ・イグニスです。」
「ノヴァ・イグニス君だね?じゃあ次は、年齢と所属ファミリアを教えてくれるかな?」
さっきまでとは打って変わって、淡々と必要なことを聞いてくる。
「はい。歳は16歳で、ヘスティア・ファミリアに所属しています。」
「そっそう。(14歳ぐらいかと思った。)ヘスティア・ファミリアって、聞かない名前だね?どんなファミリアなの?」
あぁ、そうかそう言えば、団員、僕一人だったな。
「えっと、最近出来たばっかりで、団員も僕一人しか居ないんです。」
「そっそうなんだ〜。(この子、本当に大丈夫かな〜?)それじゃあ、武器は、何を使うの?」
武器?かっ考えていなかったな。
やっぱり剣だろうか?
うん。剣だな。
そのとき、何故か僕にはそれが、すごくしっくりくるような気がした。
「剣を使おうかな?って思ってます。」
「剣?本当にそれで良いの?確かに新人の冒険者は、剣で戦うことに憧れを持ってたりするけど、剣は扱いが難しいよ?」
この人の言うことは、正しいんだろう。
でも、何故か僕は、剣以外で戦う自分の姿が想像できなかった。
「はい。別に、剣で戦うことに憧れがあるわけじゃないんです。ただ、それが一番しっくりくる気がして…。」
「そう?そこまで言うなら良いんだけど…。でも、見た感じ今、剣を持って無いよね?一応、ギルドから初心者の為に、装備の貸し出しをやっているけど見てみる?」
そう聞いてくるので、僕は素直に頷く。
「それじゃあ、こっちにおいで、新人冒険者さん。」
僕は、言われるままに着いて行く。
「ノヴァ君って、呼んでも良いかな?君は、この後すぐにダンジョンに行くの?」
「はい。行きますよ。ええっと……」
「あぁ、ごめん!色々聞いておいて、自分が名乗るのを忘れてたよ。私は、エイナ・チュール。多分、君のアドバイザーを務めさせてもらうことになるかな。」
そう彼女、もとい、エイナさんは答える。
「そうですか、よろしくお願いします。エイナさん。ところで、アドバイザーって何ですか?」
「こちらこそよろしく、ノヴァ君。後、アドバイザーって言うのはね?冒険者の人たちに色々とアドバイス、つまり助言したりする人のことだよ。具体的には、ダンジョンの性質や危険性、冒険する上で気をつけないといけないことを教えると言ったところだね。そうすることで、少しでもダンジョンで命を落とす人を減らせれば良いなって思うよ。」
そこで、少し彼女が顔を暗くしたのを僕は見逃さなかった。
「そうですか。なら、僕は安心ですね。」
「えっ?」
「だって、こんなにも真剣に冒険者の人のことを考えている人が、アドバイザーをしてくれるんですから。最初に、何で冒険者になりたいのか聞いたときだって、僕のことを心配してくれてたんですよね?それでも、僕の目を見て、冒険者になることを認めてくれた。貴女は、優しいくて信用に値する人だ。」
僕がそう言うと、彼女は顔を赤く染める。
「うぇっ⁉︎あの、えっと、」
「だから、これからもよろしくお願いします。アドバイザーさん。」
「っッ〜〜〜〜!はっはい、こちらこそよろしくお願いします。」
顔を赤くして俯く姿は、僕が愛するあの
「そっそれじゃあ、またね、ノヴァ君。」
「はい。行ってきます、エイナさん。今日は色々ありがとうございましたー。」
僕はそう言って、ギルドを後にする。
「へぇー。これが、ダンジョンか〜。」
僕は、とても高いバベルの下にある大きな穴の前にいる。
「とりあえず、装備も貸してもらったし、中に入ってみるか。」
ダンジョンにいるモンスターは、基本的にダンジョンの外にいるモンスターとは、比べものにならないくらい強い。
僕も旅の途中で、何度かゴブリンなんかの弱い魔物を見たことはあるけど、実際に戦ったことはないので、十分に気をつけていかないとダメだろう。
幸い一階層には、ゴブリンとコボルトしか出ないらしい。
かと言って、新人冒険者の僕が油断出来る相手ではない。
しっかりと警戒していかないと。
そして、しばらくすると一匹のゴブリンを見つけた。
まだ、こちらに気づいていない。
僕は、気付かれないようにゴブリンに近づく。
「ガァ?グワッ⁉︎」
「ッ‼︎」
気付かれた!
僕はすぐに、上段に構えていた剣を振り下ろす。
「ギャァ‼︎」
一応、当たったが、致命傷には至らないようだ。
僕はすぐに、今度は腰だめに構えていた剣を振り抜く。
「ギャッ!」
ゴブリンは、短い悲鳴を上げると、そこで動かなくなる。
「はぁー。」
そこで、僕はやっと一つ息を吐いた。
ゴブリン一匹倒すのに、この疲労感か。
これは中々堪えるな。
肉を断つ感触が手に残る。
「おっと、魔石を回収しないと。」
僕は倒した…いや、
この作業にも慣れないといけない。
僕は、冒険者になったんだ。
これからも、もっと多くの生き物を殺していくことになる。
躊躇うことは、即自分か仲間の死に繋がる。
僕はこれで一つ冒険者になるということを理解できた気がした。
「はぁー。お腹空いたなぁー。」
僕は、あれからずっとダンジョンに潜ってモンスターと戦っていた。
その後、ギルドに魔石を換金しに行ったんだ。
ダンジョンの中は、常に薄暗いので、思っていたよりもずっと長くダンジョンに潜っていたらしい。
道理でお腹が空く訳だ。
すると、またあのときの様にとても良い匂いが漂ってくる。
僕は匂いにつられて、フラフラとその屋台に近付いていくと、
「いらっしゃ〜い!ご注文は何だい?お客様って、ノヴァ君じゃないか⁉︎どうしてここに?」
そう言って慌てた後、ニッコリと僕に微笑む僕の女神様にダンジョンに行っていた疲れを少し癒やされながら、僕は言う。
「ただいま、神様。今日はダンジョンに行ってたんですけど、出てきたらすっかり夕方になっていて、お腹が空いたので、匂いにつられてフラフラしていたら、ここに着いたんです。なので、じゃが丸くん一つください。」
「えっ!今までずっとダンジョンに潜っていたのかい⁉︎大丈夫だったかい⁈怪我は無いかい?」
僕が今まで、ダンジョンに潜っていたと知ると急に慌て始める神様にホッコリする。
「はい。大丈夫ですよ、神様。何度かモンスターの攻撃も食らったけど、全部、軽傷です。それに、もし重傷を負ったりしたら、僕はここにはいませんよ。」
僕は、そう冗談混じりに言う。
「ノヴァ君。君、少し雰囲気が変わったね。下界の子は凄く成長が早いって聞くけど、まさかこんなに早く君が変わってしまうとは思わなかったよ。」
神様は少し驚いたようにそう言ったけど、僕に心当たりは無かった。
すると、不思議そうにしている僕を見兼ねたのか、神様は僕にこう言った。
「君は変わった…いや、成長したと言って良いかもしれないね。朝までの君なら、さっきみたいな自分が死んでしまうなんて冗談、絶対に言わなかっただろうから。きっと、それだけ君は今日、死というものを身近に感じていたんだろうね。それに、僕に対する態度が少し柔らかくなったし、僕に会って一番最初にただいまって言ったのも、それだけ帰って来れたということを実感したかったんだろう。」
そうか。
そうだったのかもしれない。
僕は、あそこで初めて命のやり取りをした。
何度か危ない場面もあった。
でも、絶対に神様の下に帰って来るんだって、必死になってモンスターと戦った。
神様との約束をちゃんと守りたかったから。
「君はちゃんと僕との約束を守ってくれた。自分が死ぬかもしれないって本気で思ったんだろうけど、ちゃんと僕の下に帰って来てくれたんだ。だから僕は、たとえ誰が君のことをバカにしたって、君のことを誇りに思うよ。」
僕のことをしっかりと見て、そう僕に真剣に語りかける神様に僕は言葉が出てこなかった。
そんな僕の様子を見て、ニッコリ微笑むと神様は屋台の奥の方に向かって言った。
「おばちゃああぁーーん!今日は、僕のファミリアの子が迎えに来てくれたから、先に上がるねぇーー!」
すると、屋台の奥から声が聞こえてくる。
「ああ良いよ、ヘスティアちゃん。今日は、いつもより早く来ていたし、どうせもうすぐ店仕舞いだ。一緒に帰ってやんなよ。それじゃあ、今日も余り物のじゃが丸くん持っていきな。」
「ありがとう、おばちゃん!お疲れ様ぁーー!」
「ああ、ヘスティアちゃんもお疲れ様。」
「それじゃあ、帰ろうかノヴァ君。僕たちのホームへ!」
そう言って、満面の笑みでこちらを向く神様に僕は、今度こそしっかりと答える。
「はい!帰りましょう、神様!僕たちのホームへ!」
僕は、ここに来たときとは違った晴れやかな気分で、じゃが丸くんの屋台を後にする。
「あれっ?そういえば、神様。僕、じゃが丸くん頼んだ筈なのに、もらってませんよね?」
それを聞くと、神様は急に慌てだす。
「そっそれは、アレだよ、ノヴァ君。そう!夕飯が食べられなくなるからね。」
そう今思い付いた様な言い訳をドヤ顔で言い放つ神様に僕は突っ込む。
「えっ、でも、夕飯ってそのじゃが丸くんですよね?」
………微妙な沈黙が僕たちの間に流れる。
「そっそう!僕たちのファミリアは、まだまだ貧乏だからね。君に無駄なお金を使わせないようにしたのさ!」
そうまたしても、今思い付いた言い訳をドヤ顔で言い放つ神様に僕は今度は、ただ普通に感謝の言葉を述べた。
「そうですか。僕のことだけでなく、僕たちのファミリアの財布事情まで考えてくれるなんて流石、神様です!いつもありがとうございます。」
本当にいつもありがとうございます。
僕はそう言って、先程のことへの感謝も言葉の裏にこっそりと込めた。
「ふふん!そうかい、そうかい!僕のことをもっと褒めると良いよ。僕は、褒めたら伸びる子だ!」
そう言って自信満々に胸を張る神様を僕は、更に褒めた。
「はい!流石、神様は凄いです‼︎僕は貴女の事をもっともっと好きになりましたよ!」
そう言うと、神様の顔はみるみると赤くなる。
「だっだから君は、公衆の面前でそういうことを言うんじゃなあぁぁーーい‼︎」
ふふふっ、そうやって恥ずかしがっているところも好きですよ。神様。