レベリング中に寝落ちしたら、やけにリアルな夢から覚めない。 作:とらこさん
原作リネージュです。魔法名、アイテム名、地名、など使用しますが、ストーリーやキャラクターなどはほとんどオリジナルとなります。
というか、作者はリネージュのストーリー背景などほぼ知らないままゲームプレイしていましたので知識はありません。
それでもいいと仰る方はそのまま読み進め下さい。
あとがきには、小説内に出てくるMMO用語や、魔法やアイテムのちょっとした説明をさせていただきますので、必要な方は読んで下さいませ。
「………んん!冗談にしてはセンスの欠片もない、そう思ってしまいましたが…。確かに、ええ、確かに…全てのクエスト完了を確認しました。…お疲れ様でした。報酬をお持ちしますので、お掛けになってお待ち下さい」
「分かった」
俺はクエスト完了の旨をリースリッドに伝え、クエストスクロールを引き渡した。彼女は、呆れ果てた冷たい表情を浮かべていたが、スクロールを受け取り確認を行う度に鉄面皮のような表情に罅が入る様は、見ていて少しばかりの爽快感があった。
皆元気―?クエスト終わったよー!え?クエスト中のバトルはって?はっはっは…。じゃあ例えばだ、レベル99の勇者がスライムだとか、何か角生えたウサギだとか、ちょっと大きめのカラスを倒してるとこ見て楽しいか想像して欲しい。無双してるとこ見たいっていってもさー敵の弱さにも限度があるじゃないですかー…。だってさっきからエルリーンなんて何にも出来なかったって落ち込んでるよ…。ごめんね、エルリーン…エネルギーボルトで吹き飛ぶ様な敵ばっかりだったんだもの…。
俺はエルリーンが俯き加減で腰掛けた席へと向かい、向い合せの椅子へと腰掛ける。
椅子を引く音に彼女の耳がピクピクと動き、こちらへと視線を向けるように顔を上げるが、表情は少しばかり気落ちしたものであった。
「トールさん…報告終わったんですね…」
「ああ」
「……はぁ…」
暗っ!?そんなに落ち込まないでエルリーン!!―――実際今日の宿代もない俺としては本当に早急にお金を稼がなければならなかったこともあり、持ち前の超効率重視のトール本来の狩りスタイルを披露してしまったのだ。それにより全てのクエスト完了までに掛かった時間は約1時間30分弱。未だ日も落ちきっていない…。
つまりは、本来のリネをゲームのプレイヤーがプレイングした時間でいうと15分弱ということになる。それ程までに高レベルウィザードの討伐数を稼ぐようなクエスト効率は凄まじいものがあった。
「私、何のお役にも立てませんでした…トールさん、私…私なんかがトールさんと一緒にいていいんでしょうか…」
えー!?そ、そこまで気に病むの!?どうしたらいいの!?ち、違うんだよー…ちょっとね?本気で焦ってたのもあってね!?ホントは一緒に仲良くクエストしたかったんだよ!?
ちなみにトールは効率厨ではなく、他人にそれを強要するようなことはしないこともあって、一切の指示をエルリーンに出すことはなかった。ただ単純に自分のスタイルで狩りをしクエストを完了させていただけなのだ。
一緒に狩り出来る人なんていなかったしね?ええいうるさいわ!!
兎にも角にも、今にも闇落ちそうなエルリーンをなんとかしなければ!そう、だめだこいつ早く何とかしないと!だ。いや、エルリーンはだめじゃないけど!!
「エルリーン…俺は…戦闘に慣れているだけだ。…それでも、人は、戦いだけでは…生きてはいけない。戦いだけの人生など、人として、壊れた者だ。…だ、だから、俺には、エルリーンが…その、必要なんだ」
「………ぁ、トール、さん……。私、私は…ッ。何があっても、貴方のお傍に…います…っ」
よ、よかった!ちょっと泣きそうな表情してるけど、何か嬉しそう。というか、ぶっちゃけ殆ど本音でもあるしね!エルリーンがいなかったら路頭に迷ってたよ!!感謝してます!本当にありがとねエルリーン…。
テーブルに置かれた俺の手を両手で包み自らの頬に当てるエルリーンの仕草に、どうしていいか分からずされるがままの俺。うわー何その行為!?な、何を示唆してるのこれ!?何かリア充ぽい!ぽいね!俺は何すればいいの!?スリスリとほっぺを撫でればいいの?ていうかこの子超スベスベなんですけど…手袋越しなのに超柔らかいよ!?
「――――お取り込み中、失礼します。報酬のご用意が整いましたのでお持ちしました。…ん、んん。仲がおよろしいのは分かりましたが、少々お時間を宜しいでしょうか?」
規則正しい靴音が俺達の席でピタリと止み、静かで淡い声音が淡々とした口調で降る。
エルリーンは頬を撫でさせるかのような行為に熱中していたのか、リースリッドの言葉に弾かれたように手を引っ込めて恥ずかしそうに俯いた。あ、ごめんリースリッドが来るよって教えてあげればよかった?
俺は流石に歩いてくる彼女の姿が見えていたのだが、落ち込んでいたエルリーンの気分が良くなるなら好きにさせてあげたかったのだ。別に俺としてはあんまり恥ずかしいという感覚がしなかったのもあるが…むしろ、何か仲良しに見えているというかつて感じたことが一度たりともない優越感は自分から手を引くという行為を忘れさせていた。
「配慮不足は重々承知ではありますが、こちらも様々な案件を抱えていますので、ご理解頂ければ幸いです」
「気にしないでいい。続けてくれ」
いわゆる、イチャイチャしてんじゃねーよ。こっちは仕事してんだよという意訳が出来そうな程、無表情なリースリッドの言葉に苦笑しつつ応える。まぁ彼女自身はそんなこと思ってはいなさそうだが、顔色を変えない彼女は結構色々と誤解されそうな雰囲気を持っている。
まぁ俺はこういう人のほうが苦手ではないんだよなー…。寧ろ、こういう事務的な仕事であからさまに表情に機嫌の良し悪しを出す人はいないだろうが、何となくでも態度に出す人は苦手なんだよねー。
先程から彼女の両手で持った大きめの革袋が乗った銀のトレーは一切揺れること無く、水平に保たれている。音もなくそれを俺達のテーブルの中央に置く所作は流れるように美しく、まるで一流の給仕のようだ。一体何者なんだろうこの人…謎だなぁ…。
「それではこちらが報酬の明細書となっております。ご確認を―――」
スーツの様な上着の内ポケットから取り出した折り畳まれた用紙を俺に手渡そうとして、少し、視線を外すような仕草の後、自分の手元に戻し、続ける。
「――――では、読み上げさせて頂きます」
「…頼む」
本当に出来た人だ。周りをよく観察していることも見て取れる。恐らくだが、俺とエルリーンの登録時のやり取り、そして掲示板を確認せず受付でのクエスト受注、それらを材料に推察し俺が文字を読めないことをそれとなく気付いているのだろう。そしてそれを殊更指摘すること無く、こうしてさり気なくフォローを行ってくれている。…うーん、本当に優しい人なんだろうね。無表情だけど。
「―――――――――最後に受注クエスト、ケント近郊のオークファイター及びオークの討伐。800アデナ。合計報酬金額、9700アデナ。これに加え、クエストの迅速な対応と規定討伐数以上の成果に対しギルドからの10%の報酬の上乗せが行われました。最終合計報酬金額は10670アデナとなっております。どうぞご確認下さい」
俺はトレーの上に乗った革袋を開いて中を確認してみる。大きめの革袋はパンパンに膨らんでおらず、重力に逆らうこと無く潰れていたので中身はそう多くないことが初めから見て取れた。
中に入っていたのは金貨が10枚、銀貨が6枚、銅貨が7枚だ。うん、これなら誰に聞かなくても分かるな…というかアデナってこんな感じだったんだ…ゲームじゃ全部金貨っぽい表示だったからなぁ。1アデナって…どうなるんだろう?まぁ、その内分かるか…。
「問題ないようだ」
「畏まりました。それではクエストお疲れ様で御座いました。…それから、今回のクエスト達成の迅速さ、規定以上の成果を加味し、ギルド協会本部へ私から登録パーティー、トールさん、エルリーンさん両名の早期ランク昇格をご提言させて頂きます。問題はございますでしょうか?」
「いや、こちらとしても有り難い」
「では、問題はないとして、これにて失礼させて頂きます―――」
リースリッドはテーブルのトレーを片手で回収して一礼すると踵を返す。俺は彼女の背に向けて感謝を伝えた。
「色々とありがとう」
「…冒険者を補佐するのが我々の仕事ですから」
彼女は振り向くこと無くそう返すと受付へと戻っていった。超クール…。
「それじゃ、エルリーン。報酬を分けよう」
「え…?い、いえ。私は貰えないですよ!何もしていないですから…」
「そうか、じゃあこの先、俺が何も出来なかったら…報酬は分けないんだな」
「そ、それは…、でもそんなことあり得ないじゃないですか~…」
あはは、こういうやり取りゲーム内でやってる人いたなぁ…俺も、初めて出来てるんだなぁ…。何かすっげー…嬉しいなぁ…。
「クエスト内容が討伐だけというわけは無いだろう…だったら俺が役に立たない、そういう場面も、出るだろう。あり得ないことじゃない」
「で、でもトールさんは、何でも出来てしまいますよ、きっと…」
エルリーンは少しだけ寂しそうな表情で笑う。俺はその全幅の信頼はなんぞと思いつつ苦笑しながらも彼女に一つ打ち明けておくことにした。
「そうだな…俺のことを一つ、教えておくよ」
「…はい」
「俺は文字が読めないし、書くことも出来ないんだ。…エルリーンがいなければ本当に、何にも出来なかったんだよ…冒険者にさえ、なれなかっただろう?」
「――――――どう、して…そんな…?」
俺の告白にエルリーンは目を見開いて両手で口元を抑えるような仕草をとり、引き攣るように声を上げる。
あ、ちょ!?エルリーン!?何かまた良からぬ俺の過去を想像しちゃってるの!?止めて?そういうんじゃないから!俺にも全然出来ないことあるんだよーって言いたかっただけなのー…。
もー…エルリーンはすぐ誤解するー…ねーエルリーン、今俺はエルリーンの中で一体どんな過去を持ってる人間になってるんだろうねー?怖いね―…?
「君がいたから、今こうして報酬を得ることが出来てる。それは紛れもない事実だ。それでも、受け取れないか?」
「いいえ、いいえ…ちゃんと、受け取ります。トールさん…。それに、私はずっとお傍にいるんですから、どちらが持っていても大した違いでも無かったですよね?」
あれ何かそれ、新婚夫婦がお金の管理どっちがしても大した違いないよね的な台詞っぽく聞こえるの気の所為?しかも、何かエルリーンがこの人は私が居なきゃダメなんだ。みたいな表情でうるうるしてるんだけど!!いや、いいんだけどさ…うん。
またしても俺の闇は深くなったが、どうにか報酬の分配は恙無く終えることが出来た…。
ほんと、どうしてこうなるのかなー…。
そして漸く俺達は、冒険者ギルドを後にし、宿を探すため、日が傾き茜色に染まった街へと出ることにしたのだった―――――。
「……忌まわしい
まるで怨嗟を吐き出すかの如く憤りを露わに小さな声を上げる人物は、二人の女達を睨みつけた。ギルドを出ていく彼女等を見届け、その人物も瞳に燃えるような怒りを灯し席を立つ。
まるで、彼女等の後を追うようにギルドを後にする人物の腰には黒く染まった双剣が鈍い光を放っていた…。
➤➤➤
「この路地を行けば宿屋が沢山あるみたいですよ~」
「出来れば、暫くは安めの宿がいい。すまないが…」
「いえいえ~、というか私も節約のために宿は安めのほうがいいですから!そ、そ、そうだトールさん、だったらですねその…二人部屋とかに…し、します…?ほ、ほらそっちのほうが安くなりますし?…そ、そう!大きめのベッドで二人で一緒に寝るのもいいですよね!?ね!?」
「あー、すまない。そこまで節約する必要はない。二部屋取ろう」
「あー、ですよね~…はーい…」
いやだって、エルリーンと一緒に寝るなんて俺が興奮で眠れないよ…無理無理。毎日睡眠不足は慣れたものだけど、さすがに興奮で眠れないとかだと間違いが起こりそうだもんね…。いや女の俺がどう間違い起こすんだって話か…。というかエルリーンはノリノリだなぁ…やっぱり女の子はパジャマパーティーみたいなこと好きなのかなぁー?女子力たけーなぁ…俺には敷居が高すぎるよ。
オレンジ色の光が差し込む石畳の路地は薄闇が包む静かな民家が立ち並び、まるで何処かへ消え去ってしまったかのように人通りが無く、まさに逢魔が時という時間帯に相応しい少し不気味な雰囲気を醸し出していた。
俺達はその少し物悲しいような不思議な空間を言葉少なに歩みを進めていた。そして突然その小さな声はどこからともなく響いた――――。
「―――裏切り者に断罪を」
隣を歩いていたはずのエルリーンはゆっくりと地面に吸い込まれるかのように倒れてゆく…。
それは、俺の目には本当にスローモーションのように見え、心臓が早鐘のように鼓動を打つ。何が起こったかも理解出来ず、ただ、息をすることさえ忘れ、驚愕に体を強張らせた。
「え、エルリーン!!?」
ドサリと彼女の身体が音を立てて地面に転がり、俺は上擦った声でその名を呼びながら駆け寄った。彼女は―――――――。
「あいたたた~、転けちゃいました…えへへ」
普通にそう言いながら照れくさそうに身体を起こす。…はぁ~~~び、びびったぁぁぁ!マジで何が起こったしって思ったよ!?何今の「裏切り者に断罪を」とかさ!!いやほんと!エルリーンが殺されたのかと思って心臓止まるかと思ったんですけどーーー!?
「ふふ、ふははは、ふぅーははははは!!!無様な姿だな、裏切り者め!」
俺達の前方から芝居がかった笑い声が響くが、その声の主の姿は無い。俺はエルリーンを肩を抱くように助け起こし、声の響いた方向を睨みつけて言う。
「お前が、エルリーンを傷付けたのか…?」
「然り。いいか、よく聞け裏切り者よ!お前はこれから毎日そうやって地面に這いつくばり、地を舐めることになるのだッ!!それが嫌ならば、即刻この街から出て行くことだ――――」
「カウンターディテクション」
「に゛ゃあ゛ーーーー!?いぃぃいだだだだだだだ痛い痛い痛い痛いッ!!!」
俺の唱えた魔法は、青白い光を放ち姿無き者を浮かび上がらせる。その光は小さな針のようにその理を歪めた存在を苛む。その者の神経に強烈な痛みを刻み付け、その蒼き光はゆっくりと消え去った。
石畳の上をゴロゴロと左右に転がり続ける少女に俺は溜息と共に、少しばかり、怒りを鎮める。
エルリーンのように長い耳を持つ少女はエルリーンとは真逆のような褐色の肌、セミロングの髪は銀色に輝き、夕陽に照らされて不思議な色を映し出していた。
やっぱりダークエルフか…さっきの透明化はブラインドハイディング…だったか?レベルは低い闇の精霊魔法だが…ドロップアイテムのはずだ…何処で手に入れたか聞き出すべき、だな…。
それはそれとして、俺の大事なエルリーンに怪我をさせた罪は償ってもらおうか…。そう、お仕置きの時間だダークエルフ。
「はぁ、はぁ、はぁ…い、たたたぁ~…い、一体何が…―――――」
「ダークネス」
その立ち上る漆黒の霧は亡者の怨嗟、俺の唱えに応え座り込んだダークエルフの周りを包む如く湧き上がるはまるで穢れ堕ちた呪詛の瘴気。それは彼の者の光を奪い、闇へと誘い狂気を孕ませた。
「はれ…?え…なん、で?見えないよ…?何も…。嘘…うそうそうそ!?いやだやだやだ暗い暗い暗い!怖い怖い怖いッ!!ねぇ見えない!!嘘でしょ!!やだやだ嘘!?助けて、やだぁぁぁ!!」
ふっふっふ、怖かろう、恐ろしかろう!まだまだ、お仕置きは始まったばかりだぞぉ~?攻撃魔法は人には使えないもんねー。いやだって、下手したらグロ注意の死体が…ッ。殺人犯になっちゃうよ俺!?そんなわけでデバフをプレゼントだッ!どんどん行くぞー、釣りはいらねぇとっときな!!
「スロー、ウィークネス、ディジーズ、カーズポイズン、カーズパラライズ」
「は、はぎゅああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――……」
➤➤➤
「…ずびまぜんでじたぁー…ひっっく、えっぐッ…えぐ、うぅひっく、あじをひっがげて…ひっ、ころばしぇてじまって、ごべんなざい~…えぐ、えぐ…もう、じまぜん…はんしぇいもじます、えっぐ…だがら、ひっく、えぐ…ずずぅ…はぁ、はぁ、えっぐ…ゆるじでぐだじゃい……おねがいじます…えっぐ…ひっく………」
ごめん、ちょっとやり過ぎたよ…。このダークエルフの少女、恥も外聞もない涙と鼻水をダラダラと流しての完全なマジ泣きである。というか、この子相当豆腐メンタルっぽくてあれから直ぐにこうなってしまったのだ…。なんだろう…この感じ…共感を感じるというか……。
ダークエルフの少女の姿は泣き顔で酷いことになっているが、あどけなさを色濃く残した顔付きで少し幼さを感じさせる。胸も控えめで身体付きは女性というよりも少女という言葉が適当だ。
エルフは長寿というイメージだが、もしもこの少女が見た目通りの年齢ならば大人げないことをしてしまったと反省をする。
「トールさん。私なら本当に平気ですから、その…もう許してあげて下さい…ね?」
「ああ、そうだな…ダークエルフ、お前に聞きたいことがある。逃げたりしないと約束出来るか」
「ばい!!やぐぞく、じます!!」
首ふり人形のようにブンブンと頷きながら応じる姿に、少し微笑ましく感じ俺は表情を和らげた。
「キャンセレーション、エクストラヒール…エルリーン、君も…治療しておこう。フルヒール」
「トールさん。ありがとうございます♪もう全然痛みもないですよ~。えっと、ダークエルフさん大丈夫ですか?その、お顔、拭かせてもらいますね…あ、じっとしてください~ね?」
え?あからさまなえこひいき?過保護?…ふ、何が悪い。エルリーンは大事な大事な子だもんね!
エルリーンはハンカチを取り出し、ダークエルフの少女の涙と鼻水に濡れた顔を甲斐甲斐しく拭いてあげている。デバフが解けてHPも完全に回復した少女は、少し余裕を取り戻したのか「やめろぉ~お姉さんぶるな…エルフのくせにぃ…」と抵抗はしないが文句を口に出していた。お姉さんぶるなも何もその構図、完全にお姉ちゃんと妹にしか見えないぞ、少女よ…。
そして、少しばかりの時間を置き、落ち着いた少女は俺達と対峙するように距離を少し開けて立っていた。エルリーンにお世話され、綺麗になった顔は少しだけ鋭い目つきをしているが、全体的に可愛らしい顔付きだ。切れ長の瞳はダークレッドで夕陽が混じり宝石のような輝きを放っている。
少女の身体付きにはそぐわない過激な服装は、まるで精一杯背伸びをしているおませな女の子といった雰囲気を見せる。水着のようなビキニトップに、ベリーショートパンツ。装着しているレガースは左右で長さが違う造りで一方は膝下もう一方は太腿の半分辺りまで覆っている。右手には肩から覆うような超ロングの黒い手袋、そして両腕には揃いのガントレット、腰に取り付けたソードホルダーにはクロスするように双剣が収まっていた。そして、極めつけが真紅の超ロングなストールを首に一巻きし、残りを背中に流す。まさにリネージュのダークエルフの完璧なコスプレをした女子中学生の姿がそこにはあった。いや、そんな感じにしか見えないんだもん…。
「…き、聞きたいことがある、そう言ったな。ウィザード!お前と話をするのは構わない――が、そ、そこのエルフはダメだ!!…エルフには我らの情報を流すわけにはいかないのだ!…その~、ん、んん!そこの裏路地で待つ。ウィザード一人で来い!!話がしたくば、な!あぅ!?に、逃げないから!!手をこっちに向けるなぁ!ちゃんとあっちで話聞くから!!―――では、先に行っているぞ、ウィザード!」
面白い子だなー…。そして何かこう、記憶の扉が開きそうな…うぅ、なんだろうかこの気持ち。
エルリーンは俺を困ったように見つめて、ではここで待っていますね?と聞き分けよく少女の注文に応えるのだった。
「ふ、よく来たな。ウィザード!―――我の名は漆黒の断罪者―ダークブレーダー!!グランカインの呪縛より解き放たれし、八柱が一柱!ラスタバドに反旗を翻せし『アサシンギルド』の四天王が一人!!」
「…………OH」
そうか。そうだったのかー…俺の忌まわしい過去を呼び起こすようなあの感情は…そういうことだったのか。へんな共感に、頭痛を伴うようなあの気持ち…全てのピースがピタリとはまる。
―――――――こいつ、中二病じゃねーか!!!!
俺の、色を失ったような遠くを見つめる目を気にした様子もなく、漆黒の断罪者、ダークブレーダーちゃんは意気揚々と話を続けていく。痛い、とてつもなく、痛い。俺の心もだ!ひーッ!か、過去が俺を追ってくるよー!怖いよー!!
「…ウィザード、貴様の先程の魔法…我には分かるぞ。…貴様も深淵を覗いたな?その力…何と引き換えに手にした…!?――――いや、すまない。思慮が至らなかった…貴様の力を受けたこの身には大きな闇が見えた。引き換えにしたものは…口に出すことも憚られよう。…忘れてくれ」
「……」
無言の俺にダークブレーダーちゃんは、先程の元気を萎ませていき、目を伏せて「なんだ…貴様も…皆と同じか」と呟き俯いた。その呟きは諦めを含んだ自嘲。―――いつかの自分も呟いたはずの言葉…。
「…ふ、聞きたいことがあるのだろう?さっさと話せ、答えられることなら答えてやる…」
口調はそれ程変わっていない、だが、少女の心はもう、閉ざされたのだろう。ずっと、一人。本当に欲しいものは何だったか、それは想像した仮想の組織や神に匹敵する力なんかじゃなかったんだ。
この少女や、あの頃の俺や同じような人々…欲しいものは、
「漆黒の名を冠した者が、どれ程のものかと期待したのだがな…やれやれ、がっかりだな。そんなに簡単に秘匿されし神秘を明かすつもりだったのか?――――俺が、組織の人間であればどうなっていたと思う?」
「…ぇ、ぁ…――――――ッ!?ま、まさか…ッ!貴様…あの、人知を超える力を求める『象牙の塔』の人間か!!クッ…私としたことが…気付けなかったというのか…力が衰えている…?まさか再び奴の呪縛がこの身を…!?」
俺の言葉に、ゆっくりと顔を上げ、目を見開く少女は己の意思とは無関係に口元は弧を描き、興奮に頬を朱色に染める。恥ずかしい。そう感じる、でも、それ以上に、心が弾むのだ。はたから見れば本当にくだらない妄想と設定の討論会。ただ、くだらないからなんだというのか。意味がないからなんだというんだ?…俺達は楽しいのだ。この掛け合いが、本当に恥ずかしくてくだらなくて何の意味もない、だけど、心から共感するこの気持ちが楽しくてしょうがないんだ。
「落ち着け、漆黒の。あれば、という言葉を聞き逃すなよ?俺達の言葉は緻密に編み込まれた秘匿の暗号。一度、解き方を間違えばどうなるか、お前も理解しているだろう?」
「ふ、ふふ。そうか、そういうことか!なるほど、貴様は『象牙の塔』に入り込んだスパイだったというわけか、くく傑作だ。貴様に出し抜かれたあの間抜け共の顔が目に浮かぶぞ!面白い、面白いぞ貴様!名を聞いておこう!!」
「そうだな、俺の真名は深淵の雷帝…トールだ。その脳裏にしかと刻めよ、漆黒の。そして俺は自身の存在を餌にするため、仮初の名にもトールと使っている。それも合わせて覚えておけ」
「なんだと、己を餌にするとは…いや、貴様の力を見た我にはその豪胆さに見合っていると理解したぞ…。ならば我の仮初の名も受け取れ。我の俗世の名は…あ、…アイナ……だ」
「―――――なかなかに良い名だな。アイナか、確かに受け取っておくぞ」
アイナは俺のその言葉に年相応のあどけなさを隠すこと無く満面の笑顔で応えるのだった。
➤➤➤
「貴様はエルフだが、らい…トールの恩人、そして大切な人らしいからな。お前に関してだけは過去の因縁は排して付き合うことにした。…エルリーンだったな、宜しく頼む」
「はい♪これから宜しくねアイナちゃん!」
あれから、暫く会話を続けた結果、アイナはとっても根がいい子で懐くともの凄い素直な子だった。エルリーンのことに関してもダークエルフは本当にエルフとは確執があるらしいのだが、俺のお願いならば断ることは出来ないと普通に付き合うことにしてくれたのだ。
今の俺は猛烈な恥ずかしさと後悔で心が押し潰されそうだったが、このダークエルフの少女…アイナと盟友になったことに誇りはすれど、間違いなどと思うはずも無かった。
「ふん!宜しくしてやる…。そ、それから、その!と、トール!我も、冒険者なのだ。か、仮初の身分ではあるがな!ふはは!だ、だから、あの、こ、今度!一緒にクエストしよう!!」
本当に、俺達のような業の深い連中は不器用だ。でもそれでも、一歩踏み出しただけできっと世界はこんなにも変るんだろうな…。アイナの恥ずかしさを我慢しながら振り絞る声音が沈み切る寸前の紫色の薄闇が迫る路地に響く。
「ああ、こちらこそ頼む。アイナ!」
俺に出来た初めての友達は、本当に業の深い病を持った…それでも一緒に笑い合えそうだと信じられる少し背の低い少女だった―――――。
用語やらアイテムやら魔法やら説明するとこ
エネルギーボルトー通称EV。初級無属性単体魔法。でも、知恵と魔力が高いと本当に普通に弱いモンスターなんかは一撃で倒せるよ!そして高レベルウィザードだとMPの回復効率がいいからこの魔法だけを使うならほぼ永遠に撃ち続けられちゃうよ!!そんなことする人いないけどね!
効率厨ー「君ヒールだけしてくれればいいから」→「敵が湧いたら焼けよ…分かるだろ」→「あー時給全然でないし、狩場変えるわ。PT切るね乙」
ここまでひどい人にはあったことないけど、自身の効率のために人にもそれを強要するような人らしいよ!!怖いね!皆はそんなことしないように楽しんでゲームしてね!
カウンターディテクションー透明状態の人を暴き出してちょっとダメージを与えるよ!「に゛ゃあ゛ーーーー!?いぃぃいだだだだだだだ痛い痛い痛い痛いッ!!!」
ダークエルフードラゴンバレーの地下にあるサイレントケイブの集落で暮らす暗殺集団…らしいよ!でもそこまで悪い人たちじゃないかな!エルフとの確執があるみたい!アイナはそういうしがらみは気にしないことにしたよ!
ブラインドハイディングーダークエルフ専用の闇精霊魔法。少しの間透明状態になれちゃうよ!ん?…おいおい、何に使うつもりだい!?
ダークネスー相手を一定時間盲目状態にしちゃうよ!暗いよ―怖いよー!でもとらぶったりはしないよ!
デバフー相手に不利益な効果を及ぼす魔法のことだよ!弱体化させたりね!
スローー相手の行動を一定時間遅くするよ!!のそのそ…カタツムリマークの魔法だよ!
ウィークネスー相手の攻撃力を下げちゃうよ!力が抜けて…顔が濡れちゃう。
ディジーズー相手の防御や命中を下げちゃうよ!やる気無くなったー。
カーズポイズンー相手を毒にしちゃうよ!使う人は、いないんじゃないかな!だって、使えn…。
カーズパラライズー相手を麻痺らせちゃう!こっちは使う人がいるよ!!効きさえすればPvPならとても有効な魔法だよ!
キャンセレーションー全ての持続的な魔法効果、ポーション効果、アイテム効果を無かったことにするよ!でも食べたり飲んだりしたポーションやワッフルのカロリーは無かったことにならないよ!食べ過ぎ注意!
エクストラヒールー2段階目のヒールだよ!ちょっと回復量が多いよ!
フルヒールー最終段階のヒールだよ!超回復するよ!