御子の軌跡   作:片瀬玲音

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初めまして、片瀬玲音と申します。自分の中で彼に心を許せる存在がいたらこういった展開もあったのかもなという思いから生まれた作品です。元来マイペースな性分なので更新が遅れることも多々あると思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。


終わりと始まり

自分で言うのもなんだが、あたしは恵まれていると思う。

 

「・・・ん?どうかしたか玲亜」

「ううん、何でもない」

 

翔さんに笑いかけると彼は不思議そうに首を傾げていた。それを見てまた少し笑っちゃうのは許して欲しいな。

 

 

 

彼とは・・・橘翔さんとはもう4年の付き合いになる。

3つ上の彼と出会い、こうして隣を歩けるなんて成人したての頃は思ってもみなかった。この人といるだけで満ち足りた心地になる。互いに支え合って生きることがこんなに幸せだとは思わなかった。少し前まではそんなの似合わないって思って、弱い部分を隠して強がってたのに。

『別に弱くてもいいよ。強がりで臆病で、その癖周りを切り捨てられないお人好し・・・それが、お前なんでしょ?』

あの人の優しさに、一体どれだけ救われただろう。

 

仕事も順調にいってる。信頼できる上司と競い合える同期、教えがいのある後輩もできた。できることが増えて任されることも多くなり、ついこの前は大きなプロジェクトを託された。忙しいけど、とっても充実してる。

 

 

「・・・ねぇ、翔さん」

「んー?今度はなんだよ」

 

 

それに・・・ついさっき、本当に幸せなこともあった。

 

 

「ありがとうございます、あたしを選んでくれて」

 

 

だから、そのツケが回ってきたのかもしれない。あたしは満ち足り過ぎていて、不幸なんて全く感じてなかったから。

 

 

「あたし・・・とっても幸せです」

「・・・そっか」

 

 

あたしの大好きな優しい笑みを浮かべた翔さんと、青に変わった信号へと歩みを進めて初めて、大きな影が近づくのに気がついた。

 

 

ーーキキーッ!!

 

 

 

驚いた様な運転手の顔も、周りの悲鳴も、何一つ頭に入らない。

眩い光が目の前に広がり思わず翔さんの手を強く握りしめた瞬間、2人の薬指に光る真新しい銀色が目に入った。

 

(あぁ・・・結婚式くらい、挙げたかったな)

 

 

 

 

 

あたしを庇おうとする翔さんも、ぼんやりとそう考えるあたしも巨大なトラックの前ではなす術もなく、衝撃と共に飲み込まれる。揺れる視界と激痛の中、赤く染まった結婚指輪が見えたところで

 

 

 

あたしの意識は完全に失われた。

 

 

 

 

 

 

それでも、2人の手は固く結ばれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

**********************

 

 

 

 

「じゃっじゃーん!はじめましてお二人さーん!!

僕、神様でーっす!!」

 

 

・・・どう反応すればいいんだろうこの状況。

 

 

確実に訪れるであろう死を覚悟して意識を手放したのに、次の瞬間には無傷のあたし達は真っ白な空間に立っていた。

隣の翔さんも訳が分からず混乱してる。そんなあたし達をほったらかしになんか楽しげにくるくる回ってる自称神とか吐かす男。神とかほざくけどスーツって・・・しかも見た目あたし達と同じくらいだし。

 

「あ、この見た目?神とは言っても僕まだまだ下っ端だし!君たちみたいな人に説明して導くから威圧感ない方が良いでしょー?」

 

 

・・・いや、神にも下っ端とかあるのか。

ますます理解出来なくなってきた。

 

 

「やーそれはそうとごめんね!実は君たち、本来はまだ死期じゃなかったんだけど巻き込まれて即死しちゃったんだよー」

「・・・は?」

「つまりさぁ・・・俺ら無駄死ってこと?」

「まぁはっきり言っちゃうと?そうなっちゃうね!昏睡ならまだしも即死だと魂の繋がりが切れちゃってさー、戻してあげたいけど戻せないんだよね」

 

身体の方もぐちゃぐちゃだしーなどとケラケラ笑って言う自称神に引き攣った笑いしか返せない。突拍子もなさすぎて考えることを放棄してるのかも。てかなんで翔さんはそんな順応性高いんだ。

 

未だ混乱していると急に視界がぼんやりと揺れだし、次第に立っていられなくなる。横を見ると先程までいつものように飄々としていた翔さんも頭を押さえて苦しそうに顔を歪めている。

 

「そこで!お詫びと言ってはなんだけど、君たちの転生先を変更させてもらいましたー!玲亜ちゃんがよーく知ってる世界だからきっと楽しめると思うよ!」

 

ふらつくあたし達を気にもとめず、また自称神が話し出す。何故かこいつの声だけがやけにクリアに聞こえるのは聞き漏らさない為なのだろうか。

 

「物語が始まる時、君たちの記憶が戻る。

魂の繋がりが切れても離れずにいた君たちなら、すぐに見つけられるよ。もし苦しい物語でも大丈夫、ハッピーエンドは必ず待ってるから。

 

 

それじゃあ、行ってらっしゃい。

君たちの物語を存分に楽しませてもらうよ!」

 

揺れる視界の中で自称神が楽しそうに笑っている気がして

 

 

またあたしの意識は途絶えた。

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