昨年は遂にずっと考えてたこの小説をスタート出来ましたね。まだまだ序盤もいいところですが、今後も頑張っていきたいと思いますのでどうぞよろしくお願いします。
それは丁度彼らが旧校舎へと入る時・・・
あたしとクロウ、そしてもう一人の級友は少し離れた場所から中へと入っていく10の紅い制服を纏った背中を見つめていた。
「――ほっほう、あれが俺たちの後輩って訳だな?」
「まあ、名目こそは違うが似たようなものだろうね」
「・・・」
面白そうに言うクロウに凛々しすぎる貴族令嬢・・・ゼリカことアンゼリカは彼らの入った旧校舎を見てさも感慨深そうに微笑んだ。
「私たちの努力が報われたのなら、こんなに嬉しいことはない。 一年間地道に頑張った甲斐があるというものだよ」
「だよな~・・・ってお前は努力なんてしてねぇだろ、好き勝手やってただけじゃねーか!」
「フッ、それは君たちも同じだろう。散々サボってたのは誰だったかな?」
確かに一番サボってフラフラしていたのはあたしたちなのは火を見るよりも明らかでクロウも苦虫を噛み潰したような顔で押し黙る。大体にして、こういった軽口はいつもの事なので既にあたしの耳には入ってない。
それよりも、中に入った彼の方が重要だ。
あたしの記憶では紅い制服を着た生徒は9人だったはず、はずなのに。
「・・・・・・なんで・・・?」
どうしてあなたがその紅を纏ってるの?翔さん。
予測はしていた、覚悟もしていた。それでも実際に目にしてしまうと意外とショックなんだね・・・というよりもあたしの中で彼が翔さんだって明確に認識してることが不思議なんだけど。
あたしが今見た青年は彼みたいな柔らかい黒髪じゃなくてさっぱりとした精悍な感じの茶髪だし、彼よりも明らかに逞しいもんね、見た目・・・というか体つき。そういえばあの人、細身なの凄く気にしてたな・・・大食いのくせに筋肉付かないって。
まだ、確証があるわけじゃないけど、それでもあの人は翔さんだ。あたしの中で心臓が、脳が、魂が・・・あの青年を翔さんと認めて、欲して仕方がない。
でも、その紅を纏っているってことは・・・そういうことよね。
翔さん・・・やっぱり、あなたはそちら側につくんですね。
あなたとあたしは・・・一緒にいれないんですね。
「は、鼻で笑いやがったなァ!?大体お前が掻っ攫ってかなきゃ今頃・・・ってレフィ?」
「ん?・・・レフィア?」
「え?あ、ごめん・・・何の話だっけ?」
多分、見つけた事への歓喜と報われない事実への絶望であたしの顔はものすごく悲惨なことになってたんだろう。クロウとゼリカが言い合いを中断して訝しむ位だもの。慌てて取り繕うよう笑って今にも問いただしたそうなクロウの視線をどう躱そうかと考える。まぁいずれは話さなきゃいけないんだけどさ、今はダメだ。まだその時じゃない。困り果てた様子のあたしに何を思ったのかゼリカは面白そうに肩を寄せてきた。
「おやおや・・・悲しいが、どうやらレフィアのお眼鏡に適う男がいたようだね。これは、クロウの役目もここまでかな?」
「はあ!?なんだよそれどこのどいつだレフィ!」
ゼリカの言葉に勢いよく反応してクロウがこちらに食って掛かってくる。まずい、こうなったこの男は非常にめんどくさい。下手したらこの話題だけで1週間は不貞腐れる、というか拗ねる。
「い、いや別にあたしはそんなこと一言も・・・」
苦笑いしてクロウを説き伏せようと頑張ってみる・・・・・・が、あたしは忘れていた。隣で不敵に笑うこの令嬢がクロウより厄介な存在だという事を。
「おや、いつもなら入ってくる会話にも入らずに・・・しかもあんなに熱烈に彼の事を見つめていたのにかい?流石の私も嫉妬してしまうくらいの熱量だったよあれは?」
「ね、熱烈にだあ!?」
「あーもう!なんで余計なことばっかいうのよゼリカ!!」
この後、頑張り屋な少女と導力馬鹿の青年・・・もう2人の級友がやってくるまで油を注ぎまくる愉快犯と今にも旧校舎に乗り込みそうな馬鹿に挟まれてあたしの精神がどんどん磨り減らされていったのは、避けられない運命だったのかもしれない。できる事なら避けたかった。
というかゼリカ、なんであたしが彼のことみてたってわかったのよ。
後日2人だけの時にふと思い出して彼女に聞いてみたらカマかけただけだったらしい。
しかも“彼”と言ってしまったことでホントにあの時ずっと(誰かはバレなかったけど)男子生徒を見てたことがバレた。・・・ホント最悪だ。
拝み倒してなんとかここだけの秘密にしてもらったのは言うまでもない。