御子の軌跡   作:片瀬玲音

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結成〜S〜

「おいおい・・・流石にこんなデカブツがいるなんて聞いてねえぞ?」

「チッ・・・どうやらあの教官殿は俺たちが苦しむ様を見たいらしいな」

 

 

流石にそれはねえと思うが、と言えない俺に悲しくなった。

 

響き渡る唸り声や剣戟の音のする方へ急いだ俺たちが目にしたのは、いつの間にか先行していたらしい他の生徒たちと、彼らに襲いかかる明らかに異質な動く石像。生徒はまあわかる・・・なんで石像が動いてんだよ!?普通に考えてありえなさすぎるし、つい先程前世の常識も脳内に追加された俺の頭は軽いパニックを起こしそうだ。

 

まあそんなことを言っても現実は現実、考えても仕方がないし今は敵を沈めるのが先決だろう。数で押し切る算段かもしれないが状況は見るからに劣勢、何かしらの突破口がなきゃ体力が尽きてやられちまう。俺の銃撃後崩すとしても左右だけじゃ心もとないし流石に攻撃にばらつきが出る。考えられるとすれば・・・。

 

「まあ、仕方ないか」

 

後ろからかけられた声に目線をやると案の定、銀髪の小柄な少女が獲物を構えて立っていた。こいつなら気配を殺すことくらいは朝飯前だしなんとなくいる気がしてたから特に俺は反応しなかったが、ユーシスは気づいてなかったようで微かに目を見開いている。だがそんなことを言ってる場合でもない、こいつがいるなら話は早いからな。

 

「俺が撃ったら3人で左右上空から一斉攻撃、遅れんじゃねぇぞ!」

「っ、いいだろう!」

「ラジャ」

 

勢いよく3人一斉に駆け出した俺たちに他の連中は驚いたようだがそんなことは無視しておく。近付きながらガンスラッシュに搭載された導力制御を解除しチャージしたエネルギーを一気に顔面に叩き込む。

 

「喰らえや・・・クウェイクエッジ!!」

 

上手く目を狙えたようで苦しみだした敵にユーシスが左から薙ぎ払い、宙を舞った少女が背後から斬撃を仕掛ける。そしてその直後、右から回り込んでいた俺が勢いよく切り付けると・・・その巨体が大きく体制を崩した。

 

「今だ、みんな行くぞ!!」

 

その隙を見逃す筈もなく、ラッキースケベ君が叫ぶのと同時に俺たちは一気に攻撃を開始する・・・それと同時に謎の感覚を身体に感じた。この場にいる全員の動きが読める、だれがどこにいるから俺がどう攻撃するべきか容易く判断でき、間を置かず最善のタイミングで俺も斬撃を喰らわせていく。

 

そして俺たちの攻撃に苦しんだ敵は大剣を勢いよく振るった少女の重い一撃によって首を刎ねられ・・・漸く、完全に沈黙した。

 

 

 

 

 

「よかった、これで・・・」

「ああ、一安心のようだ」

 

完全に敵を倒すことができたと判断し、全員武装を解除する。おそらくここにたどり着くまで殆どが気を張っていたのだろう、だれもが安堵の表情を浮かべる。

 

「・・・にしても、いいタイミングで現れたなお前」

「まぁ、ちょっと前から2人の後ろにいたしね。そっちも気づいてたんでしょ?」

「・・・ま、どっか近くにいるとは思っちゃいたがな」

 

自分が思わず呆れたような言い方になっていると自覚して頭をかきながら彼女に向き合う。相変わらす眠そうな顔で、それでもまっすぐにこちらを見てくる少女に何とも言えない感覚になる。

 

「まあとりあえずよろしくな、フィーでいいか?」

「・・・ん、よろしくシオン」

 

そうやって話している間にも俺たち以外は先ほど感じた妙な感覚について話していた。どうやらこの場にいた全員が感じていたようだ。

 

「――シオンも感じた?」

「おう、何故か全員の動きがわかってやけに上手く連携できたんだよな・・・普通じゃありえないくらいに」

 

そう、連携できたのだ。会って間もない、ただの寄せ集めにしか過ぎない集団が。普通に考えたらありえないが、問題はこの現象が何を≪原因≫として起こったのかということ。

 

「・・・もしかしたらさっきのような力が――」

「そう、ARCUSの真価ってワケね」

 

話し込んでいた俺たちに対して答えたのは、上の階段から降りてきたサラ教官だった。若干ふざけつつも俺たちに起こった現象・・・≪戦術リンク≫とARCUSについて説明していく。要するに、最終的目標はいかなる状況でも連携できる理想部隊の設立・・・確かに軍でそんなことが実現できるのならこれ以上ない戦力になるし、幅広い分野の戦術が可能になる。それのテスト要員というわけらしい。たしかに、そんな理由なら戦闘や探索は必須だよなぁ。

 

「これまで説明したことを覚悟してもらった上で、≪Ⅶ組≫に参加するかどうか――改めて聞かせてもらいましょうか?」

 

これまでとは違い、真剣に、一教師としてまっすぐ俺たちに問いかけたサラ教官に最初に答えたのはラッキースケベ君・・・・・・もといリィン・シュバルツァーだった。・・・やっと名前分かったな、なんかすまん。彼の宣言に触発されてか否か、それぞれが様々な考えのもと参加を決意していく。そうして俺以外の参加を聞いたサラ教官は最後とばかりに俺の方を向いて笑いかけた。

 

「――それでシオン、あんたはどうすんの?」

 

全員の視線がこちらに向けられ少しばかり居心地が悪くなるが、ここにいれば中々面白いものが見れるかもしれない。なにより・・・。

 

少し思案した俺は他と同じように一歩前へ歩み出た。

 

「まぁ色々思うとこはあるが・・・中々に楽しめそうだし俺にも目的がある。それがここで見つかるかもしれないなら、参加させてもらうよ」

「ふーん?ま、その辺は追々ね。なにはともあれ・・・この場をもって特科クラス《Ⅶ組》の発足を宣言する」

 

サラ教官の声を聴きながら、愛しい人の姿が脳裏によぎった。このクラスがもし物語の中心だとしたら、ここにいればいずれは玲亜に会えるはず・・・もちろんそれ以外にも目的はあるが、あいつに会うためには恐らくここが一番なんだろう。

 

(――玲亜・・・早く会いたいよ)

 

 

 

 

 

 

 

*****************

 

 

 

 

 

「――うし、こんなものかな」

 

 

俺たち《Ⅶ組》専用の第3学生寮の自室・・・荷解きを一通り終わらせた俺は部屋を見て小さな満足感に満たされていた。一般的な寮にしては少し広めな上に1人部屋、前世で寮生活だった俺としては贅沢すぎやしないかと思ってしまうがあてがわれたんならありがたく使うに越したことは無い。実家の部屋も広かったからそのうちこの生活にも慣れるだろう。

 

落ち着いてベットに腰掛けるも今日1日での内容が濃かったせいか、はたまた前世の記憶なんてもののせいで玲亜の事を考えてしまうからか、どうにも寝る気になれず落ち着かない。

 

(まだ目が冴えてるな・・・少し歩くか)

 

動けば落ち着くかと思い至り、部屋を出た俺は階段へと降りていった。ふとロビーを見ると他の男子たちが何やら話し込んでいた。

・・・ユーシスがいないのはいないのは仕方ないか。

 

「あ、確か・・・シオン、だったか?」

「おう、お前ら何やってんの?」

「いや、少し話していただけだ。よければシオンもどうだ?」

「あー・・・そうだな、じゃあ邪魔するかな」

 

空いていた長身の生徒の隣に座ると正面のリィンが笑いかけてきた。やけに優男風のタラシっぽいなと思ったのは言わないでおくべきだろうな。

 

「話す暇もなかったし改めて名乗らせてくれ、リィン・シュバルツァーだ」

「エリオット・クレイグだよ、よろしくね」

「ガイウス・ウォーゼル、ノルドの出身だ」

「おう、俺はシオン・フェルモード・・・南部レドガンの出身だ。まぁ、適当によろしくな」

 

名乗った瞬間にガタッと音を立てて眼鏡君が立ち上がる。半分やっぱりかと思いながらそちらを見ると案の定驚いたような顔でこちらを睨みつけている。

 

「フェルモードって・・・レドガンを治める伯爵家じゃないか!そ、それに・・・」

「・・・悪い組織を従えてるらしい・・・ってか?」

「っ・・・」

 

にやりと漏れた笑みと共に聞くと言葉に詰まって黙り込んだ。それとは反対に他の3人は驚いたような戸惑ったような表情を浮かべてこちらを窺っている。・・・これ以上いても空気を悪くするだけだな。そう思って立ち上がり、眼鏡君・・・マキアスとすれ違った後俺は振り向きざま口を開いた。

 

「確かに俺はフェルモード伯爵家の次男だし、うちの家に色々噂があんのも否定はしない・・・でもさ、人にはそれぞれ考えや理由があるとはいえ、身分を気にしてあちこちに噛みついて回る今のお前は・・・ただのクソッたれな差別野郎だぜ?」

「なっ!?き、君に何がわかるっていうんだ!」

「別に分かるなんて言ってねえよ、知りたくもないしな。今の段階でお前と話がまともにできるとも思ってないし、好きに受け取ってくれていーぜ?」

「い、言われなくてもだれが君のような奴と話すか!」

 

喧しく吠えたやつを横目にリィン達にもう寝ると告げ早々に自室に引っ込むことにする。後ろからリィンの焦った声が聞こえたが敢えて聞こえなかったふりをした。扉を閉めて再びベットに腰掛けたとこで、ようやく息をつけたような気がする。

ついらしくもなくわざと煽ってしまったが・・・まぁ仕方ないだろう。あの様子なら俺の家が抱える《仕事》の実態を知ってるとは思えないが、それでも俺は…俺たちは誇りを持っている。他人にどうこう言われるくらいならある程度線引きしといた方がいいだろう。

そこまで考えてふと小さな不安がよぎった。

 

 

(・・・玲亜は、俺を受け入れてくれるかな)

 

 

真っ直ぐで優しいあの笑みを思い出して少しだけ心が冷たくなった。

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