魔法使いとなった少年 作:199
ウェールズ カーディフ セントメロー地区 子供部屋
日本・ルーカス・優希様
この手紙は一体何なのだろうか?今時、羊皮紙の封筒に入れるだろうか?しかも切手は貼っていないし、宛先も自分の部屋まで細かく指定されている。ハッキリ言って不気味だ。
とはいえ自分宛ての手紙である。日本から母さんの故郷であるイギリスに移住してから初めての手紙だ。ひとまず家に入ってから母さんに見せてみよう、そうしよう。
「母さん、僕宛てにへんな手紙が来たー!」
「あら、そうなの?お母さんにもその手紙を見せて頂戴?」
家に入ってからさっそくポヤポヤした雰囲気の母sんにへんな手紙が来たことを知らせる。
この母の容貌は息子である自分から見てもとても美しく、サラサラと風に靡く金の長髪
が母の密かな自慢であることを僕は知っている。それ以外にもとても優しくて、料理上手で、文武両道というどこの完璧超人だと言いたくなるほどの人である。
そして父さんはよく母さんを捕まえられたなと親戚中に言われたりしている。まぁ、そう言われても仕方のない容貌をしているのを自分も否定しきれないけど。そんな父の容貌は日本のどこにでもいるサラリーマンと言ったところか。けれども仕事がとても速くて、正確で職場の人達からとても信頼されていたりする。とても凄い父親なのだ。
そんな二人から生まれた僕は両親の良いとこ取りといってもいい程のスペックを持っていたりする。どこからかオリ主乙!と聞こえそうだが、なってしまったものは仕方ない。
容貌は父さんに似て日本人の顔をしているが母さんの遺伝子も合わさった影響かパーツの一つ一つが日本人のそれを上回っているのが恐ろしい。
と、つらつらと考えながら先程きた手紙を母に渡す。母は手紙をぐるりと見まわしてから羊皮紙に書かれた内容をじっくりと読みこんだ。数分たってから母は「あらあら、どうしましょう」と呟いてから僕に向かって
「お父さんが帰って来てからお話しましょう?正直お母さんだけでは判断できないわ」
と困ったように僕に尋ねた。あの母がここまで言うからにはそれなりに大事何だろうなと思いつつ
「うん、分かったよ」
そう答え返した。
それから、夜になって父さんが帰って来てから家族で食事を終えた後に、父さんから昼の手紙についての話を聞かされることとなった。
あの母さんの態度から何だろうとそわそわしつつも自分にとって大きなターニングポイントになるだろうと想像はしていたが、その想像を大きく上回っていたのにはさすがに驚いた。
「えっと、魔法使いですか?父さん、それ本当に?」
「ああ、父さんと母さんもさすがにビックリしたが、よくよく考えてみると「あぁそれらしいのがいたな」という話になってな。今までの不可解な出来事がそれで全て片が付くことに気づいたんだよ」
「確かにそうなのよね。今までは魔法なんてファンタジーの代物と思っていたから不可解な所も無理やりに納得していたけど」
などと話が進んでいった。すごいな家の両親、魔法の存在に薄々とはいえ気付いていたなんて。自分ならまず認めないだろうに。
そして、自分も手紙を読ませてもらったが突っ込みどころが多くて唖然としてしまった。ふくろう便とはなんだ!?国際魔法使い連盟!?世界中に魔法使いはいるのか!?などと声を荒げてしまい、両親もうんうんと頷いていた。世界は不思議でいっぱいだな。
「それで優希はどうするんだい?僕たちは優希に進路は任せるよ。このホグワーツ?にも進学していいし、前から決めていた進路に進んでもいい。正直、魔法の世界がどうなっているかは想像出来ないけど、ある程度の共存は出来ているみたいだからね」
「でも、父さん。このリストに書かれている、制服や教科書をどうやって買うつもりなの?どこで買えばいいのか見当が全くつかないよ?」
「それを聞くと言うことはこの魔法学校に行くつもりはあるのね?そのことについてならおそらく、問題はないと思うわ。私たちみたいな魔法を知らない者のために何らかの対応策を取っているはずよ。たとえば、このふくろう便とかが怪しいわね」
そこまで母さんが話した直後にコンコンと何かが窓を叩く音がした。そちらに振り返ってみると、白いふくろうが手紙を咥えながらバッサバッサと飛んでいた。
「ねぇ、あなた?」
「なんだい、マリー?」
「自分で言って何だけど本当にふくろうが飛んでくるとは思わなかったわ」
「それは僕も同じだよ、といけないな。窓を開けてふくろう君を入れてあげないと」
父が窓を開けて一歩下がると同時にふくろうが家の中に入ってきた。なんて賢いふくろうなのだろう。ふくろう便なんて眉唾ものだったが、さすが魔法使い。僕らとは違うんだなと一人頷いてしまった。
「さて、ふくろう君手紙をありがとう。返事も今から書くから待っていてくれるかい?」
ホー
父がふくろうに待ってくれるか尋ねたら、ふくろうも普通に返事をして羽を休ませていた。自分でも何を言っているか良く分からない。たまらず母さんを見るとフフフと笑いながら皿に水を入れて、ふくろうに飲ませていた。
なんて適応力の高い両親なんだ!さっきまで自分と同じように戸惑っていたはずなのに!
そうやって一人思考を飛ばしていると
「ありがとう、ふくろう君。この返事をよろしく頼むよ」
「また、いらっしゃいね」
いつの間にか返事を書いたらしい両親が、ふくろうに手紙を持たせて見送っていた。どれだけの時間、僕は意識を飛ばしていたのだろうか?
「さて優希、明日はちょうど僕も休みだから家族みんなでロンドンに行くとしようか」
考え事をしている最中に父さんからロンドンに行こうと誘われた。だけど何故にロンドンなのだろう?
「優希の事だからなんでロンドンに行くのだろう?と考えているのだろうけど、この手紙によるとロンドンの漏れ鍋とか言う場所で魔法使いグッズを買えるみたいなんだ」
さすが父さん、僕が考えていたことをピタリと当てた。本当は父さんも魔法使い何じゃないだろうか?
「いやいや、優希が分かりやすいだけだよ」
僕が分かりやすいだけのようだった。
そんな僕たち父子のやり取りが終わるのを待ってから母さんが父さんに話しかけていた。
「あなた、向こうでこちらの通貨が使えるのかしら?」
「いや、おそらく専用の通貨が流通しているはずだ。前に仕事でどこの国かも分からない通貨を見たことがあったからね。たぶんあれが魔法使いの通貨なのだろう」
「ということは、まずは向こうの世界にあるであろう銀行で両替してもらう必要があるわね」
これで何回目か分からないが本当にすごいな!この両親は!普通そんな断片的な情報でここまで把握出来るか?いや無理だろ!
そしてポカンとしている僕を置いてどんどん明日の予定が決まっていったのである。明日が楽しみだけど、同時に怖い気もするなぁー。とりあえず明日に備えてもう寝よう。お休みー。
こうして僕、日本・ルーカス・優希の魔法使いとしての生活が始まったのである。