「ふぁ…、早く寝ないといけないよね……」
欠伸を噛み殺しながら髪の水気を取る。
お風呂や食事なんかもしなくていいのだがたまにこうしないと歩き方や食べ方を忘れてしまいそうなのでこうして2日か3日に1度のペースで自ら体を清め食事をしている。
服をきちんと着てもいいのだが寝るだけだし外に出ることもないので良しとする。
「あれ、手紙?可笑しいな、この部屋は地下にあるのに」
そう、今いる場所は地下3階にあり手紙が届く筈がない場所なのだ。
『普通はありえない』ことだ。それにこの場所を知っている人もいないはず、誰にも教えていないのだから。
さてどうしたものか、この手紙を開けるべきだと直感が告げている。
今はもう会うことが出来なくなった我が子に会える、そんな気がしてならないからだ。
それならばと髪と瞳の色を変える、今の自分に出来るのはこの位だ。声は…きっと何とかなるだろう。
荷物の準備は必要ないしこのまま手紙を開けよう。
そう思い手紙を手に取り封を切り内容を確認する。
『 悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。
その才能ギフトを試すことを望むのならば、己の家族を友人を財産を世界の全てを捨て我らの〝箱庭〟に来られたし 』
「随分と身勝手な…」
ぽつりと呟いた頃には強い風を感じ辺りを見渡せばそこは完全な異世界だった。
どうやら自分以外にも三人いてその中に我が子もいるようだ、こうしてまた一目見ることが出来尚且つ会うことも出来るなんてなんて幸福なんだろう。
例え母だと告げられないとしても、こうして会うことが出来ただけでも幸せだ。
余計なお世話かもしれないが多少なりとも怪我をすることになりそうだと思ったが減速して行くのを感じ下の池を視界に入れば濡れるだけで済みそうだと体の力を抜いた。
その瞬間に四つの大きな水柱があがる。
水膜で勢いが衰えていたため4人は無事で済んだがノースリーブの少女と共に落ちてきた三毛猫は違うらしい。
「………大丈夫?」
『し、死ぬがぼとおもった…!』
まだ呂律が回らない三毛猫だが、彼(?)の無事を確認した少女はホッと胸を撫で下ろす。
その一方で、学ランの少年とリボンの少女はさっさと陸地に上がりながら、それぞれが罵詈雑言を吐き捨てていた。
そろそろ池からでようと自分も陸地に上がる、面倒なので服は絞らない。
「し、信じられないわ!まさか問答無用で引き摺り込んだ挙げ句、空に放り出すなんて!」
「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜコレ。石の中に呼び出された方がまだ親切だ」
「………いえ、石の中に呼び出されては動けないでしょう?」
「俺は問題ない」
「そう。身勝手ね」
ふん、と金髪の少年と黒髪の少女は互いに鼻を鳴らして服の端を絞る。
「此処………どこだろう?」
「さあな。まあ、世界の果てっぽいものが見えたし、どこぞの大亀の背中じゃねえか?」
ノースリーブの少女の呟きに学ランの少年が応える。
「まず間違いないだろうけど、一応確認しとくぞ。もしかしてお前達にも変な手紙が?」
「そうだけど、まずは〝オマエ〟って呼び方を訂正して。―――私は久遠飛鳥よ。以後は気を付けて。それで、そこの猫を抱き抱えている貴女は?」
久遠飛鳥と名乗った黒髪に二つの大きな赤いリボンを付けている、ドレスを着た少女が高飛車な物言いで返す。
「………春日部耀。以下同文」
春日部耀と名乗った茶髪に白のヘアピンを付けている、スリーブレスのジャケットとショートパンツを着た少女が物静かに返す。
「そこの髪の長い貴方は?というか上着くらい羽織りなさい!」
注意されてしまった、異性がいるというのにこんな格好をしていて水に濡れてしまったせいて透けているからだろう。だが何も持ってきていないのでどうにも出来ない。
「これでも羽織っとけ、言っとくけどちゃんと返せよ?」
そう言い着ていた学ランの上着を羽織らせてくれた。
自己紹介とお礼を述べなければと自分も口を開く。
「そこの少年、上着をありがとう。こんな格好なのはお風呂上がりだったからだ、ごめんよ。僕は柊碧郁、よろしく頼むよ」
一応無難な自己紹介をしたから大丈夫だろう。
さて、そろそろ茂みに隠れている少女にご登場願おうかな?説明も受けなければならないことだし、ね。