とある問題児の母も来るそうですよ?   作:地獄花

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――第三話――

 

 

 

「―――あ、あり得ない。あり得ないのですよ。まさか話を聞いてもらうために小一時間も消費してしまうとは。学級崩壊とはきっとこのような状況を言うに違いないのデス」

 

 

「いいからさっさと進めろ」

 

 

半ば本気の涙を瞳に浮かばせながらも、黒ウサギは話を聞いて貰える状況を作ることに成功した。四人は黒ウサギの前の岸辺に座り込み、彼女の話を『聞くだけ聞こう』という程度には耳を傾けている。

黒ウサギは気を取り直して咳払いをし、両手を広げて、

 

 

「それではいいですか、御四人様。定例文で言いますよ?言いますよ?さあ、言います!

ようこそ!〝箱庭の世界〟へ!我々は御四人様にギフトを与えられた者達だけが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼントさせていただこうかと召喚いたしました!」

 

 

「ギフトゲーム?」

 

 

「そうです!既に気づいていらっしゃるでしょうが、御四人様は皆、普通の人間ではございません!その特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵でございます。『ギフトゲーム』はその〝恩恵〟を用いて競いあう為のゲーム。そしてこの箱庭の世界は強大な力を持つギフト保持者がオモシロオカシク生活できる為に造られたステージなのでございますよ!」

 

 

両手を広げて箱庭をアピールする黒ウサギ。飛鳥は質問をするために挙手をした。

 

 

「まずは初歩的な質問からしていい?貴方の言う、〝我々〟とは貴女を含めた誰かなの?」

 

 

「YES!異世界から呼び出されたギフト保持者は箱庭で生活するにあたって、数多とある〝コミュニティ〟に必ず属していただきます♪」

 

 

「嫌だね」

 

 

「属していただきます!そして『ギフトゲーム』の勝者はゲームの〝主催者〟が提示した賞品をゲットできるというとってもシンプルな構造となっております。」

 

 

「………〝主催者〟って誰?」

 

 

「様々ですね。暇を持て余した修羅神仏が人を試すための試練と称して開催されるゲームもあれば、コミュニティの力を誇示するために独自開催するグループもございます。特徴として、前者は自由参加が多いですが、〝主催者〟が修羅神仏なだけあって凶悪かつ難解なものが多く、命の危険もあるでしょう。しかし、見返りは大きいです。〝主催者〟次第ですが、新たな〝恩恵〟を手にすることも夢ではありません。

後者は参加のためにチップを用意する必要があります。参加者が敗退すればそれらはすべて〝主催者〟のコミュニティに寄贈されるシステムです」

 

 

「後者は結構俗物ね………チップには何を?」

 

 

「それも様々ですね。金品・土地・利権・名誉・人間………そしてギフトを掛けあうことも可能です。新たな才能を他人から奪えばより高度なギフトゲームに挑む事も可能でしょう。ただし、ギフトを賭けた戦いに負ければ当然―――ご自身の才能も失われるのであしからず」

 

 

黒ウサギは愛嬌たっぷりの笑顔に黒い影を見せる。

挑発ともとれるその笑顔に、同じく挑発的な声音で飛鳥はが問う。

 

 

「そう。なら最後にもう一つだけ質問させてもらってもいいかしら?」

 

 

「どうぞどうぞ♪」

 

 

「ゲームそのものはどうやったら始められるの?」

 

 

「コミュニティ同士のゲームを除けば、それぞるの期日内き登録していただければOK!商店街でも商店が小規模のゲームを開催しているのでよかったら参加していってくださいな」

 

 

飛鳥は黒ウサギの発言に片眉をピクリとあげる。

 

 

「………つまり、『ギフトゲーム』とはこの世界の法そのもの、と考えてもいいのかしら?」

 

 

お?と驚く黒ウサギ

 

 

「ふふん?中々鋭いですね。しかしそれは八割正解の二割間違いです。我々の世界でも強盗や窃盗は禁止ですし、金品による物々交換も存在します。ギフトを用いた犯罪などもってのほか!そんな不逞な輩には悉く処罰します―――が、しかし!『ギフトゲーム』の本質は全く逆!一方の勝者だけが全てを手にするシステムです。店頭におかれている商品も、店側が提示したゲームをクリアすればタダで手にすることも可能だということですね。」

 

 

「そう。中々野蛮ね」

 

 

「ごもっとも。しかし、〝主催者〟は全て自己責任でゲームを開催しております。つまり奪われるのが嫌な腰抜けは初めからゲームに参加しなければいいだけの話でございます」

 

 

黒ウサギは一通りの説明を終えたのか、一枚の封書を取り出した。

 

 

「さて。皆さんの召喚を依頼した黒ウサギには、箱庭の世界における全ての質問に答える義務がございます。が、それら全てを語るには少々お時間がかかるでしょう。新たな同士候補である皆さんを何時までも野外に出しておくのは忍びない。ここから先は我らのコミュニティでお話させていただきたいのですが………よろしいです?」

 

 

「待てよ。まだ俺が質問してないだろ」

 

 

静聴していた十六夜が威圧的な声を上げ立つ。ずっと刻まれていた軽薄な笑顔が無くなっていることに気がついた黒ウサギは、構えるように聞き返した。

 

 

「………どういった質問です?ルールですか?ゲームそのものですか?」

 

 

「そんなのはどうでもいい。腹の底からどうでもいいぜ、黒ウサギ。ここでオマエに向かってルールを問いただしたところで何かが変わるわけじゃねぇんだ。世界のルールを変えようとするのは革命家の仕事であって、プレイヤーの仕事じゃねぇ。俺が聞きたいのは………たった一つ、手紙に書いてあったことだけだ」

 

 

十六夜は視線を黒ウサギから外し、他の三人を見まわし、巨大な天幕によって覆われた都市に向ける。

彼は何もかもを見下すような視線で一言、

 

 

「この世界は………面白いか?」

 

 

「―――――」

 

 

他の三人も無言で返事を待つ。

彼らを読んだ手紙にはこう書かれていた。

『家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨てて箱庭に来い』と。

それに見合うだけの催し物があるかどうかこそ、四人にとって一番重要な事だった。

 

 

「―――YES。『ギフトゲーム』は人を超えた者たちだけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白いと、黒ウサギは保証いたします♪」

 

 

 

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