とある問題児の母も来るそうですよ?   作:地獄花

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――第五話――

 

 

 

「なあチビ、一緒に世界の果てに行かねぇか?」

 

 

「うーん…、楽しそうだし行こうかな?」

 

 

「ヤハハ!そう来なくっちゃな!」

 

 

そう言い僕を抱えると第三宇宙速度で駆け出す。

おぉ、かなり早い。というか今更だが黒ウサギに何も言わなかったけど大丈夫なのだろうか?

いや…きっと、気にしたら負けというやつだ。気にしないようにしよう。そう思いつつ身を委ねていると視界が開けてくる。

 

 

「これは中々……」

 

 

思わずそう呟く位には素晴らしい景色だった。だが此処は世界の果てではないようだ。

おや?誰かの別の気配がするような……?

 

 

『人間、試練を選べ』

 

 

「選べ、だぁ?テメェが試せるか俺が試してやるよ……!」

 

 

『舐めるなぁ!!』

 

 

大きい蛇…?いや、蛇神かな。

というかあの蛇神見る目がないなぁ……、人間だからって自分に適うはずがないと思ってるのかな。

あ、殴られて吹き飛ばされてる。弱すぎないかな?あれでも一応神なの…?あまりの弱さに驚いてしまう。

 

 

「おい、手を出すなよ?」

 

 

「わかってるよ、それにもうギフトゲーム始まってる」

 

 

始まってしまえば手を出すことなど不可能だろうと思いながらも断言する。

 

 

 

「この辺りのはず………」

 

 

「あれ、お前黒ウサギか?どうしたんだその髪の色」

 

 

ついに黒ウサギに見つかってしまった。というより髪の色は赤じゃなかったような…?記憶間違いとか見間違いとかそんなんじゃないはず……、ということは何かしらの条件を満たすと髪の色が変わるのかな?

 

 

「もう、一体何処まで来ているんですか!?」

 

 

「「"世界の果て"」」

 

 

やっぱり怒られた、分かっていたけれど。

 

 

「しかしいい脚だな。遊んでいたとはいえこんな短時間で俺に追いつけるとは思わなかった」

 

 

「むっ、当然です。黒ウサギは〝箱庭の貴族〟と謳われる優秀な貴種です。その黒ウサギが」

 

 

アレ?と黒ウサギが首を傾げる。

 

 

「ま、まあ、それはともかく!十六夜さんと碧郁さんが無事で良かったデス。水神のゲームに挑んだと聞いて肝を冷やしましたよ」

 

 

「水神?―――ああ、アレのことか?」

 

 

「もう手遅れだよ?」

 

 

え?と黒ウサギは硬直する。

何せ二人の指差す先にあるのは、川面にうっすらと浮かぶ白くて長いモノだ。黒ウサギが理解する前にその巨体は鎌首を起こし、

 

 

『まだ……まだ終わっていないぞ、小僧ォ!!』

 

 

二人指を差しているそれは_____身の丈三十尺強はある巨軀の大蛇。それが何者か問う必要はないだろう。間違いなくこの一帯を仕切る水神の眷属だ。

 

 

「蛇神…!って、どうやったらこんなに怒られられるんですか十六夜さん!?」

 

 

ケラケラと笑う十六夜は事の顛末を話す。

 

 

「なんか偉そうに『試練を選べ』とかなんとか、上から目線で素敵なこと言ってくれたからよ。俺を試せるのかどうか試させてもらったのさ。結果はまあ、残念な奴だったが」

 

 

「貴様………付け上がるな人間!我がこの程度で倒れるか!!」

 

 

蛇神の甲高い咆哮が響き、牙と瞳を光らせる。巻き上がる風が水柱を上げて立ち昇る。

 

 

「十六夜さん、下がって!」

 

 

黒ウサギは庇おうとするが、。十六夜の鋭い視線はそれを阻む。

 

 

「何を言ってやがる。下がるのはテメェだろうが黒ウサギ。これは俺が売って、奴が買った喧嘩だ。手を出せばお前から潰すぞ」

 

 

本気の殺気が篭った声音だった。黒ウサギも始まってしまったゲームには手出しできないと気づいて歯嚙みする。

十六夜の言葉に蛇神は息を荒くし応える。

 

 

「心意気は買ってやる。それに免じ、この一撃を凌げば貴様の勝利を認めてやる」

 

 

「寝言は寝て言え。喧嘩は勝者が決まって終わるんじゃない。敗者を決めて終わるんだよ」

 

 

求めるまでも無く、勝者は既に決まっている。

その傲慢極まりない台詞に黒ウサギも蛇神も呆れて閉口した。

 

 

「フン―――その戯言が貴様の最後だ!」

 

 

蛇神の雄叫びに応えて嵐のように川の水が巻き上がる。

竜巻のように渦を巻いた水柱は蛇神の丈を遥かに高く舞い上がり、何百トンもの水を吸い上げる。

竜巻く水柱は計三本。それぞれが生き物のように唸り、蛇のように襲いかかる。

この力こそ時に嵐を呼び、時に生態系さえ崩す、"神格"のギフトを持つ者の力だった。

 

 

「十六夜さん!」

 

 

黒ウサギが叫ぶ。しかしもう遅い。

竜巻く水柱は川辺を抉り、木々を捻じ切り、十六夜の体を激流に飲み込む―――!

 

 

「―――ハッ―――しゃらくせぇ!!」

 

 

突如発生した、嵐を超える暴力の渦。

十六夜は竜巻く激流の中、ただ腕の一振りで風を薙ぎ払ったのだ。

 

 

「嘘!?」

 

 

「馬鹿な!?」

 

 

驚愕する二つの声。それはもはや人智を遥かに超越した力である。蛇神は全霊の一撃を弾かれ放心するが、十六夜はそれを見逃さなかった。獰猛な笑いと共に着地した十六夜は、

 

 

「ま、中々だったぜオマエ」

 

 

大地を踏み砕くような爆音。胸元に飛び込んだ十六夜の蹴りは蛇神の胴体を打ち、蛇神の巨軀は空中に高く打ち上げられて川に落下した。その衝撃で川が氾濫し、水で森が浸水する。

また全身を濡らした十六夜はバツが悪そうに川辺に戻った。

 

 

「くそ、今日はよく濡れる日だ。クリーニング代ぐらいは出るんだよな黒ウサギ」

 

 

冗談めかした十六夜の声は黒ウサギに届かない。

どうやら放心しているようだ、というより考え事の方が近いかな……?

 

 

「十六夜、僕は寝る。聞きたいことがあるんでしょう?興味ないから聞く気は無いけど……。飽きたらすぐにやめるから何処に行っても同じだし。というわけでおやすみ」

 

 

それに十六夜には服を貸してくれた礼がある、だからとりあえずは十六夜に恩返しをしないといけないため同じ所に入るつもりだ。手伝うかどうかも気分次第、ということにしておこう。

自分の中で意見がまとまればそのまま眠ってしまった、置いていかれたらどうしようとも思ったが誰かが運んでくれるだろうと深く考えるのをやめた。

 

 

 

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