そして伊織ちゃんの雰囲気やら口調やらがわからないorz
まあ、本編から何年も経っているので、感じが変わってしまった(主に赤い人のせい)ってことでよろしくお願いします。
001 休日の過ごし方 壱
一週間ぶりが久しぶりなのかは知らないが、久しぶりに家に帰ってきた。のは良いとして、
「人識兄はなんでここに?まだアメリカじゃあ……」
「あれ、手紙見てねえの?やっと解放されたから伊織と二人で飯食いに行くって書いたはずなんだけど」
「………」
無言で郵便受けをあさる。一週間分の郵便物の中に、その手紙はあった。どうやら政府の『保護』のせいで手紙を受け取れなかったらしい。
「すまん人識兄。文句は俺の保護を名目に学園に軟禁していた政府に言ってくれ」
「ん、まあいいか。とりあえず中に入れてくれよ。空港からこっち何にも食べてないから腹が減ったぜ」
「冷蔵庫の中身、まだ大丈夫だといいんだけどな」
冷蔵庫の中身は大丈夫だとしても、タイマーをセットしてあった炊飯器の中はやばいことになっているのが目に見えている。ドアを開けた途端に漂ってきた、生ごみを放置し続けたときの匂いがそれを証明してくれている。
「くせぇな、おい」
「とりあえず人識兄も換気手伝ってくれ。臭いの染み付いたものの処理も考えないと」
玄関で靴を脱ぐ前からこんな調子で、一日の大半が消臭に費やされることとなった。
◆◇◆◇
人識君に置いて行かれた。いや、電車がでる直前に駅弁を買いに行った私が悪いのだけれども、それでも言いたい。
「なんで待っていてくれなかったんですか」
とりあえず、次の電車までの時間を見る。片識君のいる街まで行くための乗り継ぎは意外と複雑だ。
「って、さっきのを逃したら後一時間は乗り継ぎができない!?どれだけ不便なんですかっ!!もういいです。やけ食いしながら待ってやります!?」
駅のホームに備え付けられた長椅子にドカっと座り、駅弁の包装を乱暴に破る。ふたを開けると、表面積の実に半分を占める味ごはんと、艶やかに光る赤く茹で上がった海老が目に飛び込んできた。
「超おいしそうです。さすが1500円もしただけありますっ」
割り箸を手に取り、煮物の筍から食べ始める。シャキシャキした歯応えと共に、煮汁が口の中にあふれ出した……
◆◇◆◇
一夏がいない。朝起きた時には既にベッドは空だった。朝稽古から戻っても、帰ってくる様子はない。
「ふむ、明後日の模擬戦のために一緒に鍛錬しようと思ったのだがな」
まあ、いないのなら仕方がない。時計を見ると、丁度食堂が開くころだった。とりあえず朝食にしよう。
「しかし、朝食も食べずにあいつはいったいどこへ行ったんだ」
休日の朝ということもあり、食堂の人影はまばらだった。券売機で和風朝食の食券を手に入れる。今日の献立はご飯に味噌汁とめざしとたくあんか。たくあんは食堂のおばちゃんの手作りで、かなりいい塩梅となっていてご飯によく合う。
「あ~ふぃふぉふぉんふぁ」
「本音、口に物を入れたまましゃべらないの」
お盆を受け取って席に着こうとしたところで、着ぐるみに話しかけられた。のほほんさんの着ぐるみ、ということで一年生寮の名物になりかけている。しかし、口いっぱいに物を詰め込んで食べるのはいかがなものか。ごっきゅん、と聞こえそうなほどの呑み込み方をして、布仏本音が口を開く。
「しののんおはよ~。朝早いんだねぇ」
「朝稽古をするからな。私も布仏さんが休日のこんな時間に起きている事に驚いている」
「本音、この人は、誰?」
ふむ、私も気になっていたところだ。見覚えのある水色の髪だが、名前は知らない。
「ん~、しののんはしののんだよ~。クラスメイト~」
「そう。私は更識簪、よろしく」
「私は篠ノ乃箒だ。よろしく頼む」
自己紹介を終えると、更識さんはじっとこちらを見つめてきた。
「ふむ、私の顔に何かついているのか?」
「いえ、あなたが篠ノ乃博士の妹なのかと思って…」
「姉さんのことは何も知らないぞ?」
とりあえず、先にそう言っておく。自己紹介をするたびに相手が姉さんのことを持ち出してくるのはどうにかならないのだろうか。
「そう、あなたもお姉さんで苦労しているのね」
「かんちゃんのお姉さんは生徒会長さんなんだよ~」
ああ、それで髪の毛に見覚えがあったのか。
「更識さんも苦労しているのか?」
「私は…」
◆◇◆◇
「で、本当のところは?」
「何がだ?」
換気と掃除が一段落した後、生きていた食材で軽い食事を作り、聞きたかった事を聞く。
「人識兄がここに来た理由」
「ああ、そうだったそうだった」
そういいながら人識兄は一冊の手帳を取り出した。
「これ、お前にやるよ。進学祝いだ」
「ありが、とう?なんだこれ…」
手渡されたのはB6ぐらいの大きさの黒い手帳だった。よくあるゴムヒモで閉じておけるタイプの、人工革で装丁された見るからに安物の手帳。
「先に言っておくと、中身が重要だからな。とある教師の書いた技術書、みたいなもんだ」
俺の怪訝な表情をみて、人識兄はそう付け足した。
「ありがとう。後で読んでみるよ」
「おう、そうしとけ」
その後は、とりあえず片づけただけの家の中の本格的な消臭をしていたら日が暮れていた。外泊届けを出しておいてよかった。ところで、舞織姉はいったいどこに行ったんだ?
◆◇◆◇
溜まったフラストレーションを腕に込める。その手を振りぬくと、食べ終わった駅弁の包みは弧を描いてゴミ箱に吸い込まれていった。
「ナイッシュー」
いきなり声をかけられた。振り返ると、金髪で大柄な男が立っていた。
「上手いもんだな。なんかスポーツやってる人か?」
「やってませんよ?」
その男の着ている真っ赤なジャンパーが、
「そう身構えんなよ。別にナンパしようってわけじゃねえんだ。連れに置いてかれちまってよ」
「はあ、私も似たようなもんですけど…」
ほとんどいきなり現れた男の気配に、つい
「暇だったから声をかけちまっただけさ。っと、そろそろ電車が来るな」
男は手に持っていたコーヒーの缶をすっ、と投げる。手から離れたそれは、吸い込まれるように自販機の横のゴミ箱の丸い穴に飲み込まれた。
「私より上手いじゃないですか」
「そうでもないさ」
そう言い残して彼はやってきた電車に乗っていってしまった。あと三十分、どう過ごそうか…
遅くなりましたm(_ _)m
土曜日編です。
日曜日編も書くつもりですが、とばして月曜日の代表決定戦に行くかも。