SAOif 紅の戦姫と蒼の聖女   作:百合好きの獣

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新年明けましておめでとうございます。

これからも本作を宜しくお願いします


月夜の黒猫団3

◇Side アリス

 

 

 

 私達がマイホームを買ってから数日が経った。眺めもいいし、お風呂もあるし。コハルが作ってくれるご飯は美味しいしで、この家を買って本当によかった……のだけど。

 

 最近、コハルの様子がおかしい。

 

 おかしいというか、何かを隠してる……そんな感じ。

 

 この前、サチと二人で話していたのを見かけたので話しかけたのだけど

 

「サチ、コハル。何の話してるの?」

「あっアリス!? べ、別になんでも!なんでもないよ!」

 

 用事思い出したから行くね! と、コハルは走ってどこかへ行ってしまった。

 

「……サチ」

「あはは……ごめんね? 私からは、言えないんだ」

 

 サチだけじゃなく、アスナやキリト、リズなんかとも同じような話をしてるらしく、同じ様にコハルには逃げられ相手は「自分からは話せない」の一点張り。

 

 たまに夜中に起き出してはどこかに行ってるみたいだし。

 

 別に秘密があること自体が不審なわけじゃない。誰だって隠し事の一つ二つはあるし、私だってコハルに言えない、言ってないことがある。今更隠し事されたくらいで怒る程、浅い付き合いじゃない。

 

 じゃあ、何がおかしいのかって言うと、隠し事をしていること自体を秘密にしようとしてること。

 

 コハルは、私を驚かそうとか、今は言えないようなこととかは絶対「ごめんね、今は秘密なんだ」と秘密にしていることを明らかにする。

 

 それが、今回は一貫して私には知られないよう立ち回っている。

 

 私には、相談出来ないのかな。……そんなに、頼り無いのかな。

 

 ちくりと、胸が痛む。

 

 確かに私はキリトみたいに強くないし、ゲームの情報にも疎い。アスナみたいに頭が良くなければ、リズみたいに何かを作れるわけじゃない。

 

 でも、それでも。コハルの隣にずっといたのは、私だったはずなのに。

 

 胸の中に黒い感情が生まれる。キリトにアスナ、サチやリズ。皆大切な友人で、仲間なのに。嫌な気分になる。不愉快な気持ちがふつふつと湧き上がった。

 

 もやもやとした気持ちを隠したまま、そんな生活から数週間が経った。

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、行ってくるね」

「気をつけてね? 無茶しないでね?」

「いや、ただ家を買うだけでそんな心配しなくても……」

 

 月夜の黒猫団の皆に指導を始めてもうすぐ一ヶ月が経つ。結局ただの指導だけじゃなくて、装備の調達や強化、メンバーのレベル上げ等色々と手伝っていたら思いのほか長い間共に行動するようになっていた。

 

 そして今日、コツコツとクエスト等で貯めていたコルがついに目標額に到達し、リーダーのケイタがギルドハウスを買いに出かけることになった。

ちなみに私はケイタの護衛。少し上の層にギルドハウスを買いに行くらしく、そこまでの道中万が一が無いように着いていく。

 

 コハルはここに残って、ホームを買った事でかなり苦しくなるだろうコルを稼ぎに他のメンバーと狩りに行くそうだ。

 

 心配そうに転移碑の前まで見送りに来たコハルに苦笑しながら、ケイタと共に目的の街へと転移した。

 

 

 

 

 

 

「あの、アリスさん。つかぬ事をお伺いしますが……」

 

 道中全く問題なく目的のギルドハウスを購入し、落ち合う約束をしている時間までまだ少しあり、その間軽くお茶でもしていこうかと言う事で立ち寄ったNPC経営の喫茶店。

そこで席に着いて談笑していると、突然ケイタが恐る恐る話しかけてきた。

 

「ん? どうしたの?」

 

 今更そんなに畏まる間柄でもないだろうに、ケイタはおずおずと、えっと、とか、あのと口ごもっている。

やがて意を決したのか、あの!と一度大きな声を出してから切り出してきた。

 

「……アリスさんは、その、好きな人って居るんですか」

 

 好きな人? まあ、多くはないけどそれなりには……

 

「えっと、コハルでしょ? キリトにアスナ。クラインリズエギル……サチと、あ、ケイタも好きだよ?」

「い、いえ、そうではなく……その、恋人的な意味で」

 

 うん? 恋人的な意味かぁ……難しいなぁ……。恋人って言っても私そんな人いた事な ――恋人!?

 

「ないよ! ないないない!!」

「そうですか……よかった」

 

 ソードスキルもかくやと、思いっきりブンブンと首を振ること十六連撃。

 

 恋人ってあれでしょ!? 手をつないだり、イチャイチャしたり、ちゅ、ちゅーしたりするおとぎ話の中の……ってそういえば、システム的には私とコハルは恋人関係だったっけ……。いやいやいや! 女の子同士だから! そりゃコハルは可愛いし、美人だし、いいお嫁さんにっていうか……あれ、私前にコハルに結婚するとかって……だから違うって!!

 

 ……な、なんの話してたんだっけ……!?!?

 

 私が一人でぐるぐると、あっちこっちに思考をどっかんどっかん旅立たせ勝手に混乱していると、そこに追い討ちをかけてきたのはそもそもの元凶たるケイタ。

 

「じゃ、じゃあ! アリスさん! 俺と付き合って下さい!」

「つ、付き合うってどこに……!?」

 

 こっちは思考が纏まらなくて大変だってのに、呑気に遊びになんて行けないよ!

 

 …………ケイタくんケイタくん。なんだねその、信じられないようなものを見たような顔は。「嘘だろ……そんな台詞をリアルで聞くとは思わなかったぞ……」って、どういう事だい!? それはリアルファンタジー世界の住人ことコハルに言ってあげて!!!

 

「は、はは……。なんかわたわたしてるアリスさんを見たら落ち着きましたよ」

「し、失礼な! もう……!」

 

 あわてふためく私を見てケイタは落ち着いた様だった。

 

 私もよく照れてばたばたするコハルを見て落ち着いたり和むことがあるけど、これやられるとずいぶん腹立つな……!

 

 一頻りくすくすと笑った後、一度深呼吸を挟んでから真剣な表情になり、ケイタはとんでもない事を言い出した。

 

「アリスさん。あなたが好きです。僕の恋人になってくれませんか」

 

――時が、止まった。

 

 ……。

 ………………?

 ……………………!?

 

「ふぇっ!? へっ!?」

「一目見たときから、ずっと気になってました。俺達に協力してくれるようになって、一緒に行動する内にどんどんその思いが強くなって……確信しました。これは、恋なんだって」

 

 待って。待って待って。待ってください。

 

 この人は何を言ってるんだ?わ、私に?恋人になって欲しいって??

 

「だ、誰かと間違えてませんか……?」

「なんで敬語に……。いえ、私が好きなのは貴女です。アリスさん」

 

 いやだってそんなはずは。

 

「だって私地味だし……」

「そんなことないです。十分以上に可愛らしいと思います」

「チビだし……」

「女性らしくていいと思います」

「それにコミュ障だし……」

「硬派な印象でとても好感が持てます」

 

 だ、だめだ……全部返されてしまった……。

 

「ほ、本当に私なの……? コハルとかじゃなくて……」

「はい。アリスさん、貴女です」

 

 彼の顔は真剣そのもので、私の返事をただ静かに待っている。

 

 すぅ、はぁ、と一度大きく深呼吸をして、少し気持ちを落ち着けた。……まだ、顔がかっかしてるけど。

 

 うん。誤魔化すのはだめだ。こんな私を好きだと言ってくれてる彼に対して失礼だ。私も真剣に答えなければ。

 

 沈黙すること数分。幾許かの葛藤の後、私は覚悟を決めて彼の告白に対する返事をする。

 

「……ごめん。こんな私なんかを好きだって言ってくれて本当に嬉しいんだけど……恋人とかそういうの、全然考えられなくて……」

 

 嘘じゃない。

 

 彼の気持ちは本当に嬉しい。

 

 リアルでこうして好意を向けられたことなんて、本当に数えられる程しかなくて、その殆んどは家族からのもので、そういった繋がりの無い人から、そういう言葉を貰うことに全くといっていいほど慣れていない。

 

 彼の……ケイタの事は嫌いじゃない。付き合いは一月足らずだが、その為人を少しは理解してきたつもりだ。

 

 メンバーに対して一人一人相談に乗ったり、こうして私達に恥を忍んで指導を頼んだり。

優しい人だな……と、少なからず好感を持っていた。

 

 だけど……

 

「私には、恋とか……愛とかよくわからなくて……だから、ごめんなさい」

 

 人を愛する、とか恋をする、とか。そういった感情が私にはまだ分からない。こうしてあやふやなままでケイタと恋人関係になっても、彼に失礼だし、何よりも私が納得できない。

 

 だから、断った。真剣に考えて、ケイタの目をまっすぐに見て。

 

「そう……ですか」

 

 私の返事を聞いてケイタはがっくりと肩を落とした。が、数瞬の沈黙の後、胸のつっかえがとれたような、晴れやかな表情で顔を上げる。

 

「いやまあ、最初から玉砕覚悟ではあったんです。アリスさんに俺なんかが釣りあうわけないって」

「いやいやいや! そんな風に卑下しないで! ケイタは十分素敵だよ! むしろ私の方が釣り合わないっていうか……」

「何言ってるんですか、アリスさん。逆ですよ逆。俺が釣り合わないんですって」

「いやいや私が」

「いやいや俺が」

 

 ぷっ、と。お互い自分を卑下しあう合戦を繰り返すとなんだかおかしくなってきて、どちらからともなく笑い合った。

 

「というか、本当に好きな人いないんですか? ……あ、ライクじゃなくてラブの方なんですけど」

「分かってるよ、もう。 ――さっきも言ったけど、好きっていうのが曖昧でさ。そういう意味で……って言われると、よくわかんないっていうのが本音かな」

「そうなんですか……てっきり、コハルさん辺りがそうなんじゃないかって踏んでたんですけど」

 

 その意味でも玉砕覚悟でした――なんて笑いながらケイタは頭を掻いている。

 

「あはは、何それ。私がコハルを? 女の子同士じゃん」

「俺は別に構わない――むしろアリだと思ってます」

 

 そう言うと、ケイタは興奮したように急にずいっと迫ってきた。な、なにさ急に!

 

「というか、好きになった手前、他の男とくっつかれるよりコハルさんとくっついてくれた方が俺としては喜ばしいです」

 

 で、どうなんですかと尚も迫り来るケイタを、どうどうと落ち着かせながら考えてみる。

 

 コハル、コハルかぁ……。確かに、一緒に居ると安心するし、守ってあげたくなるし、楽しいし、たまにドキドキさせられるし――あれ?

 

「あのさ、ケイタ……好きになるって、どんな気持ち?」

「――すごいこと聞いてきますね」

 

 私の疑問に彼は一瞬、何言ってんだこいつ……みたいな表情になったものの、直ぐに真剣な表情で考え始めてくれた。

 

「うーん……人を好きになるって理屈じゃないんですよ。ふとした瞬間、あ、これは恋だな……って分かるっていうか、自然と理解するっていうか」

 

 そういえば、何かの本で見た事ある気がする。恋に落ちるのは突然で一瞬だって。

 

「まあ、俺も初恋なんで良く分かってないんですけど」

「えっ!! ……ごめん」

「いやいや、謝らないでください。さっき言った通り玉砕覚悟でしたし……これからも仲良くしてくれれば、俺はそれで」

 

 彼の初恋を、考えた結果とはいえ無下にしてしまったことに罪悪感を感じて謝ると、彼はそういって握手を求めてきた。

 

 本当に出来た人だな……まだ恋がどういったものか分からないけど、私だったら振られて直ぐにこういう対応は出来ないとおもう。きっと、ずっと引きずってしまうだろう。

 

「うん、これからもよろしく」

 

 差し出された手を握り返し、私たちはその後もいくつか話をしながら皆が待っているだろうホームタウンへと帰っていった。

 

 

 

◇ Side コハル

 

 

 

「ただいまー」

「おかえりアリス! どうだった?」

 

 十一層にある宿屋の一室。いまかいまかとアリスとケイタさんをそわそわしながら待っていると、そんな言葉と共に扉を開けて二人が入ってきた。

 

「もちろん、買ってきたよ」

「アリスさんのお陰で当初考えてたのよりだいぶいい物件が買えたよ」

「いや、ケイタが上手く値切ったからだよ」

 そう言いながらニコニコとした様子で二人はお互いを褒め合っている。――あれ?なんだかずいぶんと仲良くなってる?

何があったんだろう……少し、心がもやっとする。

 

「ねえアリ――「リーダー! これ! これを見てくれ!」

 

 私がアリスを問いただそうとするのに割り込む形でダッカーさんがずいと前に出てウィンドウを開いた。

 

「うん? ……こ、これは!」

 

 他人にも見えるように表示されたウィンドウには、ずらりと並ぶレアアイテムと大量のコル。驚いた顔で固まるケイタさんとアリスに、ダッカーさん達はは誇らしげに入手の経緯を話し始めた

 

「二人が帰ってくるまでコルを稼いで置こうと思って迷宮区に探索にいったんだけどさ、そこで宝箱を見つけて」

「ダッカーが急いで開けようとしたんだけどね? コハルが罠かもしれないって言って止めて、それで十分装備を整えて、何があっても対応できる万全の状態で宝箱を開けたの」

「そしたらいきなりアラームが鳴ってさ、次々モンスターが現れて……でも事前に罠があるかもしれないって予想してたから、落ち着いて陣形組んで、まずはモンスターを呼び集める宝箱を破壊して、集まったモンスターを全員で倒したんだ」

 

 上から、ダッカー、サチ、ササマルの順で口々にあのときの事を振り返る。

 

 苦戦はしたが、全員レベルは安全圏だった上に冷静に対処することが出来たので集まったモンスターを倒しつくすことが出来た。その結果、大量のレアアイテムとコルを取得して、こうしてほくほく顔で帰ってこれたのだ。

 

「あの時のコハルさん、まじカッコ良かったよな。さすが最前線のプレイヤーって感じでさ」

「自分も戦いながら常に俺たちの行動を見て指示を出してくれてさ。ほんと、安心感がどこかのリーダーとは大違いだったよ」

 

 肩を竦めたテツオさんに、ケイタさんが「何だとこの!」と笑いながら肩を叩く。その光景を見て皆で笑いあった。

 

「……コハル」

「アリス! どうかな、私、少しは成長したかな?」

 

 ……アリスは、褒めてくれるかな。これまでずっとアリスにくっついてるだけの私だったけれど、こうして一人でも活躍することが出来て。誰かに頼りにしてもらえるようにまでなって。

 

 頑張ったねって、成長したね……って。

 

「そうだね、コハルは十分成長したよ」

 

 私が待ち望んでいた言葉は

 

「もう、私なんか必要ないくらいに」

「――え?」

 

 驚くほど冷たい口調で、告げられた。

 

 

 

 皆、コハルの事をよろしくね……。さよなら――。

 

 そう言ってアリスは部屋を飛び出した。

 

 部屋はシン、と静まり返り、誰もが何が起きたのか分からないといった顔で固まっている。

 

 私はただ呆然と

『アリスとのパーティが解散されました』

 という無機質なシステムメッセージを見つめ続けることしか出来なかった――




新年早々暗い話でごめんなさい。

あとケイタくん、アニメや原作で描写されてないからって勝手に百合属性を加えてごめんよ……

原作との相違点ですが、IFということでご容赦下さい……

例:サチが片手剣転向しようとしない。ダッカーが片手剣使いで前衛化等。

クリスマスクエストに関しては、うろ覚えでアニメ見ながら書いてて、その後SAO原作本見たらとんでもない違いに気づきましたがこの世界線ではそういう扱いになっているということで……(いい落とし所があれば修正します)
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