SAOif 紅の戦姫と蒼の聖女   作:百合好きの獣

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二話連続投稿です。

この前晴れ着ガチャでやっとコハルと主人公に晴れ着を着せることが出来ました。

その代わり、私のお財布から諭吉さんが二人居なくなりました。

新年早々お金を使ったんだから、早く新層解放してよね……!(ツンデレ)



月夜の黒猫団4

◇Side アリス

 

 

 

――はっ、はっ、と息を切らせながらフィールドを疾駆する。

 

 もう、どれくらい走っただろうか。

 

 帰ってきた時は陽が傾く程度だった夕焼け空が、陽も完全に落ち辺りは闇に包まれている。

 

 どこをどう走ったとか、既に覚えていない。ただ胸の内側から爆発しそうなほど膨れ上がった感情に任せ、突き動かされるようにしてひたすらに走る。

 

「……はぁ、はぁ……。うっ……」

 

 やがてスタミナが切れ、一本の大きな木の元に崩れるようにしてへたり込む。

 

 気持ち悪い……。

 

「うぷっ……」

 

 急激に吐き気がこみ上げてきて、胃から何かが逆流するような感覚を覚えるが、嘔吐することはゲームシステムに組み込まれておらず、ただえずく事だけしかできなかった。

 

 コハルたちの待つ宿屋へ帰り、彼らがどんな冒険をしたのか聞かされたとき、足元が崩れるような感覚がした。

 

 彼らと共に笑いあうコハルの姿はとても自然で、まるで、そこが本当の居場所のようで……。

 

 元々、期限付きのコンビだったはずだ。コハルが一人立ちできるまで、その時までの。

 

 今がその時だけだったというだけ。私はもうコハルには必要ない。必要なのは、共に笑い分かち合う仲間達……月夜の黒猫団のような、そんな仲間が。

 

「はぁ……はぁ……うっ……く……」

 

 あの時、あの部屋で。気づいた、気づいてしまった。

 

 黒猫団の皆に囲まれて笑っている彼女を見て、私は――

 

 堪えようの無い、どす黒い嫉妬の感情が自分の内で渦巻いている事に。

 

 その場所は、私の物なのに。彼女の隣に居るのは、私であるべきなのに――。

 

 この感情が、どこから来るのか分からない。けど、そんな醜い独占欲に塗れた人間が、果たして彼女の隣に立ち続けていいだろうか。

 

 答えは否。断じて否だ。彼女の才能は、人を助け導く才能は、こんな汚い人間の隣にあるべきじゃない。

 

 そう判断したからこそ、私は彼女とのパーティーを解散して飛び出した。

 

 これでいい、これでいいはずだ。私の判断は間違ってない。これで彼女は縛られることなくその才を伸ばし、黒猫団と一緒に……未だ発足したばかりのギルドだけど、その類稀なるチームワークと団結力でいつしか最前線へと名を連ね、閉塞的な攻略組達の雰囲気をぶち壊してくれる。そしてそれは、きっと、このゲームをクリアに導く一手となるはず。

 

 だから、これでよかった――はず、なのに

 

「なんで……なんで……っ!! 涙が止まらないの……!!!」

 

 コハルとの日常が、一緒に狩りをしたことや、同じベッドで寝た事、手を繋ぎながら街を歩き回ったこと。更には一番最初の、ベータテストの時に出会ったこと。

 

 彼女と過ごした数々の思い出が、走馬灯のように脳裏に焼き付いては流れていく。

 

(あぁ……そうか)

 

 ここにきて、ようやく。遅すぎるぐらいに、今更。私は気づいた。

 

 彼女と一緒に居て楽しかったのは、安心したのは、ドキドキしたのは全部……

 

(私、コハルに恋……してたんだ)

 

 本当に、ケイタの言うとおりだ。

 

 恋っていうのは突然で、恋に『落ちる』だなんて良く言ったものだ。今更になってようやく気づく事が出来た。コハルに抱いていたこの感情は、ただのパートナーとして、友人としての感情なんかじゃなくて……

 

(――初恋、だったんだ)

 

 この事実に気づいてしまった今、戻るつもりも無いが、コハルの隣に居る事は決して出来なくなった。

 

 自身が女性であるからこその、異常。同性であるコハルに恋愛感情を持つことなど。

 

 隠し通せるならまだしも、ふとした拍子にこれがバレてしまったら……その先に待つのは地獄だ。

 

 この閉塞的なゲームで、逃げられる場所などあろうはずもなく、私と……そしてその相手であるコハルの醜聞が広まってしまう。それだけは絶対に避けなければならない。

 

「うっ……ぐすっ……ひっく……」

 

 だから、お別れ。明日からは、またベータの時と同じ、ソロプレイヤーになる。それに、他の友人達とも会うことは出来なくなる。私の友人は大抵、コハルの友人でもあるのだから。そういう意味では、むしろベータの時よりも酷い、本当の孤独に。

 

 さよなら……コハル。さよなら――私の初恋。

 

 

「うあああああああああああああああああああああああっ!!!!」

 

 

 

 

 

 

――どうやら最近、ある都市伝説がながれているらしい。

 

 あちこちの狩場に現れる、茶色いフードを目深に被ったソロプレイヤーの噂だ。

 

 曰く、常軌を逸した戦闘スタイルだとか、目撃情報の装備武器が毎回違うとか。狩りが終わった後、こっそり後をつけても煙のように消えてしまうだとか。違う場所に同時に出現しただとか、そんなくだらない噂。

 

 まあ、どうでもいい。私には関係ない話だ。

 

 あの日、コハルとパーティを解散した翌日から、私は狂ったようにレベル上げに邁進していた。日中は人気の無い狩場で狩り、深夜人が居なくなる頃を見計らって高効率の狩場で狩り、人が来始めたらそそくさと毎日違う宿屋で数時間寝てはまた別の狩場へと向かう。

 

 そんな生活をもう半年近く続けている。お陰でレベルはどんどん上がっていくし、武器の熟練度も今は三つほどカンストできた。

 

 ただ強くなるためだけに行っているソレは、一体何のために行っているのだろうか。

幾度と無く、自問した。最前線に出ることが出来ない今、レベルを上げ強くなることに如何程の意味があろうか。強くなれば、また彼女の隣に立てると……そんなありもしない未来に、女々しくもすがり付いてるのか。

 

(そんな事……ありえっこないのに)

 

 私がいくら強くなったところで、半年経った今でも色あせることなく燻るこの恋心がある限り、彼女の隣に立つ事など永遠に来ないのだ。

 

 私は剣を、槍を、斧を。持てる全てをもって戦い続ける。煩悩を振り払うかのように。こうしていれば、戦っている間は余計な事を考えないで済むから。

「……っああああああああああ!!!」

 

 迷いを断ち切るように、悲鳴にも似た咆哮を上げ、新たにリポップしたモンスターの群れへと突っ込んでいった――

 

 

 

 

 

 

「……はぁ、はぁ……。しぶといなぁ……」

 

 《背教者ニコラス》との死闘は一時間程も続いた。私は持っていた回復アイテムを全て使い切り、HPゲージもレッドゾーン。武器も無理な受け方をしたせいで何本か壊してしまった。

 

 だが、満身創痍なのはあちらも同じ。《背教者ニコラス》の残りHPは残り一本を僅か数センチの所まで減らしており、あと僅か。次に攻撃をクリーンヒットさせることが出来れば倒せるだろう。

 

 決着の時は近い。

 

 一瞬の視線の交錯。仕掛けてきたのはニコラスだった。

 

 大上段からの斧の振り下ろし。その巨大なリーチから考えられないほどの速度で私を叩き潰さんと迫るソレを、軌道を見切って僅かに身体を捩る事で避ける。

 

 地面に突き刺さり、ゴウッという衝撃が降り積もった雪を撒き散らす。その衝撃を利用して飛び上がり、柄の中程に着地、すぐさまニコラスの顔に目掛け弾丸のように一直線に跳躍。推進力をそのままにソードスキルを放った。

 

 両手斧単発技《ワールウィンド》

 

 薄緑色の閃光と共に、渾身のソードスキルがニコラスの顔にクリーンヒットした。やったか――いや、あとほんの1ドット残っている。倒しきれなかった!!

 

 ニコラスはその巨体を後方へとゆっくり傾け始め、私も反動でまっすぐ進む力を失い、少しの間滞空している。

ここから、どう追撃をするか……

 

――その時。

 

「――アリス!!!!」

 

 ……この、声は。

 

 振り向かなくても、視線を向けなくても分かる。

 

 半年前、誰よりも聞いた声。そして半年間、誰よりも聞きたかった声。

 

 なんで、ここに……

 

 迷いは一瞬。直ぐさま思考を戦闘へと切り替える。

 

 私は技を放ち、技後硬直で動けなくなる前に素早く片手剣に持ち変えた。

 

 ワールウィンドを放った慣性で、空中で回転する身体をそのままに、僅かに武器を持った右手を引くとスキルが立ち上がる感覚。

 

 片手剣突進技《ヴォーパル・ストライク》

 

 闇夜を切り裂く血色の閃光が、ニコラスの額へと吸い込まれる。

 

 そして――

 

 ずずぅん、という音と共にフラグMOB《背教者ニコラス》は地へと沈んだ

 

「……アリス!!!!」

 

 ……勝った。

 

 そんな勝利の余韻に浸る暇も無く、先ほどの声の主――コハルが私に駆け寄り、そして抱きついてきた。

 

「……コハル」

 

 なんで、ここに。

 

 良く見ると、周りにはキリト、アスナ、クライン、そして黒猫団の全員が居る。

 

 なぜ?なんで場所がばれた?

 

 こんな、噂でしか、しかも殆ど信じられてないようなクエストに……。

 

「やっと……やっと、会えた……」

 

 私に縋り着く様にして抱きしめるコハルを、私は突き飛ばすことが出来なかった。いくら頭で否定しようとも、一度恋心が芽生えてしまったのだ。意中の人にこうして抱きしめられ、それを突き放すことは私には出来なかった。

 

――ちりっ

 

 一瞬の違和感。脳裏を何かが掠めて行った様な、本当に微かな、いやな予感。

 

 ちらと視線を横に向けると、そこには横たわったままピクリとも動かない《背教者ニコラス》の姿が――

 

 待て、()()()()()()()

 

 倒したのなら、ポリゴン片となって消えるはず。消えない理由は一つ。あいつは、まだ……

 

 ギョロリ。

 

 閉じられていたニコラスの瞳が、こちらを射抜く。瞬間、殺気。狙いは――コハル!?

 

「コハル!!!」

 

 抱きついていたコハルを、力任せに引き剥がし突き飛ばす。そして――

 

「……ぁ……」

 

 ずん、と胸を貫く感覚。キュゥーンという無機質な、無慈悲なSEが私のHPバーを減らし、そして――

 

「……ごめんね、コハル」

 

 最後の数ドットまで空になり、私の意識はそこで途切れた。

 

 

 

 

 




曲を聴聞きながら、脳内で自分の作品のキャラで勝手にOPを作ったりしてます。

原作が違いますが『This Game』とか、あとアニメSAOのOPだと『courage』とか。映画の主題歌の『Catch The Moment』を聞きながら妄想してます。

気持ち悪いですねほんとに……
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