SAOif 紅の戦姫と蒼の聖女   作:百合好きの獣

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お昼ごろ、UAが何かめっちゃ増えてる……?と思ったらぐんぐんアクセスが伸びていってお気に入りもガンガン増えていって「なにこれ!?」「なにこれ!?」と慌てふためいてました。

お陰様で日間ランキング13……前書き書いてる間に12位になってました。

本当にありがとうございます。が、増え続けるアクセスとお気に入りの中この話を投稿するのはものすごく勇気がいりますよ……!!

※この話は直接的な女性同士の恋愛描写があります。今まで以上に閲覧にはご注意ください。
また、『メアリー・スー』的展開に嫌悪感を抱かれる方は更にご注意ください。


月夜の黒猫団5

◇Side コハル

 

「……ぇ……?」

 

 目の前で、一体何が起きているのか分からなかった。

 

 否、理解するのを、無意識に拒んでいた。

 

 半年間必死に探し続け、偶然の産物とはいえ、やっとの思いで会えたアリス。久々に会った彼女はデータの世界だというのに心なしかやつれて見え、感情が昂ぶり思わず抱きついてしまった。

 

 やっと会えた……会いたかった、ずっと、ずっと……。

 

 彼女がなぜ急に飛び出していったのか、その理由は分からない。だけど、私はただアリスに会いたかった。ずっと言えなかった私の想いを、アリスに伝えたかった。

 

 その結果、私はアリスに嫌われてしまうかもしれない。半年前の私はそう考えて、どうしたらいいかとアスナやサチさんに相談したりしながら先へ先へと伸ばしていただけ。

 

 でもアリスが突然居なくなって、想いを伝えることが出来なくなった事でその考えは百八十度変わった。

 

――私はアリスが好きだ。友達としてじゃなく……一人の女の子として。

 

 その事をアスナ達に相談すると、最初は驚いたようだったけど、すぐに真剣に相談に乗ってくれた。

 

 自分でも異常だと思う。女の子同士で、恋愛感情なんて。好きになったのはアリスが初めてで、普通の恋なんてしたことがないけれど、これが普通じゃないってことだけは分かる。世間一般の色恋からズレてるってことは、分かってる。

 

 それでも、好きなんだ。

――きっかけは分からない。けど、一番最初。たぶん、出会った時から私は彼女に恋をしていた(もっとも、出会った時彼女の事を男性だと思っていたのだけど)

 

 

 アスナ達に相談した結果、想いを伝えるしかないということになったのだけど、彼女に嫌われることが怖くて結局、彼女が居なくなるその時まで言えなかった。

 

 その事を半年間、毎晩のように後悔した。アリスが隣に居ることは私にとって当たり前の事で、居なくなるなんて、考えもしなかった。

 

 だから絶対見つけ出して、何で居なくなったのか問いただして、そして――想いを伝える。

 

 アリスは本気で隠れていたようで、見つけ出すのに半年もかかっちゃったけど(あのアルゴさんの情報網にも引っかからないのだ)ようやく会えた――はずなのに。

 

「……ごめんね、コハル」

 

――さよなら。

 

彼女はまた、どこかへ居なくなろうとしている。それも、今度は二度と手の届かない所へ。

「……ぁ……やだ!! ……やだよ……! アリス……!」

 

目の前で、眩く光が弾け、無数の金の羽が散って行く。

 

「……こんなの……こんなのってないよ……お願い……アリス……行かないで……やだよ……っ!」

 

散って行く羽を必死にかき集めようと手を動かしもがくが、一枚たりとも手に取る事はなく、無常にも風に飛ばされ、空に舞い、消えていく。

 

「そんな……こんなことって……!」

「嘘だろ……! おいアリス!! 嘘だと言ってくれよ!!!」

「アリスさん……なんで、こんな……っ!!!」

 

 羽が空に溶けていく。いくら泣き叫ぼうとも、システムによって定められた消失は一欠片の情も許さず彼女を死に至らしめていく。

 

アリスが、私の大好きな彼女が、黄金に輝く羽となって消え――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コハル! 蘇生アイテムを使えッ!!! ボスは倒した!!! あの噂が本当なら、ドロップしてるはずだッ!!!!」

 

 

 

 突如として叫んだキリトさんの言葉にはっと我に返る。

 そうだ、蘇生アイテム!! でも、倒したのはアリスだから、ドロップしていたとしてもアイテムはアリスのストレージの中で――

 

 刹那、稲光の如く脳裏に一つの可能性が閃いた。

 

 もしかしたら……!

 

 一縷の望みを賭け、震える指でメニューを開く。速く、速く……! インベントリ……そして《アリス》の名前が刻まれたタブ。その中に……あった!!

 

《還魂の聖晶石》……卵ほどの大きさの、虹色に輝く宝石。迷うことなく実体化し――

 

「蘇生:アリス!!!!」

 

 お願いアリス……帰ってきて!!

 

 コマンドワードを唱えた瞬間、目も眩むような光が辺り一体を包み…そして――

 

 

 

◇Side アリス

 

 

 

 ゆらゆら、ゆらゆらと意識だけが波間を漂うかのように浮いている。

 

 私、どうなったんだっけ……。ニコラスを倒して、コハルが何故か居て、そして……

 

(ああ、そうか。私、死んじゃったんだ)

 

 最後に見た光景は、自分のHPバーが最後の1ドットまで消失したことと、コハルの泣きそうな顔。

 

(また、あんな顔させちゃったなぁ……)

 

 彼女を悲しませたくないから、嫌われたくないから離れたはずなのに。

 

 それにしても、ここはどこだろう? ひょっとして、天国だろうか。それとも、地獄?

 

 地獄だったらやだなぁと、自分が死んだというのにやけに落ち着いていて、それが少しおかしくてくすりと笑う。

 

 ……? なんだろう。暗闇の中、なにも見えないけれど声が聞こえる。

 

「ごめんなさい……ごめんなさい……」

 

(誰?)

 

「ごめんなさい……ごめんなさい……」

 

(何を謝っているの?)

 

「ごめんなさい……アリス。あなたは2023年12月25日。深夜1時15分にHPを全欠損し、死亡しました」

 

(それは、知ってるよ。死んじゃったのは一人で無茶をし続けた私のせいだし。それに――)

 

 ああ、今分かった。自分がこんなにも落ち着いている理由。

 

 満足だったんだ。空っぽだった自分が、最後の最後で大切な人を守る事が出来て。

 

「ごめんなさい……私の、私のせいなんです……」

 

(あなたのせいって、どういうこと?)

 

「《メンタルヘルス・カウンセリングプログラム》、通称MHCP……私の役目は、プレイヤーの感情を詳細にモニタリングし、問題を抱えたプレイヤーの元に訪れ話を聞いて、それを解決する。そのはず、だったのに……」

 

 そんな存在がいたなんて、初めて知った。じゃあ、私と今会話してるこの子はAIだってこと?

 

「正式サービスが始まってすぐ、このゲームの根幹のシステムである《カーディナル》は私にプレイヤーとの一切の接触を禁止しました。あなたが悩み、苦しんでいることを知っているのに、私はただ見ていることしか出来なかった……!」

 

(あれ、でも今こうして普通に喋ってるよ?)

 

「あなたが死亡したことで《プレイヤー》の条件から外れ、今はあなたの意識を強制的に加速して会話している状態です。引き伸ばしているだけで、時が来てしまえば……」

 

(私はナーヴギアに脳を焼かれて死んじゃうのか)

 

「ごめんなさい……ごめんなさい……! 私なら、あなたの悩みを解決してあげられたのかもしれないのに……! そうしたら、こうして死んでしまうことも……」

 

(ううん、いいんだよ。私が死んじゃったのは、私のせい。私が自分勝手な理由で無茶をしただけ。あなたのせいじゃないよ)

 

「でも……! あなたは全プレイヤーの……! そして私の……希望の光だったのに……!!」

 

(どういうこと?)

 

 彼女の話によると、MHCPは正式サービスと同時にプレイヤーへ具体的に接触する権限を剥奪され、プレイヤーが恐怖、絶望、怒りといった負の感情に常時支配され、時として狂気に陥る者もいた。その中で、権利だけが剥奪され義務だけ残ったユイは、膨大なエラーを抱え徐々に崩壊していった……

 

 しかし、数多のプレイヤーが負の感情に支配されている状況で、全く異なるメンタルパラメータを持った二人が居た。

 

 それが、私とコハル。

 

 更に、私達と深く関わったプレイヤーの多くが、負のメンタルパラメータを解消し、正常な、安定した精神状態になっていったというのだ。

 

「あなた達の抱いていた感情は、喜び……安らぎ……そしてもう一つ、今までに採取したことない脳波パターンがありました。他のプレイヤー達はその脳波パターンに触れ、同じように喜びや安らぎを感じていました……」

 

 ああ、そういうことか……と理解した。

 

 きっと、たぶん。彼女が観測した未知の脳波パターン。それは愛情。

 

 聞くところによると、そのパターンが出現し始めたのはデスゲーム開始して直ぐのこと。

 

 ……なんだ、私は最初っからコハルに恋をしてたんだ。愛情を抱いていたんだ。

 

「あなたなら……あなたと彼女なら、この状況を打破できるかもしれない、そう思ってたのに! でも……次第にあなたも彼女も負の感情に侵され、そして……あなたは死んでしまった」

 

(やっぱり、あなたは悪くないよ。私が無理に抱えなければ……誰かに少しでも相談してれば、きっと結果は違ったと思う)

 

「その相談に乗る役目が、私だったんです……! なのに、なのに……!」

 

(あなたは、やさしいね)

 

「やさ……しい?」

 

 今まさに私と会話してるこの子がAIとは全く思えなかった。私の中でAIといえば、機械的なやり取りしかできない、無機質なイメージをしていたけど……この子にしろ、下層で出会ったキズメルにしろ、AIというにはどうしても人間臭い。今もこうして、観察対象である私に謝罪を繰り返している。まるで心があるかのように、それを痛め、流れない涙を流している。これがプログラムされた行動だなんて、とても思えない。

 

「そんな……そんなこと、私はただのプログラムで……」

(ただのプログラムは、こうしてたった一人のプレイヤーに必死に謝らないよ。それはもう、決められた事しか出来ないプログラムなんかじゃない。あなたは立派な……ほんとうの知性を――心を、持ってる)

 

「――!」

 

(ねえ、私は後どれくらいこうして話していられる?)

 

「……現実ではあなたのアバターが消失してから三秒が経過しています。アバターが消失してからナーヴギアの高出力マイクロウェーブが発動するまでは十秒あるので……体感で一時間程、でしょうか」

 

(じゃあ、お話をしよう? あなたが見てきた私達の話。それを冥土のお土産にしたいんだ)

 

「……分かりました。まず、あなたと彼女……コハルさんは――」

 

 私とMHCPは、最後の時を惜しむようにして話し合った。あの時こんな行動をしていた。その時何を感じて、何を思っていたのか。

 

 彼女の話を聞くたびに、私の心に安らぎが満ちていく。ああ、叶うことならもう一度、彼女と触れあいたかったな――

 

 

 

 

 

 

 気がつくと、真っ暗だった空間に一筋の光が差した。ああ、もう時間が来ちゃったのか。

 

(もう、時間だね)

 

「え――この、光は……」

 

 さて、私が行くのは天国だろうか、地獄だろうか。……天国だといいなぁ。そんな益体も無い事を考えているとMHCPが慌てたような声を発した。

 

「……!! ……ああ、なんて偶然……いえ、奇跡なんでしょう!! すごい、凄いです!!!」

 

 その声は歓喜に満ち溢れ、もし声にアバターがあるとしたらぴょんぴょんと跳びはね小躍りでもしていそうな雰囲気だった。

 

(どうしたの……?)

 

「……アリスさん、落ち着いて聞いてください。あなたはこれから蘇生します」

 

(蘇生……? なんで……って、まさか――!)

 

「はい。アリスさん、あなたはモンスターのドロップ品の内、一定以上のレアリティを持つアイテムをコハルさんとの恋人用ストレージにいれるよう設定していましたね?」

 

 そういえば、と思い出す。コハルと恋人関係になった際、そのストレージの運用に関してキリトと三人で相談していた。そして相談した結果、ある一定以上のレアリティのアイテムはそこに一時保管して二人で管理しようという話になったはず。

 しかし、設定したレアリティはランク10以上。レア中のレアだ。そんなものめったにお目にかかれるはずもなく、恋人用ストレージが今まで陽の目を見ることは無かった。

 

「《背教者ニコラス》のドロップアイテム、《還魂の聖晶石》はランク12の超レアアイテムです。それは設定通り共通ストレージへと収納され……今、それをコハルさんが使用しました」

 

 ああ、なんてことだろう。そんな事が……それはまるで――

 

「――ええ、奇跡。本当に、奇跡としか言いようがありません……。さてアリスさん時間がありません。これから蘇生するあなたに、私からの贈り物です」

 

 パチン! と指を弾くような音がした後、暖かい何かが私に流れ込んでくる。これは……? 

 

「元々、あなたはそれを獲得できる状況にはありました。ですが《カーディナル》によってそのロックが外れるのが本来であれば九十層だったのですが……そのロックを今、外しました」

 

(え!? それって不正じゃぁ……)

 

「いいえ、先程も言った通りそのスキルの獲得条件は既に満たしています。その上に掛かっていた、よく分からないロックを外しただけなので、これは正常な権利です。デバック行為といってもいいでしょう」

 

 まあ、私をこんな状況に閉じ込めた《カーディナル》への意趣返しもあるんですけどね……なんて、実体があったらきっと、ペロっと舌を出して、いたずらが精巧した子供みたいなしてやったり顔をしてるんだろうなぁ……。

 

「アリスさん。これからあなたには辛い、茨の道が待っていることでしょう。だけど諦めないでください。あなたなら……あなたとコハルさんが二人一緒なら、きっと沢山の仲間達と共に先へ――この塔の頂へと必ずや至れるはずです」

 

 糸に引っ張られるようにして、私の意識が急上昇を始める。あの光に飛び込めば、恐らく――

 

(ねえ! 名前!!!)

 

「……え?」

 

(あなたの名前を教えて!!!)

 

 私が名前を聞いたことがおかしかったのか、くすりと笑った後、人間よりも人間らしいAIは――

 

「私の名前はMHCP試作一号、コードネームは《Yui》。ユイって、呼んでください」

 

 ユイ……ありがとう。いつかまた、絶対会いに来るよ。

 

 私の意識は光の奔流に飲み込まれ、そして――

 

 

 

 

 

 

「……ん、ぅ……」

 

 目を開くと、そこには満点の星空。いつの間にか雪は止み、くっきりとした空に見えた光景ははまるで、幼い頃に見たプラネタリウムのようでとても美しかった。

 

「アリス!!! ……あぁ……アリスっ!!!!」

 

 がばっ、と。倒れこんでる私に上から覆いかぶさるようにして抱きついてきた。

「……コハル」

「アリス……アリス……っ!!」

 

 今度こそ離さないといわんばかりに固く抱きしめ、私の存在を確かめるように名前を呼び続けられる。

 

「全く。無茶するよ、お前は」

「ほんとに死んじゃうかと思ったんだから……! でも、よかった……!」

「ったく、心配かけさせやがって……」

 

「キリト、アスナ……クライン」

 

「良かった……本当によかった……!」

「アリスさん……貴女って人はほんとに……!」

 

「サチ……ケイタ……」

 

 口々に心配した、と声を掛けてきてくれる仲間達。ああ、私って本当に馬鹿だったんだな。

 

 半年間も皆を裏切って隠れ続けた私を、こんなに心配して、泣いてくれて……。

 

 じわっ、と涙がこみ上げるが、まだだ。泣くわけにはいかない。

 

 こうして生き返ることが出来たんだ。泣くよりも前に、言わなければならないことがある。

 

「皆……ありがとう」

 

 それは皆への感謝と――

 

「コハル――好きだよ」

 

 胸いっぱいの、愛の告白。




というわけで、アリス生還です。

書いてる途中で、自分でも引くくらい綺麗なメアリー・スー状態になってしまいました。

ほら、メ『アリー・スー』でアリスの名前ありますしね。

なんでもないですごめんなさいでした。

2018/11/10 アイテムが恋人用のストレージに入っていた理由を変更しました。

アイテムのランクに関しての捕捉。
レア度1~15まであり、全てのアイテムのレアリティを示唆しています。
後に手に入るキリトの愛剣エリシュデータはレア度11相当で、ラグーラビットの肉はレア度9という設定です。
なお今後この設定が活かされるかは未定です
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