SAOif 紅の戦姫と蒼の聖女   作:百合好きの獣

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長くなるから……と思って前回と分けたら短くなっちゃいました。


月夜の黒猫団6

◇Side コハル

 

 

 

「コハル――好きだよ」

 

 その言葉を聞いた時、私は耳を疑った。

 

 いま、なんて……。

 

「私はコハルが好き。一人の女の子として、コハルが好き」

 

 ああ、なんてことだろう。

 

 私があんなに悩んで、苦しんで、それでも言えなかったその言葉を、アリスはこんなにも簡単に……

 

 駄目だ。涙が止まらない。アリスが生きてくれたことに……私を好きだといってくれたことに嬉しい気持ちがあふれすぎて、言葉に出来ない。

 

「半年も逃げてごめん。女の子同士で、好きだなんていって、ごめんね。けど、私はコハルが好き。大好きなの。だから……また、コハルの隣に――」

 

 アリスは最後まで言葉をつむぐ事が出来なかった。

 

 その前に、私がその唇を自身のそれで塞いでいたから。

 

 嬉しい、嬉しい嬉しい嬉しい……!

 

 私は今、生涯で一番幸せな気分に包まれているだろう。

 

 好きな人に、好きだと言って貰えることが、こんなにも嬉しい事だなんて――!!

 

「――ぷはっ!! こ、コハル……?」

「馬鹿!! アリスの馬鹿!!! 半年間、私がどんな思いで……!!」

 

 ごめん……そう謝ってから、アリスはなぜ私の前から居なくなったのかを話してくれた。

 

 最初は小さな嫉妬だった。それがどんどん大きくなって、私の隣に相応しくないと思い、飛び出した。その途中で私に恋心を抱いてることに気づき、尚のこと戻れなくなった…………。

 

 なにそれ。

 

 なにそれ!!!

 

「馬鹿だよ!! アリスの馬鹿!! 大馬鹿!! あんぽんたん!!!」

「あ、あんぽんたんって――」

「私がアリスに秘密にしてアスナやサチさんに相談してたのは、あなたの事なの!! アリスの事が好きになっちゃって、大事なパートナーなのに、女の子同士なのにどうしようって……相談してたの!!」

 

 ふつふつと怒りがこみ上げてきた。あの時、アリスがアスナやサチさん、リズさんの誰かに少しでも相談してたら……。私の想いを知ってる三人だ。きっと全部察してくれて……そしたらこんな目に合わせずに済んだのに!!

「もう! !もうっ!! 馬鹿!! 馬鹿!!!!」

「ちょっと、馬鹿っていい過ぎ――」

「馬鹿!!! もう……大好き!!!!!」

 

 またしても、アリスが何かを言い切る前にその唇を奪う。

 

 半年間、恋しい想いだけが募ってはちきれんばかりに膨らんでいる。もう、我慢なんて出来ない。

 

 我慢だなんて、してやるもんですか――

 

 

 

◇Side アリス

 

 

 

 コハルにファーストキスだけじゃなくセカンドキスまで奪われた。

 

 好きな人からされたのだ。嫌な訳がない。だが少数の、仲間とはいえ公衆の面前でというのはいかがなものか。

 

 ほら、アスナなんてまた「きゃー!」なんて言いながらまったく意味が無い目隠ししてるし。サチは微笑ましい物を見る顔だけど、顔真っ赤だし。男共なんて鼻を押さえながらそっぽ向いてるし。

 

 ふと、MHCP――ユイの言っていた事を思い出す。

 

 私とコハルから、今まで採取したことの無い脳波パターンが検出された、と。

 

 なんだ、私達、最初から両想いだったんだ。

 

 私って、本当馬鹿だなぁ……

 

「……ふぅ、アリス」

 

 およそ数分間にも及ぶキス責めから落ち着いたのか、スカートの後ろをぱんぱんと叩きながらコハルが立ち上がる。

 

「アリス、私とデュエルしよう」

「……え?」

 

 

 

 

 

 

 目の前には、デュエル開始までのカウントダウンを示すウィンドウ。そして少し向こうには、短剣を構えたコハルの姿。

 

「半年間、アリスを探しながらボス攻略の最前線に立ってたの。どのぐらい強くなったのか、アリスに見てもらいたくて」

 

 じゃないと、私の隣に安心して立てない――そうコハルは言った。

 

 そんな事、全然気にしないのに……。むしろ、私の方が隣に立てるか不安なくらいだ。

 でも、コハルが試したいというからには、付き合う他ない。

 

 それに――

 

(私も、コハルがどれだけ強くなったのか、知りたいし)

 

 別れた半年前の時点で十分に最前線のプレイヤーとしてのスキルはあったのだ。あれからずっとボス攻略に参加していたコハルが、どれほど強くなっているか……。

 

 ぞくぞくとした震えが背筋を上っていく。武者震い。コハルという強者を相手にして、私は戦いの前の高揚感に包まれていた。

 

「じゃあ、僭越ながら俺が見届け人をやるぞ。《初撃決着モード》で、最初に一撃クリーンヒットさせた方が勝者だ。それじゃぁ……」

 

「アリス、私が勝ったら――アリスは私のお嫁さんになること」

「お、お嫁……!?」

「逆に、アリスが勝ったら――私がアリスのお嫁さんになる」

 

 どっちも同じじゃないそれ!?

 

 困惑する私を他所に、無慈悲にもデュエルのカウントは0になり、コハルが思い切り地を蹴り肉薄してきた。あっ!ずるい!!

 

「やぁあああーっ!!」

 青いエフェクトと共にコハルが武器を構え突進してくる。狙いは……あれ?

 

 突っ込んでくるコハルをやり過ごそうと、構えの延長線上に剣を置いて――駄目だ!

 

 寸でのところで身を躱す。が、完全には避けきれずほんの少しだがダメージを受けてしまった。

 

 それにしても今のって……

 

「キリトさんみたいには、上手くいかないか」

「こ、コハルもしかして……《武器破壊》しようとした?」

 

 《武器破壊》。モンスターとソードスキルで衝突しあうと稀に起こる現象。理屈は解明されていて、攻撃判定が無い状態の武器(技の出だしと終わり。後は今みたいに武器で受け流そうとしたとき等)に、構造上弱い部分に強い打撃を加えることで起こる……可能性があるという。

 

「アリスなら、受け流すと思ったし、さっきの戦いで耐久値も減ってるはずだから行けるかなって思ったんだけど……」

 

 失敗失敗、とおどけるコハルに私は戦慄した。

 

 コハルの言うとおり、私は最初、剣をそえるようにして受け流そうとしていた。もしそうしていたら……。

 

(でも、最初からそれを狙う!?)

 

 私はよくコハルに「とんでもないことをしでかす」なんて言われるけど、今のコハルも大概だ。相手が誰よりも行動を知ってる私だからって、いきなり武器を壊そうとしてくるとは……。

 

 これは、気を引き締めなきゃ簡単に負けちゃいそうだ――

 

 私は改めて剣を構えなおすと、自分の中のギアを一段上げるイメージで更に集中を始めた。

 

 

 

 

 

 

 どれほど打ち合っただろうか。私とコハルはお互いに捌き、躱し、十分近くもデュエルを続けていた。

 

 ……おいそこ、そこの。クラインと黒猫団の男衆。「どっちが勝つ?」「コハルさんに一票」「アリスさんに一票」とか勝手にトトカルチョ始めてるんじゃないよ。

 

 コハルはとても強かった。私がいくら奇策を練ろうと、不意を突こうとその全てを見切ってこちらに反撃してくる。

 

 それもそうだ、半年離れていたとはいえ、それでも誰よりも長くコンビを組んでいたんだ。お互いの戦略、戦術、思考パターンは全て筒抜けのはず。

しかしそれは私にも同じことが言え、コハルの攻撃は全て見切ることが出来る。

 

 互いにクリーンヒットが無いまま、時間だけが過ぎていく。

 

 ほんとうに、強くなったんだなぁ……。

 

 以前のコハルにだったら、言ったら悪いけど私は普通に勝てたと思う。いくらお互いの手の内が分かっていても、圧倒的に私の方が戦闘の経験は多いのだから。

 

 それがどうだ。こうして長い間戦い続けていても、一向に決着がつく気配がない。

 

 私が《あれ》を使わなければ……。

 

 うん。止めよう。もう隠し事は無しだ。信頼する仲間に、そしてコハルに。私の全部を見せよう。

 

「キリト」

「ん?」

「アスナ」

「何?」

「クライン」

「何だよ」

「サチ、ケイタ、テツオ、ササマル、ダッカー」

「な、何……?」

 

 この場に居るコハル以外の全員の名前を呼び、注目するように喚起する。

 

「皆。私は皆のこと、心から信頼してる。こうして私なんかを心配して駆けつけてきてくれた、皆を。だから……」

 

 

 

「私の全部を、見せるね」

 

 

 

◇Side コハル

 

 

 

「私の全部を、見せるね」

 

 そう言ったアリスは、ウィンドウを操作し始めた。

 

 何をする気だろう……。全部を見せるって、まだ何かあるの……?

 

「コハル……」

「なぁに?」

「これが私の全部。全力。だから――受け止めてねッ!」

 

 ゴウッという風を切る音。体術スキル移動技《縮地》

 

 アリスの十八番だ。一体ここから何を……

 

 身体を地面すれすれまで倒したアリスが技を放とうとしている。

 

 アリスは片手剣スキルを装備していたはずあの体制から放てる技は……《バーチカル》? ――いや、違う。装備を変えたSEとエフェクトが一瞬だけど見えた。てことは武器を変えて……!?

 

 アリスの持つ武器が紫色のライトエフェクトを纏う。

 

「えっ!? ……くぅ……!」

 

 カタナ下位単発技《浮舟》

 

 カタナスキル!?

 私は衝撃を後ろに跳ぶことで消しながら、ひとまずアリスと距離を取った。

 

 アリスは手にした剣を振り上げた状態のまま、技後硬直で……固まってない!?

 

 今度は……片手剣下位上段突進技《ソニックリープ》

 

(何!? 何が起きてるの!?)

 

 最初、デュエルが始まった時。確かにアリスは片手剣スキルを装備していたはずだ。片手剣のソードスキルを何度か放っていたし、それは間違いない。じゃあ次のカタナのソードスキルは何? さっき入れ替えた? でもその後直ぐに片手剣のソードスキルを使ってたし、《クイックチェンジ》ではスキルまでは変えられないはず……!

 

 最初から武器スキルを二つ装備してた? じゃあ技後硬直が無かったのはなんで……?

 

 一体何が……と困惑する私を、アリスは待ってくれなかった。

 

 振り切った剣を手元に引きつけ、桜色のエフェクトを纏い始める

 

 あれ……は……

 

 細剣単発技《リニアー》

 

 引き絞られた矢が弓から放たれるように、ヒュゥンッという風切音と共にソードスキルが迫る。

 

――キィン

 

 澄んだ、甲高い金属音。アリスの放った技は狙い違わず私の短剣を弾き飛ばし……

 

「コハル。……結婚しよう」

「……はい」

 

デスゲームが始まって、一年と少し。

12月25日。世間ではクリスマスというこの日が、私とアリスの――

 

 結婚記念日となったのだった。

 




アリスがユイから何のスキルを解放してもらったのか

それは次回明らかにします。

ひとまず、SAO編第二章【月夜の黒猫団】はここで終わりです。
後は少し閑話をはさんだ後、原作に沿って進んでいきます。


※誤字報告、ありがとうございました。今でもたまに見直したりしてるんですが、誤字の多いこと多いこと……。
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