SAOif 紅の戦姫と蒼の聖女   作:百合好きの獣

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遅くなってごめんなさい。
この話は難産でした……。

その理由はあとがきで。


月夜の黒猫団7

◇Side アリス

 

 

 

 私とコハルのデュエルが決着し、そして私達は結婚する事となった。そんな私達に今まで見守っていた仲間達が次々と声を掛けてくる。

 

「おめでとう、ついにやったわね」

 

 心の底から安堵したような表情で、アスナが近づいてきた。後で聞いた話だけど、コハルは一番多くアスナに相談していたらしく、また、アスナもずいぶんと親身になって聞いてくれていたから、我が身の事のように心配していたらしい。ちなみに、我が身の事のようだった理由は他にもあったんだけど……それはまた、別の機会に。

 

「ありがとう……。次は、アスナの番だよ」

「そ、そうね……うん。次は私。応援してね?」

「もちろん!」

 

 何か二人の間で協定があったらしい。コハルとアスナはちらりとキリトへ視線を向け……ああ、そういうこと。

 

 続々と集まってきた皆から口々に「おめでとう」という祝福の言葉を受け取る。嬉しいのだけど、やっぱり女の子同士ということもあり、少しだけ、不安になった。

 

「ありがとう……えっと、その、皆はいいの?」

「何が?」

「その……私もコハルも、女同士で。それで結婚なんて」

 

 私のその疑問に、キリト達は顔を見合わせたあと「なんだそんなことか」とばかりに肩を竦めた。

 

「俺は別にいいと思うぞ。人を好きになる気持ちに性別は関係ないさ」

「それに今更って感じだしな。オメエら、前々からカップルみてェだと思ってたしよ。お似合いだぜ」

 

 そ、そうなんだ……。確かに前からずっとカップルみたいだなんだって言われてたけどさ……。結構重たいことだと思ったんだけど、あっさりと受け入れてしまった仲間達は本当、懐が広いというか、なんというか。あの時、この仲間達の誰か一人にでも相談していれば、こうして私が思い悩む事は無かったのかもしれない。今はただ、仲間達の寛大さに深く感謝をするばかりだ。

 

「それはそうと! オメエ何だよさっきのは!」

 

 気分を切り替えるようにクラインが詰め寄ってきた。私の全部を見せるとは言ったものの……さて、どうやって説明しようかな……。

 

「えっとね、エクストラスキルと……あと、システム外スキル? になるのかな。バグ技みたいなものなんだけど……」

 

 私は先程見せた芸当を一つ一つ順番に説明することにした。

 

 

 

 

 

 

 私が第一層の頃から使い続けていた《クイックチェンジ》のスキル。使い続けることでほかのスキルと同じように熟練度が上がって行き、一定の熟練度になるごとにショートカット登録可能数が増えていく。熟練度がMAXになり、ショートカット登録可能数が十個まで増えたところで新しいスキルが増えた。

 

 《スキルチェンジ》。名前の通り、《クイックチェンジ》のスキル変更版で、スキルもショートカットで変更できるようになったものだ。≪クイックチェンジ≫の拡張機能扱いで、装備とかのショートカットにスキルも登録できるようになっているという仕組みだ。これのお陰で、私は装備を変更してもソードスキルを放てるようになったというわけ。

 

「今まで情報屋に会うわけにはいかなかったから……。落ち着いたら、アルゴにでも流しておくよ」

 

 武器とかスキルをぽんぽん入れ替えて戦うような人が、私以外に居るかは分からないけどね。

 

「じゃああれは何だ?ソードスキルの後の技後硬直……下位の単発技しか使ってないとはいえ、硬直時間が無かったように見えたんだが」

「あれは……」

 

 言いかけて、少し悩む。この技の事を伝えてしまっていいのだろうか。私自身、完璧に把握しているわけではないこの技を。少しの逡巡の後、私は結局伝える事にした。

 

「えっとね、ソードスキルの技の終わりと別のソードスキルの始動モーションって、似てるのが結構あって……」

 

 この技を発見したのは単なる偶然だった。狩りの最中、私がソードスキルでモンスターの持つ武器を搗ち上げた後、即座に別の武器に持ち替えたところで――ソードスキルが発動したのだ。

 

 そのまま発動したソードスキル《スラント》がモンスターに命中し、爆散……させたはいいのだが、しばらく私は何が起きたのか分からず固まっていたのを思い出す。

 

 その後時間をかけて検証して分かったのは、ソードスキル後に別の武器に持ち替えた時、放った技の終わりが、別の武器のソードスキルの始動モーションと酷似していた場合、硬直無しで持ち替えた武器のソードスキルが放てると言うものだった。

 

「な、なんだそりゃあ……硬直無しでソードスキル打ち放題とか、マジもんのチートじゃねえか!」

 

 クラインが驚き半分、呆れ半分といった表情で叫ぶ。

 

 まあ、そんなに甘い話がそうそうあるわけが無く、この技も欠点はいくつかあるわけで。

 

「でも、技の終わりと始まりが似てなきゃ発動しないし、私みたいに《クイックチェンジ》でソードスキルごと装備を変えなきゃそもそも発動しないし、タイミングも結構シビアで、ずれるとやっぱり発動しない上に硬直するしで使いどころは結構限られてるんだよね」

 

 ソードスキルは多数存在し、その中で始動モーションと終わりのモーションを全て把握し、武器を入れ替えながら繋げていくことはかなり神経を使う作業だった。今のところ、私は単発技のみであれば3~4回。上位のソードスキルから繋げたり間に挟むと2回から3回が安定して繋げる上限だ。

 

 ただ、組み合わせはそれこそ星の数ほどあるので次の技の予想がし辛く、ソードスキルを連発できることは対モンスター対プレイヤー問わず、使いこなせればかなり有用な技であることには違いないのだけど。

 

 「一応、私は《スキルチェイン》って呼んでるんだけど……。できればこれは、秘密にしておいて欲しいかな」

 「あ、ああ……そもそも戦闘中に武器をころころ変えるようなプレイヤーはアリス位だろうし、使い手がいなさそうだけどな……。分かったよ」

 

 この技はまだわからない事だらけなのだ。もしその状態でほかのプレイヤーが真似した時、上手くいかなかったら……その先は、想像したくもない。

 

 ちなみに、始動と終わりが似ていても、武器を変えないとソードスキルは発動しなかった。その事を説明するとキリトは少しがっかりしたように肩を落とした。……まあ、もし武器を変えなくても同じことが出来るならキリトならいい感じに使いこなしそうな気がするけど。彼も大概ゲーマーで、自分が出来ない、持ってないことは羨ましく思えるのだろう。

 

 私は《スキルチェンジ》の取得情報をアルゴにメッセージで飛ばし、その日は解散となった。また明日、離れてた時の事を聞くためにキリトとアスナには会う約束をして、クラインや黒猫団の皆には再度謝罪と感謝を伝える。

 

 半年サボっていた分、明日から人一倍がんばらなきゃ。そう決心して、私はコハルと一緒に久しぶりに我が家へと帰宅した。

 

 

 

 

 

 

「ちょっと待ってて!」とコハルは先に自宅へと戻り、待つこと数分。いいよーという声に従って木製の玄関扉を開いた。

 

「おかえり、アリス」

 

――声を失った。

 

 扉を開けるとそこには、エプロンを纏った姿のコハルが、半年前と変わらない笑顔で立っていた。

 

 じわり、と涙が溢れる。

 

 自分勝手な理由で去り、もう帰ることはないと思っていた場所。少し広いだけの、洋風の一軒家。特段変わったところの無い、なんの変哲のないこの家が、どうしてこんなにも心を揺さぶるのか。

 

(ああ……帰ってきたんだ)

 

 「あ、アリス? どうしたの……?  変だったかな――わっ!」

 

 「ただいま……。ただいま、コハル……」

 

 感極まって、コハルに抱きつく。コハルはもう一度「おかえり」とやさしい声音で答えてから、私の髪を撫で付けるようにあやしてくれた。暖かい手のひらの温もりに、次から次へと涙が溢れて――

 

「えっと、ご飯にする? お風呂にする? それとも……わ、私?」

 

――涙が止まった。

 

「あれ、聞こえなかったかな。ご飯にする? お風呂にする? それとも――」

「ごめんコハル。ちょっと待って。待ってください」

 

 待て待て待て。この子は一体何を言っているんだ。

 

「こ、コハル……その台詞は一体どういう……?」

「えっとね、アリスと私はその、け、結婚……したでしょう?」

 

 顔を赤らめもじもじと指を合わせるコハルが可愛い。じゃなくて。

 

「新婚さんって、こういうやりとりするものでしょ……?」

 

 そうなの!? いや、私知らないけどたぶん違うんじゃないかなぁ!

 

「で、どうする……?ご飯か、お風呂か……それか、私か」

 

 未だ顔が赤いままのコハルは、何かを期待するかのように少し目を潤ませていて。 それを見て私は――

 

「えっと……ご飯で」

 

 

 

 

 

 

 あの後何故か少し不機嫌になったコハルと遅めの晩御飯を取り(久しぶりに食べたコハルの手料理は本当に美味しくて、そこでもまた泣いてしまったりしたけど)二人で一緒にお風呂に入ってから床についていた。

 

「一人用のベッドだから、やっぱり少し狭いね」

 

 折角だから一緒に寝ようと、以前この家を買う前にNPC経営の宿屋でそうしていたように二人で一つのベッドに横になる。

 

「……アリスとまた会えて。それにこうして一緒に居る事が出来て、本当に良かった……」

 

 きゅっ、と。布団の中で手を握られる。

 

 それからコハルは、私が突然居なくなってから半年の事を話してくれた。パーティーが解散されてから直ぐに探しに行ったこと。どこを探しても見つからない私に会う為、キリト達にも相談して一緒に探してもらったこと。それでも私の行方が分からず、けれどフレンドリストから生きている事は分かっていたため、フロア攻略の合間を全て私を探すことに費やしていたこと。

 

「本当に、大変だったんだから」

 

 随分と、迷惑を掛けちゃったな……。今更後悔しても遅いけど、申し訳なさで一杯になる。今度、皆には何か別の形でごめんなさいとありがとうを伝えよう。

 

「――嫉妬してたんだ。黒猫団の皆に、アスナに、リズに。コハルの周りに居た、皆に。その場所に居るはずなのは、私なのに……って」

 

 自然と、自分からそう切り出していた。半年前、私が何を思って飛び出したのか。自分の気持ちを整理するように。

 

「私ね、リアルで……苛められてたんだ」

「え……?」

 

 小学生の頃、学年で一番かっこいいと言われていた男の子から告白されたことがあった。仲の良い友人ではあったが、その時の私は恋とか良く分からなかったし、何より関係性が変わるのを嫌って断ったのだけど――

 

 次の日から、私の学校生活は大きく変わってしまった。

 

 まず、クラスメイト全員に無視されるところから始まった。まるで私が見えないように振舞われ、何を話しかけても、誰も私を認識してくれる事は無かった。当時、仲が良かったはずの友人全員にも無視されて、私は何が何だか分からず呆然とすることしか出来なかった。

 

 その後次第にエスカレートしていき、物を隠される、机に罵詈雑言の落書きがされる、花瓶が置かれる。靴に画鋲が入れられる。私に聞こえるように陰口を叩かれたりもした。丁度その頃、クラスの誰よりも胸が大きくなってしまっていたこともあり、牛女だとか、目立つ容姿をしてたからか色々と言われた事を思い出す。

 

 思い返すと、きっと嫉妬されていたんだと思う。ぱっとしない自分が、クラスでも人気者の男の子に思いを寄せられたことに。

 

 その事を知った両親の計らいで、私は進学すると同時に転校することになった。だけど、苛められていたトラウマからまた無視されるんじゃないかと、誰とも距離をおいてしまい、性格はどんどんと内向的になっていった。

 

 その頃から、よくゲームを……特にオンラインゲームをやるようになっていた。

 

 あの世界にいる時だけは、私は私でなくなれる。地味で苛められっ子の私から。私はどんどんゲームの中の私じゃない私に傾倒していった。

 

 このゲームのアバターは、間違えて男性初期アバターで始めてしまったけれど、普通に作っていても私はきっと男性アバターで始めていたと思う。

 

「だからね、コハルが私の事を沢山褒めてくれるうちに……ちょっとだけど、自信が持てたんだ」

 

 ベータテスト最終日、そして正式サービスが始まっても、コハルは私を凄いと、一緒に居て欲しいと言い続けてくれた。その言葉に私は少しずつ自信を取り戻して、こんな自分でもいいんだと、思い初めていた。

 

 しかし、私は嫉妬してしまった。

 

 大切な仲間に、私は自分が受けた負の感情を同じように抱いてしまった。

 

 そのことに気づいてしまい、私はパニックになって……そして逃げ出した。

 

 追い討ちをかけるように、コハルへの恋心も自覚して余計に戻れなくなり……後は、そのまま、逃げるようにして隠れ続けていた。

 

「アリス……」

 

 繋いだ手が解かれ、そのままコハルは私をそっと胸に抱いた。ぽんぽんと、背中を優しく叩き始める。

 

「大丈夫だよ。誰が何て言ったって、私はアリスが好き。これから先、どんなことがあっても、それは変わらないから」

「コハル……」

 

 コハルの身体から、優しい気持ちが流れ込んでくる。ああ、駄目だ。また泣いてしまう。

 

「アリス、大好きだよ」

 

 私はその後しばらくコハルの胸で泣き続け、やがて泣き疲れてしまい、約半年振りに私は本当の意味で安心して眠りについたのだった。

 

 

 

 

 

 

「結婚すると、お互い全ての情報が筒抜けになるんだ。アイテムストレージも全て共有。確認してみてくれ」

 

 翌日。キリトとアスナが自宅へと訪れてくれていた。現在の最前線の攻略情報を聞くためだ。その中で、私とコハルが結婚したことに話題が自然とシフトしていった。

 

「ほんとだ。アリスって意外とストレージ綺麗に整理してるんだね」

「意外ってなにさ。あ、コハル《料理》スキルカンストしたんだね」

 

 お互いメニューをいじりながらステータスを確認していく。コハルは更にサポート特化の構成にしたんだね。《鷹の目》スキルなんかも取ってるし。

 

と、途中でコハルが操作していた手を止めた。

 

「あれ……? アリス、これ、なに?」

 

 そう言って見せてきたのは、私の所持スキル画面。なにって、別におかしなとこはなにも――

 

「え……なんだろこれ」

 

 私の目に飛び込んできたのは、見たことの無いスキル。名前は――《英雄之剣》

 

 こんなスキル、取得した覚えは……いや、待て。そういえば、私はユイから何かを貰っていたはずだ。正確には、取得可能状況にあったスキルのロックを外した……そう言っていた。

 

「なんだろこれって、アリスが自分で取ったんじゃないの?」

「ううん、違うよ。これは――」

 

 私は、あの時起きた出来事を三人に話した。

 

 HPバーがゼロになり、意識が無くなったあと。何もない空間でユイというAIと話したことを。

 

「おいおい、そんな事あったのか……。つまり、これは本来であれば取得出来ないはずのエクストラスキルってことか?」

「たぶん……ユイは、デバック行為だーとかって言ってたけど……これって……」

 

 「「「「チート、だよな(ね)……」」」」

 

 四人、声をそろえて嘆息する。これは、おいそれと人には言えないぞ……。とりあえず、このことは四人の秘密ということにして、どんなスキルなのか調べてみることにした。

 

 ポップアップメニューにあるヘルプボタンによると、このスキルは武器スキルの一種らしい。武器は両片手剣。どうやら、このスキルをセットした状態で片手剣を装備すると、自動的に両片手剣へという武器種に変化するらしい。

 

 ものは試しと、スキルをセットしてみると、背中に収めていた片手剣がヒュィンという効果音と共に刀身が少し伸びた。大きさは、片手剣より長く、両手剣というより細身で少し短い。しかし……

 

「アリスがその長さの剣を吊ってると、両手剣にしか見えないな……」

 

 かろうじて地面には着いてないものの、私の身長からするとそれでも十分に長かった(ちなみに今まで両手剣は腰に横向きに剣帯を装着していた。そうじゃないと剣先が地面に擦れてしまうからだ)

 

 重さは片手剣の時とさほど変わってないように思え、数回程素振りをしてから背中の鞘にいれようとして……つっかかった。うん、これ鞘じゃなくて剣帯に替えよう。

 

 武器スキルの特徴としては、万能型の一言に尽きた。熟練度0の現段階で使えるソードスキルは近~中距離どこでも対応できるもので、威力も申し分なく、片手剣の取り回しやすさと両手剣の威力を合わせたような、そんなイメージ。

 

 これ、凄く使いやすい。元々、スピード特化の私はどうしても一撃の威力が弱くなりがちだった。この剣ならば、スピードをあまり殺さず、かつ攻撃力も高められる。私にぴったりだ。

 

「けど、《英雄之剣》って凄い名前よね。おとぎ話とかに出てくる主人公みたい」

 

 確かに。片手直剣とか、両手槍とかの武器スキルカテゴリのなかでもこのスキルの名前は一際異彩を放っていると思う。

 

 英雄かぁ……。

 

 このスキルの名前に恥じないようにならなきゃ。今はまだおおっぴらに出来ないけれど、いつの日か、このスキルを使って最前線に立つその時までに。

 

 

 

 2023年12月26日。この日、長らく前線から離れていた《紅の戦姫》アリスが戻ってきたとの情報が最前線のプレイヤー全員に流れた。

 そしてその翌日、フロアボスが攻略された。誰一人の犠牲を出すことなく、今までに無いような早さの攻略には、噂の人物であるアリスと――以前よりもはるかに強い信頼関係で結ばれた《蒼の聖女》コハルの功績が大きかったと、救援に駆けつけたヒースクリフより語られた。

 




オリジナルスキルに関しては色々と草案があり、前回のユイとのシーンを挟んだのですが、よくよく考えるとチートすぎたり、逆にアリスの持ち味を殺してしまったりで次々と没に。

先の展開は考え付くのに、この話を書き上げることが出来ず悶々とした日々を送っていました。

《英雄之剣》の習得条件は

・片手武器、両手武器を合計四種熟練度をカンストさせる
・体術スキルをカンストしている

の二点です。一応、今回の話で説明した事以外にもいくつか能力を考えています。

追記 ≪スキルチェイン≫もとい≪スキルコネクト≫原作でもSAO内でキリトくん使ってましたね。硬直時間を体術でキャンセル……

2018/9/27 アリスの過去を少し変更しました
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