SAOif 紅の戦姫と蒼の聖女   作:百合好きの獣

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※今回の話にはSAOIF第五層のネタバレ及びそれを前提とした展開があるた、未プレイの方には非常に申し訳ありませんが、プレイされるか、動画サイト等で五層のシナリオを補完してからお読みください



星に願いを5

◇Side アリス

 

「ひっく……ぐすっ……」

 

 ユイが消え去り、私達の居る安全地帯には沈黙と、私とアスナのすすり泣く声だけが残された。

 

「うぅ……コハル……私、何も……何も出来なかった……折角また会えたのに……何も……!」

「アリス……」

 

 縋りつくように、コハルに抱きつき、胸に顔を埋め嗚咽を漏らす。

 

 ユイが……ユイが消えてしまった。まだ、何も返せていない。助けてもらった恩も、何もかも。

 

 これからだったはずなんだ。キリトとアスナとユイちゃん。仲良しの家族が居て、私とコハルがたまに遊びに行ってはユイが「お姉ちゃん」と呼びじゃれてくる。そんな、幸せな日々。

 

 だけど、彼女は消えてしまった。この世界を支配する神の如き存在――カーディナルによって。あの無邪気な笑顔で、私を「お姉ちゃん」と呼んでくれることは、もう……

 

「カーディナルッ!!!」

 

 突如、キリトが叫んだ。思わず顔を上げると、彼は天を――いや、遥か頂からこちらを見下ろしているであろう神を鬼の如き形相で睨みつけていた。

 

「そういつもいつも……思い通りになると思うなよ!!!」

 

 叫ぶや否や、黒い石机に飛びつき、表示されたままだったホロキーボードを凄まじい速度で叩き始めた。

 

「キリト君……何を……!?」

「今なら……今ならまだ、GMアカウントでシステムに割り込めるかも……」

 

 呟きながらキーを乱打し続けるキリトの眼前に、ぶんと音を立てて巨大なウィンドウが出現し、高速でスクロールする文字列の輝きが部屋を照らし出した。

 

 何をやっているのか私にはさっぱり分からない。だけどさっきのキリトの台詞が本当なら……キリトは今まさに闘っている。この世界の神……カーディナルと。

 

 呆然と私達が見守る中、キリトは更にいくつかのコマンドを立て続けに入力した。小さなプログレスバー窓が出現し、横線が右端まで到達したその刹那、青白く石机がフラッシュし、破裂音と共にキリトが弾き飛ばされた。

 

 壁に衝突する前に、飛ばされるキリトの後ろに回りこみ受け止める。

 

「キリト君!!」

 

 アスナが慌てて駆け寄ると、キリトは頭を振りながらにやりと笑みを浮かべた。

 

「アスナ……やったぞ」

「やったって……何を……?」

 

 その台詞に、私ははっと息を呑んだ。キリトは勝ったのだ。カーディナルとの闘いに勝利し、そして――

 

「キリト君……これは……」

 

 キリトが差し出した右手からアスナに手渡されたものは、大きな涙の形をしたクリスタル。アスナの掌中でとくん、とくんと光が脈打っているのが見えた。

 

「ユイが起動した管理者権限が切れる前に、ユイのプログラム本体をどうにかシステムから切り離して、オブジェクト化したんだ……。ユイの心だよ。その中にある……」

 

 そう言い終えると、キリトは力尽きたかのように私に体重を預け、目を閉じた。

 

「ユイちゃん……そこにいるんだね……。わたしの……ユイちゃん……」

 

 ぎゅっと、アスナはクリスタルを包み込んで大事そうに胸に抱いた。

 

(キリト……お疲れ様。……ありがとう)

 

 ユイちゃんの心であるクリスタルを見つめ、私の目から再び涙が零れ落ちた。

 

 クリスタルはまるで「ありがとう」と言っているかのように、きらりと一度光を放った。

 

 

 

 

 

 

「そんな事が……」

 

 全てが終わり、落ち着いた頃を見計らって私達は《軍》の本部へとやってきていた。事の顛末を話すためと……そして、今回の件の話を聞くためだ。

 

 私達が来るのを待っていたのだろう、そこには既にシンカーとユリエール。そしてキバオウが揃っていた。

 

「すみません……私達のせいで……」

「シンカーさんたちのせいじゃありません。きっと、遅かれ早かれこうなっていたんだと思います」

 

 首元に、ネックレスにして下げたクリスタルを愛おしげに触れながら、アスナが否定する。

 

 ユイは私達を助けるためにGM権限を行使して、その結果、カーディナルに見つかり削除された。だけど、何も知らずにあのまま生活を続けていても、プレイヤーと行動を共にするAIということでいずれ見つかっていたんじゃないだろうか。遅いか早いかの違いでしかないし、その場合こうしてユイちゃんをカーディナルから切り離す事も出来なかっただろう。

 

 あの別れが良かったとは決して言えないけれど、結果としてほんの僅かな希望が残った分、まだ救われる。

 

「ユイさんの事だけでなく、貴方達も危険に晒す事になってしまった。脱出してすぐに各ギルドに救援要請を送りましたが……本当に、無事でよかったです」

 

 聞けば、シンカーとユリエールは脱出直後に攻略組のギルドに向けて私達の救援メッセージを送っていたらしい。クラインの風林火山や、その他ギルドが名乗りを上げて救出部隊が結成されつつあったらしいのだけれど、私達が無事に戻ってきた事で解散となったらしい。後で、クライン達に「心配かけてゴメン」と謝っておかなきゃ。

 

 そしてなんと、あのキバオウも方々に頭を下げて回っていたらしい。

 

「心配かけてすみませんでした。シンカーさん、ユリエールさん。……それに、キバオウさんも」

「ふん、ワイは自分だけが助かっといてあんたらに死なれたら夢見が悪くなりそうやったからってだけや」

 

 その事を聞かされたコハルが礼を言うと、彼はバツが悪そうにそっぽを向いてしまった。

 

「それで……一体何が起こっていたのか教えて貰えませんか? 私たちはキバオウさんにシンカーさんが騙されたと聞いていたんですが……」

 

 皆を代表するように、アスナが口を開いた。シンカーさんは「そうだね……」と少し間を空けてから、ぽつりぽつりと語り始めた。

 

「まず、君達の言っている……キバオウさんに私が騙されたという話。それは間違っていると言っておくよ。本当は、私もキバオウさんも騙されていた……というのが正しいかな」

「キバオウさんも……ですか?」

「そうや。ワイは、シンカーはんに大事な話があるっちゅう風に聞いて呼び出されたんや。丸腰という条件でな」

「私もそうだよ。キバオウさんに丸腰でギルドの今後について話し合おうというメッセージをもらって、呼び出された」

 

 ちょっと待って欲しい。二人とも、お互いに呼び出されていたって事? 一体どうしてそんな……

 

「ほんで、呼び出されたとこに向こうてみれば、シンカーはんもワイに呼び出されて来たっちゅう話だったわけや。当然、おかしいと思うわけや。せやけど、呼び出された時点でもう既に遅かった」

「私とキバオウさんは、突然何者かに突き飛ばされて回廊結晶に入ってしまい……後は、君達の知っている通り、あそこで動けなくなっていたという訳さ」

 

 驚きのあまり、言葉を失った。コハルやアスナも絶句する中、キリトが今の話を纏めるように切り出す。

 

「つまり……あんた達二人はその何者かに罠にかけられて、あそこに幽閉されていたって訳か」

 

 キリトの言葉に、二人は首肯することで肯定を示した。

 

 キバオウとシンカーさんは、罠にかけられ、幽閉された。でも一体誰が……? そして何の為に……?

 

 その答えを目の前の二人が出そうとしたところを――背後からの声が遮った。

 

「そこから先は、俺が話すよ」

 

 凛、とした――良く通りそうな、少し高い青年の声。

 

 聞いた事がある。

 

 そして、それはもう二度と聞くことが出来ないと思っていた。いや、思い込んでいた。

 

 そうだ。なんで気づかなかった? なんで、彼が死んだと思い込んでいた? 確かに、絶望的な状況だった。確かに、連絡が取れなくなって長かった。

 

 だけど、私は一度も、生命の碑で彼の名前に横線が引かれていた事を、確認していなかったじゃないか――!

 

「皆、久しぶりだね」

 

 思わぬ再会に、声を震わせ叫ぶ。かつて共に戦った、戦友の名を。

 

「ディアベルッ!!」

 

 振り返り、声の主を視界に捉える。

 

 死んだと思っていた青い髪の青年は、イタズラが成功した少年のように微笑んでいた。

 

「アリスさん、キリトさん、コハルさんに……アスナさん。はは、皆変わり無さそうで安心したよ」

 

 おどけた表情でそう言うディアベルに、私は衝動的に飛びつくと機関銃の如く疑問をぶつける。

 

「安心したよじゃないよ! 今までどこに……その前に、どうやって生きて出てきたの!? なんで連絡してくれなかったの!?」

「ああ……どうどう。それも含めて今から説明するから、落ち着いて」

 

 がくがくと揺さぶられながら、彼は私を落ち着かせるように肩をぽんぽんと叩いた。何この余裕。超腹立つんだけど! こっちがどれだけ心配したか――!

 

「まずは皆、無事を知らせる事が出来なくてごめん。あの後、何があったのか。少し長くなるけど聞いてくれるかな」

 

 私を引き剥がすと、ディアベルは一同をぐるりと見回し、咳払いを一つ、語り始めた。

 

 

 

◇side ディアベル

 

 

 

 あの後……俺が囮になって落下した後、俺は逃げ回りながら生き延びる手段を探してたんだ。

 

 落ちた先は、灯りの少ない洞窟のようなところで……後で知った事なんだけど、あの廃墟の地下洞窟に落下してたみたいだ。地理的にダンジョンから離れた場所から出てきたから、落下したというよりは転移させられたと言った方が正しいかな。

 

 とにかく、その洞窟で俺は逃げ続けた。幸い狭い通路だったから多数で囲まれる事は無くて、1体ずつ、逃げながら倒していった。けど、いくら倒してもキリが無くてさ、ポーションも切れて、徐々に追い詰められていった。

 

 少しずつ後退する距離を長くしながら戦ってたんだけど……運悪く曲がった先が行き止まりでね、絶体絶命、俺もここで死ぬのかと覚悟を決めたんだ。

 

 不意に、後ろで何かが落ちる音がして、振り返ると宝箱が落ちてたんだ。さっきまでは何もなかったはずなのに。

 

 罠の可能性も当然危惧したけど……一か八か、この状況を打開できるアイテムが出ることに賭けて、開けたんだ。出てきたのは――《新月の外套》という装備だった。

 

 その名前を見た瞬間、俺はある可能性が思い当たった。

 

 キリトさんなら聞いたことあるんじゃないかな? 《朧夜の外套》という、姿を隠すことが出来る装備を。

 

 ああ、そうだ。キリトさんの言うとおり、《朧夜の外套》はNPC専用装備だ。だけど、それと近しい名前の《新月の外套》は、もしかしたら姿を隠すことの出来る装備なんじゃないか、と思ってね。ステータス確認をする暇なんてないから、慌てて装備したんだ。

 

 結果的に、俺は賭けに勝った。装備した瞬間、MOBが俺を見失って非アクティブ状態になったんだ。

 

 助かったと思ったのも束の間、その装備には問題があった。《新月の外套》は呪われた装備だったんだ。

 

 そう、一度装備したら最後、専用NPCに解呪してもらわないと外せなくなるっていうやつさ。

 

 しかも、《新月の外套》はとんでもない性能でね、姿を隠すだけじゃなく、外部との接触全てを出来なくする装備だったんだ。俺の姿は他のプレイヤーには見えないし、触れることも、声が届くことも無い。唯一の救いは、NPCには普通に話しかけることが出来た事かな。どうやらNPCは装備の効果対象外らしい。まあ、そうじゃないと解呪すら出来ないから当たり前なんだけどさ。

 

 あー……そう。キリトさんの言いたいことは分かるよ。解呪が出来るNPCは、あの層付近には居ない。俺はベータの時は九階層まで到達してたんだけど、そこまで解呪が出来るNPCなんてのは聞いた事も無かった。

 

 ん? じゃあなんで呪いの装備は解呪しないと外せないって分かったのかって? その手の装備はゲームじゃ割りとポピュラーだからね。あの効果音は流石に鳴らなかったけど、ステータス欄のドクロマークと着脱不可の文字を見ればピンとくるさ。

 

 結局、その装備を解呪出来たのは五十一層でだったよ。

 

 びっくりしてるね。下の層……十層にも解呪を依頼できるNPCはいたんだけどね、《新月の外套》は呪いが強すぎて無理だと断られたのさ。

 

 どんな仕組みになっているのか分からないが、俺はプレイヤーには認識されることは無く、MOBを攻撃することも出来ない孤独の中五十一層が開放されるまでひたすら耐えた。

 

 当時は絶望してたよ。何度飛び降りて自殺しようと考えたか分からない。けど、このゲームをクリアしなくちゃって言う思いと、それに――アリスさん、君達のお陰で俺は壊れずに済んだんだ。

 

 クリスマスの日、君達の事を実は陰で見てたんだぜ? ……どうしたんだい? 急に赤くなって。――見られてた? いや、まあそうなんだけど、あの時は他にもキリトさん達がいただろう……今更だけど、祝福するよ。おめでとう。

 

 君達二人を見て、俺はまた前を向くことが出来た。二人の様に、分かれてしまってもまた手を取り合えると。

 

 そのすぐ後だ、五十一層が開放されて、やっと俺に掛けられていた呪いを解くことが出来たのは。残念ながら、解呪したら装備は壊れてしまったんだけどね。

 

 あの後、君達に無事を知らせることが出来なかったのは、そういう訳だったんだ。

 

 

 

◇Side アリス

 

 

 

 彼はふうと嘆息を溢すと、そこで話を区切った。

 

 正直に言うと、言葉が出なかった。

 

 あの後、ディアベルがそんな事態に陥っていただなんて、想像すら出来なかった。

 

 第五層攻略から、五十層攻略まで約1年。

 

 そんなにも長い間、彼はずっと一人でいたのだ。誰にも認識されず、声を届けることも出来ず。

 

 その孤独の辛さは、想像を絶する。

 

「一つ、いいか」

 

 しん、と静まり返った室内で、今まで黙って話を聞いていたキリトが手を上げた。ディアベルが視線で続きを促すと、キリトは頷き問いかける。

 

「あんたが無事を知らせる事が出来なかったのはわかった。だが、それは五十一層までの話だろ? そこから先――今まで姿を一度も見なかったのはどういう理由なんだ? 連絡が無かったのは、フレンド登録をしていなかったから置いておくとしても、あんた程の知名度がある人間が活動を始めていたら絶対に耳にするはずなんだ」

 

 キリトの問いに続くように、コハルも「すいません私からも……」と口を開く。

 

「それに……今になって私達にそれを説明するって事は……何か関係があるんですよね? この事件に」

 

 キリトとコハルの問いにハッとする。そういえば、彼は私達の前に現れたとき「それは俺から説明する」と口にしていた。それ、というのは私達が巻き込まれたこの事件の犯人、そして真相についてで間違いないだろう。

 

 私達の視線を受けて、ディアベルはバツが悪そうに頬を掻いた。

 

「すまない、勿体ぶるつもりはなかったんだけど……まず、キリトさんの疑問から答えると、五十一層で解呪したはいいものの、その間一度もモンスターを倒してないから、レベルは当時そのままでね。ここにいるキバオウと……後もう一人には連絡を入れて、レベリングに付き合ってもらっていたんだ。下の層で隠れながら、こっそりとね。君達に連絡を入れなかったのは、もちろん理由はあるけど……半分は俺のわがままさ」

「その、理由って?」

 

 私が問うと、ディアベルは「それは――」と少し溜めてから

 

「俺は、《ALS》と《DKB》を再び統合しようと考えている。今は《アインクラッド解放軍》と《聖竜連合》になった二つをね」

 

 そう、言い放った。

 

 《ALS》と《DKB》を、統合する? あの、犬猿の仲の二つのギルドを?

 

「キバオウと、シンカーさん、そしてリンドの両ギルドマスターには既に話を通してあるんだ。元々一つの集団だったとはいえ、今は完全に別の組織になっているし、ギルドの理念も違う。説得には時間が掛かったけど――俺がリーダーとなることを条件に承諾してくれたんだ」

 

 思わずキバオウに視線を向けると、彼はそっぽを向きながら

 

「元々ディアベルはんのギルドやったんや。ディアベルはんがリーダーとして戻ってきてくれるっちゅうんなら、奴らとも手を組んだるわ」 

 

 と言った。その後「まあ、嫌々、やけどな」と付け足して。

 

「俺が無事を知らせなかったのは、アリスさん達だけじゃない。キバオウとリンド、そしてシンカーさん以外は誰も知らないよ。《ALS》と《DKB》は今や他のギルドと合併している。他のギルドのメンバーは、そのリーダーが第5層当時のレベルのままじゃ誰も納得しないだろう? だから、統合前にレベルを上げる必要があった。誰にも知られずに」

 

 じゃあ、今、私達にそれを知らせたのって……

 

「ああ、今、俺のレベルは88まで上がった。後は両ギルドのメンバーを集めて、新ギルドを発足するだけだ」

 

 あの《軍》と《聖竜連合》が手を組んだ。この事実はゲーム攻略に多大な影響を及ぼすだろうというのは、私でも分かる。

 

 質の違いはあれど、両ギルドとも紛れも無く最大手なのだ。それが合体するとなるとその規模の大きさは計り知れない。

 

「あれ? でも、それとこの事件に、何の関係が……?」

 

 両ギルドの統合と、今回の一件、繋がりは――まさか

 

「どうやら、《軍》と《DKB》が統合するという話がどこかから漏れたみたいだね。犯人はそれを嫌ってキバオウとシンカーさんを始末しようとしたんだろう」

「なんでそんな事を……なんの為に……?」

 

 その話が漏れたとして、それで《軍》のトップを始末したところで事態が動くとは思えなかった。

 

 しかし、ディアベルが放った次の一言で、この事件の深刻さを改めて痛感することになった。

 

「さっきリンドからインスタントメッセージが届いたんだけどね。どうやら《DKB》が《軍》を粛清するためにトップである二人を始末したという噂が《DKB》内で流れているらしい」

「ふん、しかもご丁寧に《軍》にはワイらが《DKB》に罠に掛けられ始末されたっちゅう噂が流れとったわ。もしこのまま放っといたらウチのギルメン共は《DKB》に喧嘩ふっかけるやろうな」

 

 《軍》と《DKB》が衝突!? そんなの……もう戦争じゃないか!

 

「でも、なんで犯人はそんな事を……? 《軍》と《DKB》を争わせて……そんなの、ただ犠牲者を出すだけの事を、なんで……」

 

 コハルは心底理解できない、といった表情で疑問を口にした。

 

 このまま両ギルドがぶつかれば、《軍》は壊滅するだろうし《DKB》だって少なくない犠牲者が出るだろう。そんな事をして、一体なんの得があるというのか。

 

「犯人の思考は正直、俺にも全く理解できないよ。けど、心当たりはある。悪戯に人を争わせ、殺し、愉悦に浸る外道達に」

 

 ディアベルの言葉に、私は一つだけ思い当たる節があった。

 

 だけどそれはもう解決したはずだ。

 

 あいつらは全員、捕らえられるか――死んだはずなんだ。

 

「この事件の犯人は――」

 

 間違いであってほしいと強く願う。

 

 どうか、ディアベルの口から語られる犯人が、あいつらじゃありませんようにと。

 

 私と、コハル。そしてキリトに大きなトラウマを植えつけた、あいつらでは――

 

笑う棺桶(ラフィンコフィン)。あの殺人ギルドだよ」




・《新月の外套》
本来であれば、五十層より先の墓地ダンジョンの奥に眠る宝箱から入手できる呪われたユニーク装備。装着者をNPCを除いた全プレイヤー及び敵モンスターからの接触及び認識を阻害する。着脱不可。解呪した際に装備が壊れるため、本来の使い方としては一度きりの緊急避難用装備として使われるはずだった。五層でディアベルが入手できたのはどこぞのMHCPがカーディナルの隙を付いてアイテムの配置場所を弄ったため。

2018/10/1 ディアベルのレベルを修正
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