SAOif 紅の戦姫と蒼の聖女   作:百合好きの獣

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地の文が安定しない。驚くほどの文才のなさ。

バレバレですが、主人公のリアルでの姿がお披露目です


プロローグ3

Side アリス

 

 

 

 突然、リンゴーン、リンゴーンという、鐘のような――あるいは警告音のような大ボリュームのサウンドが鳴り響き、自分達は飛び上がった。

 

「んな……っ!」

「何だ!?」

「「きゃあっ!」」

 

 驚き叫んだ自分達を、鮮やかなブルーの柱が包みこむ。

 

(これは……転移!?)

 

 ベータテストの時に何度も体験した感覚。アイテムや転移碑などで《転移》するときに起きる現象だ。しかしなぜ今……?

 

思考を巡らせる暇もなく、青い光が視界を覆いつくす。そして――

 

「ここは……《はじまりの街》の転移門広場……?」

「すごい数の人がいるよ……」

 

 強制的な転移で飛ばされた先は、はじまりの街中央にある転移門広場だった。辺りを見回すと、様々な格好をした人達でひしめいていた。

 

「こりゃあ、全プレイヤーが集められてんじゃねぇか? ……お?」

 

 瞬間、百メートル上空、第二層の底を真紅の市松模様が染め上げていく。その模様には英単語が綴られており、それぞれ《Warning》《System Announcement》。

 

 システムアナウンス……運営からやっと発表があるのか、と肩の力を抜きかけたとき、市松模様の間からどろり、と血液のような何かが滴り落ちた。

 

 その何かは中空で形を変え、やがて20m程もある巨大な赤いフードローブを被った人型を形成した。そして……

 

「プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ」

 

 

 

◇Side コハル

 

 

 

「私の名前は、茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ」

 

 広場全体に声が響き渡る。茅場……晶彦……? それって……

 

「茅場さんってSAOの開発者だよね。これって、正式オープンのあいさつ……?」

「いや……茅場晶彦は今までメディアへの露出を避けてきた。ゲームマスターの役割だって、一度もしたことがないんだ。なぜこんな真似を……!?」

 

 ずいぶんと凝った、それにおどろおどろしい演出だなぁとのんきに考えていた私の横で、キリトさんは警戒するように茅場晶彦と名乗った巨大な影を見据えていた。

 

「諸君は、既にメインメニューからログアウトボタンが消滅していることに気づいていると思う。しかしゲームの不具合ではない。これは《ソードアート・オンライン》本来の仕様である」

 

 本来の……仕様? だって、それじゃあ私たちは……

 

「諸君は今後、この城の頂を極めるまでゲームから自発的にログアウトすることはできない。外部の人間によるナーヴギアの停止、あるいは解除もありえない。それが試みられた場合……」

 

 巨大な影はそこで一度区切った後、淡々と、機械のように恐ろしいことを口にした。

 

「ナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが諸君の脳を破壊し、生命活動を停止させる」

 

「死ぬって、こと……? そんなこと、本当にできるわけないよね、だって、ゲームなんだよ……?」

 

 死ぬ。その言葉を突きつけられたとき、私はまだ嫌なオープニングイベントだなぁなんて考えていた。この異様な雰囲気の中、そうでもしないと正気を保てそうになかったから。

 

「ちなみに現時点で、プレイヤーの家族友人らが警告を無視してナーブギアの除装を試みた例がすくなからずありその結果……」

 

「残念ながら、すでに213名のプレイヤーがアインクラッドおよび現実世界からも永久退場している」

 

 213人が、死んだ。ナーブギアを無理矢理外そうとして。

 

 思わず悲鳴を上げそうになり、こらえる。大丈夫、これは演出、ゲームなんだ。そんなこと、ありえっこない……!

 

「信じねぇ……信じねぇぞオレは……!」

 

 クラインさんが首を振りながら否定する。私だって、信じてたくない……!

 

「こんなのイベントだろ全部……! オープニングの演出なんだろ……そうだろ……!」

 

 キリトさんとアリスは無言のまま、ただじっと茅場を睨み続けている。

 

「今後、諸君の現実の体はナーヴギアを装着したまま病院その他の施設に搬送され、厳重な介護態勢の下に置かれるはずだ。諸君には安心して……ゲーム攻略に励んでほしい」

「何を言ってるんだ! ゲームを攻略しろだと!? ログアウト不能の状況で、呑気に遊べってのか!?」

 

 狂ってる……これがもし本当だとしたら、この茅場晶彦という狂人は1万人もの人間をこの世界に閉じ込めたことになる。そんな状況を作って、やらせるのがゲーム攻略……!?

 

「こんなの、もうゲームでも何でもないだろうが!!」

 

 キリトさんが怒りを露に険しい表情で叫んでいる。アリスさんも同じ思いみたいで、ただひたすらに、怒りに満ちた表情で茅場を睨み続けている。

 

 広場では各所で「ふざけんな!」「ここからだせ!」といった怒号、罵声が飛び交っている。そんな中、茅場はただ静かに、私たちに死を告げた。

 

「しかし、充分に留意してもらいたい。諸君にとって《ソードアート・オンライン》はもう一つの現実と言うべき存在だ。ヒットポイントがゼロになった瞬間、諸君のアバターは永久に消滅し、同時に諸君らの脳はナーヴギアによって破壊される」

 

 私の頭上に表示されたヒットポイントを見る。324/324と書かれている。これが0になった瞬間――私は死ぬ。

 

「ひっ……」

 

 ハッ……ハッ……と呼吸が荒くなる。死を明確に意識してしまい、正気を保てなくなりそうだ。

 

(アリス……!)

 

 無意識に、アリスの手を掴んでいた。怖い。泣き出したい。助けて……。

 

 アリスは一瞬驚いた表情を見せたものの、直ぐに私の手を握り返し

 

「大丈夫だよ」

 

 と声を掛けてくれた。その言葉に、少し勇気をもらった。大丈夫。大丈夫。アリスと一緒なら、大丈夫。そう自分に言い聞かせることで、心に平静を取り戻そうと必死に深呼吸を繰り返す。

 

「このゲームから解放される条件は、たった一つ。アインクラッド最上部、第百層まで辿り着き、最終ボスを倒してゲームクリアすれば良い」

 

 茅場から提示されたクリア条件は、絶望的なまでの高さの壁を私たちに突きつけるものだった。

 

「クリア……第百層だとぉ!? で、できるわきゃねぇだろうが!! ベータじゃろくに上がれなかったって聞いたぞ!」

 

「アリス……ベータテストでは、第何層まで到達できたの?」

「……僕は二ヶ月で、第八層まで」

 

 二ヶ月で……第八……層? それを百層まで? ベータと違ってヒットポイントが0になったら死んじゃうのに……?

 

 そんなの……できっこないよ……!

 

「それでは最後に、諸君にとってこの世界が唯一の現実であるという証拠を見せよう」

 

 茅場が手を一振りさせると、プレイヤー全員の手元になんの変哲もない手鏡が出現した。そこに写る顔は……

 

「な、なにっ!?」

 

 鏡を覗き込もうとした瞬間、辺りが白い光に包まれる。その光はやがて収まり――

 

「えっ……みんな、見た目が……?」

 

 クラインさんとキリトさんがいたはずの場所に、見慣れない人が立っている。その顔は呆然としていて、お互いに顔を見合いながら何が起きたのかと視線を巡らせている。

 

 見た目が変わった……ってことはアリスも!?

 

 そう思い、繋いだ手の先へと視線を巡らせると、そこには――

 

 1人の小柄な少女がぽかんとした顔で佇んでいた。

 

 

 

◇Side アリス

 

 

 

 まばゆい光に包まれた後、自分――私は目を疑った。周りの景色が一段と高くなっている。

 

 ふと、視線を下げると、そこには先ほどまでにはなかった、女性特有の豊かな膨らみがあった。そして手鏡を覗き込むと、腰辺りまで無造作に伸ばされた、赤茶色の髪。やや丸みを帯びた輪郭と、紅玉色で目尻の垂れ下がった大きな瞳。

 

 ぽかんと口を開けたその顔は、色彩の違いはあるものの、リアルでよく見た自分の顔だ。

 

 もしかしなくてもこれ、現実の姿になってる……?

 

 この視線の低さ、いつも私が見ている高さと殆ど一緒だ。ということは周囲がいきなりせりあがった、等ということはなく、単純に私が縮んでリアルの背丈になったということなんだろう。

 

「えっ……みんな、見た目が……?」

 

 驚くようなコハルの声に視線を移すと、そこには見慣れたコハルの顔……ではなくてコハルの胸部が視界に入った。恐る恐る視線を上げると……あれ? 変わってなくない???

 

「見た目!? ……うおっ、オレの顔になってんじゃん……」

 

 コハルのすぐ隣、クラインが立っていた場所には先ほどの美丈夫は居らず、代わりに野武士のような精悍な顔立ちの青年と、そしてその隣には青年……ではなく、やや中性的な顔立ちの少年が立っていた。

 

(クラインは別としてキリト殆ど別人じゃん!!)

 

 性別まで違っていた自分の事は棚に上げて、キリトの本当の姿に私は驚いた。これじゃあキリトさんじゃなくてキリトくんだな! 年近そうだし!

 

 パッと見ただけだと女の子にも見えそうな幼い顔立ちはどこかで見たことがあるような、無いような。しかし年の近い男の子の友人は現実でもゲームでも居らず私の気のせいかもしれない。

 

「もしかして……お前がクラインか!?」

「おめぇがキリトか!? ってーこたぁ……そっちはアリスかよ!!」

「女の子だったの!? ……全然気づかなかった……!」

 

 そりゃあそうだ。ベータ初日に設定をミスって男性初期アバターでログインしてしまって以来、まあいいやと進めていたら他のプレイヤーにオカマ扱いされて男っぽい口調に直したのだから。まあ、途中途中素が出ちゃったとこあるし、リアルでも男口調が出ちゃったりして心配されたりしたけど……ってそれはいいとして!

 

「コハルは全然変わってないんだね」

 

 先ほどまでの男の子の声ではなく、リアルでは慣れ親しんだ私の声。少し違和感がある。ずっと低い声だったからかな。

 

「これ、私の顔だよ。私、普段ゲームやらないから、ナーヴギアはVRショップモールのために買ったの」

 

 アバターを現実の自分と同じにしちゃったのか……! それ、危ないから今度それとなく注意しなきゃ……

 

「ど、どういうこった……」

「自分の顔じゃなきゃ、似合う服を選べないでしょ? もともとは、VR試着用のアバターなんです。ベータの時、ゲームをはじめようとしたら、コンバートしますかって聞かれて、よくわからないままOKしたらこの姿で……」

 

 ああ、私と同じような失敗してる。けど、正式サービスの時に作り直すことも出来たはず。なのになんで……

 

「恥ずかしいし、次はちゃんと作ろうと思ったけど、アリスにみつけてほしくて、また同じようにしたんです」

 

 ドキッと。少し胸が高鳴った。ベータ最終日の、たった一日。それも数時間しか会ってない私に見つけてほしいがために、恥ずかしいのにも関わらず、そのままの姿でいてくれたことに、少しときめいた。あの時間が特別だったのは、私だけじゃなかったのか。そう思うと、嬉しさがこみ上げてくる。

 

「でも! アリスにはびっくりしたよ! まさか女の子だったなんて!」

「ごめんね? 私もアバターの設定でミスしちゃって、男性用初期アバターでゲームを始めちゃったんだ。初期化して最初から設定やらなんやらやりなおすのもめんどくさかったし、このままでいいかな……って」

 

 早くやりたくてOKを連打してたらアバター作成まですっ飛ばしてた……っていうのは恥ずかしいから言わないでおこう。

 

「でもよぉ、それなら正式版でアバター変えられたはずだよな? 前のキャラはリセットされてるんだしよ」

「……う」

 

 それは……そうなんだけど……

 

「もしかしてまたミスったのか?」

「ち、違うよ。あの姿にしたのは、わざと」

「なんでまた」

 

「……ったから……」

「え?」

「私も! コハルに見つけてほしかったから!!」

 

 恥ずかしくてつい叫んでしまった。幸いというか、他のプレイヤーたちは自分達の姿が変わっていたことに戸惑っていて、私に注目してる人はいない。

 

「そうなんだ……」

 

 コハルは、顔を赤くしながら、どこか、いや、もうものすごく嬉しそうに、照れ笑いを浮かべている。

 

「う、うん……」

「アリスも、私に……」

「うん……」

「えへへ、うれしいなぁ……」

 

 お互い顔真っ赤になりながら、もじもじとする。な、なんだこれ……なんだこれーっ!

 

「おめぇらの仲良し自慢はさておいてよ」

 

 ニヤニヤとした笑みを浮かべながらクラインが切り出してきた。だ、誰のせいだと……!見ればキリトくんも呆れたように肩を竦めているが、その目は優しく細められている。

 

 お、覚えとけよ野武士面……!

 

「そんな簡単に自分を再現できるもんなのか?」

 

 確かに。アバターで自分の姿に似せない限り、こうはならないはず……

 

「えっと、高密度の信号素子? っていうのでギアの内側の顔をスキャンして、自分そっくりのアバターが作れるんです」

 

 身長体重は、自分で入力するんですけどね。とコハル。顔はそれでいいとしても、体格は……? 私、折角高身長だったのに元のチビに戻ってるんですけど。

 

「あ、ああ……そういうことか……身長や体格も、初回セットアップの時に計測されてる。だから、これは……」

 

 数値化されていても、本物の体で命だって認識させるために現実の体を再現した……ってこと……?

 

「この世界を作り出し、鑑賞するためにのみ私はナーヴギアを、SAOを作った。そして今、すべては達成せしめられた」

 

 混乱する私たちを他所に、茅場は淡々と告げる。

 

「以上で、《ソードアート・オンライン》正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君の……健闘を祈る」

 

 そう言うと、茅場だった赤い巨人は煙を噴出しながら虚空へと消えていった。空を覆っていたレッドアラートも消え、あたりはいつもの《はじまりの街》の姿へと戻る。

 

 街がシン……と静まり返った。

 

――しかし。

 

「ふざけんな!!」

「出せよ!! 出してくれよ!!」

「この後約束があるんだ!! 出してくれよ!」

「嘘だ……嘘だと言えよ!!!」

「いや……いやぁああああああああっ!」

 

 怒号、罵声、懇願、悲鳴。

 プレイヤーたちの怒りが、恐怖が街全体へと伝播していく。

 

 ……このままここに居るのはまずい。

 

「ああ、そっか……私達……帰れないんだ……ここに……閉じ込められたんだ……」

 

 コハルは座り込み、呆然としている。現実を理解し、先ほどまで保っていた気力を失ってしまったみたいだ。

 

「コハル……!」

「おい、大丈夫か……って具合じゃねえな。……アリス。コハルを立たせてやれるか?ここにいたら休めねぇだろ。広場から離れようぜ」

 

 私はどうにかコハルに肩を貸してやり、クラインと、それと思いつめたような表情のキリトくんと一緒に広場から離れた……

 

 

 

 

 

 

「どうだコハル、ちったぁ落ち着けたか?」

 

 広場から離れ商店街へと移動した私たちは、噴水横にあるベンチにコハルを腰掛けさせ、休ませていた。

 

 ……そういえば、キリトくんが居ない。どこに行ったのだろう。

 

「はい……そういえば、キリトさんは?」

 

 少しは落ち着きを取り戻せたのか、コハルはまだ青白い顔ながらもキョロキョロと辺りを見回している。

 

「……街を出てった。……自分ができることを、やるためにな」

 

 そうか……もう行動に移したのか。このゲームは死=現実での死のデスゲームと化した。ここで生き残るためには、強くなるしかない。そのためにキリトくんは街を出て行ったのだろう。おそらく、次の街へ。

 

 強くならなければ、何も出来ないし、何も守れない。キリトはそれを即座に理解し、行動に移したんだ。

 

(ほんと、どこの主人公なんだか……)

 

「そう……ですよね。こんな時だから、しっかりしなきゃいけないのに。迷惑かけてごめんなさい」

 

 気丈にも、コハルは気力を取り戻そうとしている。けど、見ていて痛々しいほどに顔は青白く、体は震えている。

 

「そんなの良いから……コハルの方が心配だよ……っ!」

「ありがと……ここから出られないって思ったら、急に力が抜けちゃって……」

 

 無理もないだろう。ついさっき、ほんの数十分前まで楽しく遊んでいたはずなんだ。それがいきなりこんな……。私も、コハルが居なければあの場にへたり込んでいたかもしれない。

 

「無理もないヨ。こんなことになるなんて、誰も想像できなかったんだからサ」

 

 ぬっ、とすべるように私たちの会話に何者かが滑り込んできた。

 

「うおっ!? どっから出てきた!」

「最初からいたヨ。そっちが後からきたんダロ。野武士サン」

 

 どこか独特のしゃべり方をする小柄な……少女?はむすっとした表情でそう答えた

 

「そりゃ悪かったな。つーか野武士じゃなくてクラインだ。あんたは?」

「アルゴだヨ。よろしくナ。しかし、大変なことになっちまったナ」

 

 大変なことになった……という割りにはずいぶんと落ち着いて見える。

 

「そのわりにゃ落ち着いてんな」

「周りがパニックになると逆に冷静になるんダ。そっちこそ、人助けとは余裕だナ」

「余裕なんかねえけどよ、オレよりずっと、覚悟できてる奴がいたからな。泣き言吐くより、やれることをやるさ」

 

 デスゲームが開始してから直ぐに、自分の出来ることを見据え安全な街を出て行った、あの中性的な顔立ちの剣士を思い浮かべる。

 

 そうだ、キリトは、もう覚悟して、外へ飛び出していったんだ……

 

「オレもそろそろ、ダチの所に行くぜ。広場で待ってるだろうからな」

「えっ……行っちゃうんですか……?」

 

 コハルは心細げに、クラインを見つめる。

 

「前のゲームの時からの仲間なんだ。それに、ここじゃまだまだ初心者だからな。放っとくわけにゃあいかねぇよ」

 

 ……クラインも、強いな。

 

 普通、こんな状況になったら仲間だから、なんて理由で人に構ってる余裕なんて持っていられないだろう。

 

「そう……ですよね……」

「ンな心細そうな顔すんなって。なんかあったらオレを呼べよ。すぐ駆けつけてやるからよ。こう見えてもおりゃあ、他のゲームじゃギルドのアタマ張ってたんだ。いつでも頼りにしていいぜ!」

 

 本当に、強い人だ。なるべくしてなったリーダーなんだろうな。

 

「はい、あの……いろいろとありがとうございます。クラインさん」

「クライン、元気で。……また会おうね」

 

「おう。……アリスよう。コハルを頼んだぜ?」

「もちろん」

 

 クラインと拳をぶつけ合う。リアルでも男の子の友達なんて1人もいなかったけど、彼とはこの後も長く付き合えそうだ。また、一緒に冒険したいな。

 

「っとそうだアリス。おめぇよ……」

「……なに?」

「お前ェ、案外可愛いんだな! 年下じゃなきゃ、タイプだったぜ!」

「んなっ!?」

 

 んじゃあまたな!とこちらが何かを言う間もなく走り去って行くクライン。あ、あンの野武士面……!!最後の最後まで……!

 

 ……死なないでよ。クライン。キリト。

 

 もうだいぶ小さくなった背中と、今頃必死に走り続けてるだろう友人の顔を思い浮かべ、そっと祈る。

 

「なんだか、全部が嘘みたいだけど……これって、悪い夢じゃないんだよね」

「あいにくと、オイラはばっちり起きてるヨ。二人はこれからどうするかあてはあるのカ?」

 

 アルゴが心配そうな顔でこちらをのぞきこんで来た。あて……あてかぁ

 

「あては……ないかな」

「私たち、これからどうしたらいいのか、なにもわからなくて……。あの、外から助けは来ないんでしょうか」

 

 一縷の希望にすがるように、コハルはアルゴを見やる。

 

 だけど……

 

「その可能性は低いナ。プレイヤーがログアウトできなくなってから、かなり時間がたってるダロ? 外部からの介入が可能なら、とっくに解決してるサ」

 

 だよねぇ……ってことは……

 

「じゃあ、どうすればいいんですか? 私たち、ここからずっと出られないんですか?」

「それをオレっちに聞かれてもなァ……今わかってることは、第百層を突破すればこのゲームは終わる、それだけサ。外からの助けが来ないなら、そうするしかナイ。……悔しいけどナ……」

 

 そう言って、アルゴは本当に悔しいのだろう、苦虫を噛み潰したような顔でうつむいてしまった。

 

「あ……アルゴさんも被害者なのに……私……ごめんなさい……」

「いいヨ。こういうときは気持ちを吐き出したほうが楽になれるってもんサ」

 

 アルゴはにへらっと笑みを浮かべると、さて、と話を切り出してきた。

 

「それで、ダ。これからどうすル? どうしたイ? 街に閉じこもったまま、来ない助けを待つカ、脱出するために動くカ。二つに一つだヨ」

 

 ……二つに一つ。そんなの決まってる。

 

「閉じこもるつもりなんて、ないよ」

 

 そういうと、アルゴはその答えを待っていたといわんばかりに笑みを浮かべながら

 

「それなら最初に必要なのはコル……金だナ。『とにかく生き延びること』を目標にして装備を強化するといいヨ」

 

 その為には、と言ってアルゴは、私たちに一つのクエストを頼んできた。

 

「原始の草原のフレンジーボアから素材を取ってきてクレ。まとまった数があれば、店で売るより高く買い取るヨ。良い話だろう?」

 

「わかった。そのクエスト、引き受けるよ」

 

 集めてくる間、コハルはここで待ってて――そう言おうとしたら

 

「私は……私も、手伝う。クラインさんの言ったとおり、今できることを、やってみたい。ここに閉じこもっていたって、なんにも出来ないから」

 

 さっきまで恐怖で震えてたのに、もう……。コハル……。

 

「そうこなくっちゃナ! オレっちはここにいるから、終わったら声を掛けてクレ。宜しくな」

 

 そう言ってアルゴは商店街の奥へと去っていった。

 ……今、ここには私とコハルしかいない。見ると、コハルはまだ少し震えている。

 

「コハル……大丈夫?」

「うん……って言いたいんだけど、やっぱり少し怖い、かな。さっきまでは普通に倒せてたけど、今、もし負けたら……」

 

 死ぬ。その言葉が重くのしかかってくる。これからはただのレベリングや素材集めも命がけになる。だけどやらなくちゃ、クリアしなくちゃ、ここからは出られない。

 

「コハル……コハルは、私が守るから。絶対に、死なせないから」

 

 コハルの肩に手を置いて、目を見据えて話す。すると、コハルはちょっと驚いたように、そして少し悩むようなそぶりを見せた後、首を横に振った。

 

「ううん、その気持ちは嬉しいけど。私も戦う。私も、アリスを守りたい。今はまだ弱いけど、きっと強くなって、アリスと一緒に、戦いたい」

――ぎゅうっ

 

 思わず、抱きしめる。コハルは、私なんかと一緒に戦うと言ってくれた。しかも、守りたい、なんて。さっきまで最初のMOBにすら苦戦してたくせに。そんなコハルが愛おしくて、強く、強く抱きしめる。

 

「ありがとう……じゃあ、一緒に戦おう? コハルと一緒なら、私、頑張れるよ」

「うん……私も。頑張るから、もう少ししたら、覚悟決めて、頑張るから……今はもう少し……このままでいさせて……」

 

 

 

 

 

 

 デスゲームの開始から程なく、NPCの商人のみとなった静かな商業区の中、二人の少女の嗚咽とすすり泣く声が聞こえた。

 

 その声はほんの少しの時間と共に聞こえなくなり、その場には二人の覚悟を決めた少女達の姿があった




SAOIFすごいですよね。アバターを男で初めて、手鏡で女性にしたら「女の子だったの!?」って反応してくれて。

このゲームで一番感動したとこかもしれません。
あれ、男→女だとまだいいですけど、逆だと大変な変態ですよね。原作にも居ますけど。

12/17 主人公の見た目を一部変更しました
12/27 一部設定を変更しました
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