SAOif 紅の戦姫と蒼の聖女   作:百合好きの獣

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主人公であるアリスの名前ですが、特に深い意味は無いです。某シンセンスサーティな方とは今のところ無関係です。

意味は無く、私がただ好きな名前だからです。アリス可愛いよアリス。


第一層攻略3

Side コハル

 

 

 

「キリトさんに会ったの!?」

「うん、一緒にクエストやった」

 

 第一層《ホルンカの村》。《トールバーナ》へと向かう途中で立ち寄ったこの村で、私はどうしてもやりたいことがあってアリスとは別行動をしていた。

 

 その少し別行動している間にアリスはキリトさんと会っていたらしい。なんで呼んでくれなかったの! と問い詰めるとアリスはごめんと一言謝った後

 

「だって、私に秘密で何かしたいことがあるからーって言ってたのに、わざわざ呼び出すのもと思って……」

 

 と肩を竦めた。そ、それはそうだけど……!

 

「あーあ。私も会いたかったな。けど、無事だって分かったんだし、いっか」

「うん。キリトも『コハルによろしく』って言ってたよ」

 

 ……キリト? いつの間に呼び捨てするようになったんだろう。まあ、いっか。仲良く なったのならいい事だし。色々お世話になったお礼は、また今度会った時に直接言おう。

 

「それはそうと、コハル。結局何してたの?」

「それはね……じゃーんっ!」

 

 首をかしげるアリスに、私はメニュー画面を操作してあるアイテムを取り出した。

 

「こ、これって……!」

「そう! 私、《料理スキル》を取ったから、それで作ったの」

 

《はじまりの街》で、サチさんにもらったサンドイッチ。その味が忘れられずにこっそり取得した料理スキル。それを使って作ったものだ。

 

「すごい! いつの間に!」

「ふふ。耐久値が全損しちゃう前に、召し上がれ?」

 

 いただきまーす! と勢いよく齧り付いたアリスは、「美味しい!」と声を上げると、夢中になって食べ進め、あっという間に平らげてしまった。

 

「美味しかった……!」

「お粗末様。作ったかいがあったよ」

 

 料理スキルを取ったものの、低い熟練度では満足に行くものが作れず、アリスに秘密で練習したかいがあった。こんなに美味しそうに食べてくれて、嬉しい気持ちで一杯になる。

 

「コハルはいいお嫁さんになるよ……!」

「そうかなぁ」

「私が保証する! ……あ、でも駄目! コハルが他の人と結婚するなんて耐えられない!私と結婚しよう!」

「ふふふ、はいはい。」

 

 デスゲーム開始から、二週間が経過した。その間死者は増え続け、その数を二千まで増やしていた。

 

 二千人も、死んだ。

 

 その事実は私に重く圧し掛かってきた。それでも前に進もうと思えるのは、隣でアリスが一緒に戦ってくれるから。全部が全部、私の手で救える……だなんてヒーローを気取るつもりはないし、今は自分が生き延びることで精一杯で、周りの事を気にすることなんて全然出来ないのだけれど。隣で戦うアリスや、目の前で困ってる人位は守れるよう強くなりたい。

 

 その為に、まずは第一層のボスを倒さなくちゃ! と息巻いていると、少し先にそれらしき街が見えてきた。

 

「あ! ねえアリス。あれじゃないかな」

「えーっと。そうだね。地図見たけど間違いなさそう」

 

 あそこでボス攻略のための集会が……。いまだ第一層を攻略したというような話は聞かないから、きっとまだメンバーを集めている段階なのだろう。参加するかどうかは、実際のところまだ決まってない。だけど、ディアベルさんの話を聞いて真剣に考えるつもり。これからの事を、私は一体どうしたいのかを。

 

「それじゃ! おっさきー!」

「……あ! ちょっとアリス! 待ってよ!!」

 

 一人物思いに耽っていると、アリスはまるで子供のように駆け出してしまった! あ、アリスったら……! 私は急いで追いかけ、やいのやいのと騒ぎながら《トールバーナ》へと辿り着いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 《トールバーナ》の街は、第一層の迷宮区の目の前にある南ヨーロッパ風の街で、さすがに《はじまりの街》程の大きさは無いけれど(というか、はじまりの街が大きすぎるのもあるけれど)それでも、十分に街といって差し支えないほどの大きさをたたえた街だ。

 

 その中で、一際異彩を放つのが円形広場。まるで劇場のように中央にはステージがあり、それを囲むようにして、客席が半円形に広がっている。その中心部に、彼は居た。

 

「君たち! 来てくれたのか! フロアボス攻略の助っ人が増えて心強いよ」

「待ってください。私たち、ボス攻略に参加するかどうかはまだ決めてないんです。その前に、あなたの話を聞きたくて……」

 

 私たちが彼を訪ねると、とたんに表情を明るくさせたディアベルさんに申し訳なく思いつつも、素直に伝える。しかし、ディアベルさんは残念がる風でもなく

「そういうことか。それなら安心したよ」

 

 と、むしろ少し嬉しそうにそう答えた。

 

「安心……ですか?」

「オレの話を聞いた上で参加するかどうかの判断をするんだろ? それだけ真剣に考えてるってことだからね」

 

 そう言うとディアベルさんは、スッと表情を真剣なものに変え

 

「オレ達が挑むのはフロアボスだ。強さはザコモンスターとは比べ物にならない。もちろん命の危険だってある。だけど、だからこそオレたちがフロアボスを倒さなきゃいけない。《はじまりの街》に残っているプレイヤーみんなに、このゲームは必ずクリアできるんだって希望を与えなきゃいけないんだ。そうすれば、オレたちの後に続こうと立ち上がる人たちもきっといる。これは、オレたちだけの戦いじゃないんだ」

 

 この人は、そこまで考えて……。

 

 今まで私は、誰かの役に立ちたい。困っている人を助けたいと言いながら、半ば流されるように、目の前のことだけを考えていた。だけど、この人は違う。デスゲームが宣告されて、誰もが足が竦んで動けなくなっているところを、先陣切って戦って、後に続く人たちの希望であろうと。死の恐怖があるにも関わらず。むしろ、リアルよりずっと身近で息を潜めている死に、敢然と立ち向かって。

 

「以上がオレの考えだ。君たちにもそう思ってほしい。どうかな」

 

 彼は真剣な目で、こちらに手を差し伸べてくる。そんなのもちろん決まってる。

 

「ディアベルさんの言うとおりです。私たちも、参加します!」

「そう言ってもらえると嬉しいよ! 一緒にがんばろう!」

 

 私とアリスは、ディアベルさんとしっかりと握手を交わし、具体的な話を聞き始めた。

 

 

 

◇Side アリス

 

 

 

「よっ……と、これで全部かな」

「うん。必要な数は集まったと思うよ」

 

 ディアベルによると、今はまだ攻略するのに十分な人数が集まっていないらしい。それぞれ少しでも勝率を上げようと、レベル上げやコル稼ぎに出張っているとのことだ。

だから私達は、その手伝いをとモンスターを倒し、武器の強化素材を軒並み集めている最中。数日間狩りを続け、ようやく十分な数の素材を集め終わった。その間に、私たち自身のレベルも少し上がっている。

 

「さて……、そういえば迷宮区の近くだね。この辺に転移碑があったはずだからアクティベートしておこっか」

「わ、もうそんなところまで来てたんだね」

 

 どうやら目当てのモンスターを探したり、狩りをしている他のプレイヤーの邪魔をしないようにしているうちにずいぶん遠くまできてしまったみたいだ。

 

「……この先が、迷宮区なんだよね。ねえアリス。私ね、ディアベルさんに言われたことずっと考えてたの」

「みんなの希望になる……ってこと?」

 

 転移碑の目の前で、コハルが突然話し始めた。

 

「このゲームから出られないってわかったとき、一人きりだったら、立ち上がれなかった。ううん、その前の……会った最初の時からあなたが手を引いてくれてここまで来られたんだよ。もし、私たちが第一層を突破することで他の人たちにも同じように勇気をあげられるなら、戦いたい。そう思うんだ」

 

 そんなの、私だってそうだ。いまでこそ当たり前のように一緒にいるけれど、もし、私がベータ最終日にコハルに会わなかったら。正式サービス開始からずっと一人だったら。きっと立ち上がれなかっただろう。閉ざされた世界で、一人きり。そんなの、考えただけでぞっとする。コハルがいたから。コハルがいるから、ここまでこれた。手を引いたなんてとんでもない。私こそ、コハルに支えてもらってたんだ。だから……

 

「一緒に戦おうね」

 

 コハルを危険に晒すのは、嫌だ。だけどコハルが隣で一緒に戦ってくれるから、私は戦える。だから、一緒に。二人で。

 

「うん……! よろしくね、アリス!」

 

 と、その時。

 

「転移碑をアクティベートしたいんだけど、そこ、いいかしら」

 

 突然後ろから声を掛けられた。びっくりしたぁ……。って、邪魔だったか。そりゃそうだよね。

 

「あっ……邪魔でしたよね。ごめんなさい!」

 

 コハルもびっくりしたのか、少し飛び上がったあと直ぐに慌ててペコリと頭を下げた。「ごめんなさい」と、続くように私も頭を下げる。

 

「場所をあけてくれるなら、構わないわ。登録するだけだから」

「あなたも、ボス攻略に参加するんですか?」

 

 声を掛けてきたのは、フードを目深に被った……女性? 声の感じからして、結構若い。私と同じくらい……かな? 表情は全く見えないのだけど、暗く沈んだ、そんな感じのトーンだった。

 

「あなた達も、そのつもりみたいね」

「はい! 一緒に頑張りましょう!」

「……わたしは上に行きたいだけだから。……もう行くわ」

 

 連れない対応。この人、どうしたんだろう。戦いに行くっていうより、死ぬ場所を探してるみたいな。その顔を窺い知る事は出来ないけど、酷く追い詰められた印象を受けた。

 

「待ってください! トールバーナに戻るなら、一緒に行きませんか?」

 

 おお、すごいよコハル。つっけんどんに返されてもぐいぐい行く。私には無いコミュ力だ。

 

「攻略メンバーがそろうまで、まだしばらくかかるそうね。それまでは、ダンジョンでモンスターを倒すわ。……それしか、することがないもの」

 

 けんもほろろに突っ返すと、その少女? 女性? はスタスタと迷宮区へと向かっていってしまった。

 

「あっ……行っちゃった……。なんだか、すごくけわしい顔してたよね、今の人……」

 

 険しい顔……って!

 

「顔、見れたの?」

「そんな気がしたの。攻略会議でまた会えるかなぁ」

 

 コハルって、すごいよね。あんな取り付く島も無いような対応されたら、私だったら萎縮しちゃう。なのに、また会えるかなぁって。

 

 私達はそのままアクティベートした転移碑を使い、《トールバーナ》へと帰還。ディアベルに素材を渡すと、ついに明日攻略会議が開かれると聞かされた。

 

 私とコハルは宿へ戻り、明日への期待と不安を抱きながら床に着いたのだった。

 

 

 

 

 

 

「すごい……たくさんの人が集まってきてる。四十人ぐらい……もっといるかも。みんな、最前線で戦ってきた人達なんだよね。今更だけど、私が混ざってていいのかな。ちょっと気後れしちゃう」

 

 コハルはほう、と息を吐き、歓心したようにそう言った。ひい、ふう……全部で四十六人。フルレイドには二人ほど足りないけれど、それでも死ぬ可能性がある戦いによくぞこれだけ集まったと私も思う。

 

 ちなみに、私もコハルもレベルは12。装備も強化しているし、謙遜する必要なく十分攻略組の一員だと思うよ。

 

 私はさっと群集に目を走らせると、目的だった人物を探して ――居た。

 

「あっ! 昨日のあの人もいるよ! それに隣に居るのは……キリトさんも、ボス攻略に参加するんだ。顔を知ってる人がいると、ちょっと安心できるよね」

 

 キリト発見。ぶんぶんと手を振ると、どうやら向こうもこちらに気づいた様子で、少しびっくりしたような表情をした後、直ぐに笑いながら手を振り返してくれた。

 

 程なくして開催された攻略会議は万事恙無く進んだ。……ら良かったんだけど。

 

 途中、キバオウが乱入し、ベータテスターへの謝罪および賠償を要求するという事があり、それをエギルと名乗った浅黒い肌の大きな男の人が反論し、ディアベルが収めるといった一幕があった。それを除くと会議は円滑に進んでいった。

「キバオウさんがああいう風に思ってたなんて……。ねえ、アリス。私たちも元テスターだってこと、ディアベルさんに言った方がいいかな……」

 

 会議終了後、散り散りに集まっていたプレイヤーは円形広場を後にし(キリトには後で会おうとメッセージを送っておいた)その場に残ったのは私たちとディアベルだけ。

 

 先ほどのやり取りがまだしこりになっているのか、コハルは不安げにそう尋ねてきた。

 

「オレがどうかしたかい?」

 

 噂をすればなんとやら。ディアベルがやってきた。

 

「ディアベルさん、あの、実は私たち……」

「ああ、君たちの顔はばっちり見えてたよ。会議に参加してくれてありがとう! ボス攻略、がんばろうな!」

「は、はい! それで、あの……」

「攻略直前で悪いんだが、君を見込んで、頼みたいことがあるんだ」

 

 どうしよう、コハルが何も言わせてもらえない。

 

「この集めた素材を、町の宿にいるみんなに届けてきてくれないか?」

「えっと……。分かりました。じゃあいこ、アリス」

 

 ディアベルから素材を受け取ったコハルが、私と共に向かおうと手を取った所をディアベルが静止する。

 

「いや、アリスはここに残ってくれ。明日のことで、ちょっとした相談があってね」

 

 ……? 私と? 何だろう。コハルは首をかしげていたが、直ぐに了承するとじゃあ行ってくるね広場を後にした。

 

 これでこの場には私とディアベルの二人きり。ディアベルは私に詰め寄ると真剣な表情で切り出した。

 

「さて……アリス。君にひとつ聞きたいことがある。……君は、元ベータテスターだな?」

「……どこでそれを知ったの?」

 

 スッ、と自然と身構える。私が元テスターだと知っているのは、コハル、キリト、それとクラインぐらいなはず。普段であれば知られたところで痛い腹なんてないのだけれど、さっきのやり取りがあった後だ、警戒もする。

 

「君たちのレベルアップの速度だ。普通に進めているにしては早すぎる。まるで、どのクエストが経験値効率がいいのか知ってるみたいにね。後は、ただの勘だよ。オレは勘がいい方だからね」

 

 そんなに警戒しないでくれ――、となだめるような動作をしてからディアベルは続ける。

 

「けど、それはオレ以外には言わないほうがいい。元テスターは煙たがられるからね」

 

 そう言って、おどけたようにディアベルは肩を竦めた。今のところ、ディアベルにこちらを害するつもりは無いようだ。しかし、その後に続けられたディアベルの言葉は、私を驚愕させるのに十分だった。

 

「君にだけは話しておきたい。オレも、元ベータテスターなんだ」

「っ!?」

 

 驚いたが、それと同時に合点が行った。彼の使っている髪の染色アイテム。とあるモンスターのレアドロップなのだが、そのモンスターは狩るには効率が悪く、またクエストでの討伐対象にも指定されていないため、手に入れるのは寄り道をした運のいいプレイヤーか、または、その情報を知っている元テスターか

 

(そういう、事だったのかぁ)

 

「ちなみに、さっき言った勘っていうのも、半分本当で、半分嘘。ベータ時代、アリスって名前を何度か目にした事があってね……もっとも、こんなに可愛らしいお嬢さんだとは思わなかったが」

「か、かわっ……!?」

 

 や、やめて!! 私の事を可愛いとか言うのは!!!

 

 リアルでは一度も言われた事もない歯の浮くような台詞に顔が紅潮するのが分かる。

というか、なんなのさ! クラインもキリトもディアベルも!! 普通、会って間もない女子に可愛いとか、言わないでしょ! しかもコハルみたいな美少女ならまだしも、こんな地味女に!

 

「今とは名前も見た目も、プレイスタイルも違う。だけど……第二層より上の景色を見てきた。それがオレなんだよ」

 

 赤面し混乱する私を他所に、ディアベルは話を続ける。……ふぅ、少し落ち着いてきた。

 

「攻略会議でキバオウが話したことは正しいよ。デスゲームが始まったとき、オレは……本当なら他のみんなを助けるべきだった。モンスターとの戦い方も、儲けの大きいクエストも知っていたんだからな」

 

 だから、私とコハルがサチに情報を渡したとき、あんなふうに言ってきたんだ。情報の大切さを知っているから。

 

「でもオレは、一万人全員の命を守りきれない。誰か一人を助けている間に、他の誰かが死んでしまうかもしれない。その時オレは、失った命に責任を持てるのか? ……そう思ったら、言えなかった」

 

 がつん、と頭をハンマーで殴られたようだった。

 

私は、この街に来るまでに何人ものプレイヤーを手助けし、達成感を得ていた。私でも、出来ることがあるんだって。誰かの役に立てるんだって。

 

 無意識に、失われた二千の命から目を背けながら。

 

「オレを元テスターだとは知らない仲間たちに、『オレは勘がいいから』と嘘をついてうまくレベルが上がるように誘導することしか……」

 

 それでも、彼は立ち上がったのだ。一人で一万人を守りきれなくとも、目の届く範囲、仲間くらいは守ってみせると。

 

「それも、人助けだよ」

「そう言ってもらえるのは、ありがたいよ。だけど、仲間をだましていたことには変わりない。そして今は、あの時に手を差し出せなかった……この世界に残っているプレイヤー全員をだまそうとしてるんだ」

 

 ディアベルは、私の頼りない慰めにもならない言葉に首を振ると、辛そうな表情で告白してくる。

 

「だがオレは、この世界に必要なことをしている。そう、信じてるんだ。ばらばらに戦っているトッププレイヤーをまとめ上げこの層を、そして次の層を……いつか、第百層を突破するリーダーになる。みんなを解放する。それが、オレがこの世界にいる意味。そして、今のオレにできることだ」

 

 今の自分に、出来ること。

ディアベルの出来ることは、とても壮大で、荒唐無稽な話に思える。けど、彼は実際に一歩踏み出した。第一層のボス攻略会議。現時点のトッププレイヤーをまとめ上げ、率いてみんなの希望にならんと前に進もうとしている。

 

 未だ、今の私に何が出来るのか、その時点で悩んでいる私とは大違いだ。

 

 だから、そんな彼なら出来るかもしれない。前を見据え、後ろを引っ張って、他の仲間と協力すれば。絶望的に思えた、第百層の攻略が。そうしたら――

 

「ねえ、もし。もし全部終わったら、どうする?」

 

 今まで考えたことも無かった、クリアの先の未来。彼は、一体何をするんだろう。

 

「……え? 全部って、百層の攻略を終えたらってことかい?」

 

 まるで鳩が豆鉄砲を食らったかのように(実際にそんな場面みたことないのだけど)目を丸くしたディアベルは少し考えた後

「それはずいぶんと、先の話だろうな。だけど……そうだな。実はさ、ナイトだなんて自称してるけど、オレの名前ディアベルは、イタリア語の方言で《悪魔》って意味なんだ。名前に似合うアバターを、時間をかけて選んで、攻略会議に居たエギルさんよりもずっとおっかない、いかつい顔にしてたんだぜ。それがオレの《SAO》における真の姿……ってわけだ」

「ずいぶん今と印象が違うんだね」

「それは君もだろう? ベータで見たときは確か男だったはずだし。……と、話がずれたな。うん、全部終わったら、青髪のナイトとは全然違う、ディアベルにふさわしい見た目のキャラを作って暴れ回ってやるさ」

 

 そう言ったディアベルは、将来の夢を語る子供のような顔で、未だ訪れない未来に胸を躍らせ活き活きとした表情だった。

 

 ……今とは違うキャラで、大暴れ、か。いいなぁ、それ。楽しそう。

 

「その時はさ、私も誘ってよ。……一緒に暴れ回ろう!」

 

 私だけじゃなくて、コハルや、キリト、クライン。サチやアルゴ。皆で一緒に暴れまわれたら、きっと楽しい。

 

「ははは! そりゃいいな! クリア後のごほうびだと思って、楽しみにしてるよ……さて、明日からのオレはまた青髪のナイトだ。第百層までついてきてくれ! ……なんてな」

「ふふ、りょーかい。ナイト様。……ねえ、元ベータテスターって事、他には?」

「いいや、話してない。……なんでだろうな、君になら、話してもいい気がしたんだ」

 

 じゃあまた明日、といってディアベルは円形広場を後にした。丁度入れ替わるような形でコハルがやってくる。

 

「お待たせ!! ……なんだかディアベルさんもアリスも楽しそうだったけど、どんな話をしてたの?」

 

 そんなに楽しそうだっただろうか。……いや、楽しかったかもしれない。

 

 クリアした後のこと、まだ全然考えてなかったし、考える暇も無かったけど。ごほうびがあると分かれば、頑張れるよね。

 

「えっとね……秘密!」

「そう言われると気になるなぁ……ボスを突破したら教えてね! 絶対!」

 

 さて、クリアしたら何をしようか。ディアベルと一緒に暴れ回るのは決定として……コハルとなら、リアルで会ってもいいかもしれない。原宿とかで買い物したり、ご飯を食べたり。そうだ。ゲームをやったことないって言ってたから、お勧めのゲームを一緒にやりたいな。きっと、楽しい。

 

 さっきまでの緊張はすっかりと消え、これから訪れる、いや、掴みとる未来に思いを馳せ、コハルと二人、円形広場を後にする。

 

 さあ、明日はボス攻略だ。まずは一歩目、頑張ろう。




やっと書きたいところが書けました。

SAOIFやってて、ディアベルとがっつり絡んだあの場面私お気に入りなんです。

いよいよ次回はボス戦です。戦闘描写、上手く出来るかな……
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