SAOif 紅の戦姫と蒼の聖女   作:百合好きの獣

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中々本編が進みませんが、この話はアインクラッド編を書いているときからやりたいなぁと思っていたので勢いに任せ書き上げました。

そして長くなりすぎたので分割します。
GGO編の更新は今しばらくお待ちくだされ……


私達のウォーゲーム 1

 Mストでギルドイベントの告知が放送されてから約一ヶ月が経過した。

 

 芳田総合プロデューサーの発表通り、つい先日からギルド設立に必要な費用が少なくなるといったキャンペーンがALO内で行われた。

 既に設立しているギルドのリーダーには返金も行われているそうなので、既存ギルドからの不平不満も特に無く、ALO全体で続々とギルドが設立されていっている。

 ALOが今の新体制に移行してから、種族間の隔たりは以前より少なくなったものの、未だシルフとサラマンダーなどぎくしゃくとしたものはあった。それが今回のギルドイベントの開催で、より種族が違うことによって生じる壁は少なくなったように思える。

 

 それがプレイヤー全体にとって良い事なのかは小春には分からないが、少なくともコハルにとっては喜ばしいことだった。

 元PK推奨のゲームとはいえ、やはり皆で協力して何かをする方がコハルには性にあっている。

 

 さて、イベントの発表があった時に深紅――アリスと話をしていた『自分達でギルドを設立しよう』という計画。

 ギルドを設立するには、ALOにおけるパーティの定員の上限人数――七人が最低限必要な人数となる。

 設立しようにもその人的問題を解決しなければどうしようもないのだけれど、どうやらアリスにはその宛てがある様だった。

 

 なんとなく残りの五人の内四人は想像がつくものの、あと一人が予想できない。

 アリス曰く、コハルも知っている人物との事だからリズベットかシリカか……あるいは、ノーチラスやユナあたりか。なんにせよ、アリスはコハルに最後の一人については秘密にしたがっているようなのでコハルは実際に会う事を楽しみに待つしかない。

 

 そして、今日はその予定メンバーで集まろうとALO内にあるアインクラッド、その《はじまりの街》商業区にある小さな酒場で顔合わせをしようと待ち合わせしていた。

 アリスとは同じ部屋で同じ時間にログインしている為、あと五人を席に座りながら待っている。

 

 他愛も無い話に花を咲かせていると、ドアベルをからころと鳴らしながら見知った集団が酒場に入ってきた。

 

「よ、アリス。コハル」

 

 片手を上げてこちらに近づいてくるのは黒いコートを全身に纏ったスプリガンの少年――キリト。その後ろに青い髪のウンディーネと金髪のシルフの少女が二人、会釈をしながら酒場へと入店してきた。アスナとリーファ、キリトを入れてこれで三人だ。

 

「アリス、コハル。こんばんわ」

「こんばんわ!」

 

 三人は銘銘に席へと着くと、エールやワインなどを注文した。

 ひとまず近況……とりわけALOでの活動状況などを交換していると、注文した飲み物が届いた。

 五人で声を揃え、乾杯と唱和してからグラスを打ち付けあった。

 場が落ち着いたのを見計らって、キリトが代表して口を開いた。

 

「まずはギルドに誘ってくれてありがとうな。俺もこのイベントには参加したかったんだ。けどどこぞに入るにも設立するにも知り合いがあまり居なくてな……」

「送ってきたメッセージが、ギルドイベントに参加したいんだけどギルド設立する気はないか? だったもんね、キリト」

 

 ばつが悪そうにキリトは頭を掻き、アリスが送られてきたメッセージを思い出したのか、おかしそうに笑った。

 

「キリト君ってば、私にも相談してきたんだよ。MストでALOがギルドイベントをやるって告知してきたんだけど、参加するにはどうしたらいい? って」

「おまっ……バラすなよアスナ……」

 

 アスナにもからかわれ、いじけるようにキリトはエールをぐいっと呷る。

 

「あたしもだよー。お兄ちゃ……キリトくんってばいきなり部屋に押しかけてきて――」

「わーっ! も、もういいだろうその話は! それより残りのメンバーは誰なんだ? あてがあるって話だったけど……」

 

 リーファも次いで暴露話をしようとしたところを、流石にキリトが慌てて止めに入った。そして強引に話題を逸らしにかかり、その光景を見てコハルはくつくつと笑いを漏らした。

 

「一人は、全員知ってるよ。もう一人は……たぶんリーファは知らないかも。あ、でも一度は会った事あるはずだよ」

 

 アリスが指を一本、二本と立てながら残りのメンバーについて説明をすると、全員思い当たる節が無いようで首を傾げていた。

 

 カランコロン、と再びドアベルが鳴る音がした。

 見ると、またしてもコハルの見知った顔であり、その人物は店内を数度見回してからコハル達を見つけたのかぱっと表情を輝かせながらこちらへと向かってきた。

 

「お姉ちゃん! それに皆さん。こんばんわ。お待たせしました」

 

 藍色の髪と瞳。薄花桜のローブにとんがり帽子と全身青尽くめの魔法使い然とした少女。

 アリスの実妹であり、この場の全員と顔見知りでもある《藍氷の魔女》ことアイだった。

 

「ああ、やっぱりアイも居たか。そうだろうとは思ってたけどな」

 

 見込み通りだとキリトが大きく頷くと、アスナとリーファも同様だったようで同じくうんうんと頷いていた。

 これで六人。そして残る一人だが――

 

「アイちゃんがあたしたち全員が知ってる残りの内の一人だとして、あと一人って誰? あたしは一回は会った事あるって言ってたけど……」

 

 リーファが疑問を口にすると、アリスは少し困ったように頬をぽりぽりと人差し指で掻いた。

 

「んーっと……多分名前を言えばリーファ以外にはピンと来ると思うんだけど、多分その想像と今が全然違うっていうかなんていうか……。とりあえず、その人が来たら纏めて説明するよ」

 

 何となくだが、コハルにはアリスが説明に困っている理由について納得が出来た。

 恐らく、その人物はSAO生還者で――キリトと同じく、アバターをコンバートしなかった人物だ。

 ALOはランダムでアバターを生成する為、リアルとは性別以外似ても似つかなくなる事が良くある。アリスはきっと一度その人物と会って、困惑したのだろう。

 

「あー……なんていうか、そいつが男だと、俺も肩身が狭くなくて済むんだけどな」

 

 キリトがおどけたように肩を竦めた。

 確かに現在ギルドメンバーは全員見知った顔が多いとはいえ男性プレイヤーはキリト一人だ。

 只でさえ美少女なアスナを隣に歩かせていると、他のプレイヤーから嫉妬と羨望の視線を一身に集めるキリトにしてみたら今のハーレム状態はいささか居心地が悪いのかもしれない。

 そんなキリトを安心させるように、アリスは笑いながら言った。

 

「あ、うん。その辺は安心して良いよ。男の人だから」

 

 どうやらもう一人は男性プレイヤーらしい。

 それだけで候補は大分絞られた。実際に会えばそれで済む話だが、こういうのはそれを予想しているだけでも楽しいものだ。

 各々が予想を立てながら談笑を楽しみ、少しの間、落ち着いた時間が流れていった。

 

 そうして――それはついに来た。

 

 からぁんと一際大きくドアベルが鳴り、何事かと全員一斉に入り口を振り向いた。

 そしてほぼ全員が同時に目を見開き驚愕した。

 

 魔王だ。

 

 コハルは何故か分からないが一目見てそういう印象を抱いた。

 

 豪快に店内に侵入して来た人物は全身が禍々しい黒い鎧姿で、ねじれた角が施された厳つい兜をつけているためその人相は分からない。

 腕部、胴部、脚部の至るところに装飾目的なのか茨のような棘がついており、甲冑がシルエットを隠している為性別すらも不明だ。

 

 店内がしんと静まり返る中、鎧の人物はそれを意にも返さずきょろきょろと辺りを見回し、コハル達に視線を止めた。

 そしてそのままがしゃんがしゃんと音を響かせながら近づき、アリスの目の前でぴたりと止まった。

 兜の中から、くぐもった男性の声が聞こえた。

 

「遅くなって、すまない」

 

 どうやら、この人物が残りのメンバーの一人らしい。

 アリスを除いて全員が困惑に包まれるなか、話しかけられた張本人である彼女はなんの気負いもなしにふにゃりと双眸を崩し笑った。

 

「あは……何度見てもすんごいね。とりあえず、仮面取ってよ。皆にも紹介したいし……」

 

 鎧の人物はすんなりと兜を脱いだ。

 そして現われた素顔に、やはりコハルは魔王だという感想を抱く。

 

 種族はサラマンダーだろうか。アリスやクラインと同じ紅色で、少し黒の混じった長髪がぱさりと流れた。

 顔には青紫色のタトゥーが幾何学模様を描いている。

 随分と整った容姿をしており、タトゥーを含めこの世界の妖精――プレイヤー達以上に一際ファンタジーさを演出している。

 

 仮面を取った魔王は、コハル達に向き直ると慇懃に腰を折りお辞儀をした。

 

「コハルさん、キリトさん、アスナさん。久しぶりだね。そこの二人は……始めまして、かな?」

「金髪の子には、一度リアルで会ったことあるよ」

「ということは、あのオフ会でのことかい?」

「そうそう」

 

 呆気に取られるコハル達を尻目に、アリスと魔王は親しげに会話をしている。

 本当にこの魔王とコハルは会った事があるのだろうかと疑問に思い始めていた頃、アリスが苦笑しながら彼の名前を口にした。

 

「えっと、アイは初めて会うと思うけど……あと、皆もたぶん今の彼を知らないと思うから改めて紹介するね。彼はSAOでは《聖十字軍》のリーダーを務めてた――」

「ディアベルだ。今回はギルド設立の知らせを聞いて、オレも参加する為に来たよ。皆よろしくな」

 

 静寂が訪れた。

 皆、今しがた紹介された彼の姿を脳内で思い出し、そして今の彼の姿を見て、口をぱくぱくと閉口させる。

 唯一、リアルでも面識の無いアイだけが、始めましてと困惑しながらも握手を交わしている。

 

 やがて、コハル、キリト、アスナ、リーファの四名が反応を返さない事に気づいた当事者達が首を捻った。

 そして異口同音に、四人が叫ぶ。

 

「「「「変わりすぎだろう(でしょ)ッ!?!?!?!?」」」」

 

 

 

◇side アリス

 

 

 

 少しびっくりさせたいという悪戯心はあったとはいえ、やはりディアベルの変わりっぷりに皆が大変驚いてくれた。

 

 あの世界では青髪の聖騎士が、アルヴヘイムでは誰もが恐れる魔王のような容貌になっていたら、そりゃあ誰だってそうなる。わたしだって始めてALOで会った時は、事前に容姿が大きく変わっていることを知らされた上でもびっくりしたものだ。

 

「はははは。やっぱり皆びっくりするか」

「当たり前だろ! 何だってあの騎士様が魔王にジョブチェンジなんか……」

 

 キリトが皆を代表してディアベルに食って掛かったが、彼は厳しい顔には似つかわしくない楽しげな笑みを浮かべている。

 

「もう、本当にびっくりした……。でも、あのディアベルさんが仲間に加わってくれるのは凄く心強いね」

 

 アスナは胸を撫で下ろしながら、最後の仲間がディアベルであったことに安心したように微笑んだ。

 ディアベルは、笑みを深めながらとんでもないと首を振って答える。

 

「いや、それはこちらこそだよ。二人の英雄に、聖女に閃光。そしてALOでも屈指の実力を誇るリーファさんとアイさんも居るギルドに参加させてもらえるなんてね」

 

 ディアベルの言うとおり、知名度だけで言えばわたし達は結構なものがあったりする。

 わたしはさておいて、キリトはALOでも早速《ブラッキー》だなんて二つ名がつく程だし、アスナやコハルは言うに及ばず、リーファやアイだって有名人だ。それにディアベル自身も、あの世界で千人以上の規模を持つ超巨大ギルドのトップを務めるリーダーだった。

 それだけで勝てるほどこのゲームは甘くないけれど、十分以上に戦えるメンバーだと自賛したい。

 

「そういえばお姉ちゃん。ギルドの名前ってどうするの?」

 

 深藍がふと思い出したかのように疑問を口にした。

 ああ、名前か。設立するのに必要だけれど、そういえば全く考えていなかった。

 

「あー、キリトが決めてよ」

「何で俺が。リーダーのお前が決めろよな」

 

 はて、キリトは何を言っているのか。

 

「あはは。何言ってるのさ。リーダーはキリトでしょ?」

 

 わたしがそう言うと、皆は急にぽかんとした表情でこちらを見つめてきた。どうしたのだろう。

 

「えっと、アリスがリーダー……じゃないの?」

 

 コハルがおずおずと、確認するように言った。

 

「え? わたし?」

「私はそうだと思ってたんだけど……」

 

 思わず目をしばたたかせると、コハルだけでなくアスナやリーファ、アイにディアベルまでもがそうだそうだと言わんばかりに頷いていた。

 

「えーっ!? わたしがリーダーなの!?」

「逆に誰だと思ってたのよ……アリスが発起人じゃない」

 

 アスナが呆れたようにため息をついた。

 いやだって、実力的にはキリトだって居るし、《血盟騎士団》の副団長を務めたアスナや巨大ギルドのリーダーのディアベルも居るんだよ!? そんな中でなんでわたしがリーダーなの!?

 

「オレはアリスさんがギルドを作るからって聞いて来たんだ。当然、君がリーダーを務めるものだと思ってたんだけどね」

「えぇ……でも……」

「あたしはアリスにリーダーやって欲しいなー」

「私もー。お姉ちゃんがいい」

「あなたがリーダーなら、私も安心出来るな」

「悪いけど俺はリーダーなんて柄じゃないよ。お前の方がよっぽど向いてるって」

 

 皆、口々にわたしをリーダーに押し上げようと期待の篭った視線を向けてくる。

 コハルも、ほら覚悟決めちゃいなよと、笑みを浮かべながらぽんと肩に手を置いてきた。

 そして、止めとばかりにディアベルが大きく頷きながら言った。

 

「皆、アリスさんがギルドを作るって聞いて集まったんだ。人を集めるのも集団のトップに必要な才能の一つだよ。実務面で困ったことがあれば、遠慮なくオレか……アスナさんに相談してくれればいい。だから安心してリーダーを務めてくれ、アリスさん」

 

 ディアベルの言葉に、任せろとアスナが自身の胸を叩いた。

 他の皆も、わたしを安心させるように人の良い笑みを浮かべつつこちらを見ている。

 

 ああもう、頼りになるメンバーだなぁもう!

 

「あーもう分かった! 分かったよ! わたしがリーダーを務めます!!」

 

 少しやけくそ気味に立ち上がりそう宣言すると、わーっと大きな歓声が巻き起こった。

 いつの間にか、わたし達の集会はこの酒場でのいい見世物になっていた様で、周りから「頑張れよー」だの「応援してるぜー」だのといった野次も飛んできていた。

 

「けど困ったら直ぐ皆に助けを求めるからね! ちゃんと助けてよ!?」

「任せとけって」

 

 キリトがけらけらと笑いながらそう返してきた。

 そういうなら早速助けてもらおうじゃないか。

 

「じゃあキリト、リーダー命令。ギルドの名前を決めること」

「早速かよ!?」

 

 文句を言われても困る。こちとらネーミングセンスなんて皆無なのだ。

 SAOやそれ以前にやっていたゲームでもギルドやクランなどは作った試しが無いし、どうやって名前をつければ良いのかなんて皆目検討もつかない。

 思えば、SAO時代にギルドリーダーを務めていた人達は本当に凄かったんだなぁとやや的外れな感動を覚えてしまったくらいだ。

 《月夜の黒猫団》とか《風林火山》とか。ALSは《アインクラッド解放隊》だったっけ? それと《聖竜連合》のDKB等々……よくもまあそんな名前がぽんと思いつくものだ。

 

 どうしたものかと唸り始めたキリトに助け舟を出すかのように、コハルが実際のギルドを例えに出してきた。

 

「えーっと、ギルドの名前って大抵そのギルドの特色を現してたりするよね。クラインさんの《風林火山》とかは武士の集まりって感じだったし……」

「私の居た《血盟騎士団》も赤と白の騎士集団って感じだったわ。でも、今の私達って……」

 

 アスナの言葉に、全員をざっと眺める。

 種族はばらばら。見た目も様々。強いて言うなら女性プレイヤーが多いくらいだけれど、それもギルドの特色かと言われると頷けない。

 

「そもそも、アリスさんはどんなギルドにしたいんだい? まずはそこから考えてみようか」

 

 ディアベルが問題を一つずつ解決していこうと指を一つ立て、聞いてきた。

 

「んー……どんなギルドにしたいか、かぁ……。とりあえず、皆でこうしましょう! みたいなルールは作りたくないかな。強いて言うなら楽しむことが目的、みたいな」

「なるほどね……それなら、後は何かギルドのモチーフとなるものは無いかな」

 

 そういわれても、あまりピンと来るものはない。

 ああでもないこうでもないと議論をしていると、キリトが突然変な事を言い出してきた。

 

「もうアリスがリーダーなんだし、《不思議の国》とかでもいいんじゃないか?」

「えぇー……ないわー……」

 

 わたしがリーダーだから、わたしのアバター名から連想してギルド名にするなんて恥ずかしすぎる。

 だが、意外にもディアベルがそれに乗っかってきた。

 

「ああ、その観点はいいかもしれないね」

「ええっ!? 恥ずかしいよそんなの!」

 

 わたしが悲鳴をあげると、ディアベルは違う違うと苦笑しながら続きを口にした。

 

「いいというのは、童話や神話から名詞を引張ってくる事さ。何も一から考えなくてもいいんだし、実際にそういうギルドも結構あったりするんだぜ」

 

 そう言う事かと納得した。

 確かに昔々から語り継がれる話に出てくる名詞というのは、往々にしてそのイメージが着けやすいものだ。

 神様の名前や、その話に出てくる武器なんかの名前がゲームに流用されているのもよくある話だ。

 

「童話というと……さっきの不思議の国のアリスとか、あとはシンデレラとか?」

「ジャックと豆の木に……白雪姫……」

 

 童話のタイトルをそれぞれが思い出しながら口にしていると、リーファがあっと声を上げた。

 

「白雪姫といえば、七人の小人とかって居たよね。あたしたちも丁度七人だし、使えないかな」

 

 七人の小人といえば、わたしでもよく知っている登場人物たちだ。

 女王から逃げ、森で迷っていた白雪姫を助ける全部で七人居る小人達で、普段は陽気な歌を歌いながら鉱山で宝石を掘る仕事をしている。

 その小人達が仕事中に歌っている歌もまた特徴的で、しばらく聴いていなくても直ぐに思い出せる位には記憶に残る。

 

 そしてリーファの言うとおり、今のわたし達も丁度七人だ。これは確かに使えるかもしれない。

 

「七って数字は色々なもので使われてるわよね。七つの大罪とか……」

「七不思議とか、七人ミサキとかな」

 

 からかう様にキリトが言うと、アスナは顔を一瞬青ざめたあとに、もう! といって怒りを露にキリトを叩いた。

 七不思議は学校の怪談……だっけ。よく覚えてないけど怖い話だったはず。けれど七人ミサキってなんだろう。後でこっそりコハルに聞いてみよう。

 

「あはは……。でも七人の小人だと意味が通らないし、私達なら……《七人の妖精》?」

 

 コハルが苦笑しながら言った名前は、確かにわたし達を的確に表しているのだけれど、何か物足りないような気がする。

 そのまますぎて、出来ることならもうちょっと捻りたいところだ。

 わたしの表情からそれを察してくれたのか、それじゃあとアスナが提案してきた。

 

「それなら、外国語に翻訳してみる? 英語だとセブン・フェアリーズになるよね。フランス語だとセプト・フィース」

 

 おお、なんだかそれっぽくなってきた。

 一応、母国……アイスランド語に翻訳してみたものの、あまりしっくりと来なかった。

 

 キリトがユイちゃんを呼び出し、彼女に翻訳サイトへとアクセスしてもらうことで色んな外国語への変換を試みながら、ああでもないこうでもないと意見を交わしていく。

 そして不意に、ディアベルが呟いた。

 

「セプテム・メディオクリス」

 

 ふいに出されたその言葉が、一体どこの国の物か分からなかった。

 ディアベルはゆっくりと口を開いた。

 

「ラテン語だよ。大学の授業で習っててね……妖精とかのファンタジー系の単語も趣味で調べてたんだ」

 

 そう言って、照れくさそうにディアベルははにかんだ。

 口の中で、彼が言ったラテン語を何度か反芻してみる。うん、なんかかっこいい。

 

「いい。いいね。なんだか呪文みたいで格好良い!」

「ラテン語も、よくゲームなんかで使われる言語だしな。俺もいいと思う」

 

 どうやら、皆もその読み方に不満は無いようだ。

 そうして満場一致で、わたしたちのギルド名がここに決定した。

 

 ギルド名の決定と、その設立を祝そうと全員が新しく飲み物をオーダーした。

 はらはらとわたし達のやりとりを見守っていたギャラリーも祝ってくれるらしく、次々と注文が入り店員のNPCが忙殺気味にばたばたと店内を駆け巡る。

 

 やがて、全員に飲み物が回り、店内の視線がわたしに集中した。

 音頭を取れと言う事らしい。わたしは席を立ち、グラスを掲げ店中に聞こえるように大きな声で、高らかに声を上げた。

 

「それじゃあ、新ギルド《七人の妖精(セプテム・メディオクリス)》の設立を祝して!! 乾杯!!!」

 

「「「「「「乾杯ッ!!!」」」」」」

 

 からぁん、とグラス同士が打ち鳴らされた音が高く響いた。

 そしてそれは直ぐに喧騒に掻き消され、楽しそうな笑い声が次々と沸き起こっていく。

 

 わたしたちのギルドはこうして始まった――




原作小説ではアスナは一人称が「わたし」だということについ最近気づきましたが、アリスとコハルの一人称を分ける為にアリスを「わたし」という一人称にしてしまった為、アスナはこれまで通り「私」になります。

そしてディアベルはSAOifのイベント内で主人公達の事を呼び捨てにしてましたが、私のディアベルのイメージが丁寧な大人で固定されてしまっているのでこの二次創作ではさん付けで呼んでいます。

登場人物が多いと書き分けられなくてぐっちゃぐちゃになってしまう。出来るだけ地の分で保管したりはしてますが、分かりにくかったらすみません。

・七人ミサキ
四国や中国地方に伝わる亡霊の集団。その集団を目撃してしまうと高熱に見舞われ殺されてしまいます。そして取り付かれ殺されると、その七人の内の同数が成仏し、死んでしまった被害者が新たに七人ミサキとして彷徨い続けることになるという大変恐ろしい怪談です。

アリスはコハルに詳細を聞きましたが、怖くなってその日の夜はずっとコハルにくっついて寝ていました。すべてコハルの計画通りです。
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