SAOif 紅の戦姫と蒼の聖女   作:百合好きの獣

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思い付きのお話


閑話 Bの話

◇Side キリト

 

 

 

 ALOにおける大規模ギルドイベント『フェアリーズ・ウォー』において優勝した俺達≪七人の妖精達≫(セプテム・メディオクリス)

 ALOという今やVRMMOシェア最大手であるタイトルの、大規模イベントというだけあって優勝賞品は豪勢なものだった。

 優勝旗やトロフィーといった限定アイテムも当然ながら、なんとギルドの拠点となるギルドハウスを進呈されたのだ。

 白亜の木造建てコロニアル様式の洋館。さらに二階建て。最初に贈与予定商品としてのスクリーンショットを見せられた時、俺は昔家族で兵庫に旅行に行ったときに見た、舞子公園内にある洋館を思い出していた。

 さらに驚くことに、その立地も央都≪アルン≫内にある。同じ場所に同じ規模のギルドハウスを建てるとなると、億単位のコルが飛んでいくことだろう。

 かなり太っ腹な優勝賞品に思えるが、実は意外と考えられていたりする。

 コルやリアルマネーで、というのはeスポーツがそこそこ普及している現代とはいえあまり醜聞がよろしくない。リアルマネーはいわずもがな、コルにしたって下手な額を与えてしまえばギルド間のパワーバランスを著しく落とす可能性がある。さらに、PKもできるALOであるから、賞金狙いの集団PK騒ぎ……なんてのも想像に難くない。

 しかし、ALO運営としては初の大型イベントということで、しょっぱい景品を出すわけにもいかない。それ以降のイベントの盛り上がり具合にも直結することなわけだから。

 そこで、ギルドハウスというわけだ。

 ギルドハウスといっても、その機能はそこまで多いわけじゃない。

 主な機能としては、ギルドメンバーに限り無償での寝泊まりが出来るという事と、ホームポイントとして登録することが出来る事、通常のプレイヤーハウス同様好きなようにカスタマイズ出来ること等があげられる。

 そして所有権は、そのギルドが解散又はギルドマスターが権利を放棄しない限り無くならないということだ。それによって、賞品を奪われる危険性はほぼ無いということになる。

 まあ、デメリットもないわけじゃなく、ギルドハウスには維持費がかかるのだが……そこは大会優勝賞品。維持費は無料と来た。

 俺達はギルドとしては新設したばかりで、ハウスはおろかたまり場というのも無かった。強いていうならギルド結成時に集まったあの酒場だが……あそこは俺達のようないろんな意味で目立つメンバーが集まりギルドを結成した場として日夜ごった返している。変な箔がついてしまったあたり、あいつらの知名度の高さにため息をつきたくなった。

 そんなこともあって、このギルドハウスという優勝賞品は俺達にとってもろ手を挙げて喜ぶべきもので、初めてハウスに到着した時など大はしゃぎしてしまったくらいだ。

 まあ、維持費がかからないとはいえ、管理は大変だし広すぎるからどこから手を付けていいかですぐに現実に戻されたのだが。その辺は団長であるアリスに丸投げしてある。もっとも、あいつもどうしようと頭を悩ませていたからリズベットあたりに泣きつくだろう。

 

 閑話休題。

 

 優勝賞品はギルドハウスだったわけだが、なんと副賞が存在する。

 これはギルドへの賞品というより、大会へ参加した10人へ向けてのものだ。

 内容は、ギフトカタログ10人分。

 性別も年齢も多種多様なALOプレイヤーの誰が優勝しても満足してもらえるであろう運営の細やかな配慮が見て取れるが、お中元かよと突っ込みたくなったのは俺だけじゃないはずだ。

 

 で、肝心のギフトカタログなのだが……これが中々興味をそそられた。

 直接サイトで選ぶタイプなのだが、ページ数はゆうに50を超え種類がかなり多い。

 いや、多すぎだった。

 時折、お、と思うものもあったが、そこまで必要じゃないしな……とページを進めている内に結局何がいいんだっけとなる有様だった。

 他のギルドメンバーも同様だったらしく、喧々諤々議論を重ねた結果、それなら皆で旅行に行こうという結論に至った。

 カタログには、一泊二日の旅行プランも入っていたのだ。

 神戸牛1kgより余程いい提案だったし、俺達は全員リアルでも友人知人同士。

 男女比が女性に大きく偏っているのと、最年少であるアイ――アリスの妹は中学生という問題はあったが、そこは解決策を我らが参謀三人組が用意してくれた。

 

 旅先は熱海。泊まる旅館は海まで徒歩1分も掛からないオーシャンビューの老舗。

 旅費交通費はかからず、美味いものを食べ、温泉で癒される気ままな優勝記念旅行――

 

 とは、行かなかった。

 

「いやあおめェは話が分かるなァ!」

「ははは、それほどでも」

 

 来なきゃ良かったよ……

 

 雲ひとつ無い、星々が踊るように輝く透き通るような夜空。

 柵の向こうには漆黒の海が、まるで鏡面のように空を写し、見渡す限り全てが星空の一大パノラマだ。

 絶好のロケーションで、今日1日はしゃぎ疲れた身体を、ゆっくりと天然温泉で癒す……はずが、俺の心はどうしてこうなったと、暗く沈んでいた。

 湯舟でバカ騒ぎする大人二人を横目に、口元までお湯に浸かりぶくぶくと泡を吹いてみるが、暗鬱とした気分は泡と共にはじけて消えるなどという事は無かった。

 

 参謀組三人が、俺達で旅行に行くときにおこる諸問題に対して投じた解決策は至極単純で、要は引率の大人を連れて行けばいいというものだった。

 俺達のギルドは7人。そして副賞で送られたのはカタログギフト10人分。差し引き残りの3つで、他の大人を誘えば問題ないという。

 その大人として白羽の矢が立ったのが、勤める会社がシフト制の為ある程度自由の利くクラインと――

 

「はははは……」

 

 先ほどから俺と同じく遠目に大人二人を眺めては乾いた笑いを漏らしているのは、ノーチラスこと後沢鋭二。クラインと合わせ二人目のギルド外からの参加者だ。

 ノーチラスとはSAO時代ボス攻略戦で何度となく肩を並べて戦った事もあり、俺達全員とは言わないでもギルドメンバーの中では知り合いは多い方だ。知らない顔というのはスグとアイだけだろうし、その二人ともALO内では会っていた筈だしな。

 

 大人二人……クラインとディアベル――ディアベルはまだ学生だが、成人はとうに迎えているらしい――は先ほどから湯に浮かべたお盆に乗った、升と徳利で早くも宴会気分だ。

 貸切浴場だと湯に浸かりながら地酒が飲めるという事に大はしゃぎしていた辺りまではまあ仕方ないなぁと苦笑混じりに見守っていた。あまり飲み過ぎてもいけないと徳利一つだけだというから、完全に油断をしていた。

 湯に浸かりながら酒を飲むということは、量が少なくても酔いが回るのが早いというわけで。ディアベルについては分からないが、クラインは酒癖があまり良くないということを失念していたのだ。

 結果。

 

「だよな! やっぱ胸はでっかくねェと!」

「ああ、大は小を兼ねるともいうし、大きさは男のロマンだ」

 

 酔いの回った大人たちはなんとまあ品の無い話で盛り上がること盛り上がること。

 最初は今回の旅行メンバーの中で誰が可愛いかという話だった。それを切り出したのは酔い始めてきたクラインだったが、確かに今頃女風呂で女子トークに花を咲かせているであろうメンバーたちは美人揃いだ。

 アスナは言わずもがな、コハルやアリス、アイ。身内贔屓になるがスグだって紛う事なき美少女だ。それに今回奇跡的に参加することができたもう一人についても、美少女というか――今の俺達にとっては雲の上の人物なわけで。

 その話題になるのは分からないでもない。

 

「あいつらと一緒にいると割と大変なんだぞ……」

「大変って……?」

 

 俺のつぶやきにノーチラスは首を傾げた。

 

「SAO時代アスナといる時もそうだったけどさ、あいつらの内誰かと何かしてると視線が痛いんだよ……二人以上と一緒だと、尚更」

「ああ、そういう……」

 

 ノーチラスは納得したのか、ご愁傷様というような目を向けてくるがこっちとしてはたまったものじゃない。

 女性は視線に敏感だというが、男でもああいう嫉妬のこもったトゲトゲしい視線は分かるものだ。

 最近ではアスナだけでなく、コハルやスグ……リーファにアイといった面々とも一緒にいることが増え、その度合いは増している。

 唯一、アリスはなんというか……マスコット的な立ち位置というか、その見た目故か嫉妬を向けられる事は少ない。アリスと同い年のリーファやさらに年下のアイといる時ですら嫉妬の視線は感じるので、そこはアリスに同情を禁じ得ないが。もっともそんなことを本人に言ったら血祭りにあげられるので、口が裂けても言えないけどな。

 

「おれも、そういう経験はあるからその気持ちはよく分かる……」

 

 ノーチラスも俺と同じ体験をしたことがあると、どこか遠い目をしながらも俺に同情と共感の意を伝えてくれた。

 そういえば、ノーチラスの連れにしても見た目もさることながら今やその地位が地位だ。普段は変装をしているだろうが、何かと近くに居るであろうノーチラスにとってそういう視線というのはなじみ深いものがあるのだろう。

 

 俺とノーチラスがお互い苦労してるんだなという共感から少し心の距離を縮めていると

 

「キリの字! おめェはー……誰のがいいんだァ!?」

 

 といつのまに接近していたのか赤ら顔のクラインが升を片手にずいと顔を近づけてきた。

 

「誰のって、何の話だよ……」

 

 酒臭さに顔を顰めながらそう問い返すと、クラインは当然のように答えた。

 

「何っておめェ、胸の話に決まってんだろォー! 胸! バスト!」

 

 この酔っ払いは完全に自制が飛んでしまっているらしい。大声でそんなことを喚きだした。

 

「勘弁してくれよ……そういうのは、ほら、大人同士で話してくれ」

 

 俺が距離を取ろうと少し離れると、背後からがしっと肩を捕まれた。誰だと振り返ると、青髪……ではなく日本人らしく黒髪の騎士風好青年ことディアベルだった。

 

「オレ達はもう、結論は出てるんだよ。キリト。次は君の番だ」

 

 この男の表情は別に赤くはなく、酔ってるんだか酔ってないんだか分からない。が、ど真面目な表情でこんな話題を振ってくるに酔ってるんだろうなとは思う。仮想世界での騎士然としたディアベルが、俺の頭のなかでガラガラと音を立てて崩れて行った。

 助けてくれ、と近くにいたノーチラスに視線を送ると、なんとすすすと音もなく遠ざかって行くのが見えた。そして片手でごめんとジェスチャーまでしている。

 裏切られた……。

 先ほど感じていた、心の距離が縮まったというのは気のせいだったのだろうか。

 違うと信じたい。

 

「結論って、どういう風に?」

 

 意図せず孤立無援となってしまった俺は、とりあえずの時間稼ぎを試みることにした。

 その試みはどうやら成功したようで、二人ともしたり顔でこう宣った。

 

「大きさという点では、やはりアリスさんに軍配が上がったよ」

「ま、あいつがちんちくりんじゃなければ尚良かったんだけどな!」

 

 ガハハハと下品に哄笑するクラインと、何故か得意げなディアベル。

 誰の胸が一番魅力的かという恐ろしい問いに、俺はどうやって切り抜けるかと思索を廻らせ始めた。

 

 

 

◇Side アリス

 

 

 

 全部聞こえてるんだぞ、クライン。

 

「あはは……」

「もう、クラインさんは……」

 

 今も聞こえる豪快な笑い声に、明日奈と小春は苦笑を浮かべている。

 スグちゃんと深藍は、どう反応すればいいか分からないといった表情を浮かべ、顔を見合わせている。

 

 とりあえず、後でクラインは絞める。

 誰がちんちくりんだ。わたしにはまだ成長の余地がある。あるよね?

 少し不安になった。

 

「でも、深紅さんってやっぱり大きいよねぇ」

 

 じーっと、穴が開くんじゃないかとばかりにわたしの胸を凝視しながら、本日のゲスト三人目――VRアイドル≪ユナ≫こと重村悠那がほうとため息をついた。

 さすがにそこまでまじまじと見られると、同性とはいえ恥ずかしさがあるので、少し腕で隠しながら応える。

 

「別に、そこまでおっきい訳じゃないよ……」

「えー、信じられないなぁ……」

 

 疑いの声を上げながらも、悠那は私の胸から視線を逸らさない。本当に、穴が開いちゃうんじゃないかな……。

 

 ユナ……悠那とはあのライブから何度かリアルヴァーチャル問わず会い、呼び方こそノーチラス共々さん付けだけれど、今では以前より気安いというか砕けた雰囲気で接してくれるようになった。むしろ世界のアイドルたるユナにわたしは敬語を使わなきゃならないはずなんだけど、それは今でも固辞されている。

 私の胸を見ながら「どれくらいあるんだろう……」とつぶやき始めた彼女に苦笑をしていると、背後からわしっと胸を掴まれた。

 

「わっ」

「うん、お姉ちゃんは大きい! 被告は嘘をついています!」

「でかした深藍巡査!」

 

 誰かと思えば、案の定深藍だった。そして誰が被告だ、誰が。

 深藍はわたしの胸をぐにんぐにんとおもちゃのように弄り始めて悠那とはしゃいでいる。

 くすぐったいだけだからいいけど、あまり乱暴に扱わないでほしいな。

 

 深藍のテンションがやたら高いのは、実は憧れていたVRアイドル≪ユナ≫の中の人たる悠那に会えて、あまつさえサインや次回ライブのチケットを貰えたりで絶賛爆上げ中らしい。

 悠那も色々と縁のあったわたしの妹ということで深藍を可愛がってくれており、どこか通じ合うことがあったのかこうしてふざけ合うまで打ち解けていた。

 

「ね、小春。深紅ってサイズいくつくらいなの?」

「なんで私に聞くのかな……?」

 

 少し離れた別の湯舟では、小春と明日奈がわたしの胸のサイズについて語り合っていた。

 コハルはなんでと言っていたけれど、まあ、わたしと同居しているってことを知っているのだから、そこから下着のサイズなりなんなりで知らないかなと推察したってところだろう。

 そして実のところ明日奈の推察通り、おそらく小春は知っている。それをわたしの水着選びの時にすいすいとぴったりなサイズのものを持ってきたことから一目瞭然だろう。

 

「実際、深紅ちゃんっていくつだった? 健康診断の時」

 

 スグちゃんがすーっと滑るように近づいて尋ねてきた。皆興味津々だなぁ……そんなに気になるか、わたしの胸は。

 これ以上この話題を続けるのもあれだし、ここは素直に答えてしまって切り上げようとわたしは以前測った時の数字をそのまま口にした。

 

「……93」

 

 ちょっと恥ずかしくなって言葉尻が窄んでしまったのは許してほしい。

 わたしが告げた数字に、各々が様々な反応を見せてくれた。

 悠那や明日奈、深藍なんかはやっぱりといった風に納得した表情で、小春は知ってたと苦笑している。

 そしてスグちゃんとはいえば。

 

「よかった、まだ一緒だった……」

 

 と安堵している。

 まだ、というのは、わたしとスグちゃんはなんと中学生に上がって初めて健康診断をした時に同じ数字だったのだ。

 それからわたしは二年半ほど健康診断を受けていなかったから分からない状態だったが、それが今、お互い同じ位に成長したと知れて嬉しく思ってくれたのだろう。

 わたしも同じ悩みを共有できるというのは嬉しいのだけれど、同じ位成長したというのならなぜわたしの身長はまだ伸びないのだろう。

 世界は残酷だ。

 

「え、一緒って直葉ちゃんと深紅が? ……深紅の方がおっきく見えるんだけど」

 

 待ったをかけたのは明日奈だ。わたしとスグちゃんの胸を交互に見比べ首を傾げている。

 ……一応、なぜそうなっているかという答えは持っているものの、あまり答えたくない。

 代わりに、小春が小さな声で答えた。

 

「……たぶん、身長の差、だと思うよ」

 

 やっぱり世界は残酷で、無慈悲だ。

 わたしは暗鬱とした気分を、泡と共に消えてしまえと口元まで湯に浸かり、ブクブクとカニのように泡を立て始めた。

 ざぷざぷと波立つ湯舟は、どこかわたしの心内を写しているようだった。




ノーチラスとユナって結構好きなんですよね。
せっかくこの二次創作で生存してくれたので、これからも登場させたいなぁと。
売れっ子アイドルが一泊二日で旅行行けるの?とも思いましたが、丁度、偶然、たまたまオフだったんです。二連休です。
エーくんがお酒のんでないのは、この時点では未成年という設定だからです

Bの話のBはBustのB!

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