SAOif 紅の戦姫と蒼の聖女   作:百合好きの獣

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GGOのゲームが2月に発売されますね。自分のアバターを作ってプレイできるみたいです。私、このゲームが出たらアリスを作ってキリトやシノンといちゃこらするんだ……

※以前投稿したものが不完全な状態で投稿されていたため、修正し、再投稿しています。申し訳ありませんでした


第一層攻略5

Side アリス

 

 

 

 十二月四日、午前十時。私たちがデスゲームに囚われてから、丸四週間。クリアまでの道は遠く険しく、頂は遥か遠く。だけど最初の一歩、それを私たちは今日、踏み出そうとしている。

 

「みんな……もう、オレから言う事はたった一つだ!」

 

 《トールバーナ》中央噴水広場、集まった総勢四十六人のプレイヤー。その中心に立つディアベルが、都合九十と二つの視線を一身に浴びながら、右手を左腰に走らせ、銀色の長剣を音高く抜き放ちながら宣言する。

 

「…………勝とうぜ!!」

 

 広場を揺るがすほどの巨大な鬨の声。その雄たけびを合図に私たちの攻略が、始まった――。

 

 

 

 

 

 

 ――広い。

 

 ディアベルさんが大扉を開けると、中に広がっていたのは、奥に向かって伸びる長方形の部屋。左右の幅は大体二十メートル。奥行きは……暗くてよく見えない。

 

 ――と。

 

 ぼっ、ぼっ。と部屋の左右の壁につけられていた松明が燃え上がり、部屋内を薄暗いながらも照らし出す。燃える松明の数が増えるにつれ、部屋内部が徐々に明るくなり(アリスは部屋内の明度が上がっていってるんだよ、と言っていた)その全容を明らかにさせる。

 

 ひび割れた石床や壁。その各所に飾られた大小無数の髑髏。そして部屋の最奥部には――巨大な玉座と思わしき椅子と、それに鎮座する何者かのシルエット。

 

「――行くぞ!」

 

「グルルルルラアアアアアッ!!!」

 

 十二月四日午後十二時四十分。こうして、第一層ボス及び、ソードアート・オンライン正式サービス開始後初のボス討伐戦が、幕を上げた。

 

 

 

 

 

 

「アリス!スイッチ!」

「わかった!!」

 

 攻略は順調だった。前衛パーティは体力を八割キープし、スイッチローテも完璧。取り巻き潰しも数体零れはあるものの、私たちやキリトたちのアシストもあり、前衛の邪魔をさせず、着実にコボルトの王の体力を削っていった。

 

 片手剣単発技《ソニック・リープ》で取り巻きである《ルインコボルド・センチネル》の喉元を貫き、ポリゴン片に変えながら戦況を確認する。

 

 既に取り巻きのポップは三回目。つまり、あと少しで四本あるHPゲージの三本目が空になる。

 

 この第一層ボス《イルファング・ザ・コボルドロード》は、ボスといえばおなじみの、体力が減ると行動が変わるタイプのボスだ。

 

 こいつは、HPバーが残り一本になると腰に差した湾刀《タルワール》を抜き、これまでとは違う攻撃手段かつ攻撃が激しくなる。

 

 ただ、攻撃方法が多少変わるだけなので、注意していれば特に問題はない――はずだった。

 

「主力部隊、ボスを囲め!振り下ろし攻撃が来たら回避しつつ攻撃を続けてくれ!!」

 

 今、HPバーの三本目が消失。残るはあと少し。後は縦振りの多い曲刀のソードスキルにさえ当たらないように気をつけていれば――

 

 ……あ……れ?

 

 曲刀は、あんなに刃の反りが浅かっただろうか。あんなに、刃が薄かっただろうか。あれはまるで……

 

「だめだ!下がれ!!カタナのソードスキルが来る!!全力で後ろに跳べーーーっ!!」

 

 少し離れたところでキリトが絶叫する。

 しかし、その警告はあまりにも遅過ぎた。

 

「ぐぅっ……!!?」

 

 紅いエフェクトを纏ったカタナが、水平方向に三百六十度、その光を撒き散らす。

 

 ボスが放った範囲技を、前衛を勤めていたC隊全員、そしてディアベルの六人が受け、さらにスタンする。

 

「追撃が……!」

「援護だ!……くそっ間に合わねえ!!」

 

 ボスのカタナが薄赤い光を纏う。追撃を放とうとしている。狙いは……ディアベル。

 

 私の身体は、弾かれたように駆け出していた。

 駄目だ。ここで死んじゃだめだ!!!

 死なせて……たまるもんか!!

 

 ボスのカタナが、身動きが取れないディアベルを斬らんと迫る。

 しかし私も、既に間近に迫っていた。

 時間の流れが、引き伸ばされるような感覚。

 周りの動きが、声が、すべてがスローモーションで流れていく。

 彼我の距離はもう数メートルもない。

 間に合う。間に合ってみせる。

 

 もう少し、あと少しで……

 

 手が、届く……!

 

「間に……あええええええええええっ!!!」

 

 ボスのソードスキルを、全身のバネを使って放った片手剣突進技《レイジスパイク》で弾き返す。

 

 赤と青の光が交錯する。静止は一瞬で、直ぐに甲高い金属音と共にお互いの剣技が相殺、二メートル以上もノックバックする。

 

「……そこの人!!」

「は、はいっ!」

「何やってんの!早くディアベルさんを下がらせて!!」

 

 スタンから回復したらしい、割と近くに居たC隊の一人に声を掛け、下がらせる。

 

 他の皆は……まだ、動けていない。

 

 しかしボスは、悠長に待ってなんてくれなかった。

 

「グルアアアアアアアアッ!」

「ッ!!」

 

 次々と繰り出される、未知のソードスキル。後で聞いた話だと、キリトは私よりも遥か先、第十層まで辿り着いていて、そこでカタナスキルを使うモンスターと戦ったことがあったそうだ。

 

 だけど私は自力でクリアできたのは第八層まで。当然、カタナスキルなんて見た事が無い。

 

 だから私は、目で見て、その動きを予測した。

 

(……左上段から切り下ろし!!)

「ガアアアアアアアアッ!!」

「……っあああああああっ!!」

 

 上下左右、縦横無尽にソードスキルが放たれる。

 

 初見の技を、そのモーションの予備動作を見ることで予測し、ソードスキルを走らせる。

 

 STRの低い私では、ボスのソードスキルと真っ向から打ち合えば力負けしてしまう。だから全身のバネを使い、スキルのモーション中に身体を意図的に動かし、威力を底上げさせなければならない。

 

 しかし、ソードスキルは少しでもモーションにズレがあると、技は発動せず、身体が硬直する。

 

 ボスの技は、ベータテスト時代より威力が低くなっているように思えた。曲刀から刃の薄い刀に変わったせいだろうか。おかげで、どうにか非力な私でも対抗できているが……しかし代わりに、技のスピードが恐ろしく速くなっている。

 

 もし、身体の動きが少しでもズレたら。もし、技の予備動作を見切れなかったら。一歩でも間違えれば、即――死ぬ。

 

(頭が……割れそう……!)

 

 右下段斬り払い。《バーチカル》で相殺する。

 左上段振り下ろし。受けるのは危険。上体を傾け、剣で軌道を逸らす。

 右上段横なぎ。身を屈めてやり過ごす。

 

 ボスの攻撃は苛烈を極め、私は全精神力を注ぎ込み、その技を一つ一つ相殺する。

 弾く、逸らす、躱す――

 いつまで持つか、分からない。けど、他のみんなが動けるようになるまで、私がボスを引き付けなければ……。

 

 その命がけの綱渡りは、突然終わりを迎えた。

 

(――しまっ……!)

 

 私は、その予備動作から上段からの垂直切りと判断し、その軌道を逸らすため同じく垂直切りのソードスキル《バーチカル》を発動させた。それが間違いだった。

 

 上段から振り下ろされたボスの刀が、くるりと反転し、突如下段からの切り上げに変わる。

 

「……うあっ!!」

 

 当然、モーションに入っていた途中の私は避けることが出来ず、直撃。さらに最悪な事にスタンまで食らってしまった。

 

 ボスの刀が赤く光る。上段からの切り下ろし。スタンしている私は避けられない。

 

(あぁ……死んだな)

 

 死が目前に迫っているというのに、私の心は落ち着いていた。よくやった。ディアベルを助けられたじゃないか。十分だ。

 ごめんね、父さん、母さん。ゴメンね、ミオ、スグちゃん。

 

 ――ごめんね、コハル。

 

 どうやら私は、ここまでらしい。

 終わりを悟り、目をつぶる。

 

 だが、いつまでたっても死はやってこなかった。

 

 恐る恐る、目を開くと、浅黒い肌の大柄な体躯の男性が、身の丈程もある斧でボスのソードスキルを弾き返していたところだった。

 

「よう嬢ちゃん。ナイスファイトだったな」

 

 ニカッと、歯を見せて笑うのは、えっと――そうだ。エギル。ボス攻略組の中でも、一際異様な雰囲気を持っていたプレイヤー。

 そして――。

 

「アリス!!」

 

 倒れる私に駆け寄り、抱き起こすのは……コハル。ああ、そんな泣きそうな顔して。

 

「ごめん……ごめんね……!アリスがディアベルさんを助けてくれたのに……私、動けなくて……!」

 

 泣かないでよ、コハル。私は大丈夫だから。だから今はボスを――

 

「アリス、よく頑張ったな。後は俺……いや、俺達に任せろ」

「ゆっくり、休んでて」

 

 ざっ、と。灰色のコートをなびかせキリトとアスナがボスに対峙する。そして回りから聞こえる剣戟の音。ああ、良かった……皆、復活したみたいだ。

 

 ボスのHPは後わずか。そしてこちらは数人欠けたものの、ほぼ万全の状態のレイドパーティ。

 

 もう、大丈夫だよね。

 

 私は勝利を確信し――

 

「……やっちゃえ、キリト、アスナ」

 

 そして、安心したまま、意識を失った。

 

 

 

 

 

 

「……ぅ」

「アリス!……良かった……目を覚ました……」

 

 目を覚ますと、そこはまだ変わらずボス部屋だった。部屋のあちこちでボス討伐組の面々が会話しているのが見える。どうやら、ボスは無事に倒せたらしい。

 

「私……もしかしたらもう目が覚めないんじゃないかって……不安で……!」

「大丈夫だよ、HPもまだ残ってるし。……ありがとう」

 

 私にひしっと抱きつきながら嗚咽を漏らすコハルの頭をよしよしと撫で、安心させる。そういえば、キリト達の姿が見えないけど……

 

「お、今回のMVPが目を覚ましたか」

「ぅえ?MVP……?」

「ああ、嬢ちゃんが居なければ、恐らく……死者が出ていたかもしれん。誰も動けなかった状況で飛び出して、味方を救ったんだ。間違いなくMVPだよ」

 

 手放しに賞賛され、少し気恥ずかしい。

 声を掛けてきたのは、エギルだ。ボス戦で消耗したのか、さすがに疲れた顔をしている。

 

 私は、エギルにあの後どうなったのかを聞いた。

 

「――そんな、事が」

 

 あの後、ボスはキリトが先頭に立ち、無事討伐できた。しかし、そこでめでたしめでたしで終わらず、ディアベルのパーティの一人が、カタナスキルを知っていたかの様に対抗していたキリト――そして私を糾弾した。そして私やキリトがベータテスターであることが発覚し、その憎悪がベータテスター全体へ波及しそうになった……ところでキリトが一人、情報を独り占めする悪のベータテスター《ビーター》となったことで、怨嗟の対象がキリト……《ビーター》へと集約した。

 

 私は、ここに来るまでに何人も初心者のプレイヤーを助けていたこと、そしてディアベル自身から擁護されたことで《ビーター》にはならず、ただの《ベータテスター》として認識されたようだった。

 

 どうりで、さっきからひそひそと腫れ物を扱うかのように見られてるわけだ。

 

「嬢ちゃんが気に病む必要はねえさ。あれはあいつの選択だ」

「そう……それで、キリトは?」

「ああ、ついさっき第二層に向かったばっかだ。今から追いかければ、追いつけるんじゃないか?」

 

 私はエギルにありがとうと伝え、未だべそをかいているコハルを連れて、上層へと続く階段を上り始めた。

 

「嬢ちゃん! また次のボス戦でもパーティを組もう! あいつにもそう伝えておいてくれ!」

「分かった! ……あと、私は嬢ちゃんじゃなくて、アリス! またね、エギル!!」

 

 

 

 

 

 

「やあ、目が覚めたのか」

 

 第二層。草原がどこまでも広がっていた第一層と違い、ここはテーブル状の山々が端から端まで連なり、その上を柔らかな草が覆っている山岳地帯。

 

 その風景が一望できる場所に、キリトは居た。

 

「……キリト、その」

「ああ、気にすんなって。別に俺はソロだし、悪名が流れようが対した痛手じゃないさ」

「そうじゃなくて、そのコート……全身真っ黒でなんか、不審者みたいだねって」

「ふしっ!? ――なんてことを言うんだお前は!!!」

 

 いやぁ、だってなんか、ねえ? 全身真っ黒尽くめだなんて、ファンタジーな世界だからいいものの、現実で着てたら間違いなく痛い人扱いだ。おまけにキリトの童顔と相まって不自然さ極まりない。

 

「ありがとね」

「黒は男の色だ! それの何が――ん? 何がだ?」

「私を……ベータテスターを庇ってくれたんでしょ? 一人で悪者になってまでさ」

 

 彼はソロだから痛手じゃない、なんていったけど、そんな事はない。彼の悪名が広まったことで、以降、彼とパーティを組もうとする最前線のプレイヤーは殆ど居なくなるだろう。

 

 それはすなわち、最前線に居る限り、この危険と常に隣り合わせの世界で一人きりということになる。

 

「さっきも言ったろ。気にすんなって。それに、庇ったのは俺だけじゃないさ」

「というと?」

「まずはディアベル。あいつ、自分が元ベータテスターだって事を自白したよ。その上で、リーダーを辞任。ただ、俺とお前に受けた返しきれない程の恩を返せると思ったときに、帰ってくるってさ」

 

 そっか……。彼が前線から引いたのは残念だ。けど、これで彼を縛っていた負い目は無くなった。だから帰ってきたとき、それはもう素晴らしいリーダーとして戻ってくることだろう。

 

「それと、コハル」

「コハルが?」

「『アリスは危険を犯してディアベルさんを助けたんですよ!! なんでそんな風に言うんですか!』って。いや正直、ビビった。あんな剣幕のコハル初めて見たよ」

「わーーっ! わーーーっ!! キリトさん!! 言わなくていい!! 言わなくていいですから!!」

 

 そう、コハルが私を庇ってくれたんだ。キリトがびびっちゃうくらい怒って、私を。

 

「も、もう!アリスも!にやにやしない!」

「ふふふ。コハル、ありがとうね」

 

 そう言われてもにやける顔が抑えきれない。そんな私を見て、ぷくっと頬を膨らませぷりぷりと怒るコハル。あー可愛いなぁ。

 

「さて、それじゃアリスも目覚めた事だし、転移門の有効化しにいくか」

「もう行くの?」

「ああ、景色も堪能できたしな。まあ、また直ぐに会えるさ」

 

 ぐーっと伸びをしてから、第二層主街区である《ウルバス》へと歩き出したキリト。

 

 ……その後を何故かアスナが着いていく。

 

「あ、あれ? アスナも一緒に行くの?」

「ええ。彼にはちょっと聞きたいことがあってね。アリス、コハルも。また会いましょう?」

「うん。アスナさんも、気をつけて」

 

 去っていく二人の背中が見えなくなるまで見送ってから、私はふうとため息をついて腰を下ろす。

 

「ごめんね、アリス」

「どうして謝るの?」

 

 隣に同じく腰を下ろしたコハルが、その翡翠色の瞳を潤ませながら突然謝ってきた。

 

「アリスがディアベルさんを助けに飛び出していったとき、足が竦んでとっさに動けなかった」

「予想外の事態で、みんな対応できなかったし、コハルだけじゃないよ」

「ううん、もし、私が動けなかったせいで仲間が……あなたが死んでしまったらって思うと……すごく怖いよ」

 

 きゅっと、手を握られる。コハルの手はすこしひんやりとしていて……そして微かにだが震えていた。

 

「私、もっと強くなりたい。アリスの隣に立てるように、キリトさんや、アスナさんのように……」

 

 なれるよ。コハルなら、きっと。

 私なんか目じゃないくらい、強く。

 

 私が追い抜かれる、その日まで。

 今は精一杯、コハルの前ではかっこつけておこう。かっこいい、強い自分であろう。

 

 その為にも、もっと強くならなきゃ――。

 

 

 

 

 十二月四日、十三時三十分。

 

 デスゲームに囚われた、生存者約八千人。

 彼らは今、ゲーム攻略、このデスゲームからの脱出に向けてわずかではあるが確かな――明確な第一歩を踏み出した。




一層攻略編はこれで終了です。

次回より、新編に入ります。また、次回から完全にオリジナル展開となりますのでご容赦を。

12/27 戦闘描写を追加しました
2018/6/1 一部描写を変更しました
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