SAOif 紅の戦姫と蒼の聖女   作:百合好きの獣

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BoB本戦 4

Side アリス

 

 

 

 油断した。

 

 身体を微弱な電流が這いまわる不快な感覚と共に、指一本動かせ無くなり崩れ落ちながらわたしは内心で舌打ちをした。

 

 死銃事件の解決が上手く行きそうだった事と、シノンにSAO生還者だとバレてしまった動揺から周囲の警戒を怠っていた。

 

 目の前でシノンが突然倒れこんで来たのを慌てて抱き留め、敵襲に気づいた時にはもう遅く。

 狙われている時に感じる悪寒が背筋を走り抜けるが、シノンを抱えている為回避行動が上手く取れず、そのまま被弾してしまった。

 

 ダメージは無い。

 

 バチバチと電磁スパークが着弾した左腕から放たれている。

 そういうスキルがあるのか、それとも銃弾自体に効果があるのかは定かではないけれど、どうやらわたしは《麻痺》状態になってしまっているみたいだ。

 

 SAOやALOで嫌という程味わった、指一本も動かせなくなる(正確には、微々たる速度で動くことは可能だが)感覚に、脳内で警鐘がけたたましく鳴り響いていた。

 

 いつから狙われていた? 麻痺の持続時間は? ヘッドショットでキルをせず、一度麻痺にしたのは何故?

 

 疑問の数々が浮かんでは弾けを繰り返すが、今は何故を考えるよりもどうやってこの状況から脱するかを考えなければならない。

 

 もう既に、近くに敵が来ているのだから。

 

 土を踏みしめる乾いた音が二つ。

 視線を上げると、いつぞやのボロマントが二人、わたし達を見下ろしていた。

 

「――ヒヒッ、クヒッ……無様だねェ……《紅の英雄》さんよォ……」

 

 ぎしり、と身体が強張った。

 

「……誰?」

 

 動揺をあまり出さないように、言葉を短くして返す。

 

 見覚えのあるボロマント。

 わたしを知っているであろうその口ぶり。

 そして何よりも、趣味の悪い、棺桶の刺青が、二人共腕に刻まれていた。

 

 理解する。

 

 こいつが、こいつらが――死銃だ。

 

「あァ、この見た目じゃァ分からねェよなァ……俺だよ、俺。ゲイン」

 

 この軽薄そうな方の男はゲインと言うらしい。

 ……まさかプレイヤー側が二人いるとは思わなかった。予選でわたしに警告をしてきた方とはまた別なのだろう。

 

 それにしても、このゲインという男。わたしの記憶には全く無い。

 アバターが違うから分からないというのもあるが、そもそもがゲインというアバター名が記憶の検索にかすりもしない。

 口ぶりから、わたしと会ったことはありそうなものだけれど……

 

「……知らない名前。なんでわたしのその名前を知ってるの? どこかで会った?」

 

 疑問をそのままに口にすると、ゲインと名乗った男はあからさまに狼狽し始めた。

 どうやら、向こうは少なくともわたしを強く認識していたらしい。なんで覚えていないんだという、自己中心的なまでの驚愕に身を震わせていた。

 

 微かにだが、身体を這いまわるスパークが弱くなってきたような気がする。指先に力を籠めれば、ぴくりとわずかにだが反応した。

 この感じだと、あと数十秒程で《麻痺》も解けるだろう。

 

 こいつとの会話を引き延ばして、どうにか時間を稼げれば――

 

 もう一度口を開き、会話を続けようと試みた瞬間、腹部に衝撃が走った。

 

「――か、はっ……」

 

 肺から根こそぎ空気を奪われ、地面を何度かたたきつけられる様な感覚から、お腹を思いきり蹴飛ばされたのだと理解する。

 

「ありえねェだろうがァ!! てめェが俺を忘れるだと!? どこまでも見下しやがって!! ああ“!?」

「ぐっ……がっ……がふッ……」

 

 何度も。

 何度も何度も何度も腹部を蹴り続けられる。

 

 蹴られるたびに、HPが削られていくのが分かる。

 こいつはSTRに殆ど振っていないのか、攻撃力があまり高くない事は不幸中の幸いか。

 

 ここまでこの男が激昂するのは予想外だった。

 よほど、わたしが覚えていない事が許せなかったのだろう。

 

 だが、ここまでされてもまだ、わたしはゲイルの事を思い出すことが出来なかった。

 

「ハァッ……くそッ! ちったァ……思い出したかよ……!」

 

 苛立たし気に吐き捨てるゲイルに、一瞬だけ何か影が重なるような気がした。

 しかしそれは気のせいだったのか、意識するよりも前に霧散してしまう。

 

「……悪いけど、ラフコフメンバーで覚えてるやつなんて、殆ど居ないよ」

「…………そうかよ」

 

 わたしが吐き捨てるように言うと、ゲイルは心底落胆したかのように肩を落とした。

 

 指は……動く。腕はまだだけれど、あともう少しで麻痺が解ける――

 

 プシュッ

 

「あっ――」

 

 と、空気の抜けるような微かな音が聞こえた。

 同時に、私の背中あたりから、再び電流が――《麻痺》状態が再び継続する。

 

「おーおー、上手く行った上手く行った。あっちじゃあ《麻痺》中に《麻痺》は重ねらんなかったからなァ」

 

 ゲラゲラと品の無い笑いを上げながら、ゲイルは銃口から硝煙を微かに立ち昇らせている狙撃銃を担ぎ、フードの奥の赤い眼光を凶悪に光らせた。

 

「お前が俺を思い出せないってんならさァ……あの時を再現して、無理やりにでも思いださせてやるよォ……」

 

 ゲイルはそのまま踵を返し、わたしから離れ――シノンの元へと近づいていく。

 

 一体何があったのか。

 少し目を離していた隙に、あの凛としていた強い女性だった彼女の姿は影も形も無く、表情は痛々しいまでに恐怖に歪められ、石になってしまったかのように身体が硬直していた。

 

 そんなシノンの元へと歩み寄ったゲイルは、懐からコンバットナイフを嫌味ったらしく抜き出し、未だ動く事の出来ないシノンの胸元へ、突き付けた。

 

 その瞬間、フラッシュバックするかのように、色素の抜けた、殆ど黒く塗りつぶされた光景が、脳裏を過った。

 

 ――大丈夫

 

 ひゅっ、と喉が痙攣し、息が漏れる。

 

 ――キミは。ボクが、守るから

 

 思考にノイズが混じる。視界が狭まり、ガンガンと頭をハンマーで殴るような痛みが走った。

 

 ――生きてくれ。ボクの分まで、強く……

 

「あ……あぁ……っ」

 

 胸に突き立つ短剣。

 消えていく、彼の身体。

 けたたましい、耳障りな嘲笑。

 ピクリとも動かない、わたしのカラダ。

 

 わたしは何も出来ず、目の前で、彼が、死ん――

 

 最後の最後、記憶の蓋が完全に開かれる、その直前。

 

 わたしの視界は閃光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

「――い! おい! しっかりしろ!! ――くそっ!!」

 

 ホワイトアウトした視界と、甲高い耳鳴りから徐々に聴覚を取り戻し始めたころ。

 誰かに担がれているのか、自分の身体が持ち上げられているのを自覚した。

 それが誰だか確認する間もなく、わたしは何かに向かって放り投げられた。僅かな浮遊感、直後、着地。

 どすんと衝撃を感じたそこは、何かの乗り物のようだった。

 

 耳鳴りが収まった。

 視界は土煙に覆われて不明瞭ながらも、時折銃弾が風を切り裂いていく音や、発砲音、爆発音がけたたましく響いている。

 

 ふいに、地面が動いた。

 というより、乗り物が動き出したのだろう。

 軽い衝撃と共にエンジンに火が点き、駆動音をかき鳴らしながら走り出すような感覚がした。

 乗り物だと思っていたそこは、バイクに繋がれたサイドカーの座席だった。

 土煙の中から飛び出し、視界が開けたと同時にわたしは首だけを動かし、この乗り物を駆る――窮地から助けて出してくれた人物を見る。

 

「キリト……?」

「よう、助けに来たぞ」

 

 未だに動けないシノンを片腕に抱きながら大型二輪車を運転しているのは、敗退したと思っていた相棒だった。

 

「敗退したんじゃなかったの? サテライトスキャンの時に――」

「いや、その時は多分水の中――川で潜ってたからスキャンをかいくぐれたんだと思う。移動した先でバイクを見付けて、偶々向かった先にお前たちが居てよかったよ」

 

 そんな方法でスキャンの目を誤魔化せるとは。

 確かにキリトは軽装だし、武器なんかは一度ストレージに入れてから川に飛び込めば、潜水しながら進む事も出来るだろう。

 

 徐々に麻痺の取れてきたことで、ゆっくりと上体を起こしながら、わたしはキリトへと礼を告げる。

 

「なんにせよ、助かったよ。やられる所だった」

「見つけた時は二人とも倒れててマジで焦ったからなホント。――で、何があったんだ?」

 

 掻い摘みながらキリトへと顛末を説明する。

 シノンと出会い、死銃との戦いに協力してくれる事になって。二人一組で他のプレイヤーを倒していた所、狙撃された事。

 そして、あの二人組が死銃だという事を。

 

「死銃としてゲームに参加してたプレイヤーは一人じゃ無かったって事か……」

「一人はゲインって名乗ってた。けど、あいつは予選の時接触してきたやつとは違うと思う」

「……もう一人のやつの名前は?」

「……ごめん、分からなかった」

 

 襲撃された後すぐにわたしはゲインというプレイヤーに蹴り飛ばされていたから、もう1人の男――あのキリトに異常な執着を見せた男の名前は分からなかった。

 

「ゲインってプレイヤーに聞覚えはある?」

「いや……無い、と思う」

 

 唯一名前を知ることが出来たゲインという男についてキリトにも訪ねてみるが、彼も思い当たる人物が居ないようだった。

 

「ラフコフのメンバーだったのか?」

「……ううん、違うよ」

 

 キリトの疑問に、わたしは明確に否定を返す。

 

 実の所、ゲインについては殆ど思い出していた。

 正確には、思い出させられた。

 

 思い出さないように、無意識で封じていた記憶。それが無理やりこじ開けられようとしたせいで、あの男の事だけは思い出せるようになっていた。

 殆ど記憶に靄がかかった状態で、断片的にしか思い出せないのだけど。

 

「あいつは、ラフコフメンバーじゃなかった。ただのオレンジプレイヤーだったよ。なんで今、ラフコフと一緒に居るのかはわかんないけど――ッ!」

 

 突き刺さるような視線を感じ、サイドカーの後部から身を乗り出して後方を確認する。

 

 薄れてきた土煙の中から、二つの影が飛び出してきた。

 それは、鋼鉄の馬に跨った、ゲインと死銃だった。

 

「キリト!! 追ってきてる!!」

「なんだとッ!?」

 

 驚き叫ぶキリト。わたしの視線は、キリトに抱えられているシノンへ。

 

「いや……いや……だめ…………」

 シノンは虚ろな瞳で震えながら譫言を吐いている。

 彼女はまだ、動けそうになかった。

 

「もっとスピード上げて!!」

「くっそ……しっかり捕まってろ!!!」

 

 ぐん、と加速し重力に髪が引っ張られる。

 振り落とされないように片手で捕まりながら、後ろを確認する。

 敵の影は、小さくなっていない。どころか、徐々に距離を詰めてきているような気さえする。

 

「追いつかれちゃうよ!!」

「だけどっ……これ以上スピード上げたら、シノンが……!」

 

 シノンはまだ茫然自失としており、キリトの胸に縋る様にしがみ付いている。

 

「シノンっ……! ッ!?」

 

 赤い線が、私の頬を貫いた。

 

 反射的に身体を傾ける。

 

 コンマ数秒後、唸りをあげながら空間を切り裂く弾丸が、頬を掠めて行った。

 

「撃ってきた!!」

 

 間髪を入れず、弾道予測線が数本、伸びてきている。

 

 一本は、キリトの右肩に、そしてもう一本はわたしの胸へ。

 

 弾く? 否、振り落とされない為には片手しか使えない。それでもどちらかは被弾する。そもそも、スナイパーライフルの銃弾はこの防具じゃ防げずに貫通するかもしれない。

 

 キリトに躱すよう声を掛ける? 無理。キリトもバイクを片手で操作している。急ハンドルを切らせるのは危険。 

 

 考えるよりも先に、手が動いていた。

 

「キリト、借りるよ!!」

 

 風でコートがはためき、露わになったズボンのベルト部分。そこに吊り下げられていた円筒をひっつかみ、スイッチを押す。

 

 ぶおん、というサウンドエフェクトと共に、藤色の光が現出した。

 

 すぐさま、赤い線に向かって振るう。

 

 小さな破砕音が二つと、軽い手応え。飛来した二発の弾丸は、切り伏せられた。

 

「ナイス!!」

「弾きやす……わたしもこっちにすればよかったな……」

 

 このアバターは背が高くなった事に応じて、相応に手足の長さもあるが、それでも間合いは剣に劣る。

 間合いが広ければ、その分斬るまでの余裕も増える。

 ああでも、キリト程剣を精密に振るえないわたしじゃ、両手両足の4つを使って、避けたり弾いたりできる今のスタイルの方がまだ戦いやすいか。

 

 続けて放たれた三発の銃弾を、剣を二度振るって叩き落しながら叫ぶ。

 

「防げてる……けど、これじゃじり貧だよ!」

「くっそ……シノン、君の持ってるその銃で反撃出来ないか!?」

「む、無理……無理よ……私は、撃てない……」

 

 キリトがわたしに視線を向けてきた。その意味するところは、代わりに撃てるかという問いかけだろう。

 勿論撃ったところで当たる筈もなく、そもそも敏捷特化のわたしでは装備出来るかすら怪しい為首を横に振る。

 

 マガジンの交換をしているのか、先程まで間断なく続いていた銃撃がピタリと止んだ。その隙にサイドカーから軽く身を乗り出し、キリトの腕に収まっていたシノンを回収してサイドカーへと押し込む。

 

「少し窮屈だけど、我慢してね……」

 

 これでキリトは両手でハンドルが操作できるうえ、シノンを気にして抑えていたスピードもあげられる。

 意図を汲み取ったキリトがアクセルを更に回し、ぐん、と加速した。

 徐々に縮まっていた距離が、少しだけ離れた。

 ただ、わたしたちが1台(サイドカーに乗っているとはいえ)に三人乗っているのに対し、相手は一人一頭。最高速度が同じなら、重さの差で引き離す事は出来ないだろう。

 

「シノン、シノン。……大丈夫?」

 

 震える彼女の頬に手を添えながら、目を合わせる。

 彼女の瞳は不安と恐怖に揺らいでいた。

 何がこうまで彼女を怯えさせるのか、それを知らないわたしには、彼女の心情を慮って慰める事や、励ます事は出来ない。取り繕ったような言葉じゃ、シノンの恐れは取り払えない。

 

 ならば、だ。

 

「シノン、よく聞いて。今、シノンには三つ選択肢がある

「一つは、リザインする事。そうすれば、現実ではシュピーゲルも居るし、安全が確保されてる

「もう一つは、このままわたしとキリトがあいつらを倒すまで、隠れてる。あいつらはわたしとキリトにご執心みたいだから、わたし達がやられるまでは他のプレイヤーに手を出さないと思う。その後は、残ったのを撃ち抜くなり、降参するなり、好きにすればいい」

 

 わたしが言葉を重ねる度、シノンの目に恐怖とは別に困惑が浮かび始めた。どうしてそんなことをいうのか、そして自分はどうすればいいのかが分かっていないといった感じだ。

 

 わたしじゃ、彼女を立ち直らせる事は出来ない。

 

 だから、わたしは火種を放り込む。

 

 彼女の心に、火が灯る様に。

 

 だって、彼女とわたしは一緒だから。

 

 わざと負けようとしたキリトに激昂した。倒す直前に情けをかけたわたしに激怒した。

 

 彼女は何よりも、納得の伴わない敗北や勝利を嫌う。その気持ちを擽ってやる。

 

「最後は――戦う。皆が真剣に競い合っているこの大会を、示威行為でめちゃくちゃにしようとしてるあいつらを、自分の手でぶっ飛ばす。わたしとキリトと一緒に――っと!」

 

 止まっていた銃撃が再開された。

 やや距離が詰まってきたからか、射程はスナイパーライフルより短くても連射性能の高い銃に切り替えたようだ。

 数十本の弾道予測線がわたしたちを呑み込んだ。

 キリトがハンドルを切り回避を試み、それでも当たりそうな数発の銃弾を斬り伏せる。

 

「選ぶのはシノンだよ。戦うか、戦わないか、その選択を!!」

「私……は……」

 

 わたしに出来るのはここまで。彼女の闘争心――負けず嫌いな気持ちに発破をかけるところまでだ。

 後は、立ち上がれるかどうかは、彼女次第だ。

 

 ここまで手伝ってもらって、こんな事しか出来ない、無責任な自分と、不甲斐無さが腹立たしい。

 ごめんねシノン。この状況を突破出来たら、幾らでも文句を聞くから……。

 

 いつの間にか荒野エリアを超え、地面はサラサラの砂が満遍なく敷かれた砂漠エリアへと突入していた。

 後輪が巻き上げる砂埃の中、目を凝らすと違和感に気づく。

 

「一人しか居ない……?」

 

 こうしている内もひっきりなしに飛んでくる銃弾は、まるでわたしたちを誘導するかのように一定の感覚、場所に撃ち込まれていた。

 

 まさか。

 

「誘導されてる……挟撃する気か!?」

 

 キリトが気づき、叫ぶ。

 

 これは……かなりまずい。

 今までわたしとキリトが銃撃を凌げていたのは、弾が飛んでくるのが後ろだけの一方向だったから。前後で挟まれてしまえば、流石に処理が追い付かない。

 

 取れる手段は二つ。

 バイクを止め、わたしとキリト二人で後ろの――あれは、ゲイルの方か――を速攻で倒し、返す刀でもう一人と戦う。

 ただ、もう一人が今どこにいるか分からない上、死銃のトリックがわたし達の推理通りなら、姿を見えなくすることが出来るはず。

 シノンを守りながら、どこから撃ってくるか分からない敵を警戒しつつ戦うのは、正直厳しい。

 

 なら、後は……。

 

「キリト……シノンをお願い」

「何言って――いや、そうか……なるほど」

 

 一言だけで、キリトはわたしの言わんとする事を察してくれた。

 額に珠のような汗を滲ませながら、不敵に、ふてぶてしく笑う。

 

「こっちは任せとけ。……負けるなよ」

「――そっちこそ!!」

 

 わたしはキリトに光剣を投げ渡し、サイドカーから飛び降りた。

 

 瞬間、幾本もの光線がわたしを貫く。

 

「なめ……っる、なぁっ……!」

 

 空中で身を捩り、独楽の様に回転しながら襲い来る弾丸を弾く。

 最初は頭が熱を持つ程集中しなければ出来なかった銃弾弾きも、ここまで続ければ慣れてくる。

 

 全ての銃弾を叩き落したわたしは、体勢を整え、着地する。

 

 ずしゃ、とごく小さな砂丘を踏みつぶし、前を見据えた。

 

 眼前では、鋼鉄の馬に跨った因縁の男が砂煙を巻き上げながら迫ってきていた。

 

 ここから先は、通さない。

 そしてあいつを――あの人の仇である、あの男を。

 

 倒す。

 

 わたしは銃を抜き、男に向けて発砲した。

 

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