SAOif 紅の戦姫と蒼の聖女   作:百合好きの獣

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最初に言っておきます

詠唱文を翻訳しないでくださいお願いします


第二十一層攻略 後編

Side アイ

 

 

 

「いけいけいけ!!」

「ヘイトこっち向けろ!!」

「キバオウ班はそのまま右舷を死守! ディアベル班は回復後左舷に回って! エギル班はエイジ班とスイッチ!」

「「「「了解!!」」」」

 

 アスナの指示に、チームを指揮する四人が承諾の意を返した。

 

 戦闘開始から既に十分程が経過している。

 《七人の妖精達》の団長アリスが直前になって参加できなくなるというトラブル――後を付けてきていた恐らく邪魔をしようとしていたであろう集団を一人で食い止めているらしい――があり、パーティ編成の見直しが行われた。

 

 指揮班だったディアベルが1つのパーティに参加し、代わりにアイが遊撃班へと配置変えとなった。

 アスナが指揮を一人で受け持つ事になり、必然的に負担が増えるのでそれをアイは心配していたが、蓋を開けてみれば淀みなく的確な指示を迅速に繰り出している姿を見て、これなら問題は無さそうだと呪文を詠唱しながらも胸を撫で下ろしていた。

 

「……チッ」

 

 問題大有りだった。

 群体である事を活かし、数の利を振りかざして遅滞戦術を取るボスモンスターにアスナの苛立ちがピークに達している。

 

 冷や汗をかきながらも詠唱を止めることはなかったアイだが、ついにアスナが剣を抜いた。

 

「fest――ってアスナさんストップストップ!! 抑えて!」

「離してアイちゃん! あいつ! もう! もう!! 私も出る!」

「指揮するアスナさんが居なくなっちゃだめですよ!! 落ち着いてくださぁい!!」

 

 アスナがここまでぶちギレているのは、ALO版《浮遊城アインクラッド》の二十一層ボスが想定外の強化をされていたことが原因だ。

 

 SAO生還者達曰く、もともと二十一層ボス《ソルジャー・ガーディング・ザ・ルインズ》は群体のボスモンスターで、数十体いるゴーレムそれぞれのHPが共通であり一体ずつ削っていけば問題なく倒せたそうだ。

 が、ALO版ではHPは共通ではなく個別で、一体だけ特別な指揮官が追加されていたのだ。

 その指揮官が大ボスらしく、結論から言えばその指揮官を倒さなければ攻略が出来ない。

 

 遊撃班が隙を見つつ指揮官へアタックを試みているが、取り巻きと化した他のゴーレム達が指揮官を守るように壁となるため、今のところ一度目のパターン変化すら迎えられていない。

 

「もう! 遺跡を守るか指揮官を守るかどっちかにしなさいよ!!」

「そんなことモンスターに言っても……」

 

 壁を作りつつこちらへとなだれ込もうとしているゴーレム達を、四パーティと遊撃班であるアイやシノンが食い止めてているものの、このままでは先にこちらのリソースが尽きるのが先だろう。

 なにせ、取り巻きのゴーレム達は倒しても少し時間が経てばリポップしてしまうのだから。

 

 ここから逆転する手段は、あるにはある。

 

 今にも剣を手にゴーレムの集団へと突貫してしまいそうなアスナを羽交い絞めにしつつ、アイはついこの間、大冒険の末に手に入れたとある魔法を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

「はいどうもこんばんわー。アイ国民の皆元気? アイアイだよ~」

 

〇カッツォルキン 待ってた

〇占めサバンナ いきがい

〇トンメートル アイアーーイ!!(雄たけび)

 

 ALOの大型アップデート前の某日。

 アイは配信用のVR空間にて生放送を行っていた。

 

 VRアイドル『アイアイ』

 

 ユナという神に出会ったアイ――名月深藍は、姉が無事にSAOから戻った後、心に余裕が出来た事でいつしか自身も配信することに興味を持っていた。

 幸い、技術の進歩によってフルダイブ環境さえあれば誰でも配信することが出来る為、配信を始めるのにさほど苦労はなかった。

 

 最初は数人のリスナーとおしゃべりをするだけだったのだが、現役女子中学生である事が効いたのか、ALOのトッププレイヤーであることが効いたのか、見え隠れする実姉への深い愛が効いたのか、順調に登録者数も伸び、一度神《ユナ》がコメント欄に降臨したことでバズった事もあって今は登録者数が一万を超える中堅アイドルと化していた。

 最も、その多くがアイというよりもユナを目当てにチャンネル登録をした者達であり、実際のアクティブ人数はそこまで多いわけではないのだが。

 

 アイ国民とは、リスナーが名付けたリスナーの名称である。

 

「今日はおねーちゃんと遊べなかったので、いつもの倍配信しまーす」

 

〇占めサバンナ たすかる

〇ミドルボディ このシスコン!(誉め言葉)

 

「はいはい。シスコンシスコン。おねーちゃん好き~」

 

〇ヲ― あぁ^~

〇ぬるりぬる おねーちゃんとのコラボ配信まだ?

 

「おねーちゃんは私だけのおねーちゃんなので、皆には見せません!」

 

〇ミドルボディ このシスコン!

〇もうすプロ このシスコン!

〇そふてぃーも このシスコン!

「あははは!……うん?」

 

 視聴人数が五百人を突破したところで、アイの視界に写っているUIが通知音が鳴った。

 

【友人 さんが¥10,000を投げました】

【ターシス さんが¥5,000を投げました】

 

「わ、友人さんもターシスさんもいつもありがとー。もらっておいてなんだけど、お金は大事に使ってね?」

 

〇友人 問題ない。生活費は残っている

 

 投げ銭というシステムはフルダイブVRがまだまだ空想上のものだった時からあるシステムだ。

 配信中に、そのパーソナリティを気に入ったリスナーが課金通貨をプレゼントすることが出来るという仕組みとなる。

 推しにお金を貢ぐ事はサブカルチャー好きの習性のようなもので、その欲求がダイレクトに反映されるこのシステムは趣味の範囲だった個人での配信活動を職業とするまでに至った。

 それはフルダイブシステムの普及した現代でも健在で、誰でも簡単にかわいい、かっこいい、面白いアバターを作って配信活動が出来る今、その勢いはさらに伸びていると言える。

 

「アイアイは心配だよ。アイ国民の皆が行き倒れたりしないか」

 

〇占めサバンナ 僕達の血税でアイアイが潤う。それはとっても幸せだなって

〇そふてぃも 我らアイ国民、アイアイの為なら馬車馬の如く

 

【そふてぃも さんが¥1,000を投げました】

 

「アイアイの為に使ってくれるのは嬉しいけど、自分の事にもちゃんと使うんだよ? 美味しい物食べたり、お買い物したりさ」

 

【ミドルボディ さんが¥500を投げました】

 

〇ミドルボディ これでアイアイにもおいしい物を食べてもろて……

〇秋刀魚麺 コンビニ弁当も買えない定期

 

 一体どこからそのお金は発生しているのか。

 まさしく貢ぐという行為によってアイは小金持ちになっていた。

 

「皆ありがとう……頂いた血税の半分は神に奉納するね……」

 

〇ぴかせん アイ国は宗教国家だった……?

〇占めサバンナ 僕達の血税で神様が潤う。それはとっても光栄だなって

 

 アイはリスナーから投げられたお金の使い道を公表している。

 半分を神へ貢ぎ、残りはリスナーへ何らかの形でお返しするといった形だ。

 流石に現金プレゼント! のような事はやらないが、視聴者参加型のイベントの商品等に主に流用されている。

 

「さて、今日は普通におしゃべりしましょー。何か話題プリーズ」

 

 アイがコメントを求めると、津波のように膨大な文字が流れてきた。

 大量のコメントを読む事にも慣れたもので、アイは斜め読みしながら気になるワードを探す。

 

 一つ、アンテナに引っかかった

 

〇土木ザーグ 氷の竜魔法アイアイはもう取った?

 

 竜魔法とは。

 ALO版アインクラッドの十一から二十層が解放された時に同時に追加されたコンテンツだ。

 ALOにおける魔法は地水火風闇など各属性があり、さらにそこから発展した上位魔法――アイの使用する氷魔法など――があった。

 アップデートにより、その上位魔法にそれぞれの必殺技とも呼べる強力な魔法が追加されたのだそうだ。

 

 竜魔法の追加から数か月、習得条件の緩和もあった事で、氷魔法を始め上位魔法の使い手自体は数を増やしていたが、竜魔法の習得者はまだまだ少ない状態だった。

 というのも、習得条件が明確になっていないからだ。

 

 VRMMOにおいて攻略情報というのは値千金の価値がある。

 ALOはサービス開始から数年経過しているが、まだ発生条件が不明なクエストなどがいくつもあり、幸運にも発見したプレイヤーはよっぽどの事が無い限りその情報を秘匿する。自身の優位性に直結するから。

 

 氷の竜魔法取得者が居る事自体はアイも知っていたのだが、その習得条件――クエストの発生条件が分からずに手を出していないのが現状だった。

 

 とはいえ。

 

「んー、竜魔法は取ってないんだけど……そうだなぁ……」

 

 アイの所属するギルドは少人数ながらも全員が一騎当千の実力を持つ猛者たちだ。

 アイはその中でも劣っているとは思わないが、自分が強くなればなるだけギルドへの貢献も出来る事だろう。

 

 そして何よりも、溺愛する姉に褒めてもらえるかもしれない。

 

 その事に思い当たったアイは秒速で決断した。

 

「よし、取りにいっちゃおっか、竜魔法」

 

〇すけべ侍 うおおおおお!

〇簿記殿さま いくさじゃ! いくさじゃ!!

〇スルーシオ 槍をもてー!

 

 アイの『やっちゃいます』発言に、コメントが騒めき立つ。

 今までは竜魔法に興味はあったものの、長期間の探索が予想されるため、ギルメン達に迷惑になると思い手を出していなかった。

 一人では難しいだろう。いつまで掛かるか分からない。

 が、別にギルメンだけが力を貸してくれるわけではない。

 

 愛すべきこのリスナーたちもまた、アイにとっては大きな味方だった。

 

「よーし! アイ国民の皆! 今日の配信は予定を変更して、ALOで冒険します! あ、配信もするけど竜魔法が取得出来そうになったら止めます。後はキミの目で確かめろぉ!」

 

 こうしてVRアイドル『アイアイ』――もといアイによる竜魔法を習得する為の冒険が幕を開けた――!

 

 尚、駆け付けてくれたリスナーは30名程であり、中には重課金者(アイアイへの)であるHN友人とHNターシスの二名も居たが、HN友人がかの有名な『ユージーン』であった事が一番の盛り上がりを見せた事を追記しておく。彼は重度のドルオタでもあったのだ。

 

 

 

 

 

 

(竜魔法なら、状況を変えられるけど……でもMPが……!)

 

 アイはこの戦闘で敵の足止めにリソースの殆どをつぎ込んでいた。

 竜魔法を使用するには、一度MPの回復をしなければならないのだが、その隙を作らなければいけない。

 

 ところで、アイはアスナを止める為に詠唱を途中で中断してしまっていた。

 その魔法は右翼から抜けてくるゴーレムを堰き止める目的であったが、アイが魔法を撃たなかった事で僅かに壁に綻びが出来、一体のタゲ取りがこぼれてしまった。

 

「あっ――」

 

 ゴーレムが迫ってくる。

 他のメンバー達は動けそうにない。

 止めるだけの威力を持った魔法は、詠唱が間に合わないだろう。

 

 アスナに任せる? 否。指揮を放棄させるわけにはいかない。

 

 それなら、自分が盾になれば――

 

「アスナさん、逃げてくださいッ!!」

「アイちゃん!?」

 

 羽交い締めにしていたアスナを放し、ゴーレムと相対する。

 

 両手杖を構える。

 

(大丈夫。ソードスキル……まだ上手く使えないけど、それが出来れば時間は稼げる!)

 

 目前に迫ったゴーレムが大きく腕を振りかぶった。

 アイも、両手杖を腰だめに、ソードスキルを立ち上げる。

 

 その瞬間。

 

「わたしの妹になにするんだぁーーーーッ!!!!」

 

 音速で突っ込んできた紅蓮の人間砲弾が大きく吹き飛ばした。

 

「お姉ちゃん!?」

「アイ! 大丈夫!?」

 

 突然の乱入者――我らが団長アリスは、アイに駆け寄るとぎゅうとその身体を抱きしめた。

 

「よしよし、よく頑張ったね」

「お、お姉ちゃん……まだ戦闘中……」

 

 困惑したような声を漏らすアイだが、その顔はだるんだるんに緩んでいた。ボス戦中でもなければ頬擦りでもしたいくらいだった。

 

 至福の時も戦闘中であるためあっさりと終わり、解放されたアイは少し残念な気持ちになりつつもアリスから身体を離す。

 

「ん。アスナお待たせ。今どんな感じ?」

「助かったわ、ありがと……そうね、ちょっと想定外な状態よ」

 

 アスナは手早く状況を説明し、アリスはうんうんと頷いた。一通り説明が終わった頃を見計らって、アイは二人に声を掛ける。

 

「アスナさん、お姉ちゃん。ちょっとMP回復する時間もらえれば、竜魔法撃ちます」

「……!! それ本当?」

「はい。この前やっと習得出来たんです」

 

 どうやってかは言わない。

 いつかバレるだろうなとは思っているが、アイは自分が配信者であることはギルメンにも家族にも伝えてなかった。

 だって恥ずかしいもの。

 

「わかったわ。アリス、あの辺に突っ込んで暴れてもらえる? で、道が空いたら――」

「あの奥の奴を倒す……だよね?」

「ええ。任せたわ」

「了解!!」

 

 言うや否や、アリスは風の様に駆けて行った。

 味方の戦線の薄い所へと突撃し、ヘイトを自身へ向けさせるソードスキルを発動すると大立ち回りを始める。

 

 姉の背を見送ったアイは、腰に下げたポーチからMPを回復するポーションを飲み干し、じわじわと回復するMPバーを睨め付ける。

 

 全部回復する必要は無い。足りない分だけ、竜魔法を放つのに必要な分だけ回復出来ればいい。

 

 全体の七割程MPが補充された所で、アイは目をカッと見開き詠唱を開始する。

 

Þeir farast(彼らは滅びる),

Boðið af draumi sem aldrei vaknar(覚めない夢に誘われ),

Fallið í eilífan svefn(永久の眠りに堕ちていく)――

 

 歌う様に紡がれる、ALOの魔法の中では、規格外の長文詠唱。

 だが、アイの手にかかれば常人が最上級の魔法を唱えるのと同じ位の時間で詠唱を完成させられる。

 

Geturðu heyrt þetta lag(この唄が聞こえるか),

Lifandi og dauður(生者も死者も)

Þú ættir að sofa jafnt(万物等しく終わりを迎える)――

 

 大気が揺れる。

 地鳴りが響き、床から立ち昇る霜が白煙を上げる。

 

 感情の無いゴーレムが、慌てたようにアイへと殺到しようとするが、レイドメンバーがそれを許さない。

 

 そして

 

Þetta er drekalag(これは竜の唄),

Ómar að eilífu(とこしえに響く)

Söngur eyðileggingar(滅びの唄)――――!!!」

 

 竜魔法が、完成する。

 

 まず最初の変化は、詠唱を終えたアイの背後から、守護霊のように美しい女性が出現した事だ。

 

 その女性は半身は青く、半身は人肌の色をしていた。

 

 現れた女性の名前は『ヘル』

 死者の国『ニヴルヘイム』を統べる、女神の一柱だ。

 

 現れたヘルは、妖艶な笑みを浮かべるとアイの頬を愛しい我が子を愛でるかのように一撫でし、それからゴーレム達へ向かってふぅと息を吐いた。

 

 次の瞬間、息の直線上に居た、指揮官を除く全てのゴーレムがさらさらと砂になって崩れ落ちていった。

 まるで、抗う事すらできずに死を迎えたかのように。

 

 それだけではない。

 

 その周囲にいたゴーレム達もまた、眠るように動きを止めていたのだ。

「今よ!! 全員、突撃――――ッ!」

「「「「おおおおおおッ!!!!」」」」

 

 雄たけびを上げ、全員が指揮官ゴーレムへと最大火力を叩きつけんと殺到する。

 

 フラストレーションを溜めていたのはアスナだけではない。

 道を切り開こうと耐えに耐えていた他のメンバーも同様に、指揮官ゴーレムへの鬱憤を晴らすかのように嬉々とした笑みを浮かべていた。

 

 もしも指揮官ゴーレムに感情があったのなら「そんなバカな」と呟いていた事だろう。

 

 大量のMPと、詠唱時間の代わりに、戦況を一発でひっくり返す程の威力を持つ。

 

 それが、アイの手に入れた新しい力だった。

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ皆、今日はお疲れ様、そして協力してくれてありがとう!」

「沢山料理作ったから、存分に楽しんで行ってね!」

 

「「「「メリークリスマース!」」」」

 

 途中までの苦戦が嘘のように、あっという間に二十一層ボスを討伐した《七人の妖精達》と協力者達は、二十二層解放後に光の速さですっ飛んで行ったアスナとキリトが購入したログハウスにて、少し早めのクリスマスパーティを開いていた。

 

 わいわいがやがやと、リビングに収まり切れずバルコニーにまで溢れたメンバー達は、料理に舌鼓をうちつつ思い思いにパーティを楽しんでいる。

 

 アイも最初の乾杯の時は姉と一緒に居たのだが、コハルと二人きりにしてあげようとそっと側を離れていた。

 気遣いの出来る妹と呼ぶがいい。

 

「んー、おいしい。いくら食べても太らないって最高!」

「現実のお腹は膨れないからね」

 

 オードブルをぱくぱくと平らげるリーファの横に並び、手に持ったワイングラスをくるくると玩ぶ。

 

 ALOでの食事はいくら食べても現実への影響が殆どない。

 満腹中枢への刺激が最小限なため、ログアウトしてかもお腹いっぱいということにはならないのだ。

 その分、味は大雑把にしか再現出来ていないのだが、体重計を気にする事無く食べれるのは乙女的にかなりありがたかった。もう体重計にデカい顔はさせない。

 

「あ、そうだ。最後につかったあの魔法凄かったね! あれが竜魔法?」

「うんそうだよ。この前手伝ってもらって、なんとか習得出来たんだ」

「誰と一緒にいったの?」

 

 小首を傾げたリーファに、アイは言葉を詰まらせた。

 僅かに逡巡し、リーファにならば教えてもいいだろうと結論を出す。

 

「えっと、実は私『アイアイ』って名前で配信しててね。そのリスナーさんたち」

「えー!? 全然知らなかった!」

 

 大袈裟に驚くリーファに、アイは苦笑する。

 リーファの声は大きかったが、周りも随分騒がしい為他の人には聞こえていないようだ。

 

「ちゃ、チャンネル登録していい……?」

「いいよ。けどお姉ちゃん達にはまだ内緒にしておいてね。ちょっと……キャラ作ってるから恥ずかしくて」

 

 リーファとは姉がSAOに囚われる前からの付き合いだ。

 何度もリアルで遊んだこともあるし、ALOに誘ってくれたのも彼女で、ゲーム内でも一緒に冒険をしてきた。年は一つ違いだが、アイにとってリーファは親友と呼べる間柄だった。

 

「あ。ねえリーファちゃん。ちょっと相談なんだけど……」

「なになに?」

「あのね……」

 

 アイはそこで言葉を区切った。

 これはまだ誰にもまだ話していない事で、後にコハルやアスナに相談しようと思っていた事だ。

 ほんのりと頬を朱に染め決心したアイは話し出す。

 

「好きな人が出来たかもしれない……」

「え――――」

 

 思いきり叫ぼうとしたリーファが、寸でのところで自分の口を両手で覆い声を隠した。

 無理やり悲鳴をおさめた為、けほけほと軽く咽ている。

 

「けほっ……え、嘘。誰……?」

「リスナーさんなんだけどね、竜魔法を取得しようとしてた時に手伝ってくれた人で……」

 

 目を奪われるというのだろうか。

 その人物は寡黙すぎるほどで、たまに話す言葉もどこか作っているような声だった。

 見た目も全身プレートメイルの重装備で、大楯を手にしたタンクであり、性別は恐らく男性という事しか分からない。

 

 ただ、どんな時もアイを守るために雄々しく戦い、かすり傷一つつけずに守り通した彼(?)の事をアイは自然と目で追う様になっていた。

 

 決定的だったのは、冒険の途中でアイがピンチになった時だ。

 

「クエストの途中で、ダンジョンのトラップに引っかかっちゃって皆と離れ離れになっちゃったんだけど……モンスターに囲まれてやられそうになった瞬間、どこからともなく現れて守ってくれたんだ」

 

 まさに、ピンチに駆けつけるヒーローのような彼(?)の後ろ姿は、アイの脳裏に強く焼き付いた。

 

「わぁーかっこいい……! その人の名前は……?」

「えっとね……配信中によく投げ銭してくれる人なんだけど……」

 

 

 

「『ターシス』さんっていうんだ」

「ぶふっ?!」

「わぁっ!? アリス!? どうしたの!?」

 

 名前をリーファへと告げた瞬間、何故か少し離れた席の団長が飲み物を噴き出していた。

 




フルダイブVR全盛期だとオンラインゲームで知り合って恋人になったり結婚したりする人絶対増えますよね

〇竜魔法
 ドラ〇エでいう今までメラゾーマとかマヒャドまでだった魔法にメラガイア―とかマヒャデドス追加されたみたいなもの。
 ・戦闘開始から一定時間経過
 ・同戦闘中は一度まで
 ・膨大なMPを消費
 ・アホみたいに長い詠唱
 が条件のキャスターの必殺技。
 氷魔法(水と風)雷魔法(風と土)溶岩魔法(火と土)
 の3つが判明しており、あと2種あるとの事だが、未だ見つかっていない。

【悲報】ユージーン将軍ドルオタだった
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