※以前どこかの話でも書きましたが、この二次創作では新生ALOになったときにスキル制からレベル制に変わっています。SAOの成長システムをベースとしているとお考え下さい
「伝説級武器を探しに行こう!!」
二〇二五年十二月二十七日。無事にキリトとアスナ、そしてユイちゃんの思い出のホームを購入することが出来、その後ちょっとした……うん。ちょっとしたゴタゴタがあってわたしと妹の距離感にほんの少し、いや、ちょっと、いや、かなり……? 変化したりもしたけれど。まあ概ね問題なく(ある意味では問題になりそうになったけれど)クリスマスをコハルと過ごし、一日置いて迎えた今日。
絶賛冬休み中のわたし達《七人の妖精達》は、ゼミの合宿があるとかで最近忙しいディアベルを除き、ギルドハウスにて暇を潰していた。
「どうしたの……? 藪から棒に……」
二人がけのソファで、わたしの隣に腰掛けていたコハルが虚を突かれたというように首を傾げていた。同じように、コハルの肩に止まったユイちゃんが不思議そうにこてんと首を傾けている。かわいい。
ユイちゃんはALOでピクシーとなってから、お気に入りの相手の肩が定位置としていた。キリトにアスナ、わたしと、コハル。この四人の肩をローテーションして座っている。外に出る時は、キリトかわたしの胸ポケットに入ることが多いけど。最近はわたしの胸ポケットに居る頻度が高くなっている。ユイちゃん曰く「防衛機能も兼ねている」そうだけど、わたしの胸を誰から守っているというのだろうか。心当たりは一人しか居ない。
伝説級武器とは、サーバーに一振りしかない最上級の武器の事だ。
昔のMMORPGでは、負荷分散のために複数サーバーが設置されていたのだけど、近年の通信技術や電子機器の発達によって、最近では同時多数の接続による負荷や処理落ちというものが過去の遺物と化し、VRMMOだけでなくコンシューマのオンラインゲームでもサーバーは国ごとに1つだけというものが主流だ。
基本的に国内から国外のサーバーに接続して遊ぶことは、出来なくは無いけどやるメリットもほぼ無い為、日本に住む限りALOの伝説級武器はたった一つしか存在しない超高レアリティの武器となる。
「ギルドが出来てから、イベントに出て優勝したり、新しくメンバーが加わったり、他にも色々とやってきたけどさ。せっかくこんなに凄いギルドが出来たんだもの、サーバーに一つしか無い伝説級武器を手に入れたいなって」
やっぱりゲーマーとしては憧れるのだ。ナンバーワンよりもオンリーワン。自分が、自分たちだけが持つ特別なものに。
もちろん皆と過ごすなんでもない日常も大切だし、素敵なものだけれど。だからこそ、わたしのギルドは、仲間たちは凄いんだぞ! ってことを知らしめたい。
そんな事を皆に伝えると、照れくさそうに、あるいは微笑ましげに。各々が概ね好意的な受取方をしてくれた。
一人を除いて。
「おいおい。俺が取ってきた伝説級武器の事をお忘れか?」
やれやれと肩を竦めた黒の剣士に軽く苛立ちを覚えるも、何を言わんとしているのかはわかっている為続きを促す。
キリトは一言「アスナ」と、彼の隣に座るアスナに声を掛けると、アスナは困ったように苦笑しながらもメニューを操作し、一振りの武器を出現させた。
現れたのは、長さ1メートル半程の、先端に小さな葉が2枚程くっついただけの唯の木の枝。
が、これは外見こそ枝にしか見えないものの、治癒術士垂涎もののツーハンド・ワンド。
その名は《
伝説級武器の名に相応しく、とんでもない能力を秘めている……のだけど、それを素直に見せびらかせられない理由はあった。
「逆に聞くけどさ。これを『私達で取りました!』って大っぴらに言える?」
「う……」
そう。この伝説級武器は冒険の果てに手に入れた成果ではなく、ちょっとした事故で偶然……いや、
「うっかりで手に入れたコレを、わたし達が取った伝説級武器です! って喧伝するのはなんか違うかなって」
これを手に入れちゃったのは、夏頃。ギルドイベントが6月半ばなので、当時既にギルド自体は存在していたのだけど、この伝説級武器に至ってはギルメン達で冒険して手に入れたわけじゃない。
「あと、これを手に入れたって公表する事は出来るけど、そうするとキリトの悪行まで知れ渡ることになるよ」
「俺が間違ってました!!」
ガバぁ! と土下座する勢いで頭を下げたキリトにじとっとした目を向けながら、ため息を一つ。
入手に至るまでの経緯で、表沙汰にすることが出来ない事があるのも理由の一つだ。一応、わたしも首謀者――完全に巻き込まれただけだけど――なので。
「さ、サーバーに一つしか無い伝説級武器を、手に入れちゃったって……流石過ぎます……」
む。
どう解釈したかは分からないけど、シュピーゲルが尊敬の眼差しでわたし達を見ている。
「流石かどうかは置いておいて、私も気になるわ。何があったらうっかりで伝説級武器を手に入れる事になるのよ」
追撃するように、シノンも興味を示した。
キリトと目配せをする。
話す? でも……
「そういえば、キリトくんとアリスは私達に隠してた事があったよね」
「うん。どうしてピンポイントで世界樹の天辺に行こうって思ったのか……とか」
アスナとコハルが、懐疑的な目で見てきた。
わたしとキリトは揃って電子的な冷や汗をかきながら(もちろん比喩だ)目を逸らす。
逸らした先で、アイとリーファちゃんと目があった。
「「じー……」」
「「うっ……」
これはもう、逃げられないな。
観念したわたし達は、降参するかのように両手を上げ、あの時の事を話し始めた。
◇
以前、ユイちゃんがクジラがみたい! とおねだりをしてきたことがあった。
クジラかぁ……と悩むわたし達に、もしかしたらとリーファちゃんが巨大水棲型モンスターが出現するという噂の《深海の略奪者》というクエストの事を教えてくれた。
しかし当の本人であるリーファちゃんが金槌である事が発覚し、更にはそのクエストを受けられる場所も海底にあるダンジョンということで、現実でちょっとした特訓をすることになったり。
特訓を経て、どうにか普通に泳げるようになった(数時間で全くの金槌から25mを泳ぎ切る事が出来たのは、流石全国レベルの運動神経を持っているといえる)後、ついに本番である海底神殿に突入。
メンバーは、キリト、アスナ、わたし、コハル、リーファちゃん、クライン、そしてアイの7人。現実での特訓時はシリカちゃんやリズ、サチも一緒だったんだけど、ダンジョンに行くなら自分たちは足手まといになってしまうと辞退していた。そしてクラインは全員女性だと肩身が狭いからという理由でキリトが連れてきた。
まあ、強さという点でいうと、プレイヤースキルは別として、アバターの能力――レベルやスキル熟練度はキリトとシリカちゃん達でそう差は無かったりもする。なんでかっていうとキリトはSAOでのアバターを消して新しくやり直しているから。旧SAOアカウントを引き継いだ彼女たちは、最前線にこそ参加はしていないが2年という年月を中層域で活動し、サチに至っては前線までやってきていた事からコンバート時点で既にALOの古参プレイヤーと同等の強さは持っていた。トッププレイヤーとまでは言わなくても、素のままエンドコンテンツを遊べる位には強いのだ。
一方初期化されたキリト氏は、プレイヤースキルこそ圧倒的に高いものの、単純にレベルが足りない。追いつこうとハードな狩りを行って(わたしやアスナも付き合わされた)いたものの、その頃はようやっと高難易度でも一撃死しないようになっていた程度のものだ。
1パーティの上限は7人までなので、全員で行こうとすると確かに2人あぶれてしまうから、4人パーティと5人パーティで分かれていこうかなんて考えていた所だったので、ちょっと残念ではあるけれどまた今度この3人を入れたパーティで挑もうということで円満解決となったのだった。
そんなわけで、7人(とユイちゃん)で挑んだダンジョンは、途中でリーファちゃんが落とし穴にかかりそうになるといったハプニングもはさみつつ順調に進み、目的のクエストを受ける事が出来たんだけど。
そのクエストというのが、なんというか。
卵取ってきて! ってお爺さんに言われたから取ってきたら、実はそのお爺さんが黒幕で、めちゃめちゃ大きなタコに変化して全滅させられかけたと思ったら、今度は超巨大おじさんが降ってきて、よくわからないやりとりを二人(一人と一匹?)でした後、タコ――《クラーケン・ジ・アビスロード》が海底に沈んでいって、わたし達が神殿から持ってきた(本当は封印されていたやつをタコに騙され持ってきてしまったもの)卵を巨大おじさんに渡してクエストクリアという、これ1話くらい読み飛ばしたかな? というような急展開が続き、わけのわからないままわたし達は巨大な白いクジラに乗せられ、地上へと帰還することに。
本来の目的である、クジラを見る事は出来たのだけど、イマイチ消化不良というか、釈然としない。
それは他の皆も同じようで、クジラに会えて大はしゃぎをしているユイちゃんを微笑まし気に見ながらも、うーんと考え込むような素振りを見せている。
「クジラさ――ん! ありがとでした――――! また背中に乗せてくださいね――――!」
アスナの肩に座るユイちゃんが、小さな手を一生懸命に振って地上まで乗せてくれたクジラを見送る。
やがてクジラが見えなくなると、ぶんぶんと振っていた手を降ろしたユイちゃんは少し寂しそうな表情をしていた。
そんなユイちゃんを見たキリトが放っておくはずもなく
「きっとまた会えるさ。さっきのクエスト、なんだか続きそうな気配だったしさ」
と励ますように口にした。
「おう、そこ、そこだぜキリの字!」
別れの余韻を台無しにする大声でクラインが割り込んできた。この野武士面はムードというものが分からないらしい。
「いったいぜんたい、あのクエはなんだったんだよ?」
言いたい事は分かる。
深淵の王とか、ナントカ神族とか、重要そうな単語はぽろぽろと出ていたものの、あまりにも突然過ぎた。
リリース直後からやっていたわけではなく、コンバート組だから知らない単語だったのかとも思ったけれど、旧ALOからの古参プレイヤーであるリーファちゃんやアイも聞いたことが無い単語らしい。
とすると、キリトの言っている通り、これは単発のクエストではなく連続するクエスト。その始まりなんじゃないかという可能性があった。
「誰か、タコとおっさんの会話、正確に覚えてたりしないかな?」
キリトがそう言って、わたし達の――というより、コハルの顔を見た。
VRMMOでは、会話ログを遡って確認するといった便利機能は存在しない。その為、SAOのベータ時代から旅の必携アイテムとして録音クリスタルが推奨されていた。
が、わたしは録音クリスタルを殆ど使用したことが無い。なぜなら、そんなことをしなくても覚えていてくれる最高のパートナーが居たから。
「えと……まあ、はい。覚えてます」
キリトだけじゃなく、コハル以外の全員が一斉に自分を見たものだから少し気おされ気味のコハルがおずおずと手を挙げた。
流石わたしの恋人。超カッコいい。凄い。好き。愛してる。直接は恥ずかしくてあまり言えないけど、心の中なら幾らでも言える。
頼れる恋人に惚れ直していると、コハルは「うーん」と視線を左上に泳がせながら、口を開いた。
「完璧に覚えてるわけじゃないから……ユイちゃん、間違ってる所があったら補足してくれるかな」
「はい! コハルさん!!」
お任せください! とばかりに胸を張るユイちゃんにくすりと微笑み、コハルは先の会話を再現し始めた。
「えーと、最初はおじさん――リヴァイアサンの方が『久しいな、古き友よ。相変わらず悪だくみがやめられないようだな』って話しかけて……」
コハルが再現してくれたあの時の会話はこうだ。
タコ「そういう貴様こそ、いつまでアース神族の手先に甘んじておるつもりだ。海王の名が泣くぞ」
おじさん「私は王である事に満足しているのさ。そしてここは私の庭。そうと知りつつ戦いを望むか、深淵の王」
タコ「今は退くとしよう。だが友よ、儂は諦めんぞ。いつか御子の力を我が物とし、忌々しい神共に一泡吹かせる。その時までな」
おじさん「その卵は、いずれ全ての海と空を支配する御方のもの。新たな御室へ移さなければならぬゆえ、返してもらうぞ」
とのことだ。
うーん、さっぱりだ。
会話の内容は分からないけど、そんなことよりわたしの恋人が凄すぎて辛い。ほぼ一字一句合っていたらしく、ユイちゃんが凄いです! ってはしゃいでいた。
みんなも口々に凄い凄いとコハルを褒め称えており、わたしも鼻が高い。どうだ、こんなに凄いコハルはわたしの恋人なんだぞ。凄いだろう。
凄いのはコハルだった。反省。
賞賛の嵐を浴びたコハルが顔を真っ赤にして、「もういいですから」と手をパタパタ振って中断したことで気を取り直し、先程出てきた固有名詞について考え始める。
「気になるのは《アース神族》と《御子》だな。どっかで聞いた事があるような気がするけど……」
「はいはい! はーい!」
キリトが疑問を口にすると、リーファちゃんが元気よくぴょこぴょこと跳ねながら手を挙げていた。
どうぞ、とキリトが促すと、ごほんと咳ばらいを一つ。歯切れよく解説を始めた。
「《アース神族》っていうのは、北欧神話に出てくる神様の一族の事だよ。主神のオーディンとか、雷神トールとか、悪戯好きな神ロキとか。みんなも一度は聞いたことあるんじゃない?」
聞いたことある。というより、リーファちゃんは神話……とりわけ北欧神話への造詣が深い。SAOにログインする前はよく聞かされたものだと懐かしい気持ちになる。
「で、御子っていうのは……」
「ふんふんふん」
皆して彼女の続きを心して待つ。リーファちゃんはタメをたっぷりと作った後、カラッとした笑みでこう言った。
「さっぱり解りません!」
ちょっと。
前のめりに聞いていたものだから、全員が梯子を外されたようにずっ、とコケた。
次に発言したのは、コケたことでズレた帽子を直しているアイだった。
「えーとつまり。あのタコのお爺さんは《アース神族》に一泡吹かせたいけど今は勝てないから、《御子》っていうのの力を手に入れたい……って事ですか?」
「あのおっきなタコで勝てない《アース神族》って、一体どれだけ強いんだろう……」
むむ、と難しそうなアスナが呟き、「神様だからね」とコハルが苦笑いを溢す。
鎧袖一触どころか、触手の一振りでわたし達全員をニアデスゾーンまで叩き落したあのタコは、恐らく普通に挑んでも勝てないだろう。所謂負けイベントだったんじゃないかな。でも悔しいから次あったら絶対ぼこぼこにしてやろうと思う。
「そうだぞォ、おめーら若ェのは知らねーだろうけど、オーディンつったら最強クラスだったんだぞ。召喚されるや否や、ズバッ! とモンスターを一刀両断……」
「それ神話じゃないよね」
アスナの言に「おうよ!」と割り込んでいたクラインにジト目を向けながらツッコむ。
ちなみにわたしはなんでとは言わないけれどバハムートといえば黒いドラゴンをイメージする。神話だとおっきな魚らしいけど。
「でもなんていうか、不思議ですね」
帽子を弄りながら、アイがそんな事を口にした。
「不思議って?」
「あの大きなタコやおじさんの会話は、あくまでもALOの……もっと言えば運営のライターさんが書いたシナリオでしかないはずなのに。私達みんな、あのNPCに意思があったかのように話してますよね。私もですけど、それがロールプレイの一環ってわけでもなく、自然にそう思えてるのが不思議だなぁって」
その言葉に、わたし達――特に旧SAOプレイヤーだった者はハッとした表情を浮かべた。
そしてアイの抱いた疑問に対する答えはすぐに見つかる。
「それは……あのクラーケン達が妙に人間臭かったからだと思うよ」
『儂は諦めんぞ』と言ったクラーケンの、心底悔しそうな表情や、凛とした佇まいで御子の卵を気に掛けるリヴァイアサン。
旧アインクラッドで出会った、あまりにも人間的すぎるダークエルフや、本当に生きているかのようだったNPC。そして何よりも、ユイちゃんの存在。
ALOは旧SAOとほぼ同一のアーキテクチャ上で運用されている。
それはつまり、カーディナルがそのまま使用されているということで、そういった面で見ればアインクラッドで出会ったNPC達と同様に《高度にAI化されたNPC》が存在する余地があるはず。
「もしかしたら、《御子の力》とやらを手に入れて《アース神族》に反乱を起こそうとしているのはあの大ダコ自身の意思なのかもしれないな」
キリトは茶化すようにそう言ったが、わたしは「まさか」と思いながらも完全に否定できないでいた。
あまりにも荒唐無稽すぎるし、もしそうだったとしてもわたし達の行動に変わりはない。
この世界でめいっぱい冒険する。ただそれだけの話だ。
わたしが推察ともいえない妄想を打ち切ったちょうどその時、クラインが素っ頓狂な大声を出した。
「あああっ、やべェ! オレ、十時にピザの宅配予約してたんだった!」
現在時刻は二十二時五十七分。予約しているという時間まではあと三分しかない。
「ここから一番近いスイルベーンまで、十分はかかりますけど……」
アイが控えめに死刑宣告をする。
そして、ああ、本当に。懐かしい。
「置き配はされるだろうが、こっからカッ飛んでスイルベーンについて、宿屋見つけてログアウトするまで二十分位……か?」
「……冷めちゃいますね?」
「冷めたピザは、粘らない納豆以下……だっけ」
わたし、キリト、コハル、クラインは四人で顔を見合わせ、そして声を上げて笑う。
アスナやリーファちゃん、アイはきょとんとした顔でこちらを見ていたけれど、やがてつられたのかくすくすと笑い始めた。
「クライン、ここで落ちなよ。アバターが消えるまで見といてあげるから」
「ああ。……今度はちゃんと、受け取らないとな」
キリトが、クラインの和風鎧の大袖をぱしっと叩き、クラインが照れくさそうに鼻を掻いた。
「へへッ。んじゃ、お言葉に甘えて、今日はここらで失礼させてもうらうぜ」
んじゃ皆の衆、お疲れ! といってメインメニューを開きログアウト処理を始めたクラインを見送った。
片膝立ち姿勢に移行して、目を閉じて動かなくなったクラインを横目に他の皆に目を配る。
「他にもログアウトしたい人居る? 最後まで見てるからさ」
「んや、俺も最後まで残ってるよ。みんなは?」
MMORPGでは対人戦の時とかの落ち逃げを防止するため、街などの安全地帯以外でログアウトを行っても即座には落ちる事が出来ない。
ALOでもその機能は踏襲されており、フィールドなどの圏外でログアウトをするとしばらくその場にアバターが残留してしまう。当然モンスターにはロックオンされるし、敵対プレイヤーからの攻撃も通るから、次にログインした時にはリメインライトになってしまっている可能性が高い。
その為、フィールドで誰かがログアウトする場合は他のメンバーが、ログアウトした人のアバターが消滅する制限時間まで見守ってあげるのが一般的だ。途中で休憩する一時休憩を挟むときとかは順番にログアウトをするローテアウト、という事もしたりする。
この浜辺は強いモンスターも出ないからわたし一人でも残り全員を守り切る事は出来るだろうと思っていたけど、キリトが残るなら更に安心だろう。
すると、アスナがおずおずと手を挙げた。
「あ、じゃあ私もそろそろ落ちようかな……。皆のことはお母さんに認めて貰ったけど、遅くなりすぎたら怒られちゃうし」
アスナのお母さんは一度会ったきりだけど、なかなかに厳しそうな印象だった。
最初はこっそりやっていたALOを、アスナが『皆を隠したままでいたくない』と言ってくれた事で、わたしやコハルがアスナの家に遊びに行った際に、説得の末認めて貰った経緯がある。
が。ゲームをみんなでやる事自体は認めて貰った者の、それは『やるべきことはやる』という約束の下であり、確かに遅くまでゲームをしているというのはあまり心証がよろしくないだろう。
そういった理由で快諾すると「ありがと。またね」と小さく手を振り、そのまま待機態勢を取った。
一度流れが出来てしまえばあとはポンポンと話が進む。
「私も先にログアウトするね。ご飯作って待ってるから」
といってコハルが落ち
「今日はお母さんが居ないんで、私も」
とアイもログアウトをした。
「リーファちゃんは大丈夫?」
「うん! あたしはお父さんもお母さんも夜居ないし、お兄ちゃんと一緒で最後まで残るよー」
夜も更けてきたというのに、一向に元気なままでいるリーファちゃんに笑みが零れる。
それじゃあ皆のアバターが無くなるのを確認したら、一緒にスイルベーンまで飛んでいこうか……なんて考えていたけれど、そこにキリトが待ったをかけた。
「いや、スグは悪いけど先にログアウトしといてくれないか? 実は腹ペコでさ。落ちたらすぐに飯食べたいんだ」
ん? とその様子に微かな違和感を覚えたものの、リーファちゃんがそういう事ならと少し名残惜しそうにログアウトをし始めた。
そうしてわたしとキリト以外の全員がログアウトをし、無事アバターの消滅を見届けた所でキリトが「ふっふっふ」と怪しげな笑い声を上げ始めた。
「やっと二人きりになれたなぁ……!」
「斬るよ」
「不倫ですか、パパ」
おかしなことを言い始めたキリトの首に、抜刀した長剣を突き付ける。アスナのアバターが消えたことでわたしの頭へと移ったユイちゃんも冷たい目をしていた。
「嘘嘘嘘!! ジョーク! ジョークだって!!」
慌てて両手を上げるキリトに嘆息を返し、納刀をすると安堵のため息をついていた。
変な事言うからだぞ。次言ったら無警告で切り飛ばす。
「で、わざとらしい理由でリーファちゃんを先にログアウトさせたのはなんで?」
「お、気づいてたか」
そりゃあもう。
あんな、いかにも何か話がありますよという風にログアウトを促してたんだもの。
確信したのはついさっき、変な事言った時だけど。
うむうむ。と満足そうに頷くキリトは、口の端をにやりと上げて
「ちょっと今回のクエストで気になる事あってさ。後で付き合ってくれないか?」
そんなことをのたまった。
キャリバー編を書くにあたって、他の伝説級武器について描写しようとして虹の橋を読んだらクラインとのやりとりが好きすぎて。
遅ればせながら、誤字報告本当にありがとうございます。
投稿する前も後も読み返して修正してるのですが、なんで誤字がまだあるんでしょう……??