二十三時三十分。
夜の帳は既に落ちきっており、いかにネットゲーマーにとってゴールデンタイムといえる時間帯であろうが、ここ最近規則正しい生活をしていたわたしにとっては既に就寝予定時間を過ぎている。薄墨色の雲が夜空を隠したアルヴヘイムを多くの訓練されたネットゲーマー達が闊歩する様子を眺めながら、わたしはくぁ……とあくびをかみ殺していた。
「よっ……と。お待たせ」
「うー……」
ぐしぐしと目を擦りながら億劫に返事を返すと、キリトは呆れたように肩を竦めた。
「どうしたどうした。俺たちゲーマーにとってはここからが本番だろ?」
「そんな本番はとうに無くしたよ……」
旧アインクラッドでは一時期、数時間ほど寝ては狩りに出かけるといった無茶をしていたから、この時間の活動も慣れたものだけれど、小春と住むようになってから……いや、SAOでコハルと一緒に過ごしていた時から既に早寝早起きをしていた事もあって、突然の夜更かしにいまいちアジャストが出来ていない。
流石に眠たそうなわたしを見かねてか、キリトが心配そうに声をかけてきた。
「あー、誘ったけど、やっぱりやめとくか? 一応俺一人でもなんとかなりそうだし……」
ぽりぽりと頬を掻くキリトに、彼の性根の良さを再認識しつつも「大丈夫」とめいっぱい伸びをして眠気を吹き飛ばす。
「や、わたしも気になるし。あのクエスト」
「そっか。じゃあ、よろしく頼む」
パチパチと目を瞬かせ、眠気がある程度飛んだわたしはブイサインをキリトに向けると、彼はふっ、と相貌を崩して頷いた。
さて、あのクエスト……《深海の略奪者》だけれど。どうにも単発クエストとは思えない。
タコことクラーケンに騙され持ち出してしまった大きな卵、リヴァイアサン達曰く《御子の卵》は『新たな御室に移す』と言って持ち去った。
けれど彼らの話の節々に『ここじゃ終わりませんよ』と続きを予感させるワードが散りばめられていた。
続き物クエストは、基本的に一つのクエストをクリアすれば、続けて次のクエストが発生し、マーカー等で新しい目的地が表示される。そういう流れをクリアしていくことで一つの物語が完成するという仕組みになっている。
が、稀にだけれど続き物クエストでありながら次のクエストまでの道筋が表示されず、それまでのクエストで得た情報を元に物語を推測し、自分の手で次の場所、やるべきことを見つけなければならないというものもある。
今回のクエストがこのタイプなら、あの会話の中……あるいは、関連性のある別の場所になんらかのヒントとなるものがあるはず。
恐らくだけど、キリトがこんな夜更けにしようとしているのは、それについて何か思う所があるからなんだろう。
わたしを呼んだのは、多分人手が欲しいとか、または自分の考えに客観的な意見を求めたか。アスナやコハルじゃなくてわたしなのは、同じネットゲーマーとしての視点が欲しかったのかな。多分だけど、神話を紐解いて推理するんじゃなくて、ある意味でメタ視点から次を探すのだろう。
何故か。
それはALOにおけるクエストが、完全にライター制作のものだけじゃなくてカーディナルによるクエスト自動生成によって生み出されたものが多分に含まれているからだ。
自立コントロール・システムである《カーディナル》は、ゲームのバランス調整やAIの挙動制御だけでなく、NPCから受けられるクエストまでも自動で作成する。
ネットの海から神話や伝承などを引っ張り上げ、編纂、統合して一つの、あるいは連続クエストを生み出すのだ。
そのため色んな神話がごたまぜになっている事もあるのだけど、そこは超高度なシステムであるカーディナル。どれだけ無茶苦茶な継ぎ接ぎであろうとも、とりあえず行き着くところまではストーリーを完成させる。
SAO時代ではそういうクエストがちょっとばかにならないくらい発生していた。確かクリアした七十五層時点で1万ちょっと……だっただろうか。当時血盟騎士団の副団長であったアスナがそんな事を言っていた気がする。
訳知り顔でカーディナルについて触れたけども、これは全部キリトからの受け売りである。いつだったかに熱く語っていたのを覚えていただけだ。
キリトってシステムとか機械の事になるととたんに饒舌になるよね。笑う。
けどそれを本人に言うと凹むから面と向かっては言わない。わたしの慈悲に感謝するがいい。
話がズレた。
さて、そんなわけで降り立ったアルヴヘイム、ひいてはシルフ領首都のスイルベーンなのだけど、ログアウト時にも思ってたことだけれどわたしがすごく場違いだ。
見渡すと、通りを歩いているのは当然のように自領であるシルフが最も多く、次に同盟相手であるケットシー。次いで、領土が近い歌妖精プーカや闇妖精インプ。
わたしの種族であるサラマンダーは、飛行制限の撤廃やギルドという、種族関係なく所属することが出来る組織が実装された事から種族間の溝というのは無くなりつつあるものの、以前まで戦争状態であったためか一人も居ない。
ついでにいうとキリトのスプリガンも領土が世界樹を挟んだ地の果てとはるか遠くにあるため居ない。
そんな普通なら見かける事のない種族が二人連れ立っているものだからまぁ目立つこと。
それでも敵対種族であるサラマンダーが居るのにも関わらず警備兵がすっとんで来ないのは、ギルドイベントやなんやらでわたしの顔と名前が広く知られてる事と、リーファちゃんの自領ということで何度も訪れているからだ。
わたしが《スイルベーン》に入る事については、シルフ領主であるサクヤさんから認めてもらっており、通行証も持っている。ので、こうして堂々と大手を振って闊歩することは出来るのだけど、遠巻きにちくちくとした視線が刺さるのが気になる。どちらかというと好意的な感じだから、嫌ではないのだけど。
どちらにせよ、ここから早く移動した方が良いだろう。
「とりあえず移動しようよ。ここで二人で居たら目立つだけだよ」
「ん? ああ。じゃあこっちかな。ついてきてくれ」
移動を提案すると、キリトは迷いの見えない足取りでスタスタと先導し始めた。目的地はもう決まっているのだろうか。
「どこいくの?」
「屋内」
そう言ったキリトは、さっと適当なNPC民家に潜り込んだ。後に続いて、なるべく違和感のないように自然な素振りで同じ民家へと侵入する。
「ねえ、目的が見えないんだけど」
「まあまあ。ちょっと準備するから待っててくれ」
何をするつもりなのか、キリトは口早に詠唱を開始した。あいにく魔法についての知識はあまりないので、かろうじてパーティに付与する魔法であることと、エフェクトライトの色から幻影魔法であることは判明したけれど、その効果にまでは思考が及ばない。
詠唱が完成すると、ぼやっとした光がわたしの身体を包んだ。けどそれだけ。
「コレは?」
「《月影潜り》っていう幻影魔法。月の光が作る影に居るときだけ認識されにくくなるってやつ」
「……その意図は?」
なるほど、隠形系の魔法ね。なんだか嫌な予感がしてきたぞ。
「目標はシルフ領主館。レッツ潜入クエスト……ってね」
◇
「正面から普通に入れば良いじゃん……少なくともわたしはサクヤさんに名簿登録してもらってるんだし……」
「今夜の訪問はなるべく内密でいたいんだよ」
月明かりが遮られて出来た影を、わたしとキリトは滑るようにして進んでいた。
スイルベーンは建物の間を走る、死角となりやすい小道がたくさんある。さらに夜の暗がりのなかであり、2人とも顔をフード付きのマントを被って隠している上、影の中なら認識されにくくなる魔法も付与されている為、わたし達の姿は見えないはずだけど、ウロウロしている耳の良いプーカ辺りに足音が聞かれないよう、急ぎながらも慎重に影の間を渡っていく。話し声もヒソヒソと最小限だ。
そうこうしている内に、直径で100メートル程はありそうな円形道路が見えてきた。その中央には、スイルベーンで最も美しいと呼ばれる翠緑の城――領主館。
三階建の館は夜にも関わらず煌々とライトアップされており、厳かながらも幻想的な雰囲気を放っている。
その館の周囲は深い堀で囲まれていて、館に入るには南北にかけられている橋からしか行けないのだけれど……さて。
「こっからどうする?」
円形道路は遮るものが無いため影が出来ていない。また、橋にも大きなハルバードを携えた屈強なガーディアンNPCが2体、橋を守るようにして脇に控えている為、真正面から突入すると流石にバレてしまうだろう。
「あの堀を飛び越える」
「了解。けど目立っちゃわないかな」
「大丈夫。もうじきスイルベーン全体に影がかかるから」
ああ、なるほど。
五月のアップデートから、アルヴヘイムは毎夜擬似的な月蝕が起きるようになった。
惑星が月を遮るわけではなく、別の、そう。
高空を飛ぶ鋼鉄の城が、月を隠してしまうのだ。
話している間に、それは始まった。
月が右端から徐々に欠けていき、ついに。
時は来た。
青白い円盤がすっぽりと覆われ、スイルベーンが影に沈む。
わたしとキリトは同時に飛び出した。
月蝕は約5秒。
その間に領主館に侵入をしなければならない。
領主の館は部外者の飛翔力を含む全ての魔力が無効化されているため、空を飛んで侵入することは出来ない。
ので、こうする。
「よしこいっ」
「っしょ……っとぉ」
前方を走っていたキリトがくるりと振り向き、腰を屈め組んだ腕を前に突き出した。
わたしは軽く跳躍すると、キリトの腕に着地。そしてバレーのレシーブのように、キリトが腕を振り上げる。
僅かな時間の大跳躍。
空中でメニューを操作し両手槍を取り出したわたしは、着地と同時に堀へ向かって槍を突き出す。
間髪を入れずに堀を飛び越えようとしてきたキリトが捕まり、わたしは思い切り槍を引き上げた。
「さんきゅ」
「今のうちに早く茂みに隠れよう」
極力音を立てなかったおかげか、どうやらガーディアンには気づかれずに済んだようだ。
身体を低くし、庭木の影に潜り込んだ瞬間月蝕が終わった。
「間に合ったね」
「よし。こっからは《月影潜り》も解けてるから、慎重に進むぞ」
「りょ」
頷き合い、再びこそこそと領主館内を進む。
なんだかちょっとワクワクしてきたぞ。
逸る気持ちを抑えながら、わたし達は開け放たれている正面エントランスに向け潜入を開始した。
◇
五分後。
わたし達はどうにか領主の間がある3階まで辿り着くことが出来た。
どうやら今ログインしている執政部のプレイヤーは殆どが2階の広間で談笑しているらしく、人気は全く無い。
念の為左右を見回し、誰も居ないことを確かめてから被っていたフードをぱさりと下げた。
「これで目的の人物まで2階に居たら笑えるな」
「笑えないけど……?」
戻ってくるまで待つつもりではあるけど、あまりこそこそした状態で長居はしたくない。
ここまで誰にも見咎められなかった幸運が続きますようにと祈りながら、豪奢な両開きの扉を数度、ノックをする。
「どうぞ」
聞き覚えのある声で応答があった。
よかった、と安堵しながらドアハンドルを引き、開いた隙間にキリトを押し込んでからわたしもするりと侵入。
後ろ手にドアを閉めるのと、正面の大きな事務デスクで作業をしていたサクヤさんが顔を上げたのは、ほぼ同時だった。
「こんばんわ」
「いい夜ですね」
上からわたし、キリトの順だ。
サクヤさんはぎょっ、と目を見開いた後、しばし無言でじーっとわたし達を見、指を一つ立ててこう言った。
「キミたちのギルドがついに世界征服に乗り出し、その足がかりとして私の首を取りに来たのかな?」
「「違います」」
なんだその物騒な押し入り強盗は。
「え。なんでそんな発想に……?」
「キミ達のギルドは色々な意味で有名だからな。やりかねないと思っただけさ」
そうかな?
ちょっとわたし達のギルドについて振り返ってみよう。
構成員は
小悪魔、ブラッキー、腹黒聖女、バーサクヒーラー、スピードホリック、魔女、魔王。
残した功績は
・初開催のギルドイベントで大暴れ(優勝)
・大陸横断レースで大暴れ(ワンツーをギルメンがかっさらう)
・全種族統一デュエル大会で大暴れ(優勝準優勝)
ギルド発足から一ヶ月でこれ。
うーんだめだ。世界征服を企みかねない。
どう釈明しようか迷っていると、サクヤさんが「冗談だ」とからからと笑う。驚かせないで欲しい。真面目にギルドのイメージアップ戦略を考えるところだった。
「して、何用か」
「あー。サクヤさんにちょっと教えてほしい事があって」
「………………たかだかそんな理由で領主館に侵入したのか?」
あーあ。サクヤさんが信じられないものを見るような目をしてるよ。当然だ。
「俺はサクヤさんとはフレンド登録してませんでしたし」
「……アリスは登録していたはずだが」
「あっ……」
そうだった。
気がついたら侵入する流れになっていたけれど、何も忍び込まなくてもメッセージで段取りを付けることが出来たじゃん。おバカかわたしは。
いや違う。目的がはっきりしないまま連れてこられたのだ。結論。キリトが悪い。
「今回の件は他に誰にも聞かれたくなかったんですよ。仮にサクヤさんが秘密の面会に応じてくれたとしても、誰にも気取られずっていうのは出来ないでしょう?」
「それはまあ、そうだが」
なんだ。ちゃんと考えた上だったのか。それなら許してあげよう。
「まあ本音を言えば面白そうだったからっていうノリと、もしバレても顔パスのアリスを囮にすれば問題にならないかなって」
やっぱり殺そう。
わたしから発せられる剣呑な雰囲気を察したのか、キリトが慌てたように事情を説明しだした。
「……なるほど。事情は理解した。だがこれでも私は領主なのでね。立場的に多種族であるキミたちに話せることは少ないぞ。まあ、これがシルフ領に所属するギルドならば話は別だが?」
サクヤさんはちらりとわたしを見ると不敵な笑みを浮かべた。
うーん。以前から何度か打診されては居た事だけれど、ちょっとなぁ……。シルフだけじゃなくケットシー、ウンディーネ、サラマンダー、スプリガンの各種族から同じように勧誘を受けている。けどどこかの管轄になるのは避けたいのでやんわりと断っていた。
かといって対価も無しに情報を得られるかっていうと、そこまで甘くはないだろう。何か、別に用意できそうな情報はあるかな……?
すると、助け舟を出すかのようにキリトがわたしに代わって口を開いた。
「機密情報が聞きたいわけじゃないんです。ALOを昔からやってるサクヤさんに心当たりが無いか聞きたかっただけで。もちろん、対価としてこちらも情報を渡します」
「ほう? どのような情報か」
キリトはにやりと笑うと、先のサクヤさんと同じように指を立てた。
「シルフ領主館への侵入方法と、その対策について」
サクヤさんはきょとんとした後、快活に大笑いをした。
それで良いなら、いいけれども。やってることは泥棒が盗んだものを本人に売りつける図だった。
◇
サクヤさんが手ずから注いでくれたワインをちびりと舐めるようにして飲みながら、今回のアポ無し訪問に至った経緯を話す。
全てを話し終えると、サクヤさんは懐かしむように目を細めた。
「《深海の略奪者》か。それなら十日程前に私もやったよ」
「領主様自らですか?」
「もちろんだとも。領主ではあるが、一介のプレイヤーでもあるからね、私は」
そりゃそうだ、とわたしは納得した。各種族の領主は別に領地経営シミュレーションゲームをやっているわけではない。そういう側面もあるだけの、わたし達と同じVRMMOプレイヤーなのだから。
「だが」
サクヤさんがクリアしたというクエストの話には、まだ続きがあるらしい。佇まいを直し、聞き入る姿勢になる。
「私がやった時はクラーケンもリヴァイアサンも出現しなかった。神殿で見つけた卵だか真珠だかをNPCのお爺さんに渡したら、普通にお礼を言われてクエストクリアさ。あの時は拍子抜けしたものだったが、なるほど。分岐があったのだな」
あー。そういう。
これもよくある手法だ。プレイヤーの行動によって、クエストの結果が変わる。二つの陣営が激突している時に、どちらの陣営に味方するか等、だ。
「だが普通は卵を渡すと思うんだが」
「最初はわたし達も渡そうとしたんですけど。アスナが、なんか嫌な予感がするって取り上げられて……」
「はは、彼女の第六感は侮れないな」
サクヤさん曰く、普通に卵を返した場合はダイオウイカに地上まで運ばれるらしい。
意図したものでは無かったけれど、アスナのファインプレーによってユイちゃんの願いがかなったわけだ。後日教えてあげ――たら、領主館に侵入したことまで話さなくちゃならなくなるからやめておこう。
「クエストの分岐ルートについては了承した。で、キミたちの訊きたい事というのはつまるところ何だ?」
「リヴァイアサンの言っていた、《新たな御室》について心当たりは無いかな……と」
ALOプレイ歴が短いわたし達には思い当たる事は無い。が、古くからプレイしており、かつ領主という情報が集まる地位に立っている彼女ならば、何か引っかかるものがあるかもしれない。
今回の目的は、彼女からそういった情報を訊けないかという事だ。
「直ぐには思い出せないが……」
言って、サクヤさんはメニュー(恐らく、領主専用のもの)を操作し、大きなデスク一杯に一枚の地図を表示させた。
ひと目見ただけで分かる、わたし達が見ることの出来る地図よりも数倍も詳細な、アルヴヘイム全図。
「これも機密といえば機密だが、まあよかろう」
そう前置きをしてから、サクヤさんはこの地図について説明を始めた。
領主専用のこの地図には、発見済みのクエストや怪しいポイント、いわくありげな石碑やらなんやらの謎が全て記録してあるらしい。
早速《御子》で検索した結果。該当なし。続けて御室やリヴァイアサン、クラーケン、卵など思いつく限りの単語も試したものの、全て空振りに終わってしまった。
「あ。サクヤさん。この地図ってユニークポイントの三次元座標も出ますか」
手詰まりかと思いかけたが、キリトが何かを閃いたらしい。
「もちろん」
「じゃあ、一番低いところにあるポイントを教えてもらえますか。ヨツンヘイムは除いて」
そこまで来て、わたしにも理解できた。
なるほど。全ての海と空を統べる……ね。
「最も低いポイントは、マイナス97メートル。クエスト名は《深海の略奪者》」
ビンゴだ。
ということは、最も高い場所にある所。それが次の目的地である可能性が高い。
「じゃあ、次は一番高いポイントを――」
「それは、検索するまでもないな」
サクヤさんはきらりと瞳を光らせ、領主の間にある大きな窓から見える1点を指差した。
「アルヴヘイムにおける、最も高い場所にある謎。それは――」
「世界樹の、てっぺんだよ」
◇
領主館からの帰り道。
何食わぬ顔で正面口から出てきたわたし達は、夜のスイルベーンを歩いていた。
「いやあ、次の目的地が無事に分かって良かった良かった」
「そうだね」
「それにしても、次は世界樹のてっぺんか。どんなクエストが待ってるんだろうな」
「そうだね」
「……」
「……」
「…………」
「…………」
「情状酌量の余地は?」
「覚悟しろ」
わたしはメニューから大鎌を取り出し、脱兎の如く背を向け逃げ出したキリトを追いかけ始めた。
天誅。