project ING ~海を越えてきたシンデレラたち~ 作:四月一日雪
ここは346プロダクション。
多くのアイドルが所属している日本有数の芸能プロダクションです。
ここではアイドル達が輝く舞台を夢見て日々レッスンに励んでいます。
おとぎ話にシンデレラというお話があります。
灰かぶりといわれていたシンデレラは魔法使いに出会い、大きく羽ばたきました。
アイドルたちも彼女たちにとっての”魔法使い”に出会える日を心待ちにしています。
アイドルにとっての魔法とはいったいなんでしょうか。
魔法はいつか解けてしまうのでしょうか。
”魔法使い”との出会いは奇跡でしょうか、それとも運命でしょうか。
これは海を渡ってきたアイドルたちの物語。
そしてもう一人。
彼女たちと共に歩んだプロデューサーの物語です。
☆ ☆ ☆
季節はすでに冬。もう数日もすれば師走だ。人は一年の終わりを意識し始め、世間は年末に向けて忙しくなるころだ。イチョウも葉を落としていき景色も物寂しくなり、この寒さに一役買っている。毎年のように年末の雑務に追われる日々が来ると当然ながら思っていた。しかし平社員という立場において仕事とはいきなり上から降ってくるものである。
「(コンコン)失礼します」
「はいりたまえ」
俺は三城常務に部屋へ呼び出されていた。三城常務をこのプロダクションにいる者なら知らぬ人はいない。敏腕ではあるが強引なやり方を突き通すという噂だ。専務に昇格するのも時間の問題といわれている。そんな重役になぜか呼び出しをされていた。今までは接点も特になかった。なのでいきなり呼び出されるのは心当たりが特になく、やはり不安になる。
知らない間に何かやらかしたか…?
「本日私が呼ばれたのはどういったご要件でしょうか、三城常務」
「そんなに緊張する必要はない。今日は君に頼みたい仕事があったから来てもらったのだ」
「頼みたい仕事ですか」
これはとても意外な答えだった。しかし続けられた言葉はそれ以上に予期していないものであった。
「そうだ、君には新規プロジェクトの立ち上げに伴いプロデューサーとなってもらいたい」
「…プロデューサーというのはチーフということでございますか?」
「いや、プロデューサーというのはアイドルのプロデュースをするということだ」
なんだって?アイドルをプロデュースする?そんな話が出てくるとは信じられない。
「…本当ですか?任せる相手を間違っていませんか」
「どうしてそう思うのだ」
「だって私は広報部だからです。今までプロデューサーなどしたことがないのですよ」
そう、俺は346プロの広報部。アイドルなど写真やポスターで見ることがほとんどなのだ。直接アイドルに会うことはほとんどないのだ。そんな人間にいきなり持ちかける話ではないだろう。
「そもそもどうして私なのでしょうか?」
そんなに346プロはプロデューサーが人材不足だったのだろうか。確かにうちの事務所に所属するアイドルは非常に多い。だがそこまで逼迫していないはずだ。
「確かにプロデューサーとしての実績は君にはない。しかし私はプロデューサーとしての実績があるのだよ」
要するに常務の見る目を信じろというのか。何の説明にもなっていない。そんな思いをよそに常務は続ける。
「君の経歴は非常に興味深いな。日本トップのT大学に入学。3年時に自分探しの旅としてインドに1年間の留学。そして卒業後に我が346プロに広報として入社した。他のプロダクションならアイドルにでもなれるのではないか?」
常務は冗談交じりにいうが、こちらは笑っている場合ではない。
「確かに珍しい経歴ではありますが特筆すべきことはないと思います」
大学の同期の中で芸能界関係の仕事をしているのは確かにほとんどいない。しかし芸能界といっても俺の担当部署は広報。広報の仕事をしている奴は別に珍しいわけでもない。それに過去の学歴などは書面以上の価値はほとんどない。勉学などは一般常識に添えるほどの教養としてあればそれでいいのだ。
しかし常務は話を続ける。
「今回のプロジェクトに関しては君が適任であると考えたのだ。だから任せてみたいと思ったのだが、引き受けてみる気はないかね」
いきなりそんなことを言われても困ってしまう。さっきの話からどうして俺が適任ということになるのだろうか。
「私を候補に挙げてもらったのはうれしいことですが、やはり畑が違うのではないかと思います」
これは自分で言うのもおかしいが当然の反応ではないだろうか。どうして素人にいきなり任せてうまくいくと考えたのだろうか。
「きみは新しいことに挑戦・失敗をすることを恐れているのかね?」
「少なからずは心配しております。なにせ今までやってきたこととはすべてが違いますので」
怖くない人などいないと思う。俺にとっては未知の領域なのだ。
「誰にだって初めての時はあるものだ。それがたまたま今回だったということに過ぎないだろう」
常務は当然のように話す。この人はきっとそうやって成功してきたのだろう。
「もちろんやるからには絶対に成功させるという意思でやらなければならない。そして結果を出さねばならない」
「……やはり絶対に成功させろということではないですか」
「失敗も結果の一つである。ただその失敗を生かし最後に成功させればよいのだ」
噂通りの敏腕さと強引さを、この数分の会話だけで感じられた。
「本当に無理だと思うなら断ってほしい。自分の限界を勝手に決めつける者は成長などしない。当プロジェクトに参加しているアイドル達にはふさわしくないだろう。」
いきなり頼まれてひどい言われようだ。だが常務の言い分も理解できる。アイドル達はさらなる高みをめざして日々励んでいるのだ。向上心のない人間がいるべき場所ではない。
「もう一度だけ聞こう。君はこのプロジェクトを引き受けるか?」
常務は腕を組み問う。
「私は……」
これは俺にとって大きな分岐点だと思う。何か新しいことに挑戦するには勇気が必要だ。果たして成功できるだろうか?それはわかるはずがない。
だが、ここで断るということは。
自らの可能性を否定することだ。
この仕事に就く時に挑戦する覚悟を、新たな道を進んでいくと決めてきたはずだ。
いろいろ言ったが、やはり俺は新しいことに飛び込んでいきたいのだ。
俺は大きくお辞儀をした。
「不慣れな点があるかと思いますが、ぜひ任せてください」
「うむ、いい返事だ。君ならやってくれると思っていたのだ」
満足そうに常務は頷いた。
「ぜひプロジェクトを成功させてほしい。くれぐれも私の評判が悪くならないようにしてくれたまえ」
やはり引き受けてよかったのだろうか…。
☆ ☆ ☆
「君はシンデレラの話を知っているか」
「もちろん知っています。有名な物語ですから」
「君はシンデレラがなぜ幸せになったと思うかね?」
「やはり魔法使いに出会えたことが大きな影響を与えたのではないでしょうか」
「魔法使いにあったからだろう。彼女の容姿が美しかったからだろう。勿論それも一つの要素であるだろう。しかしもっと重要な部分を見間違えてはならない。それは彼女が不断の努力を行っていたからだ。そこを間違えてはならない。よく覚えておくとよい」
「はあ…そうですか。」
話の内容は理解できる。ただなぜこの時この話をしたのかは俺にはよく分からなかった。噂に聞いていたがポエムを言うんだなと思った。
☆ ☆ ☆
「では移動するとしようか」
「いったいどこにですか?」
「もちろん君が受け持つアイドルたちだ。彼女たちも待ちわびているだろう。彼女たちがどんなシンデレラとなるかは君の今後の頑張り次第だな」
そう言って立ち上がり、ついてきたまえ、と言い歩き始めた。
「もうこれから紹介ですか」
ずいぶんと忙しい話だ。まあ初動が速いことは悪いことではないだろう。
「私も早くプロジェクトを動かしたいからな。私はこのプロジェクトに期待をしている」
直々に言われると緊張する。その時に俺はあることに気付いた。いや、当然ならばもっと早い段階で気付いていなければならないことだ。きっと新たなことに挑戦するという思いが先走りしていたのだろう。
そういえば……プロジェクトの内容を一切聞いていなかった。
でも今更聞きづら過ぎる。ましてや断ることなどできないはずだ。しかし今更後悔したってどうしようもない。後から悔やむから後悔なのだから。考えても分かるはずがないので聞くしかない。
「……あの、プロジェクトの内容を具体的にお聞きしてもよいですか?」
「君はどこまで知っているのか?」
「ア、アイドルをプロデュースするところまでしか……」
「それだけか。それできみはよく引き受けたな」
常務があきれた顔をしていた。本当に頭が熱くなってしまい、何も考えていなかった。恥ずかしい限りだ。いきなり評価が下がってしまいそうだ。
「まあ、確認していなかった私にも非はあるだろう。それでは説明をしておこう」
だが心配していたほど影響はないようだった。歩く速度を変えぬまま常務は説明を始めた。
「346プロダクションは国内では知名度が上がりブランド力がついてきた。そこで次は国外、つまり世界を視野に入れることにした」
「世界、ですか。スケールが大きな話ですね」
「ツアーなどはたまに行っているが、海外に拠点を置いて本格的に行うかを検討しているのだよ」
思っていたよりも大きな話だ。あれ、なんか冷や汗かいてきたぞ。気安く引き受けてよかったのだろうか…。そんな焦りに気付くこともなく常務は話し続ける。
「世界を目指すということは今までと同じ手法が通用するかは未知の領域である。日本と世界各国では文化・考え方の違いがある」
確かにその通りだろう。日本は世界の中でも独自の文化を持ていると聞く。
「そこで足掛かりを作る。それが君に任せるプロジェクトだ」
……これはとても責任重大ではないだろうか。346プロダクションが出階に進出できるかどうかがかかっているのか。失敗は許されない。もっとこれから行う活動の内容を聞いておいた方がよいだろう。
「世界への足掛かりということはもうすでに人気のあるアイドルをプロデュースするということですか?」
もしそうだとすると大変だろう。アイドルにとっても今までと違う人が担当する問うことは負担になりそうだ。
だが返事は違った。
「いや、君が請け負うのはほとんどが新人アイドルだ」
「…それは、どいうことでしょうか」
「世界へ進出するにあたって346プロダクションが国際色豊かであるということをまずアピールする。そうすれば世界進出したときにその国の出身の346プロのアイドルに興味を持ってもらえる。そこからほかのアイドルにも興味を持ってもらうことができる。つまり見てもらう機会が増えるというわけだ」
「なるほど、それが今回の戦略なのですね」
「また逆に考えると日本が異国の地である海外アイドルはどこまで受け入れられるのかということも知りたいのだ。やはりビジュアルという面ではインパクトは強い。そこからどこまで広げていけるか、また言語の壁が存在するのかといったことも重要になるだろう」
今の時代はアイドルにもグローバル化の波が来ているのか。最近は国内の仕事でも外国の人とコミュニケーションをとる機会は確かに増えてきている。
ということは俺が担当するアイドルは……。
「……三城常務、つかぬ事をお聞きしますが私が担当するアイドルは海外の方でございますか?」
「君は何を当然のことを聞いているのだ?」
いやいや、なんで当然ということになっているのだ。初プロデュースするアイドルが外国の方だとまたハードルが上がっているのではないか?
「私日本語以外は英語が多少はなせるぐらいなのですが、本当に適任なのでしょうか?」
「安心した前、彼女たちは非常に優秀だ。日本語でコミュニケーションをとることができる」
ふむ、日本語で意思疎通ができるのはありがたいことだ。だがニュアンスが違ったりることもあるから俺も相手の言語を勉強した方がいいのだろうか?最初からアイドルに関係ない課題が出てきそうだ。
「さあ着いたぞ。この部屋に君がこれから共に世界を目指すアイドルいる。君が開けたまえ」
どうやら部屋についたようだ。この先にいるのか。
まさか俺がPになるとは思っていなかった。それも海外の方とは…。
だがこうしてやると決めた以上自分のためにも、何よりアイドルのためにも絶対に成功させてみせる。
こうして俺は新たにプロデューサーとしての扉を開くことになった。
第一印象は重要だから、失礼のないようにしないとな。身だしなみをもう一度確認する。よし大丈夫だ。
一度深呼吸をする。よし、いくぞ!
「(コンコン) 失礼します、はじめま……」
パンパンパン!
「うわああっ!?」
ずいぶん情けない声が出たと我ながら思う。突然の大きな音に驚いてしまった。
若干の火薬のにおいがする。周り散らばったいるのもを見るとどうやらさっきのはクラッカーのようだ。
今起きたことに驚きと戸惑いを隠せない。
これはどっきりなのか?だから俺に扉を開けさせたのか。驚いて思わず振り返って常務を見てしまった。常務は非常に難しい表情をしていた。どうやら違うようだ。
そんなことを考えていると少女たちが駆け寄ってきた。
「イエーイ!びっくりした―?」「待ってたわよ、あなたが私たちのプロデューサーなんでしょう?」「やっぱりクラッカーはいらなかったんじゃない?」「待ちくたびれたゾー」
質問攻め(?)にあった。
第一印象はみんなとても元気だということだった。何てエネルギッシュなのだろうか。あと順番に聞くという感じではなく聞きたい人からどんどん行く感じがとても強い。これが世界なのか(違う)。
次にに思ったことは人数が多いということである。多くても3人くらいだろうと思っていたが、全然違った。10人ほどいる。
そして一目で国際色ゆたかだと分かる。アジア系・北欧系・南米系。みんな日本に来てアイドルを目指しているのだ。改めて身が引きしまる思いになる。
そんなことを考えている間もまだ囲まれ続けている。この状態はどうすればいいんだろうか?
そう思っていたら常務がすぐに解決した。
「(手をたたく)アイドル諸君、静粛に」
するとさすがに彼女たちも静かになる。常務は見渡し高らかに宣言した。
「今日から彼がこのプロジェクトのプロデューサーとなる。以後わからないことや何かあった場合には適宜彼に相談するように。君たちの活躍を健闘する。それではこれより346プロジェクト International Girls、 『 project ING 』を開始する!」
初投稿です。四月一日雪と申します。
私の妄想の垂れ流しになっております。
稚拙な文章かもしれませんがお付き合いいただけたら幸いです。今後においても会話が多くなると思います。
更新速度はあまり早くないのであしからず。
私の文章で海外組の魅力を少しでも伝えられるように努力します。
ご拝読ありがとうございました。