project ING ~海を越えてきたシンデレラたち~ 作:四月一日雪
「わたくしはライラさんといいますー。ドバイからパパには内緒で日本に来ましたです。いっぱい働いてお金稼いでおなかいっぱいで暮らしていきたいですー。わたくしは日本に来てからたくさんの人にやさしくしてもらったのでございます。その感謝をお返ししていきたいでございますです」
褐色に少し金土がかったロングのブロンド髪の中東系の16歳。あまり感情の起伏が大きくなさそうだ。父親に内緒で来たというのは衝撃的だ。それが理由で苦しい生活を送っているのか?趣味は公園で知らない人とおしゃべりか…。念のため気を付けるように言っておこう。
「私の名前は、アナスタシア、です。北海道出身ですが、10歳までロシアにいました。パパがロシア、ママが日本生まれです。たまにロシア語、喋っちゃいます。光り輝くピエルバズヴェズダ……一番星みたいなアイドルになりたいですね。アーニャって呼んでください」
ロシアと日本のハーフの15歳。外見はロシアの影響が強く表れている。銀髪のショートに碧眼、真っ白な肌を持ちとても美しく、雪の妖精みたいだ。しかし冷たい印象はなく、愛らしい笑顔が良い。目標も趣味の天体観測に影響を受けていそうだ。
「私はクラリスと申します。出身は兵庫です。アイドルのほかに教会でシスターをやっています。教会の維持のためにアイドルを行っています。私の歌を皆さんに届けることでその助けになればと思っています。どうぞよろしくお願いします」
出身地が名前と見た目に対して一番ギャップがあるのは彼女だろう。金髪ということで海外の血が流れている気がするが、履歴書には特に何も書かれていない。20歳で落ち着いた物腰である。シスターということでさらに大人びて見える。細根なのか目を開けているか分からない。これまたミステリアスなアイドルだ。
総勢11名、個性的なアイドルがたくさん集まった。
全員の自己紹介を聞き終えて一つ思った。
この事務所は本当に大丈夫なのか?俺が平社員のプロデューサーに過ぎないからかもしれないが、素性の知れないアイドルが多すぎないか?
…まあこれについては俺が悩んでも仕方ないので無視しておこう。346プロダクションのアイドルなのだから、違法性は何一つないはずだ。信じよう。
さて、最後に俺の番である。
俺もプロデューサーの仕事は初めてだ。その上に11人もいるからこれからとても忙しくなるだろう。面倒を見切れるか不安である。
だがアイドルに心配をかけさせてはいけない。なにより自分自身、やりとげてみせたいと思ったのだ。
俺はみんなを一人一人を見渡してから話し始めた。
「俺が今日から君たちのプロデューサーになりました。
君たちは俺が担当するア初めてのアイドルです。
なので俺も分からないことがたくさんあって頼りないかもしれない。
それでも全力でサポートしていくから、任せてもらいたい。何かあったら頼ることがあるかもしれない。でもみんなも俺を頼ってほしいと思っている。
これから一緒に世界へ羽ばたこう!」
我ながらいつにも増して熱のこもった話し方をしてしまった。
ただ俺の思いの丈は十分に表せたと感じた。みんなの反応をうかがう。
誰も反応してない。しーんと静かなままだ。あれ、もしかしてすでにやらかしてしまったのか?
俺のプロデュース活動はもう終わってしまったのか?
「あの、みんな何か感想とかないの?質問とかでもいいよ?」
おそるおそる話し出す。するとすぐに反応があった。
「カッコいいですよー」「さすが私たちのプロデューサーですネ」「そんなに堅苦しくならないでいいですよ」
「これから世界レベルについて来れるかしら?」
全員が笑顔で言ってくれていた。よかった、どうやらおおむね好印象のようだ。緊張が解け、ほっと胸をなでおろした。
こんな俺でも任せてくれたアイドル達の期待に応えていけるように頑張ろう。
みんなを見ているとさっ、と手が上がった。
「ハイハーイ、しつも~ん」
「はい、フレデリカ」
「どうして私たちのプロデューサーになったの?」
「ダー、確かに、気になりますね」
同意の声が上がる。他の子たちも同じことを思っていたのだろう。こちらをじっと見ており、興味がある様子だ。
俺もみんながアイドルになった理由には興味深かったからそういうことだろう。
俺はなるべく真摯に答えるように努めた。
「……俺もよく分かっていないんだよな。常務からいきなり任されたから理由は聞いていないんだよ。でも一つ言えるのは任された時に、俺がプロデューサーをやりたいって思ったんだ。だからなったんだ。こんなことしか言えないがいいか?」
「うむ、くるしゅうない」
満面の笑みでそういった。……今後この子たちの日本語が間違っていたら指摘していこう。
今度はフェイフェイが手を挙げる。
「ハイ、これからどんな活動するネ?」
「それについてだが、このメンバー11人をさらに数人ずつに分けたユニット活動を順に行っていきたいと思う」
できれば全員が一緒に活動できることが一番だが、人数が多すぎる。そうなると人数を分けていく方が動きやすいだろう。
「Wow、ユニット活動!アイドルっぽいネ!」「組み合わせはどうするノ?」
「それについては後日改めて連絡する。それとユニット活動を全員で同時進行することはできないと考えられるので、まだしばらくレッスンを続けてもらう形になります」
「オー、ニホンゴ、ムズカシイデス。ワカラナイネ」
「そこ、日本語分かっているでしょ。むしろ日本語以外使えないでしょ。」
キャシーがカタコトで文句を言っている。申し訳ないけれどこれは受け入れてもらうしかない。
ただできるだけ皆の要望に応えていきたいとは思っている。
「みんなはどんな仕事をしてみたいんだ?」
ライブで歌いたいとか、モデルで写真をとられたいとか、バックダンサーをやってみたいとか。俺のイメージのアイドルは表舞台に立っているところが大きい。他にもあるなら知っておきたい。
「ゼンブ!」「私たち、やりたいこと、たくさんあります。いろんなことしてみたいですね」
ふむ、なるほど、やる気は十分ということだな。でも
「でもいいのか?言うならタダだぞ?」
「いい、プロデューサー。やりたいことだけやって、世界を目指せるわけではないのヨ」
「そうだ、どんな仕事でもやるゾ!それがプロってことダ!」
「ですから言うなれば、たくさん仕事を持ってきてもらいましょうか」
「私たちのプロデューサーになったからには世界レベルになってもらわないとね」
「ああ、分かった、任せてくれ。数えきれないくらい仕事をとってこよう!
これから共に日本を、世界を盛り上げていこう!」
『オー!!』
「それでは今日はこの辺で終わりましょう。ではお疲れ様です。これから頑張っていきましょう」
今日から新しい生活になり、忙しくなるだろう。帰ったらユニットなどいろいろ考えないと。
「ちょっとプロデューサーどこ行くノ?」
帰ろうとしたところを呼び止められる。
「いや、終わったから帰ろうと…」
「せっかく、最初の集まりだからパーティーしたいネ!」
「いいですね、冬はお鍋がおいしい季節ですー」
「ナターリアはスシ握るカ?」
「ライラさんは余りを持って帰りたいでございますです」
「アーニャ、パーティ好きです。みんなでご飯食べるの楽しいですね」
すっかり行う流れになってしまった。まあ、アイドル達と親睦を深めることはいいことだ。それに誘われてうれしかったからな。
「しょうがない、盛大に祝うか!世界のトップアイドルになるため明日からは忙しいからな!」
『イエ――!!!』
この後この部屋で食べ物を持ち込んでにぎやかに楽しんだ。
そしてにぎやかになりすぎてしまい、常務にお叱りを受けてしまった……。
◇ ◇ ◇
INGの日常
「みんな日本語が話せるようだけど母国語は話すことできるのか?」
パーティーの最中にふと気になったので聞いてみた。
「アタシはすっかり忘れちゃった!」
「私もさっき言ったように、英語は話せないよ」
「そういえば自己紹介でも言っていたな」
フレデリカとキャシーは日本語しか話せないようだ。いかにも外人さんという見た目であるが、それで判断してはいけないということだ。
「ふぇいふぇい、ばっちり話せるネ」
「アーニャもロシア語、話しますね。他にも英語もしゃべれます」
「ふぇいふぇい、日本語より英語の方得意カナ」
「へー英語も話せるのか」
「あまり、話すことはないですけどね」
これは意外な発見だった。アナスタシアとフェイフェイはトライリンガルなのか。
「私、英語、話せマス」
「アタシも英語はちゃんと話せるわよ」
ケイトとメアリーは忘れていないらしい。
「普段は英語を使うことってあるのか?」
「ソウですネ、学校でしか使いまセン」
「アタシも学校の授業ぐらいかしら。ああ、家では英語ネ」
英語でも使う機会は少ないようだ。
「ライラさんも忘れていませんよー」
「ナターリアも話せるけど話す相手がいないンダ」
やっぱり使う機会がないようだ。とくに二人は似た地域の人がいないからなぁ。
「でもでも、プロデューサーが勉強してくれればうれしいけどナ!」
「そうですねー、勉強したいでございますです?」
「うーん、やっぱり語学は大変そうだな」
アイドル達の母国語を全部現況したら、俺はいったい何か国語覚えることになるのだろう?
「私はサンタなのでいろいろな言語話せますよ~」
「サンタだから?」
「はい、サンタだからですぅ~」
イヴに満面の笑みで即答される。そんな笑顔で返されるとそういうものかと思う。たぶんサンタになるために必要なのだろう。
みんな誰も不思議に思ってないからきっとそうなのだろう。どうにか自分を納得させる。
そもそもヘレンとクラリスはいったいどこの国の人なのだろうか。
「私は母国語ではないですが今ギリシャ語とラテン語を勉強しています」
「それはすごいな、やはり聖書などに必要なのか?」
「必須というわけではないのですがニュアンスの違いがありますので、ぜひ原本で読んでみたいと思います」
すごい勉強熱心な方だ。今後もいろいろな言語を学んでいきそうだ。
「ヘレンは母国語ってあるのか?」
やはり一番謎なのは彼女である。
「そうね、私は話すことで困ったことはないわ」
やはり世界レベルを名乗るだけあって抜かりはないようだ。
「でも私の一番の言語はこのボディ!私のボディランゲージは万国で通用するわ!(ヘーイ!)」
「おおおー」
なんかよく分からないがすごい説得力がある。みんなそう感じていたらしい。全員が拍手していた。
みんなのことをより知ることができたが、何人かは謎がさらに深まった。
やっとみんなを紹介できました。
これからユニット(公式・非公式)を作って書いていきたいと思っています。
次はさらに早めに投稿したい…。