project ING  ~海を越えてきたシンデレラたち~   作:四月一日雪

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アイドル達の年末

今年はいろいろなことが起きた。

それはたった1,2か月前のことなのに、一年を振り返ったときに真っ先に思いつくことである。それは直近だったから思い出しやすいという理由だけではないだろう。

非常に長い時間一緒にいるように感じられるほど、俺にとっては印象的だった。

人生の中でも屈指の激動の一年だった。

そんな今年も残すところわずか数日となっていた。

 

また来年もプロデューサーとして、また新しい一年が始まっていくんだとしみじみと感じた。

アイドル達は元気があって励まされるが、少し落ち着てもいいんではないかと思う。

そしてそのアイドル達はというと……。今も事務所に集まって思い思いに過ごしている。

 

「みんな今日からは事務所に来なくてもいいんだぞ?」

346プロは年中無休であるが、project INGは年末休みに入っていた。

「そんなこと言ったって特にすることがないネ。プロデューサーだって来ているネ!」

「いや、俺はまだ仕事納めじゃないからな……」

プロデューサーはまだお休みに入っていないんですよ。世の中は世知辛いのじゃ……。

 

「でもプロデューサー、来ていいっていったヨ?」

「ライラさんたちがいれば寂しくないでございますよ」

まあ、それもそのとおりである。実は今日来るときに誰か来ないかなと期待はしていた。しかし来てみたらとても驚いたのだ。

 

「こんなに来るとは思っていなかったんだよな……」

本日我がアイドルたちは全員集合していた。

 

「みんなはまとまった休みが取れることがそう多くないから、どこか旅行に行ったりはしないのか?」

「いやいや、プロデューサーは甘いなあ~。日々レッスンに疲れた体を休ませるんだよ」

その意見も十分わかる。俺もどちらかというと家で正月を過ごすタイプだ。だが、全員いるということは予想外だったのだ。

 

「年末に実家に帰ったりしないのか?」

「ライラさんはパパに見つからないために来たので帰らないです。」

「帰るのにもお金がかかるンダ」

確かに海外でこの時期となると相当旅費がかかるだろう。みんながこちらにとどまっているのは自然なことなのかもしれない。

「私は日本の方があったかいので好きですぅ。クリスマスも終わったのでゆっくりしたいんでぇ~」

「こっちの方、あったかいです。生きやすいデス」

「それに家にコニシキ、を飾りたいですネー」

「小錦は相撲取りだ。ニシキだな。」

でも気持ちはわかるな。異国の地でアイドルになったからには成長して母国に帰って見せたいという気持ちはよく理解できた。俺も東京に出てきてから長いこと実家に帰っていない。

 

「アタシも家族と過ごすくらいにしか考えてないワ」

「フレちゃんも特にないよ~♪」

「それじゃあみんな、正月の予定は特にないというわけか」

「そうですね、寮でごろごろするのもいいものですよ」

「ここにコタツおいてくれない?あとミカンもね。後お酒でもいいわ」

「そんなものはないです」

お酒はもちろんだが、コタツまであったらここに暮らし始めてしまうのではないか?

 

 

 

「それじゃあ初詣にみんなで行くか。勿論来たい人だけで構わないんだが」

「わお、日本の正月styleですね!」

「イイじゃん、どうせ暇だし!」

「みんなで何かをすると結束力も高まるからな」

「正月はゆっくりしたいですネ」

「浅草寺とかだったら、案内できるよ!なんせ庭みたいなものだからね。地元下町の魅力を皆に教えるよ!」

「日本の年末年始は家から出ないのではないんですか?」

「そんなことはないんですが。いったい誰に教わったんだ?」

「杏子がそういっていました。ぐうたらするのが伝統だって」

「ああ双葉杏さんか、確かに言いそうだな。でもそういうことではないから」

寒い地域だと雪が積もり家から出られなくなるというけれど本当なのだろうか。そういう意味ではあながち間違えていないのかもしれない。

 

「人混みはあまり得意ではないのですけれど」

「『まるで人がゴミのようだ』ってやつデスネ!」

略してひとごみか。違いますけれど。

「あんなに混んでいるとは思っていなかったデス」

「そね、テレビで見たことあるけれど日本人もなんだかんだで信心深いのカシラ?」

「アレ、鐘をついてみたいネ、ゴーンってやつ!」

「それは寺院の方だな」

「違うノカ?」

「違うんだよ。神社は神道、寺院は仏教なんだ。ここら辺は日本の文化を知ってないと分かりにくいね」

キャシーが説明をしてくれて助かった。神社と寺院は日本人でもあまり意識している人は多くはないだろう。

勿論信仰している方もたくさんいるけれど簡単には説明しづらいな。

 

「除夜の鐘はお寺でやるけれど、参拝といったら神社って感じなんだ」

「ふーん、まあなんとなくわかったゾ」

「それでどっちにしますカ?」

「鐘突きは時間的に厳しいから大変ではないでしょうか」

「それじゃあお参りに行くことにするか」

その通りであると思う。神社への参拝ならば日にちもゆとりをもって行くことができる。

 

「あっ、クラリスさんは大丈夫ですか?その、キリストに使える身としては?」

「はい、私は日本で生まれ育ったのでそういうものには抵抗がありません。ご一緒させていただきます」

ほっと一息つく。

「みんなも宗教的に平気か?」

みんなを見渡す。とくにダメな人はいないようだ。よし、これで全員問題なくいくことができる。

 

「じゃあ後はプロデューサー次第ネ!」

「もちろん俺から誘ったんだ。当然行くよ」

「ほかにやってみたいことがあるか?」

「お雑煮食べたいでございますー」

「おせち料理作ってみたいネ!」

「お餅ついてみた~い!ペったんぺったん♪」

全部食べ物に関することだった。

「作るのは大変そうだな……」

おせちも今からだと買うのも間に合うのだろうか?

 

「ほかに何かないか?食べ物以外でお願いします」

「そもそもあんまり日本お遊び知らないですぅ」

「大がかりなものはできないし、ある程度決まっていそうだけれどどうなのかしら?」

確かに要望を聞いておいてさっきも採用しなかったからな。

俺が提案した方がわかりやすいのだろう。

 

「じゃあ企画を立てておこう。みんなはいつ行きたい?」

「一年の計は元旦にあり、デス!」

「つまり元日の朝か。一番混んでいる時間だぞ?外も寒いし、長い間立ちっぱなしになると思うぞ。もうちょっと後の方がいいんじゃないか?」

 

「それじゃあ、一日の午前中に行けばいいんじゃない?」

「なら、その前に年越しパーティーをやってみたいです!みんなでHappy New Year!って感じ!」

年越しパーティーをするとなると、どんどん話が大きくなってきている気がする。

 

「というかパーティーはつい先日もやらなかったか?」

ちょっとパーティーの頻度多すぎません?

「楽しいことは、何回やってもいいんです」

「それでも、経費で落とせる範囲にも限界かがあるので……。年越しそばぐらいなら出せるけれど」

「それではみんなで持ち寄るのはどうでしょうか?」

「ブリングパーティーですね。海外ではよくありますね」

「なにそれ、チョーおもしろそう♪」

 

「もしやるとしてもお参りはどうするんだ?パーティーは徹夜だろう?」

「それではその後に行きませんか?」

「いや、徹夜は美容の敵ですよ?アイドルなんだから気を使っておいた方がいいのではないですか?それにゆっくり休んで後日改めても……」

「いいからやるのヨ!」

「ええ……」

メアリーちょっと俺に風当たり強くない?もう少しレディーっぽく振舞った方がいいと思うよ。さすがにみんなに確認をとった方がいいだろう。

 

「みんなもそれで大丈夫なのか?」

「オモシろそうだナ!」

「ポーズナ……夜更かし、ですね。アーニャ、あまりしないのでもしてみたいです。」

「フンフーン、オールナイトでも、エブリデイでもなんでもかもーん!」

スゴイ乗り気だった。このエネルギーはいつ見てもすごいと思う。

 

「それじゃあ、外泊届けをちゃんと出しておくんだぞ。今更なんだが、事務所でやらなくてもいいんじゃないか?」

「じゃあプロデューサーの家なのカ?」

「こんなに人数が入るほど広くないです……」

都会の一人暮らしに広さを求めてはいけない。。俺ももっといいところに住みたい。そのためにはトッププロデューサーにならねば。

 

「じゃあ、寮でやりますか?」

「そしたらプロデューサーが入れないゾ?」

「それでもいいんじゃない?」

あれ、俺もしかして省かれそう?俺っていらない子だった?突きつけられた現実にショックを受けた。

「ほら、プロデューサー、悲しんでますよ」

「部屋の隅で丸くなっているでございますです」

「冗談よ、ほら泣かないで」

「……泣いてなんかいませんからね」

「はいはい、じゃあどうするかもう少し考えておきましょうか」

 

 

「この人数で一緒に動くのは大変そうです。迷子にならないか心配ですぅ」

「まあ君たちは結構目立つからすぐに見つけやすそうだけど」

まず、髪の色からして周りの日本人とは違うだろう。それにみんなかわいいから目立つだろう。

 

「やっぱりプロデューサーがはぐれたら大変だよね♪」

「もしかして俺の心配をしてたの?保護者は俺の方だからね?」

非常に要らない心配をされていた。

しかし悩ましい。日本の年末を過ごすことで彼女たちの経験が増えることはいいことだが、どうしたものか。

「私はブリッツェンと一緒に過ごしたいですぅ」

「またハードルが一つ上がったな」

トナカイを連れて混んでいる神社に行ってもいいのだろうか?

 

 

ウーンどうしたものか……。もう少し考えておこう。

「それじゃあ当日までの楽しみにしておいてくれ」

「だいじょうぶそうデスカ?」

「どうなるかわかりませんね……。とりあえず常務に相談してみます」

もしかしたら俺が知らないだけで、アイドルが良く行く神社があるのかもしれない。

「それじゃあ大晦日の夜にこの部屋に集合。そのあと午前中にお参りに行くということでいいな」

『ハーイ!』

来年は一日から忙しくなりそうだ。とりあえず予定を決めるため早めに相談しておこう。

それと年越しそばの準備を忘れないようにだな。

 

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