流星のファイナライズ   作:ブラック

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ハープ

その後、男たちは何事もなかったかのように去っていった。母さんは『無用な問題を起こさないためだ』と言っていたがその真意はわからない。

 

あのとき、男たちを倒していたらミソラちゃんは連れていかれなかったのだろうか。

それでも、まだ伝えきれてない言葉がある。

 

電波変換がなければ…俺は無力だ。

 

社会的には子どもだし、身長だって高くない、力は大人なんかには到底及ばない。

 

そんな俺が、彼女にしてあげられること。

 

それは……。

 

▼ ▼ ▼

 

 

「ミソラ!!」

 

マネージャーの声に身体が、心が震える。

車の中で、思わずうずくまる。

 

「本当にえらいことをしでかしてくれたな!この損害はきっちりお前の歌で稼いでもらうからな!」

 

「…お金のためなんかに歌いたくない。私の歌はママを喜ばせるために…」

 

「ふん、いつまでそんな夢を見ているんだ? お前の歌はな、デビューした時点で商品なんだよ。俺がお前をあれこれ助けたのも、お前に商品としての価値を見出したからだ!さあ、これからもまだまだ稼いでもらうぞ…歌え、歌え、歌えッ!!!」

 

「いやぁぁぁぁぁぁッ!!!」

 

呪詛のような言葉に耳を抑えて車から飛び出す。走って走って…息が切れても走り続ける。このままあの声を聞いていたら私までおかしくなってしまいそう。

 

あの男から逃げなければ…けど、どこへ?

 

気がついたときには目の前には壁があった。左右も道はなく、戻ることしかできない。

いっそのこと、ここに隠れてしまうしかないのかもしれない。

 

「ママ…助けて、ママ…」

 

『ポロロン。お金儲けのために歌を歌わせるなんて酷い大人ね…』

 

声が聞こえた。女の人で少し色っぽい声だ。

 

「誰!?」

 

『ポロロン…こっちこっち。私はここ、あなたの後ろ』

 

後ろをゆっくりと振り返る。そこにいたのはピンク色の琴。ただの琴ではないことはすぐにわかった。

 

目が、ついているからだ。そして口もピンク色の炎のような何かがユラユラと揺らめいている。

 

そんな琴が小さな丸い腕を私へ向ける。

 

『ワタシはハープ。ミソラ、あなたのことずっと見てたわ。音楽を愛する者としてね。あなたは音楽を力に変えることのできる選ばれた人間。あなたの音楽はあなただけのもの』

 

「私だけの…」

 

もしかしたらこの琴は音楽の精霊様かなにかなのだろうか。それとも私もとうとう気がおかしくなってしまったのだろうか。

 

琴は混乱する私に怪しく微笑んでいる。

 

『そうよ。あなたに歌うことを強要し、あなたの歌をお金で穢すやつらをみんな始末してしまえば、大切なママとの思い出も美しいまま。でもそのためにはあなた自身が力を持たなきゃ』

 

私に力さえあれば、あんなマネージャーをものともしない力があればこんなことにはならなかった。何度も立ち向かおうとした。でもあいつは権力を振りかざして、立ち向かうものは全て切り捨てた。

 

「そんな力…あったらとっくにやってるよ!」

 

『ふふっ。良い答えね。じゃあ、私を受け入れなさい』

 

「あなたを受け入れる?」

 

『そうすればワタシが力を貸してあげるわ。あなたが望んだ通りの力をね』

 

「ミソラ!!」

 

遠くからマネージャーの声が聞こえてくる。もう迷ってる暇はない。

 

私は今まで散々苦しんできた。その影であいつは高笑いしながらお金を儲けてきた。

 

私を…音楽を道具として扱ってきた!

 

私に力があれば、黒夜くんだってあんな男たちに暴力を振るわれなかったはずだ。

 

マネージャーが私を見つけて近づいてくる。その顔に張り付いているのは私を嘲笑うような笑み。

 

許せない。

 

そうだ、今度はあいつらが苦しめばいいんだ。

 

みんなみんな…私とママの歌を穢すやつなんか…。

 

『さぁ、音楽の力を思い知らせてあげましょう』

 

「消えちゃえばいいんだッ!!」

 

私がハープを受け入れる決心をした途端、私の視界を光が包む。

冷たい光だ。

その光が収まったとき、私の姿は変わっていた。別段、そのことには驚かない。むしろ湧き上がるような喜びを感じている。

 

力が溢れてくる。

 

背中に背負っていたピンク色の楽器を構える。

 

「何のつもりかは知らんが、帰るぞミソラ!」

 

「…消えちゃえ!!」

 

弦を思いっきり掻き鳴らす。

 

さぁ、ここから私の復讐を始めるんだ。

 

 

▼ ▼ ▼

 

「黒夜くんと一緒にいたあの子は、ミソラちゃんなんじゃないですか!?」

 

「答えろ黒夜!」

 

「…」

 

外に出た俺を待っていたのは、待ち構えていたかのように立っていたキザマロとゴン太だった。ルナの姿は見当たらない。

 

「僕、見ちゃったんです。さっき、君がミソラちゃんに黒いコートを渡したところ」

 

キザマロとすれ違った時にはもうミソラちゃんはコートを被っていたから大丈夫だと思っていたが、その前から見られていたらしい。

 

「俺はスーツを着たやつらがお前の家になだれ込んで行く様子を見たぜ」

 

ゴン太が見たのはマネージャーと取り巻きの男たち。

 

「これが意味することは…黒夜くん、ミソラちゃんのライブが中止になったことに関係しているということです」

 

「キザマロ、ゴン太も言いたいことがあるのはわかる。だが、今は時間がないんだ」

 

「僕たちにとってもこれは重大すぎる問題ですよ黒夜くん」

 

キザマロも引き下がる様子はない。お互いに睨み合う。まさに一触即発だ。

ゴン太とキザマロに勝ち目がないことは本人たちが一番わかっているはずだ。それでも立ち向かってくるのはそれほどまでにミソラちゃんのライブを楽しみにしていたからに他ならない。

 

ミソラちゃん、こういう人がいるんだよ。

この街には、世界には君の歌を待っている人がいるんだよ。

 

そんな中、視界の端で何かを見つけた。

 

目の前は道路が広がっているのだから歩行者や車は当然ある。だが、俺の目に映ったのは現実のものではない、異質な何か。

ピンク色のボディーに黄色いバイザー、そしてすでに構えられた楽器。

 

色は体と同じピンク色。

その長さはギター。だが、その弦は琴のようにも見えた。

 

そいつの口元が動いたのと同時に俺もキザマロの前に立つ。

 

「逃げようたってそうはいきません!」

 

だが、俺の行動理由を知らないキザマロは勘違いし俺の行く手を遮るように立つ。

結果、キザマロが放たれた何かに当たって気絶したのは必然だった。

キザマロが倒れたことに驚く暇もなく、続いてゴン太が倒れる。

 

あの技は知っている。

 

ハープノートの必殺技の代名詞と言える技…ショックノート。

 

間違いない。

 

ミソラちゃんがFM星人であるハープと電波変換した姿。

 

それこそ目の前に立っている少女、ハープ・ノート。

 

『あのボウヤ、こっちが見えるみたいね』

 

「ミソラちゃん…」

 

ミソラちゃんをじっと見つめる。

 

ミソラちゃんは俺に何か言葉を返すわけでもなくこちらを見つめ返す。

そんなミソラちゃんの横に琴座のFM星人であるハープが姿をあらわす。

 

『かわいいボウヤ、あなたは何者かしら? 人間でありながら私たちが見えるはずないもの。それにあなたのその周波数…明らかに普通の人間とは違うわよ』

 

流石、琴座のFM星人という名前は伊達じゃないね。ウォーロックでも見抜けなかった細かい(・・・)ことに初見で気づいたよ。

 

それでも俺は人間だ。

 

「俺は人間だよ」

 

『まあいいわ。ハープ・ノート、あなたの知り合いかもしれないけれどこれもあなたのため。そしてあの子のため。今は眠ってもらいましょう』

 

「ダメだ、ミソラちゃん!」

 

「私の邪魔、しないで!!」

 

構えたギターから放たれた音符の波を横に飛んで回避する。ハープ・ノートの姿が見えているのは俺だけだから路上で突然転がりだした俺は変人認定されたに違いない。

 

背に腹は変えられないのさ!

 

だが、その歩いている人や車も流れ弾のショックノートに当たってやられて行く。

 

今頃ウォーロックたちも異変に気付いて行動を始めているに違いない。ただ今回はスバルの全く知らないところで起きていることもあって2人が動くかどうかは微妙だ。

 

「音波を操るFM星人、だったっけ!?」

 

飛んでくる様々な音波をドレッジロールを繰り返して回避し続ける。これは相当目が回る。

ハープ・ノートの攻撃が当たらないのは決して俺の回避が上手いからではない。ハープ・ノートとしてではなく、ミソラちゃんが俺を傷つけないようにしてるからだ。

 

そんなにミソラちゃんから大切に思われてるのはとっても嬉しいんだけどね!

 

身体能力がやけに高いのは剣道の賜物だろう。

 

「おねがい眠って! 君は傷つけたくないの!」

 

「攻撃しながらよく言うよ!」

 

ミソラちゃんがピックを持ち替える。

 

俺にはわかる!

あのピックの形、そして持ち方からしてあれは早弾きの構えだ!

 

幾ら何でも避けきれない…咄嗟にそのことに理解した俺は路地を曲がり壁に隠れる。

壁越しから伝わる音波の波をそのままやり過ごす。

 

『あのボウヤ…いいわ、ミソラ。あなたも彼を傷つけるのは不本意なようだし行きましょう』

 

「うん」

 

ボソボソと何かを言っているがこちらまで聞こえない。だが、命拾いしたことだけはわかった。壁から顔を出して確認したときにはミソラちゃんの姿はそこにはなかった。

ミソラちゃんは無差別に人を襲っているに違いない。スバルが止めていてくれれば良いんだけどスバルも今ハープ・ノートを追っているところだろう。

 

安全を確保したところで電波変換。そのままウェーブロードへ移動する。

そんなコダマタウンのウェーブロードにはもう見慣れている少年が1人。

 

『来たか!』

 

そんなスーパード○パッチみたいなこと言わないでよウォーロック。

 

「黒夜くん」

 

くんはやめて欲しかったのだが、なかなか抜けないようだ。というか素ならもうそれでいいですごめんなさい。

 

いつも通り真っ青なロックマンを見て、俺は考える。

 

このロックマン、強化しなくては!!…と。

 

俺がAM星の三賢者に目をつけられたのも力を振るったからだ。ならば、スバルも力を振るえばいい。

 

もちろん正しくね。

 

ゆくゆくは試練を突破してもらって三賢者から力を授からなければならない。

 

 

そのためには…。

 

「こんな時にあれだけどさ、スバルお金は持ってる?」

 

「最近のウィルスバスティングのおかげであるけど…」

 

「よし、HPメモリ買ってこい」

 

HPの底上げである。

スバルもそれなりにHPがあるとは思うが、それでも少し心もとない。俺がHPメモリを取っていることももちろんだが、スバルは言わなければショップなどで買おうとしないだろう。

 

もしかしたら、HPメモリの存在すらよくわかってないのでは?

 

光の速さでウェーブロードの上を移動し、HPメモリを買い終わると行動開始だ。

こんな時でもウィルスは空気をよまずに俺たちの前に姿を現わす。FM星から地球を破壊するべく送られてくるのは知っていたけど、やっぱりこいつらってハープの支配下にあるのかな?

 

スバルが腕をソードへと変えて斬りかかる。

 

スバルとの連携も随分慣れてきたものでなんとなくやろうとしていることが理解できるようになった。

スバルが突撃している間に空中からスバルの背後を狙うウィルスをバスターで牽制し、スバルを援護する。

 

そんなことを繰り返しながら十字路へ差し掛かった時、不意に甲高いギターの音が響き渡った。

 

ハープ・ノートのいる場所からここまで随分と距離がある。それでも音波を電波に変換しているとすればやってやれないことじゃない。

 

『気をつけろスバル! 何かくる!』

 

「バスターを構えろ! あれはハープ・ノートの音波攻撃だ!」

 

『なるほどな。撃ち落とせスバルッ!!」

 

「うん!」

 

スバルは地上から、そして俺は空中から迫り来る音波の波を撃ち落としていく。

バスターが命中した音波はそれぞれが何かしらの音を立てて消えていく。

 

俺たちが撃ち落としていく順番が正しかったのか、偶然か、はたまた意図したものなのかわからない。だが、確かに音波の波は歌だった。

 

聞いたことのない歌だ。

 

『よし、もう音波攻撃はこないな…先を急ぐぜ』

 

「行こう!」

 

スバルとウォーロックに促されて考えることをやめ、先へ進んでいく。

何度か繰り返しくる音波攻撃への対処は1回目の攻撃で慣れてしまったのもあってそこから先の音波攻撃を無事に潜り抜ける。

 

その度に足元にZやらHPメモリやらが落ちているので何かのゲームをしている気分になってくる。

 

一攫千金とはこのことてある。

 

もちろん、HPメモリはスバルにあげてます。お金は山分け…え、悪い人みたい?

 

いえ、合法です。

 

そしてハープ・ノートの前にたどり着く。

 

『その音色。おかしな人間だと思ったけどそういうことだったのねボウヤ』

 

「だから俺は人間だって」

 

確かに俺の生まれは特殊だが、人間は人間だ。

それを否定される謂れはどこにもない。

 

『ええ、それはもちろん』

 

ハープが満足気なのは俺の存在を看破したからスッキリしたのだろう。

 

「黒夜くん…なの?」

 

「さっきぶりだねミソラちゃん。やめなよ、こんなことしたって…」

 

「私はッ!! 私はハープ・ノート。邪魔、しないで。これ以上邪魔をするなら…たとえ黒夜くんでも容赦はしない」

 

それだけ行ってミソラちゃんは去っていった。

 

う〜ん、やっぱり年頃の子を説得するのは難しいな〜。

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