流星のファイナライズ   作:ブラック

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日曜日から月曜日と言って起きながら結局全部投稿してしまった…。

今度こそ次は遅くなりそうです笑




結ばれる絆

ミソラちゃんのライブが終わってから2時間後。

 

「今日は来てくれてありがと黒夜くん、スバルくん」

 

「こちらこそ、ありがとう」

 

「いい歌だったね」

 

俺とスバル、そしてミソラちゃんはライブの後片付けが始まっているライブ会場で会っていた。もうあのマネージャーはいないからライブが終わった後は自由なんだとか。

 

『ポロロン…途中で退出した失礼な電波体もいるみたいだけどね』

 

『……』

 

ハープのウォーロックに対するあたりが強くて同情しそう。強く生きるんだぞ、ウォーロック。

ハープとウォーロックのやりとりに小さく笑うとミソラちゃんは改まってお辞儀をした。

 

「本当にありがとう。2人のおかげで前に歩き出せそうだよ」

 

「別に僕はなにも…」

 

「ううん。そんなことないよ。本当に大事だったものを狂気にしてしまった私を君も止めてくれた。そんなことをしても戻るものはなにもないって教えてくれた」

 

『ケッ、照れてんじゃねえ』

 

若干照れているスバルにツッコミをいれるウォーロック。ツッコミをいれるというかそれは殴っているのでは?

 

「黒夜くんも本当にありがとう。思えば、ヤシブタウンで会ったあのときから黒夜くんには助けられっぱなしだね」

 

『てめぇもなんだかんだでお人好しか? ほんとにくえねえ奴だ』

 

「こら、ロック!」

 

「はっはっは、いいのかウォーロック、ノイズばら撒くぞオラ」

 

もちろん冗談である。

 

会話はそれ以降あまり重い話もなく、軽快に進んでいく。俺はミソラちゃんとスバルがいつ出会っていたのか。スバルには俺とミソラちゃんの出会いを聞かせたり。

 

実際にわかったことを時系列に並べてみる。

 

ヤシブタウンで俺に出会う→音楽活動は続けるも精神ズタボロ→ストレス発散がてら人気の少なく開放的な展望台で練習→スバルに出会う→後日俺がやってきた…とまあこんな感じの時系列だったらしい。

スバルとは顔見知り程度のはずだったのに今回の事件で随分と仲が良くなったようだ。

スバルも会話なんてしないんじゃないかと思っていたが、杞憂だった。

 

昨日の事件で思うところがあったのかもしれない。

 

はたまた、境遇が少し似ているミソラちゃんとの間に仲間意識が芽生えてくれたのかもしれない。

 

なんにしてもスバルが一歩踏み出すきっかけとなったならば、俺からするとそれで十分だ。

 

楽しい時間はあっという間に過ぎていく。

 

気がつけば、日が落ちかけていた。あたりを暖かく照らしていた夕日が沈みかけ、徐々に夜へと変わっていく。

 

「さて、そろそろ行かなきゃ」

 

寂しそうな顔をしたミソラちゃん。名残おしいのはこちらも同じだが、いつまでもここに残っているわけにもいかない。

 

「これから私、頑張っていくから…あれ? おかしいな…もう泣かないって…2人の前では泣かないって、決めてたのに…」

 

「ど、どうしたの!?」

 

『あーぁ、泣かしちまったな! この間テレビで言ってたけど、地球じゃ女を泣かすってのは罪になるんだろ? 早くなんとかしねえと逮捕されちまうぜ!』

 

突然泣き始めたミソラちゃんに戸惑うスバルと茶々をいれるウォーロック。

そのテレビは多分あのドラマだ。えっと確か月曜日夜22時の『情熱の赤い薔薇』とかいうドロドロしたやつ。

 

子どもには刺激が強い?

残念精神的には大人ですから。

 

ちなみにウォーロック、逮捕はされないぞ。

スバルが寝てからテレビの電波で視聴しているあたり、地球のカルチャーに染まっていてなによりである。

 

「なんとかしろって言ったって…ミソラちゃんは契約も打ち切ってこれから1人で…」

 

そう。

スバルの言う通り、彼女はこれから社会的には孤独の道を歩む。今まで保護者であったマネージャーは消え、後ろ盾となっていた会社とも契約を打ち切った。

今手元に残っているのは自身が守り、そして傷つけてしまった母との絆とボロボロの身体。

 

だからこそ、精神的な支えは必要なのだ。

 

さて、ここらである偉人の力を借りよう。

 

「別に、1人じゃなくたっていいでしょ? スバル、君のお父さんはなんて言ってた?」

 

「1人じゃ解決できない問題も誰かと繋がれば、乗り越えられる…父さん…」

 

その偉人とは…ブラザーバンドシステムを確立させた男。星河大吾…スバルの父である。彼が実際にどんな言葉でスバルに語りかけたかはわからないが、それでもある程度の概要はわかる。

 

『てめぇ、大吾のことまで…』

 

「そうさ。人は決して1人では生きていけない。1人で生きていると思っても見えないところで誰かに支えられている。世界中の人がブラザーバンドで繋がって支えあえていけたら、サイコー…だろ?」

 

要は『世界みんな友達計画』なのだ。

 

もちろん、こういう時のウォーロックはガン無視する。

 

「黒夜くん…君は…」

 

どうやら過去の大吾さんの言葉にヒットするものがあったらしい。スバルの瞳が大きく見開かれる。

 

「さて、ミソラちゃん。君はどうしたい? 大事なのは一歩前に踏み出すことだ。心のままに、今ミソラちゃんがどうしたいか言葉にしでごらん」

 

何事も言葉にしなきゃ伝わらないからね。

 

お膳立てはこれくらいかな。

 

「…わた、私、一人は、嫌…もう、嫌だよ…一人に、しないで」

 

これがミソラちゃんの本当の心の叫び。

 

家族の死と小学生の歳ながらに社会の荒波に晒された少女の悲鳴。

 

こんなことを言われたら大人としてどうにかしないといけないと思わされる。

 

今は子どもだけどね。

 

スバルが俯いたまま掌を握りしめたり開いたりを繰り返しているのは、葛藤している証。

ブラザーを作る…つまり、自分と親しい人を作ることに対する気持ちとミソラちゃんと繋がりたいと思う気持ちのぶつかり合い。

 

そしてスバルを大きな声でお辞儀をする。

左腕を勢いよくミソラちゃんの前に出して…さながら好きな子に告白するかのように。

 

「ミソラちゃん…僕たち(・・・)とブラザーになってください!」

 

「……うん」

 

ちゃっかり俺も含まれていたのに気づいたのはスバルとミソラちゃんがブラザーバンドを結ぼうとトランサーを操作し始めたときだった。

 

ちなみにリンクアビリティの効果でファーストバリアがついてさらに鬼畜ファイナライズになりつつあることに気づいたウォーロックは遠い目をしていた。

 

最初からファイナライズ…ファイナライズってなにさ。




「脱ぼっちである!!」

「ようやく起きたかこのねぼすけ」

『気をつけろスバル、こいつら只者じゃねぇ!』

『やはり知っているか我らの存在を…。未知なる存在、明星黒夜』

「相変わらずのくるくるでなによりだよルナ」

「く、くるくるはやめなさい!」

「まあいい。貴様、ロックマンで間違いないな。そしてお前は…そうか、お前が要注意電波体か」

『星河スバル、そしてウォーロック…これよりお前たちには星の試練を受けてもらう!!』

『ならば力を示せ!これで終いにするぞ、明星黒夜!!』

見渡す限りの荒野だ。先ほどまで建ち並んでいた建造物がまるで嘘のだったかのように。
それが夢でも嘘でもないとわかるのは建造物の残骸と電子機器からスパークが漏れているからだ。

わずかでも一部が残っていれば、そこから微弱な電波が流れていればノイズは起こる。

「俺もあなたを俺の領域に招待するよ…覚悟はいいか管理者!!」

次章『スターフォース』

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