流星のファイナライズ 作:ブラック
ここ最近旅行やら蕁麻疹やらでろくに執筆できなかった作者です。ミソラちゃんの一件が終わり、ここからスターフォース編へと入っていきます。
毎度のことながら、誤字報告をしてくださった皆様に御礼を申し上げます。
来訪と襲撃
その後ミソラちゃんは立ち直って帰っていった。子どもとはすぐに強くなるもので大人は毎度驚かされる。
…自分、子どもですけどね。
自分が一人でないことに気づき、音楽の力を知ったミソラちゃんはルンルンとしながら帰っていった。スバルも初めてのブラザーにまんざらでもない様子で帰っていった。
まさか俺ともブラザーバンド結んでくれるとは思わなかったけど。
とりあえず、報告しよう。
脱ぼっちであるっ!!!!
とうとう俺にもブラザーができました。しかもミソラちゃんとスバルである。これほど嬉しいことはない。
ブラザーバンドには秘密のコメントというのがある。ブラザーバンドを結ぶと公開されるのだが、どうしてみんな真面目に秘密を言ってしまうのだろう。
大事なことはトランサーにも載せるべきでないのでは?とか思った俺は悪くない。
スバルの秘密は『トランサーの中に宇宙人が居候している』でミソラちゃんの秘密は『実はFM星人のハープと合体して、ハープ・ノートに変身できるの!』…って貴様、いつの間にこの長文をトランサーに打ち込んだ!?
そうして今
無論、こんな場所に来た覚えはない。むしろいい子である俺たちはちゃんとお家に帰って寝たはずである。断じて夜更かしなんてしてない。
俺だけではなく、スバルとウォーロックもいるので俺たちだ。
いるといっても目の前でグースカ寝ているが…。
この空間を俺は知っている。
知っているというか、なんというか…AM星人の三賢者様ですね、わかりますって感じだ。
スバルがここに連れてこられたということは三賢者様もスバルに目をつけたということ。
お目が高い。
片手でスバルの頬をツンツンしながらもう片方の手でウォーロックの頭を結構な力でグリグリする。
こいつの頭固いんだもん。
「あれ?ここは…どこ?」
『いってぇぇぇよ!? …なんだここは?』
「ようやく起きたかこのねぼすけ」
二人ともナイスな反応で何よりである。
『あたり一面真っ白じゃねえか。いつの間にこんなところに来ちまったんだ俺たち…まさか、テメェの仕業か?』
「むしろノイズの世界にご招待しようか?」
「あ、あはは…相変わらずだね黒夜くん」
俺が招待できるとすればノイズウェーブだ。二人が寝ている間にノイズウェーブの中に放り込めば出来上がりだ。
まあ、自力で出られるかどうかはわからないけどね。あそこのウィルス絶対強いからね。
『ここはお前たちの意識の中』
声が響いた。ドラゴ○ボールを7つ集めたときに現れる龍のような低い声だ。そして姿を現したそいつもまた、龍だった。
龍を真ん中にして左にライオン、右にペガサスとAM星人の三賢者が大集合したわけである。
しかし意識の中だからか、その全貌を見ることはかなわない。朧げな形に影のように真っ黒。目は星のごとくキラキラと瞬いている。
クオリティーの高い文化祭とかでありそうなやつである。
「スバル、ウォーロック…そして黒夜よ」
「な、なんで僕たちの名前を…」
『気をつけろスバル! こいつらも只者じゃねぇ…』
一瞬にして三賢者の脅威に気づいたウォーロックが戦闘態勢に入る。一瞬で戦闘能力の違いに気づいたのは流石戦闘狂と言える。
思い出したように俺の名前を呼んだドラゴン。
僕、おまけみたいなんで帰ってもいいですか!?
忘れられていたわけではないと思いたい。
次いで口を開いたのはライオン…レオ。
『我々はお前たちをずっと見守ってきた。そしてこれからも』
『我々はただ伝えるのみ。今はまだちっぽけだが…いつかお前たちの存在が地球の命運を左右することになる』
視界が光に包まれる。
やがて光が収まったそこに、スバルの姿はない。
あるのは俺と三賢者の姿のみ。
『スバルには席を外してもらった』
「三賢者兼サテライトの管理者がどうして俺を?」
『やはり知っているか我らの存在を…。未知なる存在、明星黒夜』
思わせぶりな口調だ。この世界に神がいたとしても三賢者がそういう存在ではないはずだ。だから俺が転生した存在だということは知られてはいないはず。
この三人?三匹?とて生命体に過ぎないのだ。
「思わせぶりな口調ですね。一応知ってはいましたけど…それでどうしたんです?」
『お前は我らの試練には相応しくない』
「???」
突然のカミングアウトに思わず疑問を浮かべる。
試練に心当たりは当然ある。あれだ、ロックマンがスターフォースを受け取るためのものだ。
最終的に自分のサテライトの管理者である誰かと戦うことになる。
本体ではなく分身体のようなものとではあるが、その強さは本物だ。
『我らの力とお前の力は、相反するもの。決して同時に扱いきれるものではない』
「ノイズですね」
『うむ。無論、お前の体質も関係はあるがな。故に今回は貴様の試練はない…が、その力を正しく使えているか見極めさせてもらう』
「俺のことはいいです。けどスバルが力を手にするかどうかはスバルにしか決められませんよ」
別に俺はこれ以上力は求めていない。
だが、スバルはどうだろう。戦うことを嫌うスバル。だがそれでもと言い戦い続けるスバル。
力は必要だ。
俺とてスバルには一緒に戦って欲しいし強くなって欲しい。
だがスターフォースを受け取るには覚悟が必要だ。
選ぶのはスバル自身だ。ここで身を引くと言うのなら何も言わないつもりだ。
スターフォースは強大だ。
これからの戦いを考えても必須なものだ。
スバルはきっと迷うだろう。
『…星河スバルの運命は既に見えている』
「それでもです」
『さらばだ明星黒夜よ』
再度光が視界いっぱいに広がる。
そしてゲームの展開通り目が覚める。
先ほどの見知らぬ天井ではならぬ、見知らぬ空間ではない。自分の部屋だ。
一体どういう原理なのか…。
電波の力で意識の中に紛れ込むってどういうことさ。あれかな、電波はいろいろと超越しちゃったテクノロジーなのかな?
三賢者さんたちのおかげで寝た気がしない。二度寝しようと思ったものの、時刻は既に9時30分を回っていた。
成長期って怖い。
とりあえず二度寝はやめて朝ごはんを食べに下へ降りる。母さんは既にどこかへ行ったようなので適当に朝ごはんを作る。
今日の行き先は学校。いや、まあ小学生なんだから当たり前なんだけどさ…。
さっさと食べて学校へ登校する。時間も時間、既に大遅刻だ。母さんが起こしてくれなかったのか、はたまた起こしても全く起きなかったのか。
今更だからどちらでもいいが、三賢者様のせいなんだからね!
と悪態をついておこう。
学校へ着く頃には1時間目が終わって休み時間…というか休み時間を狙って登校した。
バレないようにゆっくりと入る。だが、そこには待ち構えていたような仁王立ちをするルナの姿。
エスパーかな?
「あら、随分と重役出勤なのね…明星黒夜!」
シュバ○ィーンというSEをつけたくなるほどに俊敏かつピシッと俺を指差す。おかげでクラスのみんなが俺に気づく。
ルナだからルナ○ィーンか。
「相変わらずのくるくるでなによりだよルナ」
「く、くるくるはやめなさい!」
小学5年生が重役出勤だなんて言葉を使うんじゃありません。
みんなが注目しているのであえてからかってみるが、いつも通り反応がいい。
黒板の隣にある自分の机で雑務をこなしていた育田先生も俺に気づいて近寄ってくる。
久しぶりにみる育田先生は相変わらずのモジャモジャだ。
元気そうでなによりである。
「明星! もう体調はいいのか?」
「はい、もう大丈夫です」
「そうかそれは良かった。先生から頼んだことだし悪いことをしたな…」
「いえいえ、あれは本当に不運な事故でしたから」
育田先生の優しさが辛い。
育田先生が一通りの質問をして満足した後にやってきたのは不思議系真っ黒少年ツカサくんだ。
のほほんとしているように見えるがその内面は黒い。真っ黒過ぎて暗黒面だ。
暗黒面のツカサには名前がついていたんだけどあいにく覚えていない。
だが表の部分はとても綺麗。
学校にいるツカサは主に表だと言える。
「やあ、黒夜くん」
「今日も不思議オーラ全開だなツカサ」
これから先はツカサが関わってくることも多くなりそうだし、注意はしておかなきゃな〜。
それにツカサの暗黒面は未だに目にしたことがない。
こうして天地研究所からの事件以降、初めて学校に登校した。
▼ ▼ ▼
本日最後の授業が終わり、放課後。
ここ数日の話を聞いてみれば、なんでも学芸会の準備をしているとかなんとか。
場所は体育館だ。
小学生といえど侮るべからず。そのセットは予想以上に精密かつデカイ。
さて、なぜ俺が放課後帰らずに残っているかと言うと、ルナから『休んでいる間に決まった劇の内容とセット、チェックしておきなさいよね!』と言われたからだ。
なんでも俺には随分と重要な役をやらされるらしい。
それで演目は…ロックマン&ブラックヒーローvs牛男?
ははっ、随分と笑わせてくれるじゃないか。
…嘘だろおい、どうしてそうなった。
確かに見覚えのある衣装が用意されてるなって思ったよね!
これあれでしょ、後付け武装みたいになってるけどノイズドウィングバーニアでしょ!?
ブラックエース(笑)衣装の隣にはこれよりもはるかによく出来たロックマンの衣装があった。
そしてさらに、オックス・ファイア(笑)の衣装まである。ロックマン以外の衣装があまりに酷すぎるのは主役を引き立てるための策略だろう。
セットもよくみれば最近再開したバトルカードショップBIGWAVEやトラック、公園など馴染み深いものばかりではないか。間違いなくあの日の事件が題材だ。
ルナめ…小癪な真似を…。
どうせならかっこよく作って欲しかったが仕方あるまい。
あと、あんまりゴン太の傷を抉ってあげるな?
「く、黒夜くん!?」
既に何度も聞いた声だが、どうしてこういつも驚いた声ばかりなのだろう。ここは学校、不登校の君と違っているのはおかしくないのだが…。
「おっす、スバル」
後ろを振り返ればスバルとルナトリオの姿。
ウォーロックの姿が見えないあたり、トランサーに隠れているのだろう。
「明星黒夜も劇の内容は理解できたかしら?」
「まあ、うん、いろいろツッコミどころはあるけど大丈夫だよ」
「おいキザマロ、黒夜が遠い目してるぜ」
「これは委員長にバレずに修正する必要がありそうですね」
「ちょっと聞こえてるわよッ!」
相変わらず仲良しのようでなによりである。
「黒夜くん…」
スバルもセットと衣装を確認して大方の内容はわかったのだろう。ものすごい微妙な顔をこちらに向けてくる。
さらにスバルはブラックエースの衣装を手にとって俺と交互にみる。それもまさか…と言わんばかりの表情。
そのまさかである。
「それは明星黒夜の衣装よ。あなたはロックマンよ」
「や、やっぱり…」
そのやっぱりは一体どれについて言ったのか。
俺がブラックエースの役をすることについてか、はたまたこの衣装がロックマンとブラックエースを指していることについてか。
というかロックマンをやらされることに驚きたまえスバルくん。
君が主人公だよ?
…ツカサくんの役はどうなるんだろう。
「あらあなたロックマンを知っているの?なら話は早いわね」
スバルめ、墓穴を掘ったな。
「ロックマンは謎の人物でよ、俺たちがピンチの時に颯爽と現れて化け物を退治して風のように去っていく…俺の憧れの男なんだ!」
やったねスバル。
ゴン太くんの憧れだってさ。ウォーロックがトランサーから飛び出してきて腹を抱えて笑っている。
「そしてその黒いヒーローはロックマン様の…イソギンチャクのようなものかしら? ロックマン様がいるときは必ずそいつがいるのよ」
ルナの言葉につい吹き出してしまい口元を押さえる。ウォーロックはそれを聞いて床にうずくまって地面を叩いている。
笑い死ぬとはこういうことを言うんだろう。
やめろウォーロック、若干怪奇現象みたいに地面揺れてるから。
笑う俺たちに対してスバルは苦笑い。
「忘れもしないわ。私はロックマン様に危ないところを二度も助けてもらったの。一度目はトラック暴走事件。二度目は天地研究所。光の尾を引いて現れる姿はまさに流星…あぁ、ロックマン様…」
恍惚とロックマンに想いを馳せるルナ。恋する乙女とはほんとうに恐ろしい。目の前にその人物がいるというのに…熱狂的な信者なようでなによりである。
時にルナさんや、トラックから助けたの俺ですよね?
そして笑い転げるウォーロック、いい加減にしなさい。
「主演女優である私が謎の牛男に襲われ、そこに颯爽とロックマン様が現れて退治してくれるっていう感動のストーリーよ」
感動というかそれはもうホラーでしょ。ブラックエースは一体どこにいったのか。
トラックから助けたのはブラックエースだったような。
「いや、僕はロックマンじゃなくて黒いヒーローに助けられたような…」
「そんなことはないわ」
…ええ、もうそれでいいです。
さらにルナの熱狂的な話は進行していき、いつの間にかロックマン様はヒーローだ。
まあ、間違ってないのだがいい加減ウォーロックを笑かすのはやめてほしい。
そんな時だ。
「スバル! 後ろに避けろ!」
「え?」
照明器具が上から降ってきたのは。
ギリギリのところで回避に成功したスバルだったが、照明器具が落ちた衝撃で尻餅をつく。
どうやら無事のようだ。
「しょ、照明器具が…どうして…」
呆然とするルナと若干腰を抜かしているキザマロ。
ウォーロックに促されてスバルが瞬時にビジライザーをかける。俺も上空…ウェーブロードに立っている電波体に目を向け睨み付ける。
ジャミンガーだ。
「さて、俺は育田先生に宿題聞いてくるかな〜」
「ちょ、ちょっとあなた!」
「ほら、もう内容は知ったしいいでしょ〜」
ルナたちの目の前で電波変換すると瞬間移動したようになってしまうので、適当な理由をつけて体育館から出ていく。
スバルも何とか理由をつけて体育館から出ていくだろう。
さて悪者退治といきますか。
サテライトさんの言いたいことは「流星サーバーにアクセスしてるから重複してスターフォースなんて使えないよー」ってことです。