流星のファイナライズ   作:ブラック

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今回でスターフォースはお終いです。



一歩、二歩…

どうしてみんな僕を放っておいてくれないんだろう。

ずっとそう思っていた。

 

どんなに冷たくあしらっても、どんなに無視しても僕に関わることをやめない人たちがいた。

 

『どう? そろそろ学校に行ってみない?』

 

いつも支えてくれる母さん。

『行きたくなったら行けばいい』と言われ続けているものの、その度に悲しそうにする母さんを僕は知っている。

 

『あなたにも出演して貰おうと思ってるのよ』

 

いつも僕に話しかけてくる3人の同級生。

もしも僕が劇に出なかったらどうするのか。

 

『相談したいことがあったらなんでも言ってくれ』

 

学校で会った僕のクラスの担任の先生。

 

『まあ、そのことはスバルが学校に来たときにでも話そうか』

 

そして黒夜くん。

天地研究所でははぐらかされてしまったけれど、もしも学校に行ったら話してくれるだろうか。

ブラザーになって秘密も見れるようになったけど、黒夜くんは未だに謎の人物。

 

その秘密だって…。

 

【大体パンツはトランクスです】

 

秘密だよ! 確かに秘密だけども!?

 

そのほとんどがベールに包まれている。

飄々としていてもいつもするりと逃げられる。

 

だけども根はとても優しい男の子。

 

『ほら、周りを見てごらん。思い出してごらん。いるじゃないか? ミソラちゃんの歌を心待ちにしている人やスバルを常に温かく見守ってくれる人…2人を支えてくれる人がさ』

 

ミソラちゃんの事件のあの日、黒夜くんはそう言った。

 

確かに僕に優しく接してくれる人はいる。暖かく見守ってくれる人もいる。

だけど、僕は誰かと繋がるのが怖い。また失ってしまうことが…とても怖いのだ。

 

ミソラちゃんと同じ。

もう一人は嫌だった。

 

だけど、一人が良かった。

 

でも…。

 

『いなくなった人のことが頭から離れなくなって、他のことが考えらなくなる。目の前のことから逃げてしまう。そうして悪循環を起こす。目の前から大事な人がなくなるっていうのはそういうことなんだ』

 

もう失くすことばかり考えるのは、失くしたことばかり考えるのはやめてもいいのかもしれない。

 

『運命だろうがなんだろうが、選択するのはお前自身』

 

そうだ。選ぶのは僕だ。

いや、選べるのは僕しかいない。

 

父さんでも母さんでもましてや先生やクラスメイト、黒夜くんでもない。

 

この先に進んでみよう。

彼の言うように視野を広くしてみよう。殻に閉じこもるのはお終いにするんだ。

 

前に…進もう。

 

 

▼ ▼ ▼

 

スバルは無事にスターフォースを手に入れることができた。

 

しかしながら都合よく効果が現れるはずもなく、実感もないまま帰路につくこととなった。ちなみに俺には何もありませんでした。相性が悪いことは知ってたけど、本当に何もないと悲しくなってくる。

 

その次の日あたりにスバルから『学校に行ってみようと思う』というメールが届いて飛び上がったのは記憶に新しい。

 

スバルの心境に変化があったらしい。

 

きっとミソラちゃんのおかげである。

流石である。

 

祝い、不登校卒業。

祝い、ぼっち卒業。

 

同じ元ぼっち仲間としてこれほど嬉しいことはない。

 

スバルに了承を得て、聞いたその日に育田先生へと連絡したところとても喜んでいた。

 

そうして今日はスバルが登校すると宣言した日だ。

 

星河家の前でスバルを待つこと5分。

 

「お待たせ黒夜くん」

 

「だからくん(・・)は…ってそれが素ならいいや。おはようスバル、元気しとぉや」

 

「お、おはよう黒夜くん。相変わらずだね…」

 

『どうでもいいが、遅刻するんじゃねえのか?」

 

ウォーロックの名前を呼ばなかったのはスバルの隣にアカネさんがいるからである。若干涙で俺たちのやりとりを暖かく見守っていた。

 

アカネさんからすれば3年越しの悲願である。息子の成長だ。これほど嬉しいことはないだろう。

これほど健気な奥さん…はやくダイゴさんに会わせてあげたいものだ。

 

ダイゴさんが今どこで何してるか知らないけどね!!

 

「黒夜くん、スバルのことお願いね」

 

「はい、わかりました。でもクラスにはすぐ馴染めると思いますよ。みんなちょっとハートが熱すぎるんで…」

 

「???」

 

スバルとアカネさんが首を傾げているが、気にしない。スバルに関してはすぐにわかることなんで説明は不要だ。アカネさんに挨拶を済ませると学校を目指す。

スバルの家から学校まではわずか10分程度。俺の家よりも近くて羨ましい限りだ。

 

たわいもない雑談をしながら歩いていればあっという間に校門が見えてくる。

 

大きな校門の前に仁王立ちしている人物が一人。

 

スバルがその人物を見て苦笑いしたのは触れないでおいた。

 

「来たわね、明星黒夜。そしてスバルくん。歓迎するわ」

 

どうやら彼女なりの歓迎らしいが仁王立ちはやめなさい。

どうしてもルナはがんばるベクトルの向きが違うんだよなぁ〜。

 

俺たちの内心などいざ知らず、ルナは続ける。

 

「ふふ、これも私の優しさのおかげよ、感謝しなさい。とりあえず、教室に行く前に先生へ挨拶してきたらどうかしら?」

 

「それもそうか。先生はいつも職員室の前で登校してくる児童を出迎えてるから会えるね。行こうかスバル。あ、ルナもうすぐ遅刻だぞ〜」

 

「し、知ってるわよ!! あなたたちが来るのを私だけ待ってたの、感謝しなさい!」

 

お、おう。

つまり、ゴン太とキザマロは俺たちが遅すぎて先に行ったと。

 

まあ、今日はいろいろとあるからね。

委員長、お勤めご苦労様です。

 

…本当は委員長という役職がなくてもルナは俺たちを待っていただろう。不器用だが、彼女はこういう性格なのだ。みんなに慕われる訳だよ。

 

ルナに敬礼したら『き、気持ち悪いわね、早く行きなさい!』と言われた。

 

本当にたまに理不尽だよね、君!!

 

職員室は正面玄関を通って左にあるためどの児童も必ず通る。だから朝の挨拶をするにはうってつけの場所とあって育田先生はいつもそこで立っている。

 

正面玄関で風紀委員の子に『あ、明星黒夜! 今日は風紀を乱すことしてないわよね?』と言われたが身に覚えがない。

 

確かに遅刻や居眠りはするけどね。

 

スバルに驚かないか聞いたところ『黒夜くんってそんな感じする』とのことだ。

 

…俺ってそんな真面目に見えない?

 

「おお、スバルくん! 話は君のお母さんとそこにいる明星から聞いているよ。君のクラスは2階にある5-Aだよ…って明星からいるから大丈夫だな」

 

「よ、よろしくお願いします」

 

エレベーターで2階を選択する。スバルがどことなくソワソワしているあたり緊張しているようだ。

 

そんな緊張もどうせソウルメイトたちに会えば吹き飛ぶだろうが…。

 

教室の前まで来るとスバルの緊張は絶頂に達した。

直立不動。

決して動こうとしない。

 

「ク、クラスメイトの人たちってどんな人かな。ま、まさかみんな委員長みたいなのばっかりだったりして…」

 

宇田海さんみたいなことを言うんじゃないよ。

というかクラスのみんなルナみたいな性格してたら学級崩壊確定でしょ。

 

思わず声に出して吹き出してしまった俺をスバルがポコポコ叩いてくる。

 

こいつ、あざとい!?

 

「まあ、みてなって」

 

ゆっくりとドアが開く。

スバルと俺が中に入った途端、乾いた音が連続して鳴り響く。

 

『おかえり、星河スバルくん!!』

 

目をまん丸にするスバル。

 

スバルを待っていたのはクラスメイトたち全員からの祝福だった。みんなスバルのことは知らないだろうが、それでもと準備をしてくれた。

 

黒板には大きく『おかえりスバルくん』の文字が様々な色が用いられて書かれている。その周りにはスバルが好きな宇宙をイメージした絵や星々。

ペガサスが書かれているのは彼のトランサーのサテライトがペガサスだからだ。

 

事前に伝えておいた情報を上手く活用してくれたようで嬉しい限りだ。

 

「うぉぉぉぉぉ!! よく戻ってきた!」

 

「これからよろしく頼むぜ!!!」

 

「スバルくん、よろしくお願いします」

 

「いろいろあったけどよ、仲良くしようぜ」

 

「これだけ御膳たてしたんだもの。挨拶の一つ、してくれてもいいんじゃない?」

 

熱いソウルメイトたちである。

中にはゴン太やキザマロ、そしていつの間に俺たちより先に教室に来たのかルナの姿もある。

 

未だに困惑するスバルの肩を押す。

 

俺のことをちらりと見たスバルにサムズアップで返す。俺とて、この熱いソウルメイトたちの一員なのだ。

 

これだけやってくれたみんなを助けないわけがない。

 

なにより暗い底から一歩を踏み出そうとしているブラザーの肩を押さないはずがない。

 

「え、えっと…星河スバルです。あの…えっと…ありがとう。よろしくお願いします」

 

拍手が広がっていく。

それは友達の輪が…ブラザーバンドが広がっていくかのように。

 

隠していたカメラで写真を撮る。

 

「ほら、いい顔…できるじゃん」

 

カメラに映っていたゴン太と肩を組むスバルの顔は今まで見たことないほどに綺麗な笑顔だった。

 

言葉で言うのは簡単だ。

 

心で決めるのは簡単だ。

 

本当の覚悟とは…。

 

このスバルの覚悟がすぐに揺らぐことになることを誰も知らない。

 

もちろん、スバル本人でさえも。




さてさて、ハッピーで終わると思いきや不穏な感じ。

次回はリブラ・バランス編ですがスバルくんの成長が主題です!

「た、助けを呼ぶ声がある限り私は必ず現れる! あ、青き戦士…ろ、ロックマン参上!」

「ブフッ!!」

「カーーーット!!!」

「これが俗に言う…きちゃった♪ってやつかな」

「だからなんでさ…」

「あの劇ほんとに笑っちゃう件について」

『テメェと同じ、気持ち悪い電波をしてやがる』

「いや、俺のとは別物だろ。これはノイズじゃない」

『くるぞッ!! 構えろスバル!』

「ぼ、僕は…」

やっぱり黒夜くんは意地が悪い。
答えは決まってるじゃないか。

僕の周りを氷が包んでいく。そうして氷の礫が僕を呑み込んで球体を作る。

不思議とこの氷は冷たくない。むしろ、暖かい。
やがて氷の礫が弾けるように、光を発しながら球体が割れる。

「行くぞ!! もう僕は負けない。絶対にッ!!」

次章『一歩二歩、そして三歩へ』
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