流星のファイナライズ   作:ブラック

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短めです。
日常ってなんて平和なんだろう。


FM編 6 一歩二歩、そして三歩へ(リブラ・バランス)
何気ない毎日


「シーン35。ロックマン登場! スタート!!」

 

総監督であるルナの声が静かな体育館に響く。体育館が静まりかえっているのは今が劇の練習の真っ最中だからである。

窓からは光がささないように暗幕が引かれ、照明はほとんど消されているので足元もおぼつかない。

 

「そこまでだ! 牛男!」

 

青一色のスーツに身をつつんだスバル。ご存知ロックマン先輩である。俺はその隣で真っ黒な衣装に身を包んでファイティングポーズをとる。

もともとロックマンの役はツカサがやるはずだったのだが、ツカサが辞退したことによって空いていたのだ。

 

そういうこともあってルナはスバルをなんとしても学校に連れ出そうと意気込んでいた。

 

それにしてもロックマンとブラックエースの衣装の精密さの違いときたら…泣けてくる。

 

「誰だ! お前は!?」

 

そしてオックス・ファイアの衣装に身をつつんだゴン太。さすが本人気迫が違うね。

 

それにしても…。

 

「た、助けを呼ぶ声がある限り私は必ず現れる! あ、青き戦士…ろ、ロックマン参上!」

 

「ブフッ!!」

 

こんな言葉を本人が言うのだから笑いを堪えるのがきつい。

スバルのたどたどしい口調と台詞に思わず吹き出す。

 

みんなには見えていないだろうが、ウォーロックも腹を抱えて笑い転げている。

 

「カーーーット!!!」

 

総監督ルナさんの怒声が響き渡る。

 

「明星黒夜!! この馬鹿星!! 何してるのよ! 仮にもロックマン様のサポート役?なんだから笑ってるんじゃないわよ!!」

 

「本当に黒夜くんはいつもこんな感じなんだけど…」

 

スバルがぼそりと言った言葉はルナには届かな…え、俺ってそんなに不真面目だったかスバルよ。

ガミガミと怒るルナを適当に弄りつつ流すと怒りの矛先はスバルへと変わっていった。

 

ロックマン本人だと知らずにロックマンになりきれというルナ。

 

またもや吹き出した俺は悪くない。

 

そして怒られる…解せぬッ!

 

「まあ、今日はこれくらいにしときましょう。明日もあるから各自準備を怠らないように!」

 

ようやく解放されたのが最終下校時刻になった頃。みんなが互いに挨拶をして帰っていく。もちろん総監督であるルナへの挨拶も怠らない。

 

ルナを慕っているのだ。

 

俺もルナに一言挨拶をしてスバルとともに正面玄関から帰路へつく。

 

「黒夜くん笑ったでしょ」

 

「いや、あんなん目の前で言われたら笑うでしょ。ウォーロックなんて爆笑だったよ」

 

「ろ、ロック!」

 

『あそこまで笑ったのは久しぶりだぜ。学校ってのは退屈だが時々おもしれえな』

 

スバルが学校に登校するようになって早2日。スバルもクラスに徐々に慣れ始め、劇の練習も本格的になってきた。

ここ2日はいたって平和で特に何事もなく過ごしている。噂程度で学習電波なるものが導入されていると騒がれているくらいか。

 

ミソラちゃんとのやりとりも健在で元気にしているとのことだ。

 

それからも劇についての笑い話や授業の雑談をしているうちに分かれ道にさしかかる。

そこから先は一直線に家を目指す。今日は俺の大好きなCoCo弐カレーが夕飯なのだ。

 

これほど楽しみなことはない。

 

夕飯の時間にはまだ早いだろうが早足に家に帰る。

 

「ただい…ま?」

 

「わわ、ふろや、ふぉはえり」

 

リビングに入って目に入ったのは頬をパンパンに膨らませた我が母とピンク色の服を着た女の子の姿。リビングを見渡してみればソファーに立てかけられたギターケース。

 

テーブルにはたくさんのお茶菓子と抹茶。

 

おそらく我が母はあれのうちの何かを口に含んでいて『ああ、黒夜、おかえり』と言ったに違いない。

 

「おかえりなさい、黒夜くん!」

 

「だからなんでさ…」

 

どうやらミソラちゃんと会うときは必ずこの台詞を言わなきゃいけないらしい。

 

▼ ▼ ▼

 

場所は変わって俺の部屋。

なんでも前にお世話になったお礼ということで我が家にお茶菓子を持ってきたらしい。

 

なんてできる子なんだ…。

 

流石は社会に出ているだけのことはある。いろいろとわかっている。

 

リビングでは今も変わらず母さんがお茶菓子を食べているんだろう。

 

俺の分、残しておいてよね!!

 

「まさか連絡なしに来るとは思わなかったよ」

 

「これが俗に言う…きちゃった♪ってやつかな」

 

そんなアナログな発言をミソラちゃんから聞くことになるとは思わなかった。とりあえずミソラちゃんの頭に軽くチョップをかます。『あいたっ』という可愛らしい声を挙げるミソラちゃん。

 

「め、迷惑だったかな」

 

「迷惑じゃないよ。ただ引退したといえミソラちゃんは有名人なんだから…」

 

言いかけて言葉を呑み込む。

そう、ミソラちゃんは引退した身。彼女を縛るものはなにもない。故に、プライベートを侵害することはよくない。

 

「ふふ、ありがと。やっぱり黒夜くんは優しいね。それで学校の方はどう?」

 

「ん? ああ、スバルも学校に来るようになって楽しく過ごしてるよ」

 

「そっかそっか! スバルくんも同じ学校に登校してるんだね。羨ましいな〜。私もコダマ小学校に引っ越したくなっちゃうよ」

 

引っ越す?

ああ、転校ね。

 

ミソラちゃんがコダマ小学校に住むのかと思ったよ。

 

スバルのこともミソラちゃんには話してある。ついうれしくなってスバルにもメールを送ってしまったとか言ってたのが懐かしい。

 

スバルとも時折連絡を取っているようで何よりだ。

 

「まあ、ミソラちゃんが来たらいろんな意味で忙しくなりそうだなぁ〜」

 

主にゴン太とキザマロを含めたミソラちゃんファンの興奮とルナの嫉妬で大変そうだ。

あとはFM星人の事件が起こったときにミソラちゃんが行動を起こしそうで怖い。

 

ミソラちゃんにも力があるとは言え、戦闘自体は素人そのもの。ジャミンガーGのような手練れが来たとき、最初に狙われるのはきっとミソラちゃんだ。

 

『ポロロン…それはFM星人のことも入ってるのかしら?』

 

む、鋭いなハープ。

周波数でも感知してバレたのかな?

 

ミソラちゃんを巻き込まないためにはコダマタウンから遠く離れた場所にいてもらうのがベストなのだ。

 

「さて、彼らの動きについてはわからないな〜」

 

『そうね。でも彼らもFM王からの命令を受けて動いているわけだし、そう簡単に引くことはないわ』

 

「そうだねー。これからコダマタウンやらいろんなところで…」

 

思わずポロリした言葉に冷や汗が流れる。目の前には恐ろしい笑顔をしたミソラちゃんが正座している。

 

「黒夜くん、隠し事はなしだからね♪」

 

ミソラちゃんの笑顔が怖い。しかし俺は折れない!

 

結局その後も尋問のようなやり取りが続いたのだが、ミソラちゃんの空いている日にヤシブタウンでショッピングするという約束で手を打ってもらった。

 

「それじゃ、私はこれで帰るね」

 

「今度来るときは連絡してね」

 

「うん! 今日はサプライズ大成功ってことで!」

 

「いつでも来なさいな。母はミソラちゃんのこといつでもどこでも大歓迎よ」

 

腕を突き出してピースをするミソラちゃんに頭を抱えたくなる一方で微笑みを浮かべる。

そしてミソラちゃんにサムズアップする我が母はお茶菓子でつられたに決まっている。

 

リビング降りたらお茶菓子なかったしね!!

 

ミソラちゃんが帰ってから母さんに茶化されたのは言うまでもない。

 

余談だが、劇についてうっかり漏らしたところ食いつかれて見に来ることを宣言された。

 

終わった…。

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