流星のファイナライズ 作:ブラック
ジャミンガーのとこまで書き終わりました。
かくして、今回の事件は閉幕を迎えた。
時間後、サテラポリスを筆頭に事件の調査や原因究明が行われたものの、結局怪しい点は見つからず『育田道徳が学習電波の操作を誤った』と判断され捜査は終わった。
この事件を受けて、文部科学省は学習電波の使用基準やそれに関する法律を定めることとなるようだ。
現在も国会で議論されているに違いない。
そんなことがあって、事件の当校であるコダマ小学校は全面的に学習電波の使用を控えることとなった。
しかし良いことばかりではない。
育田先生は今回の騒動の責任を取ることとなり、この学校を去ることとなった。もちろん、校長の圧力だ。そんなことを見過ごすわけがないのが俺たち熱すぎるソウルメイト。
学校や地域の人たちからの署名を集め、校長に直談判することとなった。
もちろん、責任をとって辞任ということだったので最初は取り合ってもらえなかったが、後に校長が脅迫していたことが発覚し育田先生は戻ってくることとなった。
もちろん、校長はクビである。
脅迫行為は犯罪だからね。
ましてや『家族がどうなってもいいのか』みたいなことはアウトでしょ。
こうして育田先生は無事に帰ってきた。
めでたしめでたし…とはいかなかった。
今日は学芸会本番の日。
事件によって学校閉鎖された日のこともあって練習は不足気味。ルナ総監督からイメトレと自主練は言い渡されたものの、合わせるているのといないのでは少し違う。
『今日はしっかり2人のこと観に行くからね。もちろん最前列で観ちゃうからね』というミソラちゃんからのメッセージを見たときは身体が震えた。
ミソラちゃん…なんて恐ろしい子なんだろう。
しかも当日に配られた台本には新たにセリフが追加されているときた。まあ、それはスバルだけなんだけど…。
俺に至ってはセリフが削減されたんだけど!
解せぬ!
やはりロックマン様病のルナが総監督というのは間違いだったのでは…なんてことを考えたくなる様である。若干ふてくされたのだが、スバルから面白い提案をされて機嫌を直した。
そうして時は本番にまで進む。
「きゃー、助けてー!!」
「お、おとなしくしろ!!」
「いや!! 誰かーー!!」
劇は進み、牛男に囚われたルナ。
ルナの演技力は大したものだが、ゴン太に迫力がない。練習ではめちゃくちゃ迫力あった。セリフを噛んだりしているあたり、たくさんの観客を前にして緊張してしまったんだろう。
これだけたくさんいれば、緊張するよね。
舞台袖から見渡してみれば体育館を埋め尽くすほどの観客。事件のこともあってマスコミまでも駆けつけているようだ。
そのカメラがすでにノイズに侵されていてまともに使えないとも知らずに…。
さて、本来ならばここでロックマンが颯爽と登場し、臭いセリフを吐いて俺が爆笑するシーンである。
「て、停電!?」
「な、なに!?」
突然照明が落ちる。
もちろん、停電ではない。照明役であるキザマロにこのタイミングで照明を落とすようにスバルと俺から頼んでおいたのだ。
ルナにはバレないように。
「そこまでだ!」
そうして、照明が飛び出したスバルを照らす。
スバルが飛び出してバスターを構える。
だが、スバルのその姿は練習の時に使っていた衣装ではない。このリアリティーは実際に電波変換しないと出せない。
俺も電波変換してスバルの上からバスターを構える。
もちろん、
「あ、あの子浮いてるわよ…」
「最近の小学校の劇ってワイヤーアクションまでするのね〜」
「青い子カッコイイ!」
「う、うっそだ〜…」
最後に聞こえたのはミソラちゃんの声だった。チラリとその姿を探してみれば、宣言通り観客席の一番前に座っていた。
惚けた顔。
思わず爆笑しそうになるの堪えて視線を合わせバイザーの下から軽く微笑む。
「青き戦士ロックマン、参上!!」
ポカーンとしているルナに向かってセリフを口にするスバル。してやったりという顔だ。
「それ、毎回やってよ」
そんなスバルの隣に静かに降り立ち、いつものような雰囲気でこの舞台にいる人だけに聞こえるように喋りかける。
若干顔を赤くしながらも、スバルは劇の進行通りに次のセリフを言うべく口を開く。
「覚悟しろ、牛男!」
だがさらにここで照明が落ちる。
もちろん、これもキザマロに頼んである。
ルナには内緒だが、ワイヤーアクションをすることもキザマロには伝えてある。
やがて照明が元に戻ってそこにいたのは、元々の衣装に身を包んだ俺とスバル。
電波変換する前に2人して衣装を着ていたのだ。こうしとけば、電波変換を解いたとしてもバレることはない。
まあ、ミソラちゃんにはバレバレ…って爆笑してるよあの子…。
主に俺を見て。
というか御丁寧に指差して。
ハープまで笑ってやがる。
許さんぞ。
これだけロックマンとブラックエースの衣装に差があれば笑いたくもなるか。
又してもルナはあっけにとられた顔をしたが、ぶんぶんと勢いよく首を振るとゆっくりと口を開く。
「た、助けに来てくれたのね!」
「もちろん。君のことは守るよ、絶対に…」
そのセリフに思わず俺は吹き出しかけ、観客は大歓声を挙げた。
こうして学芸会は盛大な盛り上がりを見せ、閉幕したのだった。
余談だが、学芸会後、総監督であるルナに内緒でワイヤーアクションをしたことについてこってりしぼられた。
▼ ▼ ▼
「それで、スバルくんは?」
「ああ、もう元気に学校に通ってるよ。随分前の友達恐怖症が嘘みたいにね」
学芸会から数日過ぎた日曜日。
ミソラちゃんとのヤシブタウンでショッピングの約束は履行された。
最初の方は劇の衣装について馬鹿にされまくったものの、なんとか耐え切ってみせた。
「それは何よりだね。私もこうして新しい道を歩み始めたわけだし、絶好調だね」
ミソラちゃんは歌手に復帰するべく新しく活動し始めたのだとか。随分と展開が早い気がするが、そこは天才少女。音楽に限界なんてない系小学5年生なんだろう。
さて、ウォーロックやハープに俺の根本的なことがバレたこともある。いずれ俺について話さなきゃいけなくなる日がくるだろう。もちろん、転生について言及するかは迷う。だが、育田先生がカミングアウトした電波障害児については話してもいいだろう。
詳しく知ってるのは俺と母さん、それと精通している医者しか知らないだろう。
「黒夜くんってば!」
「ん、おお、ミソラちゃん元気してた?」
「3時間くらい一緒にいたよね!?」
「ナイスツッコミ」
平和な日はあっという間とよく人は言う。
危機が迫っていることを知らない人々は今日も何気ない毎日を過ごしている。そんな平和を守れるのは…地球を守れるのは俺とスバルしかいない。
だけど、今日くらいは。
「さぁ、次は何を見に行こっか」
「あ、私あれみたい! 電波ザムライっていう映画! こう、ズバッって電波斬るやつ!」
羽を伸ばしてもバチは当たらないだろう。
▼ ▼ ▼
コダマタウンに並び立つ住宅街。その一つの一軒家…星河家。
そんな星河家のテーブルを囲う2人の女性。
明星美夜と星河アカネ。
テーブルに置かれたお茶菓子を一口食べつつ、美夜はアカネの話に耳を傾けていた。とても嬉しそうに話しを続けるアカネに思わず美夜の口角も上がる。
「そう。あのスバルくんがね…」
「美夜ちゃんの言う通りだったわ。いつの間にあんなにも成長して…友達もできて。またあの子が元気に学校に行ってくれる日がくるなんて…」
途中から涙混じりに話すアカネの頭を優しく撫でる。美夜も僅かに涙目になっているのは当時の自分と重ねているからに違いない。
だが黒夜は…。
「これで終わりじゃないわよアカネさん。これからはより一層あの子たちを見守ってあげなくっちゃ!」
「そうね。頑張りましょう!」
ガッチリと固く握手を交わす2人。
「そういえば聞いてアカネさん。あの子ね、あの元国民的アイドルことミソラちゃんとね…」
「み、美夜ちゃんそれ、すごいことなんじゃない!? スバルのブラザーに響ミソラちゃんがいたのは黒夜くんが…」
「ちょ、私どうしよう…」
「ってことはスバルが2人の仲…」
この事件で新しい一歩を踏み出したのはスバルだけではない。彼を一番近くで見守ってきたアカネこそ一歩前へ踏み出すことができたのかもしれない。
アカネさんは本当に頑張ったと思う。1からでも少しずつ幸せになってほしい。
「そうだ。ゴン太〜、宿題の算数はいつになったら出すんだ〜。もう4日目だぞ〜。明日持ってこなかったら…」
ゴン太は助けを呼んだ。
「私は手伝わないわよ」
しかし、失敗した。
「お久しぶりです五陽田さん。調査ですか?」
「いいかね、スバルくん。驚かずに聞いてくれ。Z波の正体は宇宙人なのだ!!」
「宇宙人。間違いないですよ。育田先生がおかしくなったのはFM星人リブラの仕業です」
「あ、あなたブラザーがいるの!? さては明星黒夜ね!? なんて手回しが早い…」
「た、確かに黒夜くんだけど…」
『ケッケッケ、ピンチ到来だな! 星河スバル!』
「あなた1人なんて無理よ!?」
「鍵を閉めて。大丈夫、君は絶対…守るから」
ノイズウェーブ・デバウアラはノイズを吸収し、自身の力へと変換する機構を持つ。
故に、電波体だろうが人間だろうがノイズを吸い取ることが可能だ。
「流星サーバー、アクセス」
『Ryusei Server Access』
「そうだよね、私はギターで抵抗しようと思うんだけどどうかな!」
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