流星のファイナライズ 作:ブラック
ちゃんと生きてますので…。
ちょこちょこ執筆しても4000文字いかないくらい。
次回はもうちょっとはやくあげられればと思います…。
フワフワと浮く椅子に腰をかけ、ストローを口につけてドリンクを飲む。チラリと横を見てみれば、嬉しそうな顔をしたスバルとツカサが会話を楽しんでいるご様子。
人には見えないだろうが、ウォーロックはトランサーから出てきてプカプカと浮いている。
欠伸をしている様子から非常に暇そうである。
周りのデンパたちがウォーロックをチラリとみて避けて行くのは彼の見た目がゴツいからだろうか。
君、おしゃれ空間には似合ってないってさ。
今ここでツカサのあれこれ暴露してしまってもいいんだが、この和やかな空気を壊すのは流石に気が引ける。空気が悪くなるというか…あれ、もしかしたら冗談だと思われるかな?
なにはともあれ、スバルにツカサが極悪人だと思わせるわけにもいなかないしね。
「それにしても、ここ最近表情が明るくなったよね」
「え? そうかな〜。自分じゃわからないけど友達が増えたから…なのかな?」
チラリとこちらを見てくるスバル。なんともキラキラした瞳である。
こっち見るんじゃありません。
「そのおかげで学校も楽しいと思えるようになったんだと思う。僕を連れ出してくれた委員長や黒夜くんがいなかったら、今も引きこもっていたよ」
『あはは』と苦笑いを浮かべるスバルにツカサは暖かいを笑みを浮かべていたが、すぐに真面目な顔に戻った。
それにしても、俺に対するスバルの信頼度が随分と高い件について。
「…差し支えなければなんだけれど、理由を聞いてもいいかな」
「ん?」
「今までキミが学校に来れなかった理由」
スバルはツカサの言葉をどう受け止めたのだろう。正直なところ、ツカサとスバルは大の仲良しというわけではない。仲良くなりはじめたところと言っても過言ではない。
何が言いたいかというと、『プライベートな部分に突っ込むのがはやくね?』ということである。
え?
ルナトリオ?
彼らはある意味爆弾だったのだ。
まあ、俺が言えたことじゃないか。
必要なことだったとはいえ、あれこれ挑発したのは申し訳ないと思ってます。
「父さんがね」
「うん」
「行方不明なんだ」
それでも言ってしまうのがスバルというのはわかっていた。
しかし、ここまで言えるようになったのはある程度ふっきれたからに違いない。生きている、死んでいると決めつけたわけでもないのだろう。
可能性を信じる。
言葉以上に難しいことだ。
「そっか…ごめん。聞いちゃいけないことだったよね」
「ううん、もう大丈夫。僕は今、元気だから」
チラリとこちらを見てくるスバルに小さくため息を吐く。
スバルが俺を見たことがツカサにもわかったのか、思い出したようにツカサが手を叩く。
「そうか。黒夜くん、
「ツカサと一緒というわけじゃないけどな」
「え?」
「僕もね、親がいないんだよ。黒夜くんのいう通り、一緒ではないけどね。僕には父親も母親もいないんだ」
「そんな…」
俺やスバルには母親が残っている。故に、愛情を一身に受けて育ってきた。
だが、もしも母親がいなかったら?
どうやって生きていけばいい?
誰が育てていけばいい?
幼い子ども一人で何ができるのか。
だが、それでもツカサは今日まで生きてきた。その苦しみは想像を絶するのだろう。
その原因が事故などでもなく、親の意思で捨てられたとあれば…。
親だけでなく、世界そのものを憎むことだって有り得た話だ。
「初めてキミを見たとき、そして黒夜くんを見たときに思ったんだ。僕たちは似ているって」
「黒夜くんとは少し仲良くなったと思う。スバルくん、キミともいろんな話がしたいと思ってる」
これはツカサの本心だろう。
自分と同じとまではいかなくても似た境遇の人間が、何を思い、どう生きてきたのか。
知りたいのだ。
「展望台から夜空を見上げるとさ、父さんを失った悲しみが和らいだんだ」
「スバルくんのお父さんは宇宙飛行士だったんだよね」
「うん。よく知ってたね」
「宇宙飛行士なんて、有名人だからね」
ん?
これは俺が大吾さんを知ってるのも誤魔化せそうな予感。
「最近じゃ、ニュースにも取り上げられるし、ドキュメンタリーもある。宇宙飛行士っていうのは密着取材とかもあるから情報は手に入りやすいんだよ?」
最後はまくし立てるように喋ったので語尾がおかしくなってしまったが、なんとかなるだろう。ウォーロックにはそう誤魔化しは効かなそうだが、スバルはいけそう。
スバルはチョロQ。
「そっか、そうなんだ」
「悲しみを癒す場所…黒夜くんは?」
「俺は原因がはっきりしていたからな〜。ひたすらウィルスを殲滅し続けてたよ。癒すというよりは暴走かな?」
あのときはただ荒れていた。
朝早くから家を出て、ひたすらに暴れまわりウィルスを殲滅し続け、夜遅くに帰る。
母さんには心配をかけてしまった。
俺だけが辛いわけではなかったのに。
俺の言葉にスバルが『うわぁ…』と声を漏らす。何を想像したのかは容易に予想がつくのでニッコリスマイルで黙らせる。
「ドリームアイランド。僕はそこによく行くんだ。なんと言えばいいんだろう…いや、実際に見てもらった方がいいかな」
「今から行くのか?」
「うん。バスを使えば遠くもないしね」
だが、きっとツカサが知りたいのはどうしてそうなったのかではない。
彼はきっと、
『今から行くのかよ…』なんてゲンナリした表情をしたウォーロックはガン無視しておいた。
気持ちはわかるけど、黙ってトランサーの中に入ってなさい。
▼ ▼ ▼
ドリームアイランド。
もともとは海しかなかったその場所を埋め立ててつくられた新たな土地。しかもゴミを捨てて埋め立てていくうちにできた敷地だ。
ゴミを海に捨てて偶然ではあるものの、土地を作った挙句、結局は娯楽施設でもなんでもないゴミ処理場を作って夢の島とはよく言ったものだ。
確かに公園は人気があるようで子どもにとっては夢の島なのかも知れないけどね。
ドリームアイランド…なんだろう。今日どこかで聞いた言葉だ。ツカサが言ってただけだったか?
妙に悪寒が走るのだが、これは後々の『スクラップにしてやるぜ』関連のせいだろうか。
覚えてないということは大したことではない。そう決めつけてバスから降りて歩く。
「この公園の奥に僕が連れて行きたい場所があるんだ」
公園にはたくさんの遊具が置かれているが、時間が時間なのでもう子どもの姿はほとんど見当たらない。
先へと進むに連れて見えてくるの花畑だろうか。いくつもの花が見える。しかし、一面の花畑というわけではなく、道の両脇に咲いているようだ。さらに奥へと進むと見えてきたのは、海が見える丘。
その丘から花を見下ろすようにツカサは立ち止まった。
「ここが僕の悲しみを癒してくれる場所」
「綺麗な場所だね」
潮風に吹かれた花々が揺れる姿はとても幻想的だった。
「次は公園の外に出よう。そこで僕の両親がいない理由を話そう」
「え、そんな無理しなくても…」
「いや、聞いて欲しいんだ。どうか話させて欲しい」
ツカサはそういうと一人公園の出口の方へ向かって歩いていく。その背中を見ながら俺はスバルの肩を軽く叩く。
「いいか、スバル」
「?」
「ツカサはツカサだ。これだけ、覚えておけ」
「???」
首を傾げるスバルの肩をもう一度叩き、ツカサを追いかける。後ろから小走りにスバルが駆け寄ってくるが、話すことはなかった。
PARKと描かれた大きな公園の出口を抜け、公園とは反対の方向へと進んでいく。
景色は大きく変わっていった。
ドリームアイランドができた経緯を知っていれば、納得もできようが、何も知らない人から見れば唖然とするだろう。現にスバルは鼻をつまみ、驚いた様子で俺の横を歩いている。
「この辺一帯のゴミの処理場。ここはそういう場所なんだ。僕は、ここで捨てられたんだ」
「え!?」
「驚いた? そう。僕は捨て子だったんだ。ほら、これが普通の反応だよ、黒夜くん」
「やめてよね、俺が異常みたいに言うの!?」
「キミは驚かないと思っていたけれど、やっぱり驚かないんだね」
「…両親がいない理由で考えられることなんて、そう多くない。あれかな、 俺は普通じゃないって言いたいのかな? こう見えて内心、びっくりしてるさ」
考えられるのは、事故死や行方不明などばかり。もしそうでなかったとしたら、育児放棄や失踪。こんなものだろう。
もとより知識として知っていたのが大きかったので、別段驚きはしなかった。
「10年前、赤ん坊だった僕はここに捨てられたんだ。発見したのは、ここで作業している分別ロボット。タオルに書かれていたツカサと言う文字から、僕はツカサと名付けられた。それが本当の名前かどうかは両親しかわからない。その後、僕は施設に送られた。そして今日に至る…というわけだよ」
ツカサはゆっくりとその場にしゃがみ、コンクリートでできた床に僅かに触れる。
「この話をしたのはキミたちが初めて。キミたちなら話してもいい。そう思ったんだ。さぁ、随分遅くなってしまったね」
ツカサはそのまま立ち上がると大きく伸びをして笑みを浮かべる。
「次は学校でたくさん話そう。委員長やゴン太がうるさいかもしれないけど」
「ふふ。そうだね。それじゃあ、僕はここで。黒夜くんも、またね」
ツカサはニコリと微笑んでその場を去っていった。
ここから先、起こることを朧げながらに覚えている俺は、ツカサを追いかけずに見送る。
ツカサが見えなくなって数分したあたりだったか、突然としてスバルと俺の電話が鳴り響く。
『よぉ、いい情報を教えてやるぜ』
「お前は…さっきの!!」
『スクラップに気をつけろよ…ククク』
スバルの方から聞こえてくるのは怪しげな男の声。一体何くんなんだ。
そして俺の方にかかってきた電話は…。
『…くーーろーーーやーーーーくーーーん???』
恐ろしい声で名前を呼ぶ、ミソラちゃんだった。