流星のファイナライズ   作:ブラック

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星河スバル

新学期が始まってから早くも1ヶ月が経った。

 

何かもかもが新しかった…なんとことは俺には何もないけれど、新しいクラスに溶け込んでいけるようになってきた。とは言っても初めて見る人などほぼいないので大して覚えるようなことはなかった。それは他のみんなも同じだったようでお祭り騒ぎまではいかないもののテンションが高く、育田先生が困っている様子だった。

 

結局授業を中断して『為になるお話』と題して話をしてくれるのだが、それでいいの?

 

いや、ほんとに為になるんだけどね?

 

育田先生が今日も今日とて教科書を閉じたのを見て小さく溜め息を吐くと、一つだけ未だに空いている席を見る。スバルくんは未だに塞ぎこもっているようで、登校してくることはない。ルナトリオが執拗に食い下がっているようだが、未だに学校に連れ出すまでは至っていない。

 

ルナが強硬手段を取っていない…だと!?

 

学校まで強制連行して連れてくるとふんでいたので内心驚愕である。いくら世界軸が違うとはいえ、ルナはルナ。いつかは必ず強硬手段をとるだろう。

 

大きく欠伸をすると机の上に突っ伏して考えることをやめた。

 

▼ ▼ ▼

 

小学校の通学路。

いつものように多くの人と児童が道を行く中、通学路の真ん中で互いの腕を引っ張り合う1組の少年少女がいた。通り過ぎる人はチラリと2人を見るが、『なんだ子どものじゃれあいか』とでも言うように温かい眼差しを向けて去って行く。

 

どこも微笑ましく感じないのは内容を知っているからだろうけどね。

 

学校の方向に向けて腕を引っ張っているのはお馴染みの金髪ドリルことルナ。キザマロとゴン太がいないあたり、今朝は1人で突撃したようだ。

 

さては、キザマロとゴン太め…寝坊したな!

 

対して嫌がっている少年は不登校少年こと星河スバル。初めてみたがあの髪型はどうなっているんだろうか、疑問である。

 

強硬手段をいつかとるとは思ったいたが、まさか次の日に敢行するとは思ってもみなかった。流石はルナである。

 

「離して、離せって!」

 

「いいから来なさい!」

 

身体が細くても流石は男の子。ルナから腕を無理矢理引き剥がすとルナを睨みつける。ルナは悔しそうにスバルを睨みつける。どうやら平和的解決の余地はなさそうだ。

 

スバルが逃げようとしたところを後ろからきたゴン太が腹で止める。

 

イ◯ズマイレブンの壁山くんはこんな感じでボールを止めるんだろう。偉業である。

 

スバルを見下ろすゴン太の隣にはキザマロが立っている。別段狙っていたわけではなさそうだがドヤ顔である。

そこからの展開はあっという間だった。スバルがゴン太に立ち向かっていき、呆気なく地面に抑えられた。

 

「お前ら、何やってんの?」

 

陰で見ているのもいいけれど、いい加減遅刻しそうになってきたので声をかける。ルナは苦虫を噛み潰したような表情を向ける。

 

「げっ、あなたは明星黒夜!?」

 

「ああ、おはようルナ元気そうでなによりだ」

 

「馴れ馴れしく下の名前で呼ばないでくれるかしら!!」

 

「すまない金髪ドリル」

 

「それは名前じゃないでしょ!!」

 

「わかったわかった。そんなことはいいとしてだな。ゴン太、まずはその柔道選手もびっくりするようなよくわからん固めかたをやめろ。怪我するから」

 

ゴン太の手がわずかに弱まった途端、スバルはゴン太を押し退けてその場から去って行った。別に全然良いんだけど、その体格でどうやってゴン太を宙に浮かせたのか教えて欲しい。

 

おのれ、生身でもロックマンは化け物か。

 

『ぐぬぬ…』となにやら呻いてこちらを睨みつけるルナにニヤリと不敵に返す。

ゴン太とキザマロはそんなルナの様子を見て一歩後ずさる。ルナがご機嫌ななめなことを悟ったんだろう。

 

「また私の邪魔をするというの、明星黒夜!」

 

「邪魔というかなんというかだな。もうちょっと穏便にだな…」

 

「ゴン太!あなたも何離しちゃってるのよ!」

 

「すまね…すいません!」

 

まさかの責任転換に思わず敬礼するゴン太。敬礼は違うよ、ゴン太。

 

「まったく、キザマロもキザマロで何ぼーっと突っ立ってるのよ!これだから…」

 

通学路のど真ん中で説教を始めるルナと背筋をピシッと伸ばして聞くゴン太とキザマロ。話しかけるとむしろ状態が悪化しそうだったので何もせずにそのままその場を去った。

 

因みにルナトリオはチャイムが鳴るギリギリ寸前で間に合った。

 

▼ ▼ ▼

 

ルナから色々と小言を言われたあと、スバルの家へと向かう。もちろん、スバルを学校へ連れ出す気は毛頭ない。今日は母さんと一緒にスバルの家に行くことになっていたからである。

 

まあ、スバルが俺と話してくれるかどうかはさておき、あかねさんとは会話できるはず。

 

今朝のこともあるし、スバルは間違いなく遠ざけるだろうな〜。

 

母さんとはスバルの家の近くで合流し、インターホンを鳴らす。すぐにでてきたのはスバルの母親ことあかねさん。後ろの髪の毛がツンツンしているのは同じらしい。めちゃくちゃ若い。

 

これでお母さんですか?

 

「いらっしゃい。黒夜くん、はじめまして星河あかねです」

 

「明星黒夜です」

 

軽く挨拶を交わして家の中に入る。家具が置いてあるところやドア、階段の位置はゲームやアニメの星河家と変わらないようだ。ただ、現実となると大きく見える。部屋にはスバルとあかねさんの写真や、父親である大吾さんとスバルの写真などが飾られている。

当然だが、成長したスバルと大吾さんの写真はない。

 

大吾さんは今頃どうしてるのかな〜。

 

気になるのはそこだ。

メテオGについての知識も神様からしっかり送られてきたので知っている。ディーラーと呼ばれる集団がメテオGを悪用しようと企んでいることも含めてだ。メテオGに危険性がないということは地球に衝突することがない…ということを指しているのかわからない。

 

原作では大吾さんがメテオGにアクセスして1人で食い止めていたらしい。

 

おのれ…やはり星河家は生身でも化け物か。

 

もしもディーラーという組織自体ないのなら、本来ヨイリー博士が作り出したジョーカーはどうなったのか。脅威がないなら大吾さんはどこで何をしているのかと色々と疑問が残る。

 

3がなくなったということはその設定全てが消えたのかな?

 

俺得なメテオGがあるだけ?

なにそのチート。

 

スバルと大吾さんの写真をじっと眺めていたからかあかねさんは二階に引きこもっているスバルを呼ぶ。そんなに時間もかからず返事が聞こえるとゆっくりと階段を降りてくる音が聞こえてくる。

 

「なに?母さん…」

 

あかねさんに何か言おうとするスバルだったが、俺の姿を視界に捉えた途端、驚いた顔をする。

その後、訝しむような表情をした。

 

これはこちらの出方が重要かな?

とりあえずはあたりさわりのないようにしないと。

 

「今朝ぶり…かな?」

 

「君も、僕を学校に連れ出しにきたの?」

 

軽く手を挙げてみるとスバルは一歩後ずさってこちらを警戒する。

う〜む…明らかに警戒されてしまっている。まあ、言葉を交わしてくれるだけいいとしよう。

 

「いやいや、違うよ。君が学校に来る来ないは君の自由だ。俺から言うことは特にないよ」

 

「……」

 

こちらを警戒したままだんまりとすると母さんに軽く会釈してから階段を上っていった。自分の部屋へと帰っていったんだろう。

 

どうやら相当傷は深いらしい。

ルナたちも悪気があってやったわけではない…と思いたい。まさかとは思うが点数稼ぎだなんてことはないよね?

 

「ごめんなさいね。あの子、3年前からずっとあの調子で」

 

「いえ、大丈夫ですよ。父親がいなくなったトラウマは中々消えるものじゃありませんから」

 

「嫌なこと思い出させちゃってごめんなさい」

 

父さんが死んだ時のことを思い出させたと思ったのかあかねさんは申し訳なさそうな顔をして謝る。こちらこそ、あかねさんには嫌なことを思い出させてしまった。

 

暗い話は終わりにして、そこから先はたわいもない雑談だった。話の内容の多くは小学校のこと。どんな子がいて、今どんな授業をしているのかなどだ。

この日だけでアカネさんとは随分と交流を深めることができた。母親同士で少し話したいというのでお礼を言ってから先に家を出る。もう日は落ちていて空には綺麗な月が浮かんでいる。

 

空では既に戦いが始まっていることに俺はまったく気づかなかった。

 

▼ ▼ ▼

 

黒夜がいなくなったことを確認するとあかねさんと向かい合う。黒夜を連れてきたものの、スバルくんとはあまり話すことはできなかった。

 

「父親がいなくなったトラウマは中々消えるものじゃありません…か。大人なのね黒夜くん」

 

「…黒夜の口調が変わったのは、明人(あきと)さんが亡くなってから。黒夜は随分と変わったわ」

 

美夜(みや)ちゃん」

 

「私は、あのときあの子の側にいてやれなかった。目の前でアキトさんを…お父さんを失くしたあの子の気持ちを思うと…」

 

黒夜は随分とかわった。口調も急に大人っぽくなり、何かに憑かれたようにウィルスバスティングに明け暮れるようになった。夜遅くまでどこかに行くことも多くなった。なんでも、ウィルスを見つけては駆除しているのだとか。あの暴走した車の原因である電波ウィルスに怒りの矛先を向けることで心を保っていたのかもしれない。

 

どうやってウィルスを見つけているのかは勘らしい。

 

「スバルもいつか歩き始めてくれるかしら」

 

スバルくんとあかねさんの気持ちがよくわかる。自分の心にぽっかりと穴が空いたような感覚。何をするにしても虚無感が襲う。私も少し前まではそうだった。

 

「あかねさん。子どもはね、気づかないうちに成長しているものよ。守っているつもりが、いつの間にか守られてる。スバルくんもいつか殻から抜け出してくれるわ」

 

「そうね。そこまで支えるのが私たちの仕事だものね」

 

未だに時は止まったまま。

 

 

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