流星のファイナライズ   作:ブラック

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お久しぶりです。
黒夜くん抜きだとコメディ路線はあり得なかった…。

兎にも角にも、難産でした。

お待たせして申し訳ない。


孤独を知る心 認める心

廃棄物置き場の奥。

ウェーブロードを伝ってようやく辿り着いたその場所には先ほどとは比べ物にならない量の廃棄物があった。人が歩くこともできる足場さえ探さなければいけないほどだ。

 

だが、なぜか廃棄物が置かれていない一本の道がある。しっかりと整えられているわけではなく、小さな廃棄物などは道の上に無造作に置いてある。つい先ほどまでこの道も廃棄物で溢れていたはずだ。

 

まるでこの道を通ってこいと挑発されているかのよう。

 

電波変換したジェミニ・スパークは更に奥…階段を上った先に立っていた。

先ほどの口調から考えるに黒い方がヒカル、白い方がツカサくんなのだろう。

 

「ツカサくん…」

 

「ごめんねスバルくん。君とブラザーになりたかったのは本当なんだ。でもそれ以上に僕は両親が憎い」

 

憂いを帯びた表情で白い電波体が言う。間違いない。こっちがツカサくんだ。

 

「ぜんぜん理解できないよ!」

 

「君に理解してくれとは言わないよ。もう決めたことなんだ」

 

「僕は理解したい。君のこと、もっと理解したいよ。これから、もっと仲良くなれると思っていたのに…。こんなの間違ってる」

 

もう話すことなど何もないと言わんばかりに2人はその場に浮き上がると後ろに聳え立つように立っている電波塔の中へと消えていく。

 

ビジライザーをかけてみると電波塔のアンテナから、ヤシブタウンのときのように+と−の電子の粒子が拡散されるように飛んでいくのが見える。

あの電波塔もすでにボロボロ。廃棄物に違いないだろうが、無理矢理にでも電波塔としての役割は果たせるらしい。

 

『やべえぞスバル。あの電波塔を使ってあの妙な電気を拡散するのが奴らの狙いだ』

 

「くっ、急ごう!」

 

ウェーブホールから電波変換、電波塔の電脳へ入ろうとしたときトランサーが鳴り響く。

 

こんなときに…。

 

『あ、スバルくん!? た、大変よ…あ、ちょっと…』

 

電話をかけてきたのはミソラちゃん。

大きく向こう側で機械が揺れる音が響く。

 

『ようやく出やがったなこのスカポンタン!!』

 

気迫のある声に思わず息を呑む。この声は黒夜くんだろうか。いつものようなふざけてる声ではなく、どこか焦った様子がうかがえる。僕が勝手に行動を起こしたことを起こっているだろうか。

 

いや、今はそれどころじゃない。

早く電波塔を止めないと。

 

この声音は、どう考えても御立腹だろう。

 

『状況は最悪だ。ジェミニのやろう電波塔を使いやがったな!どこもかしこも喧嘩だらけ! 終いにゃ興奮した警察が銃を撃つなんてこともあり得る。最悪、死人が出るぞ』

 

こちらの情報を既に掴んでいるあたり、流石黒夜くん。小さくギターの音とバスターの音が聞こえるのは、彼らが戦闘中だからに他ならない。

 

「そんな!?」

 

『いいか、よく聞け。俺たちができる範囲で電波を抑える。ジェミニはお前がなんとかしろ。ツカサの野郎を一回ブン殴って、ついでにジェミニを氷漬けにして帰ってこい』

 

「っ…うん! 任せて!」

 

再度ガサゴソと何か擦れるような音。

 

『とにかーく!無理だけはしちゃダメだけど、勝たないわけにもいかないね! 任せたよ、スバルくん。次のトランサーに行くよ、黒夜くん!』

 

主導権を取り戻したミソラちゃんの声を最後に電話は切れた。

 

無理はしちゃいけない。

しかし、勝たないわけにもいかない。

 

言葉の中にそれとなく圧力があるように思えてならない。

 

…大丈夫、必ず止めてみせる。

 

◆ ◆ ◆

 

廃棄物の電脳の中は、やはり荒れていた。ただでさえ廃棄物で溢れていただろう電脳の中で縦横無尽に荒らしていくブルドーザー。ブルドーザーに巻き込まれて埋もれてしまったデンパくんを探しながら先へ進む。

 

だけど、いつもの例のごとくセキュリティーウォールに阻まれた。このセキュリティーウォールを突破するためにはどうしても仲間のデンパくんたちを探さなければいけないらしかった。

その奥にいるジェミニ・スパークの姿が見える。こちらを気にするそぶりなど見せずにジェミニ・スパークが機械に+と−の電子を放っている。

 

その姿が、とても気に入らなかった。

 

「ロック!」

 

『おうよッ!』

 

レスキュソナーでデンパくんが埋まっていそうなある程度の位置を把握し、ウォーロックにバトルカードをプレデーション。

 

「バトルカード、タイフーンダンス!! ウィンディアタック!!」

 

タイフーンダンスで廃棄物を撒き散らす。地面を抉るほどの回転とその遠心力を用いて放たれるカマイタチに似た突風。宙に浮いたデンパくんたちを確認して、アイスペガサスに変身し、一斉に救出する。

 

そのままデンパくんたちを仲間たちの元へと運び、セキュリティーウォールを解除してもらう。

 

ジェミニ・スパークの元に辿り着くのは一瞬だった。

 

「そこまでだよ、ツカサくん!」

 

「スバルくん…」

 

悲しげな表情で白いジェミニ・スパークが僕を見る。ツカサくん自身、自分が何をしているのか理解している。自分がやっていることによって、不幸になる人が出るかもしれない。

 

「だめだよ。こんなこと、君がやっちゃいけないんだ」

 

だからこそ、ツカサくんがこんなことをすることが気に入らなかった。

ロックバスターを構えて、ジェミニ・スパークを睨む。黒いジェミニ・スパークと白いジェミニ・スパーク。1対2で戦わなければいけないことは大きい。

 

だけど、僕は負けるわけにはいかない。

 

僕を信じて任せてくれた黒夜くんやミソラちゃんたちの分まで、戦わなければならない。

 

「僕は…僕のことを捨てた親が憎い。消えないんだ。どれだけ生活しても、どれだけ時が経とうとも、この憎しみは絶対に」

 

その気持ちがわかるとは、口が裂けても言えない。言ってはいけない。

僕がバスターを構えたように白いジェミニ・スパークも腕の形状を剣に変化させる。バチバチと弾ける音ともに伸びたその剣は、おそらく電気を帯びているのだろう。

 

天然のエレキソードってことか。

 

「その通りだツカサ。俺たちは許しちゃいけねえ。必ず復讐を成し遂げる。そのために、お前の持つアンドロメダの鍵が必要だ」

 

「僕は決めたんだ。復讐のためなら、君ですら利用してみせるって。立ちはだかるなら、容赦はしないッ!!」

 

君が決めたように、僕も決めた。

 

「僕も決めたよ、ツカサくん」

 

「いい加減、お喋りはやめようぜッ!!」

 

白いジェミニ・スパークの腕がロケットのように飛ばされてくるのをシールドで防ぐ。だが、次の瞬間、とてつもない殺気を感じて感覚を頼りに大きく右へジャンプする。

 

空中で身体をよじって元いた場所を振り返ってみれば、エレキソードを振り切った状態で黒いジェミニ・スパークが立っている。さらに追撃せんと、白いジェミニ・スパークもジャンプした僕に向かってエレキソードを振り上げる。

 

「空中だからといって回避できないわけじゃない!」

 

エレキソードをアイスペガサスの翼をはためかせて回避し、バスターを連射する。

 

だが、2人とも雷のシールドで阻むためダメージは入らない。

 

あのシールドを破れるだけの威力を出すには、力を溜めるしかない。

 

地上に降りれば、2人のコンビネーションでねじ伏せられてしまう。2人の息はぴったり。無言であれだけの動きをされてはたまったものではない。

 

ならば、空中から一方的に攻め続けるしかない。

 

チャージショットを溜めつつ、2人から飛ばされてくる腕を回避し、気を窺う。

 

「僕は、君とブラザーになりたいんだッ!!」

 

「そんな人と人の薄っぺらい関係!」

 

「ブラザーバンドは薄っぺらい関係なんかじゃない!!」

 

アイスショットは相手を凍らせる効果がついている。当たらなくても相手の動きを阻害することができる。ジェミニ・スパークが避けたとしてもその後ろには操られていた機械がある。

 

あれさえ、壊してしまえば、電波塔の役割を果たせなくなって各地で起こっている騒動も終息する。

ジェミニ・スパークが2人同時に腕をこちらは飛ばしてきたのをしっかりと避けて、バスターに溜められていた氷の礫を最大出力で発射する。

 

何度も僕の戦いを見ているジェミニ・スパークは、動きを止める効果があるのを知っている。予想通り、2人とも左に避け、後ろにあった電波塔の装置が文字通り氷の氷像と化し、動きを止める。

 

さらに2枚のバトルカードをウォーロックにプレデーションした、その時だった。

 

轟音。

大地を揺らすような轟音の後、気がつけば僕は落下していた。身体は…動かない。

 

何が起きたのか、理解はできる。雷に撃たれたのだ。避けたはずのジェミニ・スパークの腕が、戻ってくる時、二つの掌から強力な雷が僕の背中に直撃した。

 

ジェミニ・スパークが動揺しなかったことが理解できなかった。だが、地面に衝突してようやく理解する。

 

誘われたのはこちらだったのだと。

 

肩から腕をぴったりとくっつけて空へと伸ばしている2人の身体から、今まで見たことがない出力の電気が弾けているのが見える。おそらく、ああして2人で身体をくっつけることで起動するタイプ。

 

「ペチャクチャ喚いた挙句、こんなガラクタ壊したくらいでいい気になりやがって、バカが」

 

「アンドロメダの鍵さえ手に入れば、こんなもの必要ないんだよスバルくん」

 

飛ばした腕が2人の元へと戻っていき、何事もなかったかのようにくっつく。ゆっくりと近寄ってくる2人。黒いジェミニ・スパークは嘲笑うように口元を歪め、白いジェミニ・スパークは倒れ臥す僕に向かってエレキソードを振り上げる。

 

「教えてよ、ツカサくん」

 

「なんだい?」

 

エレキソードをふりおろそうとした白いジェミニ・スパークの動きが、止まる。

 

「どうして裏切るはずの僕に秘密を話したの?」

 

「……」

 

「裏切るつもりなんて、なかったんでしょ。本当の最初は、ブラザーになりたかったんだよね」

 

「……」

 

「沈黙は肯定の証だ…黒夜くんがそう言ってた。だったら、尚更、僕は今ここで引き下がるわけにはいかない。諦めないよ、ツカサくん」

 

僕を見つめる白いジェミニ・スパーク。

 

だが、この瞬間、わかってしまった。

 

瞳を閉じる。

 

「やれ、ツカサ」

 

頭上にあげられていたエレキソードが勢い良く振り下ろされた。

 

 

 

 

 

 

「何をしている…ツカサ」

 

だが、止まった。

 

「どうして…どうして君はッ!!」

 

目を見た途端、わかってしまった。ツカサくんは、まだ僕を斬る覚悟ができていない。彼は僕を斬ることができない。

 

復讐ってなんだろう。

 

「どうして? 決まってるじゃないか。僕は、君のブラザーになる男だ」

 

ツカサくんの母親に対する復讐は一体なんなんだろう。ツカサくんが僕に打ち明けてから、ずっと考えていた。

 

復讐なんて決していいことじゃない。なんとなくそれはわかる。特に、見ず知らずの誰かを害することは復讐にならない。なぜなら、関係ないから。

 

だからこそ、今君がしている復讐の形が違うと思った。

 

「ツカサくん。君が両親を憎むことを僕は止めない」

 

君の気持ちは君だけのものだ。

 

「僕は…」

 

「ミソラちゃんの時もそうだった。憎い人はこの世界の全ての人じゃないんだ。誰だって、必ず側で笑ってくれる人がいる。最初は僕だって1人だった。けど、今では側で笑ってくれるみんながいる」

 

こんな僕に、黒夜くんや委員長、ゴンタ、キザマロ…みんなが寄り添ってくれた。何度も突っぱねたのに、鬱陶しいくらいつきまとってきた。

 

いつの間にか、僕は笑っていた。

 

ブラザーなんて薄っぺらい存在だと思っていた僕が、ブラザーバンドに頼るようになっていった。

 

「僕は…僕にはッ!!」

 

確かに、学校に行くようになってから感じてはいた。ツカサくんが誰かと話をしているところをあまりみないって。黒夜くんと時折話すくらいだろう。

 

ただ君が無口なわけじゃない。

 

言いたいことはわかる。

君にはいないと言うんだろう?

 

「いないなら!!!」

 

「ッ」

 

「さっきから言ってるよ。僕がなるって。両親を憎む君で構わない。君が一歩を踏み出す、その力になるブラザーに!!」

 

麻痺が完全に解けたのを確認し、思いっきり足に力を込めて立ち上がる。頭上には、白いジェミニ・スパークの頭。頭突きの要領で思いっきり頭をぶつけ、悶えつつも翼をはためかせる。

 

使用するのは、雷を直撃する前にあらかじめプレデーションしておいたバトルカード。

 

「行かせるか!!」

 

黒いジェミニ・スパークがエレキソードを振るうが、ギリギリ僕が空に飛び立つ方が速かった。

 

ダメ押しの一撃にと考えてプレデーションしたはずなのに、なんだかかっこ悪い。

 

だけど、それでいい。

 

螺旋を描き、回転しながら遥か上へと登っていく。

 

「今の僕の全力全開。今こそ君にぶつけるよ、ツカサくんッ!!」

 

狙いは外さない。絶対に外せない。

 

特徴的な魔法陣が、浮かび上がる。

 

全ての力を四肢に込め、大きく全身を仰け反らせる。僕の周りを氷の礫が円を描きながら集まっていく。氷の礫が一斉にジェミニ・スパークの足元に移動し、回り始める。氷の礫の量は、とどまることを知らずに増え続けていく。

 

「バカな、こんなことが!?」

 

脱出をしようと試みているようたが、それは不可能だ。たとえどれだけの電撃をあびせようが、礫を壊そうが、空いた穴わ即座に新しい礫がカバーする。

やがて氷の礫でジェミニ・スパークを完全に包囲し、溜め込んだ全ての力を解放するように左手以外(・・・・)の腕と足を放つ。

 

「マジシャンズ・フリーズッ!!!」

 

途端、世界が変わった。

 

美しくも儚い、白銀の世界。

 

氷の礫と氷の礫が、結合し、突き出すように氷の表情が姿を現し、ジェミニ・スパークを閉じ込める。

 

だが、まだ終わらない。

今回のダメ押しの一撃は二段構え。

 

「うぉぉぉぉぉぉ…」

 

まだだ。

まだ僕の左手が残っている。

 

今こそ、解き放つ時。

 

「メテオライトバレッジッ!!!」

 

流星の如く放たれた強大な青いエネルギー弾。ロックバスターの射出口から放たれたエネルギー弾は、発射された途端に8つほどに分裂し氷像となったジェミニ・スパークの分厚い氷を削る。1つ、2つ、3つと直撃するごとに削られていき、遂にはジェミニ・スパークの上半身の部分だけが氷からあらわになる。

 

「明星黒夜さえ、貴様から遠ざければ…こんなはずではなかった!!」

 

白いジェミニ・スパークはすでに意識が飛んでいるようだが、黒いジェミニ・スパークは未だにどうにか抜け出そうともがいている。しかし、やはり抜け出すことは叶わない。

 

氷を削っても尚、降り注ぐエネルギーの弾が、ジェミニ・スパークの身体を撃ち抜いた。

 

◆ ◆ ◆

 

ジェミニ・スパークの電波変換が解けたとき、そこにはツカサくんの姿だけだった。やはり、ヒカルは電波変換したことによって思いのままに動かせる身体を得たようだ。

目を覚ましたツカサくんの顔は、憑き物が取れたように清々しいものだった。

 

「ヒカルは今、かつてないほどに弱ってる。完全に力を使い果たしたみたい」

 

「そっか」

 

「ありがとうスバルくん。こんな僕に、君を裏切ったはずの僕に、もう一度ブラザーになろうと言ってくれて」

 

ツカサくんに裏切られたとき、正直、疑心暗鬼にはなった。

 

けれど、不思議と僕の心は折れなかった。

 

「その口ぶりじゃ、やっぱりブラザーにはなってくれないんだね」

 

問いかけた言葉にツカサくんは目を閉じて頷く。

 

「うん。今はまだ」

 

「そっか」

 

「僕は、君を裏切った自分自身が許せない」

 

だが、決して悲観的な眼差しをしてはいなかった。僕を裏切ったときの決意をした目とも、また違う。

 

「だから、待っていてほしい。僕が、自分の心と、ヒカルと決着をつけるときまで。それで…決着がついたら、僕からもう一度言わせてほしい」

 

それは願いだった。

 

決意ではない。

 

ツカサは今日という日を忘れることはないだろう。

 

自身が絆を結ぶ相手を裏切ると決意をして尚、斬ることができなかったこの日。

 

裏切って尚、もう一度絆を結ぼうと口にされたこの日。

 

これから彼は何度も揺れ動くだろう。両親を憎み、世界に対して手を挙げることもあるかもしれない。

だが、彼は『だけど、それでも…』と彼は踏みとどまることができるだろう。

 

 

 

 

 

『僕と、ブラザーになってくれませんか…ってね』

 

 

 

いつか本当の親友となる友と絆を結ぶ、その日のために。




「起動しろ、アンドロメダ」

対峙して、恐怖を感じた。明らかに次元の違う存在。敵対したくないとさえ思えてくる。

「これが、今回の一連の事件のラストだ」

「行こう、黒夜くん」

「君が帰ってくるの、待ってるから、ずっと」

重力を無視して全てを紅黒い光が包み込んでいく。宇宙ステーションにあるすべてのノイズが宙に浮かぶ1人の少年の掌、その上の小さな球体へと吸収されていく。

「生き残る、必ず。ここでお別れなんてわけないからな」

黒を彩る瞬く星。地球からは決して見ることのできない小さな星。こうして今流れる紅黒い光も地球から見ることは叶わないのだろう。

次章
FM編最終章『そして流星は流れる』
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