流星のファイナライズ 作:ブラック
この作品が多くの方に楽しんでもらっていたことにお礼申し上げます。
ここから徐々に黒夜くんの謎について触れていきます。
いつか設定集を投稿したいところですが、そこまで書き終わるのは果たしていつになるのか。
いつも誤字報告をくれる皆様、お手数をおかけしております。
スバルが次に向かう場所はアマケンだと予想した俺は、電波変換して移動を開始する。
原作でもそんな流れだったはず。
宇宙ステーションの内容や通信方法の確認だったか。
『天地に聞けばわかるんじゃねえか?』的なウォーロックの考えだったはず。
少なくとも、宇宙ステーションに対して今すぐに行動は起こせない。
その間に俺は俺でやるべきことを済ませないといけない。
ドリームアイランドにある『落下した宇宙ステーションの一部』を天地さんに復旧してもらうとしても今日1日は費やすことになるはずだ。
一瞬のうちにヤシブタウンタウンからアマケンへと到着したタイミングで、バス停に止まっていたバスからスバルが独り言をぶつくさと言いながら降りてくる。
ウォーロックと会話しているのだろうが、側から見たら危ない人だ。
というより電波変換してウェーブロードを通ってきた方が早いしお金もかからない。
トランサーを見つめて俺に気づかずに通り過ぎていく。すれ違いざまに何やら興味深いことを呟いていたので、バレないようにスバルの後ろについて話を聞く。
「黒夜くん…」
『あいつのことは後回しだ。少しだけわかったこともあるが、わかったところでどうしようもねぇ』
「ロック、何か知ってるの?」
『後回しって言っただろうが…』
「わかったこともある、なんて言われたら気になるじゃないか」
『…まあ、ハープも気づいていたみたいだし、いいか』
「ハープも?」
『ハープ・ノートと俺たちが対峙したとき、ハープの野郎は気づいたんだ』
いつになく真面目なウォーロックの声音。
内容が内容だけに、ちょっと興味が湧く。
『明星黒夜が人間じゃないってな』
「!?」
な、なんだってーーー!?
驚愕の事実。
明星黒夜は人間ではなかった!?
「ど、どういうことなのロック!?」
『あぁ、言い方が悪かったな。おそらく、ごっちゃになってるんだろうよ。半分人間、半分ノイズっていったとこか?あいつの生まれや病室なんかが特殊だったのも、サテラポリスのおっさんが毎度ノイズの値が高いってぼやくのも、元凶がノイズだとすりゃ辻褄が合う』
「それじゃあ、黒夜くんが入院したとき、医療機器が使えなかったのは…」
『大方、あいつの身体を作っているノイズが邪魔して、大掛かりな処置はできないんだろうよ。そもそも、もっとはやく気づいてしかるべきだったんだ…あいつがどうやって電波変換しているのかをな』
「どういうこと?」
『考えても見ろ。電波変換ってのは
スバルに口を挟む暇を与えずにウォーロックは矢続きに続ける。
『ハープはFM星人の中でも特別敏感なやつだ。面と向かって話してみりゃあ、ソイツの波長なんて手に取るようにわかる。だからこそ、黒夜の特異性に気づいた』
「黒夜くんの…特異性」
『半身が人間で半身がノイズ。人間でいう臓器ってやつはあるみてえだしな。時折アイツが口にする流星サーバーってやつが、アイツの電波変換に関係しているんだろうぜ。原理はなんとなく予想がつく…ッチ、上手く言葉にできねぇ』
的を得たウォーロックの推測に内心で驚く。
俺の電波変換は正当な電波変換ではない。
ハープに勘づかれていることも、わかっていた。
ノイズ変換とも呼ぶべき、あり得ない変身の仕方。
本来ならば、未来のロックマンがエースプログラムを使って初めて可能になる変身だ。
メテオGの影響下で、それでも戦い続けるための力として与えられたプログラム…それがエースプログラム。
エースプログラムを取り込み、更に限界を超えることで初めてファイナライズができるのだ。
流星のロックマン3のストーリーが消滅したこの世界では、あり得ないはずの変身。
俺の身体は不思議がいっぱい。
なんて魅力的。
神様特典だからそういうものとして認識していた。
しかし自分の身体のことだ。
どうして変身できるかの考察は何となくだができている。
そして、その考察はウォーロックのものとほぼ一致している。
こんなこと話したところで詮無い事だから問題はない。
ただ、ちょっと不安な点もある。
このところ、ブラックエースに変身する度に頭に情報が溢れてくることがある。
まるで流星サーバーから情報が
主にバトルカードの知識が多いが、同時に
神様からの流ロク3の情報はかなり前に全てもらっているのだ。
それこそ裏ボスの情報まで。
だからこそ怖い。
そう。
これではまるで…。
「僕、ブラザーなのに黒夜くんのこと何も知らないのかもしれない」
『…どうだかな。案外、黒夜本人だってわからないことかもしれないぜ?』
「ううん、黒夜くんは何かを隠してる。それはいつも感じているんだ」
おっと…なんだか話の内容が重くなってきたぞ。
そろそろ話に混ざるべきか。
そう思った俺は、走ってきた感じを装ってスバルの肩を2回ほど叩く。
「おっすスバル。そっちも終わったみたいだな」
「うわぁぁぁ!? く、黒夜くん、いつから!?」
「さてね。まぁ、その様子だとルナたちは無事みたいだしジャミンガーは問題なく倒せたようだな」
『ケッ…まるで見てきたような口ぶりじゃねえか』
「ふっ、想像力豊かと言ってほしいな」
ウォーロックの咎めるような言葉をスルリと受け流すと、俺はスバルに情報の共有を始める。
俺のことなんて、今はどうでもいいのだ。
杞憂であるなら、それに越したことはないにもないのだから。
◆ ◆ ◆
要約すると、『宇宙にいる相手とどうやって戦うのか?』というスバルの問いに『天地ならどうせ知ってるんじゃね』というウォーロックの答えがあって、アマケンにやってきたようだ。
さすがウォーロックン、ツンツンしたその態度。
そこに痺れる憧れる。
そうしてやってきましたアマケン。
幾度となく足を運んでいたスバルのおかげもあり、顔パスで天地さんの部屋へと通された。
天地さんは腕を組みながらスバルの話を聞き、やがて小さく溜め息を吐いた。
スバルが危ない橋を渡ろうとしていることを察したようだった。
天地さんからすれば、スバルは守るべき子ども。
それも敬っていた先輩の一人息子だ。
FM王の宣戦布告もあった今、迂闊に手を出させるべき問題ではなくなっているのだ。
「正直なことを言ってしまうとこれは途方もない時間をかけて見つかるかどうか…」
だがそれはスバルが一般人であった場合だ。
今のスバルには力がある。
スターフォースを受け取ったあの日以来、スバルの覚悟は決まっているはずなのだ。
だからこそ俺もできることをするのだ。
「正に広い海の中でたった一粒の小さな真珠を探すようなことですね」
天地さんの台詞に付け足すように言う。
今、まさに天地さんの喉元まで出かけていたであろう台詞。
天地さんが、そう言うことを俺は知っていた・・・・・。
「でも天地さん、海の中に落ちた真珠が特別なシグナルのGPSで繋がったままだったらどうです?」
「黒夜くん?」
首を傾げるスバルを見て、安心させるようにポンと肩を置く。
「何を言って…そうか!!! 落下した宇宙ステーションの一部! あれさえ見つかれば確かに…」
『うんうん』と何度も頷く天地さん。
同じように俺も『うんうん』と頷いておく。
思い出したかのよう天地さんが、自分のデスクの引き出しを片っ端から開け始め、何かを探し始める。
やがて見つかったのは一枚の記事。
新聞の一部を切り取って、保管していたようだ。
見出しには《宇宙ステーションきずな、一部が落下か》という見出しともに詳細な文章が記されていた。
「ダイゴ先輩の事故の後、宇宙ステーションの一部が地球へ落下したことは知っているね?」
「もちろんです。父さんが乗ってたって聞いたら居ても立っても居られなくて…」
「そう、その一部だ。もしも、万が一、今でも機能が生きているのだとすれば宇宙のどこかにある宇宙ステーションと通信して位置を割り出すことができるかもしれない」
「本当!?」
「あくまでも一つの可能性だけどね。それでもすぐに思い浮かぶものでこれよりも確実なものはない。落下宇宙ステーションの一部を知っているのは今ではただ1人。当時の僕たちの上司でFMプラネットとのブラザーバンド計画の最高責任者だった人だ」
興奮していた天地さんの言葉が急に萎む。
大事なことを思い出したかのように勢いを失くす天地さんとは裏腹にスバルの興奮は冷めやまない。
「その人は今どこに!?」
今すぐにでも飛び出していきそうな様子で、天地さんを急かすように食ってかかる。
だが、天地さんの口調は悲壮さを帯びていた。
「すまない、今となっては音信不通なんだ。ある日を境に事故に関する全ての情報を持ったままNAXAからいなくなってしまったんだ」
「そんな…」
スバルからすれば藁にも縋る思いだったはず。
やっと掴めた手がかりが遠のく感覚があるのだろう。
伸ばされた手が力無く落ちる。
「この近所で見たという噂も聞いたことがあるけど眉唾ものさ。上品な老紳士だったけど、この辺りはそう言う老人も多いからね」
「この近所で老紳士…」
「スバルくんの気持ちは痛いほどわかる。NAXAも宇宙宇宙ステーションの件はもう動き出しているはずだし、ここは任せるしかないよ」
少し落ち込んだスバルを慰めながら俺たちは天地さんの部屋を後にする。
落ち込んではいるものの、諦めるつもりなど到底ないのだろう。
『老紳士』と何度も呟きながら顎に指をあてて考え込んでいる。
この様子ならば、そのうち答えに辿り着くだろう。
「スバル、宇宙ステーションについては任せても大丈夫か?」
「え? うん、大丈夫だけど、黒夜くんは?」
「少し…いや、どうしてもやらなきゃいけないことがある」
「…それを教えてはくれないの?」
「教えてもいいが、多分言ってもわからないぞ?」
『むん』とむくれているスバルに苦笑し、『偶には話してもいいか』と割り切って用件を伝える。
「誰、その人???」
案の定、スバルは首を傾げた。
「あぁ、そうだ。ハードトロピカルはなぜかBIGWAVEに売ってるから先に買っといてな」
またしてもスバルは首を傾げるのだった。
◆ ◆ ◆
サテラポリス。
電波空間を取り締まる警察のような組織は、非常事態に大忙しであった。
主な仕事は電波空間で悪さをするウィルスハンティング。
そして人為的に引き起こされる時間なんかも解決しなければならない。
『余は、FMプラネット王。地球は余の手によって滅ぼすことにした。誇りに思うが良い。貴様たち地球人は王たる余によって滅ぼされるのだかーーーー』
つい先刻のこのような宣戦布告とも取れる放送が地球全土に流れてからは、孫の手も借りたいほどの多忙を極めていた。
NAXAと連携をとり事にあたっているが、展開があまりに早すぎた。
こちらはようやく、ここ最近の一連の事件に宇宙人が関与していると報告を受けたばかりなのだ。
ここにきての宣戦布告。
戦える準備などできているはずがない。
どの部門の職員も対応に追われて駆け回っている。
そんな大慌てをしているサテラポリスの職員を眺めながら、のんびりとお茶を飲む老婆が一人。
サテラポリスでは知らぬ人はいない、超有名人である。
『ズズー』っとお茶を飲むその姿は正に、田舎のおばあちゃんそのもの。
だが、着ている服装は田舎とは無縁な研究用の白衣。
なんともアンバランスな老婆。
しかし誰も疑問に思うことはなく、忙しなく業務に追われている。
そんなおばあちゃんに、一人のサテラポリス職員が声をかける。
「研究部B棟、電波遮断室にて博士をお待ちのお客様がお見えです。どうやら子どものようですが…いかがなさいますか?」
「あぁ〜、ヘイジちゃんから聞いてるわ。すぐに行くと伝えて」
『よっこらせ』と椅子から立ち上がると痛がりながら腰を叩く。
そのまま大きく伸びをすると老齢の女性…ヨイリー博士はこれから会う事になるであろう不思議な来訪者を想像して、柔和な笑みを浮かべた。