流星のファイナライズ   作:ブラック

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毎度ながら誤字報告ありがとうございます。
流星のロックマンパーフェクトコレクションまで後4日ですね。
楽しみすぎる。

3当時の物ですが、オフィシャルコンプリートワークスも読むと面白いです。黒夜の母親は、星川あかねの初期デザインを意識しています。

次の更新は日曜日の予定です。



科学者との話し合い

五陽田警部との交換条件を成立させた俺は、サテラポリス本部の研究棟へと案内された。

 

ゲームやアニメだとそんな詳細描かれないからわからなかったけれど、サテラポリスって広いんだね。

 

B棟ってどこだよ。

 

案内なかったら絶対にわからなかったぞ。

 

数分の間待っていると柔らかな笑みを浮かべた老婆が室内へと入ってきた。

 

視線が交差する。

 

見た目はヨボヨボの老婆でも、とてつもない頭脳を持っていることを俺は知っている。

 

流星のロックマン3のストーリーがなくなった今、何を研究しているかは知らない。それでもサテラポリスの本部にはいるだろうと踏んでいたのだ。

 

「はじめまして。あなたが黒夜ちゃんね。私はヨイリー。みんなからヨイリー博士と呼ばれているわ。一応、サテラポリス科学部門の統括をしているわ」

 

「突然の申し出を受けてくださり感謝しております。はじめまして、明星黒夜です」

 

五陽田警部との交換条件。

それは、今回のFM王宣戦布告の背景と明星黒夜の秘密を教えることを条件としてサテラポリス本部にいるであろう…サテラポリス科学部門の統括研究者ヨイリー博士と面談をさせてもらうことにある。

 

「実はあなたのことはヘイジちゃんからよく聞いていたの。電波異常児でノイズ異常を患った少年を目にかけているってね」

 

「…五陽田警部には申し訳ないことをしたと思っています」

 

「ごめんなさいね。あなたを責めるつもりで言ったわけじゃないのよ」

 

五陽田警部には、初めてZ波の測定をされたときから何かと気にかけてもらっていた。

それこそ、先刻秘密を話した時には呆然としていたものの、最後には『お母さんを悲しませるんじゃないぞ』と嗜められてしまった。

 

秘密を話したとは言っても、単に俺がブラックエースであることだけ。

別に流星サーバーや転生うんぬんについては触れていない。

 

最後には『いかん、直ちに報告書を修正しなければっ!!!』といつもの調子に戻り爆走して帰っていった。

 

ロックマンについては知らないと言った。

本当に申し訳ない…。

正体を話せばスバルが動きづらくなりそうだからね。

 

ある意味で、俺の今後は五陽田警部に握られた。

 

3の世界よろしく、トランスコードで管理される日も近いかも知れない。

 

「本題に入る前に、黒夜ちゃんには確認しておかないとね」

 

「なんでしょうか」

 

ヨイリー博士の急な話題転換。

柔らかい瞳の奥に見える、探究心の光り。

 

こちらを見る瞳に思わず身構える。

 

「メテオG…いえ、流星サーバーという単語に聞き覚えは?」

 

「!?」

 

ソファーに深く腰掛けていたが、単語を聞いた途端に立ち上がってしまった。

 

ヨイリー博士の表情から柔らかい笑みが消える。

 

「どうしてメテオGを」

 

「やっぱり、そういうことなのね?」

 

本来の時系列で言うとサテラポリス本部が富士山頂に新設されるのは『流星のロックマン1』が終わった後からだ。

サテライトの賢者たちが、FM星の再興のために地球から離れる。

その過程でNAXAがWAXAへと新しくなり、富士山頂に移設される。

同時にサテラポリス本部がWAXA内に併設されることになるのだ。

 

何よりも重要なことは、サテライトサーバーの運用開始もかなり後なのだ。電波変換を傍受するシステムに至ってはハンターVGが主流となる『流星のロックマン3』になってからだ。

 

それもサテラポリスに通じるだけ。

 

どこからどこにアクセスしているかなど、わかるはずがない。

 

ヨイリー博士の表情は変わらない。

じっと俺を見つめたまま、ゆっくりと口を開いた。

 

「電波社会が普及してから長い。研究をしているうちに、私はノイズに塗れたあるものを発見した」

 

そうだ。

ブラザーバンド計画によって他惑星に電波体という生命体がいると知れ渡った今の時期こそ、ヨイリー博士の計画の始まり。

 

「それは天体とも呼べず、星とも呼べない。隕石ですらない。宇宙空間のノイズやデータなんかを集めてできた一つの集合体。いわば宇宙に散らばる電波のゴミ集積所。本来なら気にも留める必要がないのだけれど…」

 

結論に至るまでが、あまりにも早すぎる。

ゲームだと3に入った時点で急にノイズが溢れていたように思えたが、『流星のロックマン1』の時点で研究されていたのか。

 

「将来、地球への脅威となる恐れがあった。サテラポリス上層部の一握りとNAXA上層部でメテオGと呼称されることになった。電波社会が普及したせいではあるけれど、まさか宇宙のどこかで不要物が集積されて害を成すことになるなんて誰も考えなかったでしょうね」

 

冷や汗をかきながら、ヨイリー博士の出方を伺う。

ヨイリー博士は焦るような俺を見透かしているかのように、ただじっとこちらを見つめながら話を進める。

 

「研究をしているうちに私たちは、その中枢につながるたった一つのサーバーの入り口を発見した」

 

ん?

一つ?

 

2つじゃなくて?

 

「私たちはそのサーバーをメテオGから因んで、流星サーバーと名付けた。もしかすると将来、このサーバーが地球を救う鍵になるかもしれないと踏んで研究が始まった」

 

大きく深呼吸をする。

この世界に生まれて、ここまで緊張したことはなかった。

 

明星黒夜という人間の隠された秘密が他者によって暴かれていく。

それも、初対面の老婆にだ。

 

「だけれど、ある日を境に流星サーバーはその入り口を閉じた。NAXAで観測することはできても接続ができない。まるで何かのセキュリティがかかったように」

 

「…それが、5年前ですね」

 

「なにより、地球の脅威となるような進路ではなくなったと演算システムが導き出した」

 

そんな馬鹿な。

ディーラーのちょっかい以前に、メテオGはゆっくりと地球へ向かっていた?

 

そもそも5年前…あの日よりもずっと前からNAXAはメテオGを観測し続けていた?

 

FM星のブラザーバンド計画も始まったばかりのあの時から?

 

ヨイリー博士の表情に再び優しさが戻る。

 

「ヘイジちゃんが『異常電波が現れた!』なんて大騒ぎしていたのが、つい昨日のことのようだわ」

 

「本当にこれから先、五陽田警部には頭が上がらないかもしれません」

 

ヨイリー博士が麦茶の入ったコップに手を伸ばす。

俺は冷たい麦茶を一気に煽った。

 

カランと氷の音が鳴る。

 

乾いた喉に麦茶が染み渡る。

 

「あら、会話が振り出しに戻っちゃったわね。ヘイジちゃんのおかげで、ビビッときた私は、こうして貴方を見つけることができた」

 

「五陽田警部にはいつもいつも気にかけていただきましたからね」

 

「さぁ、長くなったけれど聞かせてちょうだい。メテオGに接続することができる、あなたのことを」

 

間違いなくこの人は天才だ。

メテオGを観測し、流星サーバーを見つけ出した。

別の世界ではハンターVGや電波変換感知システム、そしてエースプログラム。

その他もろもろを開発した大天才。

 

「ヨイリー博士のお察しの通り、俺は今までメテオGへと繋がる流星サーバーに接続して電波変換することでFM星人と戦ってきました」

 

差し当たってぼかしながらにはなるが、話せることは全て話そう。

 

「先ほどお話ししてくださった大半のことは理解しています。メテオGとの衝突による未曾有の大災害、ノイズショックのことも…」

 

全てはスバルの父…大吾さんを生還させる為に。

 

◆ ◆ ◆

 

不思議な来訪者が去っていた特殊な部屋で、ヨイリーは暗い表情でお茶を啜る。

 

電波障害児。

それは、電波社会が普及してから暫く経ってから異常を持って生まれてきた子どもたちの総称。

特殊な装置を介さずに『電波の世界が見える』、『電子危機の発する極小の音を感知してしまう』など症状は多岐にわたる。

 

特に稀なのが、『ノイズ』に関すること。

 

医療機器や電子危機。

触れたり身体に使用をすると機械の方がエラーを起こしてしまう。

 

生体電流…生体電気とも呼ぶが、人間の身体には神経の伝達や心臓の鼓動など人間の活動に不可欠な電気信号を流している。

同時にとんでもなく微弱な電磁波を形成している。

 

この場所に何らかの原因で微弱なノイズが発生しているのだとヨイリーは論文で見たことがある。

 

しかし、ノイズの電波障害児は人間の生活に必要な電気信号が正常ではない為、生活への負担が大きいとも聞いたことがある。

 

ヨイリーが見た限り、黒夜に生活に不便な面は感じられない。

健康体の人間と何ら変わらないようにも見える。

 

兎にも角にも、話し合いは終わった。

ヨイリーは思考を切り替える。

 

「それにしてもまったく、世も末に感じちゃう」

 

今の世界の技術では、彼らに頼るしかないということに落胆をした。

だが、同時に現状の唯一の希望でもあることをヨイリーは正しく理解していた。

 

『星川大吾さんについてです』

 

あり得ない仮説に目を見開いた。

どうしてそこまで知っているのか。

なぜ確信しているのか。

 

あり得ない…そう判断するのは容易い。

だが、信じられるだけの言葉と現状、そして可能性が溢れていた。

 

当初から協力をしないなどという考えは微塵にもなかった。

ヨイリーが、サテラポリスとして主だって動くことはできない。

 

ただでさえ大混乱中の最中なのだ。

いま彼のことを優先して自分が動いてしまえば、彼の正体をサテラポリス全体にバラすことに繋がってしまう。

 

今回の事件に至っては、彼らが解決してくれれば全てが丸く収まる。

 

彼の話を聞いてヨイリーは、深く思った。

 

「NAXAとサテラポリスの本部統一化…WAXAの発案が、後5年、いいえ2年でも早ければ…」

 

この発案はまだ議題に上がったばかり。

無いものを強請っても仕方がないことは、理解している。

 

ヨイリーは、天才が故に聞いただけで仮説を立ててしまった。

明星黒夜の体質、即ち、どうのようにしてFM星人と戦えるだけの力を有しているのか。

 

人間が生身でメテオGに接続する。

 

不可能だ。

 

生身でなど、絶対に不可能だ。

万に一つ、接続ができたとして一瞬にして身体はノイズにまみれて消えていくだろう。

 

明星黒夜、彼はできている。

それも継続して維持ができている。

ノイズの力を自分の物として扱えている。

 

そこで先ほど考えていた電波障害児が出てくる。

 

完全に理解したわけではない。

だが、この仮説は十中八九間違いではない。

 

だとすれば…後何年…。

 

「ダメね。子どもにばかり、頼ってるようじゃ」

 

『ふぅ』と溜息を吐いて、ヨイリーは残っているお茶を一気に飲み干す。

 

湯呑みを『コン』と置くとトランサーを確認する。

そして連絡先を確認すると、そのまま電話をかける。

 

「こんばんは。私はサテラポリス科学部門のヨイリーというのだけれど…」

 

希望を少しでも手繰り寄せる為、ヨイリーは受話器の相手と打ち合わせを始めた。

 

◆ ◆ ◆

 

『なんにしてもノイズの影響は計り知れないのだから、メテオGにアクセスすることは最小限に』

 

一通り全てのことを話し合え、ヨイリー博士からありがたい助言をいただいて会談は終了となった。

 

ヨイリー博士が俺に協力する為の条件は3つ。

 

①これから毎回、定期検診等の検査は病院ではなくサテラポリス本部にてヨイリー博士立ち会いのもとに行い、研究にも協力すること。

 

②メテオGの異変を分かった際には必ず連絡

 

③無茶はしないこと。

 

メテオGはノイズが高濃度で凝縮されたもの。

サーバー内にはノイズの結晶クリムゾンが飛び回る。

本来ならば害こそあっても利は限りなくない。

 

そして何よりも俺が一番知っている。

 

すでにメテオGの脅威が取り除かれていることは、先ほどの会話で確信が持てた。

やはり今を生きるこの世界において、『流星のロックマン3』のストーリーは瓦解しているようだった。

 

メテオGが地球の軌道に乗ることも、第三者の悪意ある手によってコントロールされることも起こり得ないのだろう。

 

ただ、心配なのは大吾さんの生存だ。

 

原作では生きていた。

流星のロックマン1でのケフェウス王からの死刑宣告。

ウォーロックと共謀してチーム全員を電波体にし、宇宙を彷徨うことになった。

 

その果てに辿り着いたのが、メテオGだった。

地球への落下を一人で押し留めていた真の英雄。

 

その流れがなくなったのだ。

 

『流星のロックマン2』に現れるとは考えにくい。

あの物語はムー大陸の話であって、大吾さんが絡む要素はない。

 

ならば、やはり今回のFM星の事件にこそ関わっていると見るべきだ。

 

「帰ってきてくれないとスバルが救われないからさ」

 

溜め息を吐いて大きく伸びをする。

 

これから先の展開でわからないことは、大吾さん関連のみ。

ヨイリー博士の協力もとりつけて、やれるべき対策は取った。

 

『大吾ちゃんが生きている!?』などと口をポカーンと開けていた姿は面白かった。つい先刻まで、見透かしているような瞳で問いかけてきた天才と同一人物とは思えなかったほど。

 

そういえば、あれからトランサーを確認していなかったが、スバルは落下した宇宙ステーションの一部を見つけられただろうか。

 

そろそろ見つけてBIGウェーブで酒でも買っている頃だろう。

未成年だけど。

 

ミソラちゃんも目は覚めただろうか。

原作同様、ミソラちゃんは地球に残ってもらう他ない。

 

危険に晒すわけにもいかないし、みんなを守る為に一人は地球に残るべきだ。

 

空を見上げる。

 

通常の人間では捉えられない電波の世界。

空へと続くウェーブロード。そこでは電波体がせっせと働いている。

 

どこまでも続いているようにも見える電波の世界。

 

だが、宇宙ステーションへと続く線はまだ見えなかった。

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