流星のファイナライズ 作:ブラック
多分これくらいのペースでの更新だと思います!
ドリームアイランドの近辺の海上から2つの光が天へと昇っていく。
先頭をいくのは青い光。
次いで、後ろから紅い光が追っていく。
地上にいる人間から見えた者はいないかもしれない。
それでも、人知れず彼らは進んでいく。
空を飛び越え、星が煌めく宇宙へと躍り出る。
目指す先は、打ち上げられた宇宙ステーション。
星河大吾が搭乗していた宇宙ステーション『きずな』である。
◆ ◆ ◆
「やってきました。宇宙です! おっと、ウェーブホールにつながるところの右側、HPメモリだから忘れずにとっとけスバ…え? オープンロック? ほらよ」
「テンション高くない…黒夜くん」
『なんで来たこともねえ場所のミステリーウェーブ知ってんだ…ケッ、今更か』
はっはっは。
当たり前だけど宇宙なんて来たことないからね。
前世では漸く、高額なお金を払って宇宙旅行に行くというビジネスが始まったばかりだった。一学生だった自分に払えるわけがない。
この世界でも、同じような価値観だ。
どれだけ高度に文明が発達しようが、お金が掛かるものは相変わらず掛かるのだ。
なんとも世知辛い。
HPメモリをとってもらい、スバルを強化してから宇宙ステーションへと降りたつ。
「ここで父さんが…」
とうとう手に入れた父親の足掛かり。
スバルが感傷に浸るのも無理はない。
どうやら、ここはサービスモジュールと呼ばれる場所のようだ。
このサービスモジュールでは人間が宇宙で生活するに当たり、必要となる物を供給する設備が整っている。
本来ならもっとスバルを感傷に浸らせてあげたいが、事態は一刻を争う。
そろそろ現実に引き戻さないといけない。
差し当たっては、恐らくロックがかかっているであろう扉の解除が優先。
宇宙ステーションの内部は命に直結するものが多い。
自制心、大事。
勝手に触れない、弄らない。
というのも、俺が触ってぶっ壊れでもしたらたまったものではない。
メインシステムが落ちて、ドリームアイランドの地下に隠された宇宙ステーションの一部とのアクセスラインが切れたら一貫の終わりだ。
サービスモジュールが棺桶になるなど、想像したくもない。
扉の電脳には奴らがいるだろうから、そこだけは干渉することにするが、コンソールを動かすのはスバルの役割だ。
「スバル、悪いけど俺は触れないからコンソールを操作してもらえない?」
「あ、うん。やってみる」
スバルがコンソールを操作する。
ボタンを押す度に『ピコピコ』と電子的な音が響く。
しかし、どうやっても最後はエラーを吐き出している。
幸いなことにメインシステムが生きており、この空間には空気が残っている。だが、コンソールを操作しようにもロックが掛かっており受け付けない状態らしい。
左隣にある扉を開こうにも、うんともすんとも言わない。
「やっぱ、この扉からサービスモジュールの電脳にとんで、こじ開ける必要がありそうだな」
「うん。電脳にとぶ為にも、まずはウェーブホールを探そう」
探索に移る。
とはいっても、前述の通り俺は機材に触れない。
探索に於いて致命的すぎる。
せめてぶっ壊していいものであれば…。
ノイズの恩恵って戦闘面以外何もないのでは…。
「赤の周波数?」
スバルが調べていた左の扉を調べていると、扉の横の小さなモニターが光っている。
俺はスバルの後ろからそのモニターを見る。
『赤の周波数』
どうやら何かの暗証番号が必要らしい。
なんでこんな脱出ゲームみたいなことになってんのさ。
いや、この本来この世界ってゲームなんだけどさ…。
「どういうことだろう…」
腕を組んで考えこむスバルとウォーロック。
ウォーロックに至っては口を開けて呆けている。
ウォーロックの野郎、考えることを辞めたな。
時間が惜しい。
申し訳ないが、ここはすっ飛ばすことにする。
ゲームではAボタンを押しまくれば、すぐに見つかるだろう。
しかしここは現実だ。
手間取れば、それだけ敵の迎撃準備期間が伸びる。
「…2183KHz」
「へ?」
「いいから。オープンマンのカードは持ってるな? 2183って入力してみ」
『オーーープン!!』と一瞬だけナビカードのオープンマンが現れると軽快な音楽が鳴り、扉が開く。
「えぇ…」
「赤い周波数っていったら、世の中大体2183。これ次の確認テストに出るから覚えとけ」
スバルとウォーロックのジト目が突き刺さる。
とにかく無事解決だ。
…とその前に。
「スバル、さっきの部屋のコンソールを背にして正面の方角! エアボンベの辺りで俺のHPメモリセンサーが反応した!今すぐにとりに行きたまえ!」
「……」
『……』
無言が辛い。
だがそれでも、スバルのHPは超重要だ。
見逃すわけにはいかない。
そうしてスバルにHPメモリを取らせる。
扉が開いた先の空間は、然程広くはなかった。
台形を横に倒したような形をした空間に宇宙服と搭乗員用のロッカー。
「見ろよスバル! 本物の宇宙服だぜ!」
「当たり前だよ。ここは宇宙なんだよ?」
スバルの冷静なツッコミが突き刺さる。
意外や意外。
実は機材が何も置かれていないこんな場所にウェーブホールは存在している。
俺には関係ないが、スバルはウェーブホールがないと電波変換ができない。
現実世界と電波世界の狭間に存在する渦…それがウェーブホールだ。
「電波変換! 星河スバル、オン・エア!」
トランサーを掲げるとウォーロックがスバルの背後に飛び出てくる。
光に包まれたかと思えば、スバルの姿は既にロックマンへと変わっていた。
そのままウェーブロードに乗っかると滑るように先ほどまでいたコンソールの横の扉のウェーブロードまで移動する。
道中のボルテックアイ1は俺がちゃっかり取っておいた。
流星サーバーさんがあるから使わないけど。
コンソールの横の扉まで辿り着くと扉の上には小さな電脳の入り口が渦を巻いて出ているのが見える。
あそこに入っていくことで、この扉を解除することができる。
戦いは逃れられない。
だが、スバルも覚悟はできている。
アイコンタクトで確認をし、そのまま電脳空間へと飛び込む。
飛び込んだ先は、四角い足場だった。
電脳空間の大きさはそれなりのものらしく、一番奥まで見通すことはできない。
途端、ロックマンの腕と一体化しているウォーロックが小さく唸る。
無論、俺も感じ取っている。
『何かヤバい空気を感じる…』
「あぁ、いるな」
既に相対するのは3回目だ。
何となく奴らの気配は感じることができる。
『よくよく考えてみりゃ、この場所は敵の本拠地。何もいない方がおかしいってもんか』
ウォーロックの言う通り。
いない方がおかしい。
既に何度もFM星人たちを返り討ちにしているのだ。FM星に乗り込む算段がついていると仮定すれば、対策をして当然だ。
それにしても、もう一度復活させてもらえたのか。
FM王ケフェウスも懐が深いようで。
「やばいって?」
「多分、FM星人がいる」
『相変わらず、陰湿な気配がビンビン伝わってきやがる』
「気を抜かずに行こう、黒夜くん」
『さぁ、行くぜ!』というウォーロックの掛け声と共に、先へ進む。
『Ryusei Server Access』
特徴的な機械音声と共に、視界にバトルカードが現れる。
時折現れる電波ウイルスはエースバスターとスカルアロー3で遠距離から仕留めていく。
同様にロックマンも腕と一体化したウォーロックを黄色いキャノンへと変えて遠距離から攻撃していく。
あれはプラスキャノンか。
ついこの前まで、ただのキャノンを使ってた奴が…。
着実にバトルカードも進歩している。
ロックマン…やるな。
この電脳空間は少し特殊なようで、行く先々に移動パネルが設置されている。
この移動パネルの上を通ると強制的に別の場所へと移動になる。ゲームでは、移動順番をしっかり覚えていかないと辿り着けないように設定されている。
この電脳ではそれ以外に大したギミックはない。
スバルに指示を出して先へと誘導していく。
あ、ゼニーとプラズマガンは拾っておこ…ってオーラがあるじゃねえか!?
オーラはスバルのフォルダにぶち込ませました。
そんなこんなで明らかに髑髏マークが描かれたマスの手前までやってくる。
流石にボス部屋の前にはアクセスを防ぐファイアーウォールのような見えない壁が設置されているらしく、飛んでの侵入は不可能だった。
目の前にはギザギザとした有刺鉄線を思わせる電流が流れている。
真ん中には小さなモニター。
『セキュリティコード入力画面を起動。モニターに線を引いて星座を完成させてください』
機械的な音声が響く。
モニターに映し出されたのは、十字を少し斜めにしたような8つの星。
「これは白鳥座かな」
「…っていうことは、この先にいるのはキグナス!」
『ケッ! あの臆病野郎が相手じゃあ、楽勝だな』
「油断大敵だよ、ロック」
『コードを確認しました。セキュリティを解除します』
迷いなくモニターの星と星を線で繋ぐと、有刺鉄線を思わせる電流は綺麗になくなった。
アイコンタクトで確認をし、先へと進む。
先ほどの道よりは遥かに大きい電波の足場が広がっていた。
奥には大きなコンソールが設置されている。
『ここまで来るとは大したものだ』
コンソールの前には、白鳥座のFM星人…キグナスの姿。
キグナスはドリームアイランドでもう一度ぶっ飛ばした。
ということは、キグナスだけではなく他のFM星人たちもFM王に復活させられている。
やはり、原作通りメインストーリーに関わった全てのFM星人と戦う必要があるらしい。
『明星黒夜…貴様だけは、借りを返さなければ気が済まん』
「ざけんな! 何回お前たちの顔みなきゃいけねえんだ。いい加減にしろ」
「黒夜くん、ロック、行くよ!」
『ウェーブバトル! ライド•オン!』とスバルの声に合わせて再び流星サーバーに接続をし直す。
『Ryusei Server Access』
特徴的な機械音とともに、バトルカードが供給される。
同時にキグナスは瞬く間にキグナス•ウイングへと姿を変える。
戦況は2vs1。
こちらに利があるのは間違いない。
SPだろうがなんだろうが、ブラックエースとスターフォースの力を手に入れたロックマンの二人を相手取るには力不足だ。
負ける気は微塵もしない。
強いて言うなら、ここからは連戦。
力を温存しなければいけないくらいか。
空中に飛び上がったキグナス•ウィングを追うように、俺も空を翔る。
エースバスターを乱射しながら迫るとキグナス•ウィングはこちらを振り向き、急旋回。
こちらに向かって高速で突進をしかけてくる。
突進を危なげもなく回避して、背後からエースバスターを連続で乱射する。
バスターマックスの連射力は半端じゃない。
ロックマンが十発撃つ間にブラックエースは三十発は撃てる。
どれだけ高速で避けようが、適当に数を撃てば数発は当たる。
背中から直撃を喰らったキグナス•ウィングがよろけたタイミングを見計らって急速接近。
選択したバトルカードはシンクロフックX。
黄色いボクシンググローブを嵌めた左手でアッパーの如く振り抜く。
翼をはためかさせる。
舞い落ちたいくつもの羽がナイフのような鋭さを帯びてこちらへと向かってくる。
俺は流星サーバーからダウンロードされたカードからワイドウェーブXを選択。
ただのワイドウェーブではなく、ワイドウェーブXだ。
流ロク1には3までしかないが、流星サーバーさんは異次元だ。
どんなバトルカードもXで提供します。
キグナス•ウイングが振り向いて、翼を翻かせる。
同時に幾多の羽がナイフのように鋭くなってこちらへと飛来する。
だがワイドウェーブXは威力も幅も3とは段違い。
貧弱なフェザーシュートなど意図も簡単に砕け散る。
そのままワイドウェーブXがキグナスウィングへと迫る。ギリギリのところ急降下して躱したが、そこには既にアイスペガサスからファイアレオへとスターフォースを切り替えたスバルの姿。
中腰で脚を広げて気を溜めるように構えている。
「うおおおぉぉぉ!!!」
ウォーロックの口にはオレンジ色に激しく揺らめく大きな球体が光とスパークを帯びて放たれる時を急かしている。
射線状に入っていることに気づいたキグナス•ウイングが体勢を立て直そうとするが、無論やらせない。
「汚物はデリートってなぁ!」
『うおぉぉぉ…まさか…』
ジェットアタックXを使ってキグナスの背後から音速の突進をぶちかます。
臨界状態のスバルに向かって落ちていくキグナス•ウイングを確認してすぐに退避。
『またしても…このワタシがぁぁ…』
刹那、視界が一瞬だけオレンジの光で溢れた。
「
放たれた滅殺の業火。
射程はもちろんのこと、幅ですらワイドウェーブXを遙かに上回る。
溜めるのに時間がかかることが玉に瑕だが、必殺の一撃に間違いはない。
「うおおぉぉぉ!!」
さらに出力が上げる。
ただでさえデカ太かった炎の柱がさらにデカ太くなる。
…馬鹿な、まだ出力が上がるのか。
いや、ちょっとやりすぎじゃない?
これから多分連戦だぞ、スバル!?
目を凝らすとデリートの時に電波体に起こる小さな爆発がとんでもなく激しく上がっているように見える。
そして爆発が見えなくなったのと同時に、極太の火柱もゆっくりと消えていった。
キグナス•ウイングの姿はどこにもない。
原作なら『せめて、夜空の星…あぁぁぁ!?』みたいなこと言って消えていくのに…。
何もできずに…何も言わずに退場していった。
文字通り消滅したキグナス•ウイングがいた場所から視界を逸らし、思わずスバルを凝視する。
そこにはファイアレオを解除してロックマン素体へと戻った姿。
片手を大きく上げてもう片方の手で押さえて背中ごと伸ばしてストレッチ…。
俺を見ると、拳を握りしめてガッツポーズ。
とんでもなく清々しいスバルの表情。
「ふぅ、勝てた!!」
流石です! スバルくん!!