流星のファイナライズ 作:ブラック
高速でアンドロメダとぶつかり合う。
青白い光はアイスペガサスに変身したスバルが残した軌跡。
紅い光は、俺が残した軌跡。
アンドロメダ自体の動きは然程速くはない。
しかし、一撃一撃の威力と技の速さ、範囲が馬鹿げている。
もはや電波の床のマス目が一体どうなっているのかも理解できない。
「スバル、絶対に立ち止まるな! 止まるんだったらバリアかオーラだけでも張っとけよ!!」
宙から炎を纏った隕石が降り注いでくる。
予備動作も何もなくだ。
いきなり隕石が自動ロックで降ってくんだぞ!?
意味わかんねぇ!!!
特に厄介なのが、この隕石…リュウセイグンだ。
止まったら確実に当たる。
ロックマンことスバルも善戦している。
ウォーロックの口からワイドウェーブ3が放たれ、見事にアンドロメダに的中する。
『つかテメェ!! なんで攻撃しねぇんだ!?』
ウォーロックの顔が元の形態に戻るとヤジを飛ばすように俺に叫んだ。
「あぁ!? ちゃんとバスター撃ってんだろうがよぉ!」
俺もとりあえず逆ギレしておく。
未だに俺の手元にはバトルカードが送信されてこない。
バトル前に言った、【バスターの嵐】とはそういうことだ。
バトルカードがないから出来ることがない。
すまんスバル。
とりあえずあるノイズシールドとクリムゾンソード、エースバスターで対処をするしかない。
一応顔面にヒットさえすれば、ダメージ判定にはなっているようだが、ゲーム通りならば第一形態だけでも1,000程度のHPがある。
バトルカード封印での縛りプレイは正直身が持たん。
しかもいつもと比べて何故か身体が重い。
考えごとをしているとアンドロメダの眼光が一瞬光る。
するとアンドロメダ顔の近くから二発のロケットがこちらに向かってくる。
後退して避けるわけではなくて、態と向かっていき、当たる手前でバレルロールして回避。
そのままクリムゾンソードで斬り抜ける。
ちょうどその瞬間、降ってきた隕石が俺が回避運動を取った場所に降り注いでいた。
宙で戦っているため俺は避ければなんともないが、宇宙ステーションの床は別だ。
電波の隕石が降り注ぐたび、強烈なクレーターを残していく。
こっわ。
当たってはいけない怖さと止まってはいけないという怖さ。
二つの恐怖に慄きながらも的確にダメージを与えていく。
「流星サーバー先輩…!! まだですかねぇーー!? って何笑っとんねんスバル!!」
「ふふっ。黒夜くんが焦ってるの初めて見た!!」
コイツ、マジかよ。
余裕かよ。
すげぇなロックマン。
パネェ。
ってスバルの野郎ちゃんとオーラ張ってやがる。
俺が張れっていったけど、こう余裕そうだとちょっと羨ましい。
アンドロメダの背後、口になっている拳の後ろ部分から青い光が溜まっていく。
あの掌は第二形態において、腕へと変化する。
第一形態での役割は攻撃とブースターでの移動だ。
つまり、拳の後ろが光ってきたってことは…。
「スバル! ビッグバンイーター…大技がくる!! とにかく距離を取れぇぇ!!!」
「りょ、了解!!」
俺も一度急上昇をして全体を見回してから、アンドロメダがいた場所から距離を取る。
既にアンドロメダの姿はどこにも見当たらない。
海を泳ぐサメのように、宇宙という銀河の海中を潜っているようだ。
実際、ゲームでも一瞬アイツの姿が消える。
実に的を射た言い方じゃないかね?
「スバル、お前の方に行ったぞ!!」
そして、アンドロメダが急上昇をしてスバルに向かって飛びかかる。
掌の巨大な口を開いて捕食するかのような姿。
俺はスバルとアンドロメダの方向へと急速接近。
アンドロメダの背後からエースバスターを連射しまくる。
『へっ、来るとわかってれば当たんねぇんだよ!!』
ウォーロックがスバルを無理矢理ひっぱるような形でアンドロメダのビッグバンイーターを回避する。
宇宙ステーションの床に突き刺さるアンドロメダの上顎。
抉られた箇所からは血が流れるようにノイズが溢れ出している。
ふざけんな!?
「あれを何度も撃たせるわけにはいかない…って流星サーバーさん、遅すぎるッ!!」
漸くバトルカードが送信されてくる。
宙を駆け抜けながらブレイクサーベルXとドリルアームXを選択し、急転回。
アンドロメダに向かって突撃をかける。
そのまま先ほど同様に斬り抜けるようにブレイクサーベルXで斬りつける。
更にノイズドウィングバーニアを酷使して、急停止をかけ、急降下。
先ほどのアンドロメダにビッグバンイーターを真似るかのように、ドリルアームXを携え、急上昇をして顎下から突き上げる。
ノックダウンを引き起こし、アンドロメダの身体が一瞬浮き上がる。
ドリルアームは、当たれば相手を1マス交代させるバトルカードだ。
全てヒットすれば、80×3で240のダメージを与えることができる。
これで一体残りHPはいくつだ!?
少なくとも今ので約500だろ。
それまでにクリムゾンソードとバスターとワイドウェーブとか他諸々で1,800くらいってところか!?
あぁぁぁぁこれで第一形態とか頭おかしいだろ!
ゲームなら隕石落ちる箇所黄色く光るやんけ!
視界の端で、竜巻のように木の葉が高速で回転していくのが見える。
俺はアンドロメダの意識がこちらへ向くようにプラズマガンXを構えて放つ。
「スバル、ぶっ放せ!!」
木の葉の竜巻がアンドロメダに肉薄する。
炎を浴びた隕石も、風圧によって中心で回転するスバルを避けるように飛来していは落ちていく。
「うおおおぉぉぉぉ!!
アンドロメダと激突。
巻き上がる木の葉の刃とアンドロメダの指が合わさった牙がぶつかりあい、甲高い音を鳴らす。
アンドロメダの身体がよろけるのと、スバルの回転が終わるのはほぼ同時のタイミングだった。
ナイスすぎるスバルくん!
アンドロメダは残りHPが1,500ほどで第二形態である人型へと移行する。
だが、これはゲームではない。
態々1,500を切ったからといってモーションを止められるわけではない。
変身を終えるまでに可能な限りダメージを蓄積させる!
アンドロメダとの間に割り込むようにジェットアタックXで体当たりをする。
当然、貫くことなんかできないことはわかっている。
「ふんっ!!」
ぶつかった反動で勢いから拳を振りかぶり、シンクロフックXで顔面をぶん殴る。
アンドロメダからの攻撃が止んだ。
ミサイルも隕石もこちらへ飛ぶことはない。
『馬鹿な!? アンドロメダが押されているだと、あり得ん!』
アンドロメダの後方、宙へ浮かび嘲笑を浮かべていたケフェウスの顔が漸く崩れた。
だがそれも束の間、アンドロメダの形態変化が始まるとこちらを嘲るように笑うのだった。
アンドロメダの口の部分であった掌が開かれる。
獣の髭のようになっていた部分が変形機構から腕と肩になり、胴体と接続。
そして目が箇所…胴体部分から頭のユニットがスライドして回転しながら飛び出してくると、角が開かれ、耳のように変形を遂げた。
アンドロメダ第二形態。
人型のモードである。
『こいつが、第二形態ってやつか!?』
「びっくりどっきりメカすぎんだろ」
「す、すごい…!」
三者三様の感想を抱きながら俺たちは改めてアンドロメダと向き直る。
長い戦いは、まだ終わらない。
◆ ◆ ◆
その頃、地球のドリームアイランド地下ではスバルと黒夜を見送った同様の者たちが、未だにその場に止まっていた。
「もう宇宙空間に向かってから、長い時間が経つが…」
時計を見れば、もうすぐ20時を回ろうかというところだ。
上がっていた日は沈み、外に出れば電灯と星々が灯りとなっている頃だ。
「こちら天地! 応答せよ! スバルくん、黒夜くん! こちら天地!!」
私は天地さんが通信機器に話しかける姿をじっと見つめていた。
かれこれ一時間ほど、こうして通信機器に話しかけているが一向に二人からの応答はない。
それだけ長い時間、連戦になっているのか。
それとも通信機器そのものが壊れてしまっているのか、真相はもはやわからない。
「……」
嫌な予感がする…とは口にはできなかった。
周りをみれば、泣きそうになっているキザマロくん、そんなキザマロくんに激励を送るゴン太くん。
そして、祈るように両手を握りしめて顔を上げないルナちゃん。
ハープもさっきから黙りとしていて、話しかけてくれない。
まるで何かを感じ取ったかのように。
『こっちのことは任せた』
思い出すのは、宇宙ステーションに向かう前の黒夜くんの姿。
大丈夫…。
昨日みたいな不安そうな顔はしてなかった。
だから大丈夫。
「待ってる」
私もルナちゃんと同じように、両手を握りしめた。
◆ ◆ ◆
第二形態との戦いは苛烈を極めた。
まず、リュウセイグンの数が増えた。
今までは単発で降り注いできていたのが、2連発になった。
しかもこの二発目、誘導かかり直してくるんだが?
ざけんな。
せめて同じマスに降りやがれ。
バレルロールを連続して行わなきゃいけないため、視界がグワングワンと揺れる。
避けたかと思えば、待ってましたとばかりにミサイルが飛んでくるわ…ってケフェウスが背後にいるじゃねぇか!?
「ケフェウス!!」
思わず背後のケフェウスに叫ぶ。
敵とはいえど、誤射で倒すのはあまりにも可哀想すぎる。
というか、根はいいやつだと信じたい。
「任せて!!」
スバルがジェットアタックを使ってケフェウスに迫る。
呆然とミサイルを見つめることしかできないケフェウスをスバルが抱き抱えるような形で救出する。
『は、離せ!!』
そのまま宇宙空間にケフェウスを離す。
『余はFM王、ケフェウス…アンドロメダよ、なぜ──』
呆然とするケフェウスを機にすることもなく、スバルは止まることなくアンドロメダに再び向かっていく。
だが、アンドロメダの左右両方の掌から放たれた光り輝くビーム。
「同時!?」
スバルの言いたいことはわかる。
今までは片手ずつだった。
両手になれば範囲も二倍。
威力も二倍ってか。
放たれたビームとスバルの間に割り込み、ノイズシールドの形をクリムゾンレギュレーターによってこの字型に変形させる。
ちょっとノイズが強いが我慢しろよ、ウォーロック!
高密度のエネルギーの本流をノイズの力をもって受け流す。
初めてのまともな直撃に歯を食い縛りながら耐える。
ジリジリと後退を強いられてはいるが、耐えきれないほどではない。
「ごめん、黒夜くん」
「こちらこそ、足を引っ張っちまってる。すまん」
衝撃が収まったことを感じ、ノイズシールドを解除する。
背後にいるスバルも無事だ。
ウォーロックが『グェッ』と呻き声をあげ。
それもそのはず、ノイズ率はすでに600%を超えている。
先ほどのアンドロメダの攻撃だが、ネビュラブレイカーという技名がついている。
第一形態の時とは違い、アンドロメダ本体にも機動性が出てきた。
スバルの飛翔速度に合わせて横並びで並列飛翔をして合流する。
「いいか。弱点はあのコアだ。ブレイク…ってもわからないか。攻撃は身体の中心にある球体状のコアを狙え」
「うん。光ってる時しかダメージは与えられない…だよね」
「上出来だ。悪いが頼む! 散開!!」
右腕から放たれた黄色い光線を左右に分かれて回避をする。
ゲーム同様、アンドロメダのコアが光っていない時はダメージを与えることができない。
試しにバスターを撃ってみたが、案の定弾かれてしまう。
常時インビジブルかよ、勘弁してくれ。
だが第二形態への変形中にジェットアタックXとシンクロフックXをぶち込んだ。
その後もスバルと共にダメージを与え続けてきた。
少なくとも残りHPは800を切っていると思いたい。
連続して降り注がれるリュウセイグンがスバルを襲う。
すんでのところで回避をしたスバルを見て肝を冷やす。HPはまだ十分にある…が、それとは別にスバルの体力が限界を迎えてしまいそうだ。
早いとこ、決着をつけなければなるまい。
そして何より、自分の心配もしなければならない状況だった。
ここにきて、再び流星サーバーの不調。
こちら側から接続を切ったわけではない。だがアクセスラインの応答が激しく揺らいでいる。
更にもう一つ…。
「…ッぁ!?」
この不愉快極まりない、奇妙な現象。
身体の中が作り替えられるような、何かが身体の中で暴走するような感覚。
第一形態と戦っていた時に感じた身体の不調も更に酷くなっていた。
ブラックエースに変身する為には、メテオGから変身に必要なノイズを受け取り、強制的にノイズ率を上昇させる。
今までそうやって変身をしてきた…と俺は考えている。
だが、
加えて、宇宙ステーションの電波化した機材から発生するノイズやアンドロメダが破壊した機材から溢れるノイズを逐一吸収している。
既にノイズ率は700%を優に超えた。
『バカやろうッ! 上だ!!』
「黒夜くんッ!」
ウォーロックの怒号とスバルの叫び声に、反射にも似た動作でとにかく横へと飛ぶ。
直後、先ほどまで立っていた箇所に二発のリュウセイグンが炸裂した。
更に追撃をせんと、アンドロメダ本体の巨大な拳が振り下ろされる。
「台パンすんじゃねぇ!!」
「黒夜くん!」
「いい! スバルは攻撃に専念してくれ!」
受け切ることは不可能。
せめて後退をして拳を叩きつけた際に生じる衝撃波をやり過ごすべく、俺はノイズシールドを形成して衝撃に備える。
振り下ろされた巨大な拳が、既に完全に電波と化した宇宙ステーションの床を割る。
床が崩れたせいで繋がっていた機材が宇宙空間へと流され、同時にノイズを発生させる。
更に、ノイズとノイズが共鳴するかのように、結合して大きなノイズ溜まりを作り上げる。
ノイズシールドでも受けきれず、衝撃に吹き飛ばされながらも片手をあげてノイズウェーブ・デバウアラを起動させて発生したノイズを回収する。
ノイズ率、800%
スバルがタイフーンダンスで放たれたミサイルごとアンドロメダにダメージを与えている。
スバルがヒットアンドアウェイで下がるのと同時に、エースバスターで最速連射を行う。
頭部のBAウェーブアナライザーが俺の意思に関係なくメテオGから送られてくるノイズを受け取り、解析を進める。
再びスバルがアンドロメダの前に躍り出ると、俺は反対に後方へと下がる。
ノイズ率、900%
空間が歪む。
ウォーロックの口にチャージされた球体状の青白い光。
アイスペガサスの姿でアンドロメダのコアを視界に捉えたスバルが、臨界を迎えた球体を撃ち放つ。
「うおおぉぉぉ! メテオライトバレッジ!!」
直撃。
『グオオォォォォォォ──』
アンドロメダのコアが、身体が、崩壊していく。
コアから始まった爆発が、肩や腕、頭と連鎖反応を起こす。
多分。
俺たちの勝利だ。
アンドロメダに打ち勝ったのだ。
『私 の 物 だ 』
得体の知れないゾワリとした感覚が全身を襲う。
身体がいうことを聞かない。
ノイズドウィングバーニアでの姿勢制御ができなくなり、爆発していくアンドロメダを尻目に見ながら落ちていく。
ノイズ率999%
BAウェーブアナライザーは、それでもメテオGからのメーターを解析し続けている。
ノイズウェーブ・デバウアラはそれでも周りのノイズを吸収しようと起動する。
だが、どちらの集めたノイズも自分の力に変換することは出来ずに身体の周りで滞空する。
アンドロメダの爆発が一際大きくなる。
身体が動かない。
口が開かない。
瘴気のように揺らめくノイズとクリムゾンの結晶が俺の体の周りを揺蕩う。
俺を中心として、周りに亀裂が走る。
スバルはこちらの異常に気づかない。
『逃げろ』と伝えたくとも口が動かない。
視界が紅黒く染まる。
やがて辺りはアンドロメダの崩壊と共に、真っ白な光で包まれた。
《Black Hole Server Accept》