流星のファイナライズ   作:ブラック

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そして流星は流れる

 

声が聞こえた。

 

『二人ともどうか無事で…』

 

ミソラちゃん。

 

『牛丼パワーで応援するぜ!』

 

ゴン太。

 

『スバルくん、地球を頼みました!!』

 

キザマロ。

 

負けたら…許さないんだからね!!!

 

委員長。

 

僕は、一人で戦っているわけじゃないんだ。

そして後ろには、僕を最後まで支えてくれる黒夜くんが立っているはずだ。

 

みんなが、僕に力を貸してくれている。

 

ブラザーバンドの力は、こんなものに負けやしない。

 

負けてたまるか!

 

「うおおぉぉぉ!」

 

力を溜める。

残っている全てのパワーをこの一撃に。

 

言葉に出さずとも、ウォーロックには伝わってくれた。

 

力が溜まっていく。

 

アイスペガサスの姿で一際高く飛翔する。

 

「メテオライトバレッジ!!」

 

チャージショットの力を最大限にまで高めた隕石に似た青白い光弾。

 

いくつもの光弾が、寸分違わずアンドロメダの光り輝くコアを撃ち抜いた。

 

『グオオォォォォォォ──』

 

アンドロメダは大小の爆発を幾度となく繰り返す。

 

コアから始まり、肩や腕、僕と黒夜くんを散々苦しめた掌。その全てが爆発に包まれ、真っ白な光が世界を包む。

 

光が収まったとき、アンドロメダは力無く横たわっていた。

 

「勝った…?」

 

スターフォースの力を解いて、満身創痍に膝をつく。

 

『馬鹿な。アンドロメダ…アンドロメダだぞ』

 

宙から戦闘を見守っていたFM王ケフェウスが、ゆっくりと地面に降りてくる。

 

信じられないものでも見ているかのような、呆然とした表情を浮かべてケフェウスはアンドロメダに手を当てた。

 

背を向けてアンドロメダに触れるケフェウスに近づく。

 

そして僕の意思とは関係なく、左腕がケフェウスの背に向けられる。

 

バスターを撃つ時に狙いを定めるように。

 

ウォーロックが無理矢理、僕の腕を動かしているのだ。

 

 

『余に復讐するためにここまで来たのだろう。認めよう。余の負けだ』

 

ケフェウスは振り向くことなく、自嘲するように『ふっ』と笑う。

 

ウォーロックの口元に黄色い光が集まっていく。

 

だが、数秒した後にウォーロックは口から光を消した。

 

『ケッ、そのつもりだったが、今のお前を見て気が変わっちまった。コイツらと長く過ごしたせいで、俺も甘っちょろくなっちまった』

 

「ウォーロック…!」

 

ケフェウスが振り返る。

その表情に怒りはなかった。

 

負けを認めた者の、穏やかな顔だった。

 

『スバル…星河スバルと言ったな。何故、余を助けた』

 

「僕たちは確かに戦った。でも、僕は君を…FM星人(君たち)を信じることにしたんだ」

 

『信じる?』

 

「ジェミニみたいに悪いFM星人がいれば、ウォーロックやハープみたいに善いFM星人だっているんだ。それに僕は、FM星人ともブラザーバンドを結べるって言った父さんの気持ちを裏切ることはできない」

 

『言ったろ、甘っちょろいってな』

 

『余は生まれた頃より王の座を狙う者に命を狙われてきた。兄弟、親族を問わず。確かにアンドロメダの鍵は心の闇を増大させる。だが、それ以前に余は他人を信じることができない。だが、命懸けで余を救った其方になら…』

 

ケフェウスがこちらに手を差し伸べてくる。

 

僕をその手を掴む為に手を伸ばす。

 

途端、世界が真っ赤に染め上げられる。

 

『な、なんだ!?』

 

狼狽するケフェウスを掴んで、倒れたアンドロメダの方向へと飛ぶ。

辺りを見回してみれば、電波化された紫色の床が紅と黒に染め上げられていた。

 

その中心、一際紅黒い光の柱が立ち上る場所。

 

ブラックエースの姿をした黒夜くんが倒れていた。

 

「黒夜くん!?」

 

戦闘中、調子がおかしかったのは知っている。

最後の方には口数もかなり減っていたようにも思えた。

 

しかし、あの黒夜くんが倒れている姿など想像ができなかった。

 

拍動するように、黒夜くんを中心にして紅黒い衝撃波のような何かがこちらに迫る。

 

波そのものに痛みはなかった。

 

紅黒い波が僕たちを擦り抜けていく。

 

『ああぁぁ、ぁぁぁぁ──』

 

突然、ケフェウスが頭を抑えて悲鳴をあげた。

 

『ヤロウ、ノイズを制御できてねぇ!!』

 

「どうして!?」

 

『わかるわけねぇだろ! だが、このノイズ量…電波世界そのものがノイズに侵食され始めてやがる』

 

「ッぐぅぅ!?」

 

途端に身体に重りが乗ったかのような重圧に襲われる。

 

割れるように頭が痛い。

 

蹲る。

今までに感じたことのない強烈な頭痛と吐き気。

 

音を立てて空間が歪む。

 

ケフェウスの強大な電磁波によって変化した世界が、黒夜くんから溢れ出すノイズで染め上げられる。

 

機材からはノイズが溢れ出し、ノイズ同士が集まって巨大な霧を作り出す。

 

それは大人が入り込めるほどの大きさの霧。

 

そんな霧がいくつも発生しては、蠢いている。

 

中心にいる黒夜くんの肩と脚に、発生した霧と紅い結晶が集まっていく。

 

やがて、黒夜くんそのものが紅黒い球体となって回転する。

 

『…あり得ねぇ。スバル、ケフェウスを連れて離脱しろ』

 

「で、でも黒夜くんが」

 

あいつら(・・・・)を止める術が俺たちにはねぇんだッ!! 後ろを見ろ!!』

 

『グ、グロ、グロロロロロロォォォォッ──!!』

 

アンドロメダの腕が、肩が動き始める。

 

破壊したはずのコアが光を取り戻す。

傷がついて崩壊したはずの箇所に発生した黒い霧が纏わりついている。

 

「アンドロメダが、復活した?」

 

『それだけじゃねぇ。ノイズの影響なのか知らねぇが、化け物になりつつある…グゥッ!?』

 

「ロ、ロ、ック…!?」

 

もはやウェーブアウトはできない。

 

身体が動かせない。

 

頭の中で思考が上手く纏まらない。

 

視界が暗くなる。

意識が遠のく。

 

紅黒い球体が音を立てて割れる。

 

『ッゥ!? しっかりしやがれ、スバル…』

 

最後に見えたのは、今までとは姿の違うブラックエースだった。

 

 

◆ ◆ ◆

 

メテオGとは違う、膨大なノイズとデータの奔流。

 

頭がおかしくなる。

 

いくつもの光景が頭の中を駆け巡る。

 

痛みと狂気に抗いながら、耐える。

 

早く収まれと祈り続ける。

 

『バトルチップ、ロングソード! スロットイン!』

 

『宇宙ステーションきずなの打ち上げ──』

 

知らない場所に溢れる知らない記憶たち。

 

それは明らかにこの世界のものではないものが記憶されている。

 

世界が暗転する。

 

黒い瘴気に包まれているかのような世界で、一方的な暴力が振るわれていた。

 

『…面白い』

 

男とも女のものとも聞こえる女の声。

 

金に光り輝く翼を持った電波体が紅黒い球体に向かって掌を向けている映像が頭を流れる。

 

これも送られてきたデータの一部。

 

世界が暗転する。

 

青白い電波の障壁を放つ大の男。

 

先ほどの電波体の翼が変形し、極太のレーザーを放つ。

 

極太のレーザーを防ぐ男だったが、攻撃すること敵わず、やがて倒れる。

 

やめろ。

それだけは…その人だけはやめてくれ。

 

『ふふふ。電波化された地球人…これは良いコレクションとなりそうです』

 

あ、あ、あぁ、ああぁぁぁぁぁ──

 

見たくない。

 

これ以上は知りたくない。

 

こんな結末、認められない。

 

『だが、本命はやはり彼だ』

 

電波体の視線がこちらへと向く。

 

こいつが誰か、俺は知っている。

 

実際に相対したことはない。

神様から送られてきた知識として、存在を知っている。

 

『どの世界にも存在しない。ここにだけ存在する彼。コレクションとしてこれほど興味深い物はない』

 

世界が回る。

 

引き上げられた意識が、この世界そのものから弾き出されるような感覚。

 

とてつもない頭痛。

 

目が飛び出たのかと錯覚するほどの眼痛。

 

絶  対  に  私  の  物  だ 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

目を開くと相変わらず視界は紅黒く染まっている。

 

痛みは幾分か落ち着いた。

 

正面には、ノイズを吹き出した第二形態のアンドロメダの姿が見える。

 

どうやら、元の場所に戻ってきたらしい。

 

夢であって欲しかった。

 

だが、あの場所から流れてきたデータが夢ではないことを物語っている。

 

 

 

『グロロオォォォォ!!!』

 

 

五月蝿い。

 

今は一人にして欲しい。

 

「流星サーバー、アクセス」

 

《Black Hole Server Accepted》

 

頭の痛みが増大する。

眼の奥が悲鳴を上げるように痛みで訴えてくる。

 

こんな痛み、どうとでもなる。

 

『オオオオォォォォ!!』

 

「黙れって言ってんだ」

 

赤黒い膜が、身体を包みこむと降り注ぐリュウセイグンとミサイルをそれぞれ意に介さず消滅させる。

 

触れた途端、無効化させる。

 

先ほど戦ったアンドロメダがノイズの力によって暴走したと見るべきか。

 

アンドロメダのすぐそばにはロックマンに電波変換した状態のスバルとケフェウスが倒れている。

 

電波変換が解けていないということは、まだ息があるということ。

 

もしかすると、制御しきれなかったノイズにあてられてしまったのかもしれない。

 

アンドロメダの敵意を引き受けるべく、形状が変化したノイズドウィングバーニアを吹かせて高速で飛翔する。

 

力が無尽蔵に溢れてくる。

 

しかし、力を制御しきれない。

器に収まりきらない力がノイズとなって身体の周りに溢れる。

 

知らないデータが流れてくる。

 

この世界の物ではないデータが。

 

自分でバトルカードは選択できない。

 

ただ流れてきた物を無理矢理BAウェーブアナライザーがダウンロードして物質化させる。

 

まるで暴走のように。

 

『オオオォォ』

 

ウォーロックアタックの要領で一気に懐へ潜り込み、黄金の銃口が3口ついたバルカンを左腕に呼び出す。

狙いをつけると身体の正面に構えて、撃ちまくる。

 

バルカンの反動で身体がくの字に曲がるが、気にせずに連射を繰り返す。

 

スーパーバルカン。

 

威力20の怒涛の10連射がアンドロメダに直撃する。

 

アンドロメダが直撃を受けてノックバックを起こした隙に、スバルとケフェウスを回収して下がる。

 

『テ…ェ』

 

まだギリギリで意識を保っていたウォーロックが苦悶の声をあげながらこちらを睨む。

 

俺と長くいたせいで、ウォーロックはノイズの耐性を獲得していたのかもしれない。

 

それでもこの次元のノイズの影響は計り知れない。

 

体勢を立て直したアンドロメダが、怒り狂ったように両拳を振り上げる。

 

スバルたちを下ろすと引きつけるように左へと跳び、拳を俺の方へ誘導させる。

 

そして、身体を一度蹲るように丸める。

 

未だに身体のノイズは暴走を続けている。

それでも、ノイズウェーブ・デバウアラは吸収を続けている。

 

翼を限界まで広げる。

 

「ああぁぁぁぁッ!!」

 

溜め込まれ、暴走するノイズを翼から解放する。

 

ノイズの刃が、一斉に翼から解き放たれる。

 

雷鳴を伴った嵐のような轟音が響く。

 

ノイズストーム。

 

クリムゾン・ドラゴンにできて、今のブラックエースにできない道理はない。

 

『グロロオォォォォ!!』

 

巨大な身体を呑み込むことができるほどの量のノイズの刃がアンドロメダに直撃する。

ノイズの量に振り上げられた拳が後ろに押され、大きく身体を仰け反らせる。

 

降り注ぐ隕石と迫り来るミサイルはもはや脅威ではない。

紅黒いオーラに触れた途端に、再び消滅した。

 

翼からのノイズの放出を止め、アンドロメダに突っ込む。

 

剣身が光で鍛造されたかのような光の剣が腕に現れる。

 

名前は、バリアブルソード。

 

コマンドは勝手にBAウェーブアナライザーが入力される。

 

俺はただ溢れる力に任せて振るうだけ。

 

光で揺らめく剣身から半月型の衝撃波が発生させる。

 

その数、4回。

 

それぞれが違う属性を宿しており、衝撃波の色が放つ度に変化していく。

 

大きく仰け反った身体を支えることが出来ず、衝撃波でダメージを受けアンドロメダの身体が床へと叩きつけられる。

 

今までの流れ全てが、カウンターヒット。

 

ボーナスカードとして、バトルカードが生成される。

 

だが、今ここで展開してしまえば、スバルたちが巻き添えになる。

それより先にスバルたちを脱出させる必要がある。

 

周りを見回してみれば、もはや宇宙ステーションの原型はない。

 

他のモジュールがどうなっているかは想像がつかないが、システム停止や異常になっていることは容易に想像ができる。

 

止めを刺す前に俺はスバルの下へと移動する。

意識はない。

 

ウォーロックはなんとか耐えているようだが、時間の問題だ。

 

「…すまん。ここまでだ」

 

ウォーロックが取り憑いている腕と反対、赤いトランサーを取り外すと俺はウォーロックに見える位置まで屈む。

 

「対ノイズ仕様とはいえ、長くは保たない」

 

フレームが『パキリ』と悲鳴をあげるようにヒビ割れる。

 

『ぅ…つも──』

 

「周波数を合わせろ。触れるだけでいい。幸い、スバルはケフェウスを離さなかった。二人ともまだ間に合う」

 

この赤いトランサーは、今でも天地研究所と繋がっている。

ヨイリー博士に頼み込んで、対ノイズフレームに仕上げてもらったことが功を成した。

 

一方通行の送信機能は、恐らくまだ生きている。

 

宇宙ステーションはボロボロだ。

 

緊急用の脱出機構もどうなっているかはわからない。

 

スバルとケフェウスが助かる為には、もはやこの方法しかない。

 

「ウォーロック、スバルを頼む。それとこれは覚えていればでいい。ヨイリー博士にブラックホールであの人を見つけた(・・・・・・・・・)とだけ伝えてくれ」

 

こちらを見つめるウォーロックに尚も語りかける。

 

「必ず帰る。必ずだ」

 

「や…くん」

 

半開きになった焦点の合っていない瞳でスバルの手がこちらに伸びる。

 

だが、それよりも先にウォーロックの口先が赤いトランサーへと僅かに触れた。

 

ロックマンに電波変換したままのスバル、そして手を繋がれて気絶しているケフェウスの身体が粒子に分解されていく。

 

全身が光の粒子に包まれると、トランサーの画面へと入り込むように消えていく。

 

そうして、赤いトランサーは役目を終えたかのように自壊した。

 

「ふざけやがって」

 

俺の帰りのことなど知ったものか。

 

ただ今は、この胸に渦巻く怒りと暴走するノイズの全てを解き放ちたい。

 

この衝動に身を任せる。

 

俺は無言のまま小さくショートしたトランサーを見つめ、立ち上がる。

 

振り向けば、『グロロオォォォォッ!!!』と喚いているデカブツの姿。

 

掌を広げ、右腕を挙げる。

 

ノイズを集める。

 

右腕のクリムゾンレギュレーターからノイズを高圧縮してクリムゾンを作り出す。だがそれは結晶体と呼べる程の硬さや形を持っていない。

曖昧で今にも溶けてしまいそうな脆いクリムゾン。それにさらにノイズを集中させていく。

 

周りのノイズを吸収しては、渦巻くように高圧縮させる。

 

出来上がったのは禍々しい紅黒い球体。

 

 

【挿絵表示】

 

 

左手にクリムゾンレギュレーターで造りあげた漆黒のソードを構える。

 

そして、怒りの感情のままに球体を解き放った。

 

「クソヤロウがああぁぁッ!!!」

 

◆ ◆ ◆

 

戦いとも呼べぬ、一方的な暴力によってアンドロメダは完全に崩壊した。

 

黒夜は知らない。

 

ノイズによって進化したアンドロメダが、ゲーム上裏ボスであるアンドロメダ∞と同等のパワーがあったことを。

 

遥か遠くの銀河、ブラックホールの中心でシリウスが笑みを深めていることを。

 

だが、黒夜は知った。

 

星河大吾の行方を。

 

いつか立ち向かわなければならない最悪の存在を。

 

 

宇宙ステーションが崩壊していく。

ある一部は地球へと落下し、ある一部はそのまま宇宙を漂う。

 

そしてある一部は黒い靄の中へ入って消えていった。

 

同じように紅黒い光が地球の方向へと落下していく。

 

それは正しく流星のように。

 

しかし、流星でありながらどこか禍々しく。

 

この奇妙な流星は地球からも局地で観測がされた。

 

やがて紅黒い光も、黒い靄に包まれて消えていった。

 

 

 

地球の黒夜に縁がある者には思いもよらぬ事象が一斉に起こった。

 

『あら…故障かしら? まったく、今日という今日は反省するまで許さないわよ』

 

母、明星美夜(みや)のトランサーに。

 

『!!! もう一度メテオGの観測の準備。急いで!』

 

サテラポリス本部のヨイリーのトランサーに。

 

『天地さん、アマケンタワーに──』

『そんなまさか!? 黒夜くんは──』

『スバルくん!』『スバル!』

 

『嘘…嫌、嫌だよ黒夜くん』

 

ドリームアイランドで帰りを待つ仲間たちのトランサーに。

 

 

【Signal Dissconnect】

 

宇宙ステーション【きずな】での戦いを最後に、明星黒夜は消息を絶った。

 




ここまでお付き合いいただきありがとうございます。

後1話、エピローグと第一部設定資料を投稿したら第一部FM星編は完結となります。

ゆっくりですが、第二部に話は続いていきますので、ご安心ください。

挿絵については、公式立ち絵を元にAIでポージングしてもらい、私がiPadのプロクリエイトというソフトで修正したものになります。
初めて挿絵をやってみたので見苦しいかもしれませんが、ご了承ください。
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