流星のファイナライズ 作:ブラック
バーサーカー・ゴン太にならないことを祈りましょう。
牛島ゴン太
モノレール事件から1週間が経った。そろそろFM星人が本格的に行動を初めて誰かに取り憑くんじゃないかと思い始めたこの頃。
マークしているのはゴン太とミソラちゃん。あとスバルね。
ミソラちゃんからは相変わらず連絡はない。そこまで切羽詰まっていないようだけど、精神的にどうなっているかわかったもんじゃない。ゴン太はよく寝るし牛丼めっちゃ食うし元気一杯の小学5年生だ。
授業中も相変わらずの珍解答でクラスを笑わせていた。
だが、今日はそうでもなかった。
「あんなもやしっ子に負けるなんてどうかしてるわ!あなたのその大きな体は飾りかしら?」
ルナにこっ酷く叱られている様子のゴン太。キザマロは我関与せずと言った様子でルナの後ろにいる。どうやらゴン太だけ何かやらかしたようだ。
「私と一緒にいなきゃ、あなたなんて嫌われ者の役立たずなのよ!?わかってるのかしら。次星河スバルに負けたりしたらブラザーを切るから!!」
なるほど、どうやらまた俺の知らないところでルナトリオがスバルにつっかかっていたようだ。スバル本人にゴン太を倒すほどの力はない。多分ウォーロックが何かしたんだろうな〜。
こんな感じの展開確かにあったはず。
前回は俺が登場したことでルナの怒りの矛先はゴン太ではなく、俺に向いた。今回は俺が知らないところで起こったせいでゴン太を庇うことができない。
マークしてるとはいっても全員をいつも監視できるわけではないのさ…。
それにしてもそんなことでブラザー切るとか言うなら最初からブラザーなんて結ばなきゃいいんだよ。どんだけ実力主義なんだ…と言いたいところだけど、ルナのことだ。本心ではそんなこと思ってないんだろう。
ただの脅しと念押し。
それにしても言い過ぎだけどね。
なんたってツンデレのツンしかないからね!
デレが出てくるのはまだまだ先のはずさ。
打ちひしがれるゴン太を無視して早足にその場を去っていく。いかにも私怒ってますを態度で示している。キザマロはやっぱり触らぬ神に祟りなし精神を貫くようでルナに続いてそのまま去っていった。
「このままじゃ、また一人ぼっちになっちまう。次は…次は絶対に負けねぇ。星河スバル…!」
逆恨みもいいとこだ。
スバルに同情しつつ、ゴン太がFM星人に取り憑かれることを直感する。どうやらゲーム通りの展開になりそうだ。
そういえば、ウォーロックはアンドロメダの鍵をちゃんともっているのだろうか。
うーんこのままじゃゴン太がオックスに取り憑かれるのも待ったなしだな。
「おっす、ゴン太2人はどうしたさ?」
とりあえずこれからは、ゴン太の心のケアに勤しんでみるとしよう。
▼ ▼ ▼
小さい頃から他の子よりも大柄な俺は厄介者だった。遊べば力加減がわからないし!勉強は頭がかたくてまったくできなかった。そんな俺が小学校に入ってから笑われ者になるまでそう時間はかからなかった。
特に2年生からはそれを隠しもしないようになった。
そんな時に俺を拾ってくれたのが、委員長だ。
俺のこの身体を必要としてくれた。
初めて誰かに必要とされた。それが嬉しくて、委員長についていくことを誓った。
それがこんなことで…こんなことでお終いなんて認められない。
もう一人ぼっちは嫌だ。
「牛島ゴン太…貴様の孤独の周波数、このオックスが確かに聞き届けた」
「!?」
「そう構えるな。お前に必要なのは力だ。星河スバルさえ倒してしまえば、白金ルナはずっとお前のブラザーだ。そうずっとな」
星河スバル。
そうだ。俺の障害はあいつただ一人。あいつさえ、あいつさえいなければこんなことにはならなかった。委員長に従って素直に学校に来ていればこんなことにはならなかったんだ。
前回負けたのも何か小細工をしたに違いない。この俺があんなモヤシ野郎に負けるはずがないのだ。
力が欲しい。
星河スバルの小細工なんて意にも介さないような圧倒的な力が…欲しい!
「望んだな、俺の力を」
なんだが身長が高くなった気がするが、関係ねえ。
星河スバルをこんどこそ、ぶっ潰す。そうしたら委員長も俺を認めてくれるに違いない。
俺こそが委員長のブラザーにふさわしいことを証明してやる。
▼ ▼ ▼
『無差別破壊事件に移ります。コダマタウンでは2日ほど前から赤い…』
ゴン太がオックスに取り憑かれました。
あれから、何度かアプローチ…心のケアに励んでみたもののゴン太に回復の兆しはなかった。
最近に至っては会話すらしてくれない様子で、もう完全に思考回路がオックスに洗脳されてるよ…って感じだった。キザマロが話しかけてもほぼ無反応だったのだ。
ルナが話しかけると返事をするものの、今までのような活発さはなくなった。
結果、ルナの怒りメーターがさらに加速するという悪循環つき。
ストレス、良くないよ。
そうして夜になればこれだ。
やだもう、思考回路どころか身体までオックスさんじゃないですか〜。
言葉の通り、おそらくではあるが夜になると強制的に電波変換させられてオックス・ファイアになっているのだろう。
どこの狼人間だ。
さらに、事件のことを聞いてルナとキザマロが犯人探しに出ているようだ。まったくもって好ましくない。どうにかしてやめさせようとしているのだが、俺が話しかけても意味がない。
『また私の邪魔をするつもり明星黒夜!!』なんて言われて取り付く島もない。
お前らのお母さんは犯罪者に生身で戦わせるような教育はしてないでしょうに…。
ルナのお母さんが聞いたらむしろ転校させるとか真顔で言いそうだぞ。
あとは先生方に相談するくらいしかない。これも相手にされなかったら教育委員会に訴えてやるからな。
問題のゴン太をどうするかだけど、もう実力行使しかないだろう。高密度のノイズを叩き込んでもいいけど、それをするとゴン太にも影響が出そうだからできない。
下手するとオックスファイアがオックスファイアEXになるくらいのバフを与える可能性もある。
多分オックスの意識ももっていくとは思うけどね。
バーサーカー・オックスとかなにそれ怖い。
てっとり早いのはやはりサーチアンドデストロイなようだ。
流石にウォーロックもこの異常事態には気づいているだろう。自分とスバルのために身を潜めることを選ぶのか、はたまたスバルが正義感を発揮して立ち向かっていくのかのどちらかだ。
ウォーロックがFM星人の仕業だと言えばまずスバルは動く。スバルってばブラザーはいないくせに他人のことは気にするからね。
『赤の他人を助けようとするなんて俺には理解できないぜ』なんてウォーロックがアニメで言っていた気がする。
その通りでまったくお人好しなのである。
不意にトランサーが鳴る。
すでにこの流れは何度か経験したのでメール画面を開く。
差出人はいつものニュース速報。
タイトルは『赤いもの破壊事件』。
おい、無差別破壊事件という名前はどこに消えた。
『最近、コダマタウンを中心に赤いものが次々に壊される事件が多発しています。犯行時刻は夜だと推測されますので住民の方は夜の外出は控えるようにお願いします』
流石はオックスという名前だけあって赤いものには目がないようだ。俺も赤い服を着て行こうか迷うところである。
現在の時刻は22時。
電波変換してコダマタウンのウェーブロードから異変があるか見て回る。すると一軒家から外出する男の子が一人。
スバルだ。
ああ、この流れは知ってるぞ。
スバルは躊躇うことなく展望台へと向かっていく。展望台に向かっていくスバルを見つけたルナとキザマロがスバルを追う。
大方、この事件の犯人を探していて偶然スバルを発見したんだろう。
というか、ルナのことだから一人怪しい行動をしているスバルを犯人だと疑っているのではなかろうか。
ゴン太がいないことに気づいて展望台から離れて捜索してみるとトラックを運転しているところを目撃する。
道路交通法、この歳で運転できるってどうなってんのさ。
とりあえずここで手を出すとややこしくなりそうなのでウェーブロードから見守ることにする。
ここでオックスを倒したところで、ゴン太のスバルに対する感情は消えないからだ。
ないとは思うけれど、またゴン太が他のFM星人に取り憑かれる可能性も否めないからだ。
ここはスバルに任せてサポートに回ろう。
別段トラックで暴走する様子はない。ゴン太が運転するトラックはそのまま展望台の近くに幅寄せしたのと同時にルナとキザマロが展望台から歩いてくる。
どうやらスバルの尋問は終わったらしい。
『結構いいトラックじゃない。でかしたわゴン太』
『流石はゴン太くんです』
『……』
『やっぱり、どこか調子が悪いんですかねゴン太くん』
反応がないゴン太を心配するキザマロ。
それもそのはず、ゴン太の中では今まさにFM星人であるオックスからの悪魔のささやきによって揺れ動いているのだ。
標的である星河スバルは目と鼻の先。ここで力を示せば自分はルナに必要とされる。
スバルが展望台から出てきたのとゴン太に異変が起こったのは同時だった。
ゴン太の目にスバルの姿が映る。
『ああぁぁぁぁぁッ!?』
ゴン太が叫ぶ。ゴン太の身体をまばゆい光が覆っていく。
スーパー何人なんだ!
光が収まりそこに立っていたのは巨大な何か。
肩から燃える炎を吐き出す2つのツノを生やした怪物。今のゴン太は完全に化け物にしか見えない。
オックス・ファイアである。
電波変換をしたゴン太にルナとキザマロは言葉を失くし、スバルは驚きつつもその場から早足に立ち去る。
オックス・ファイアは逃げていくスバルをギロリと睨め付けると身体を実体から電波へと周波数を変えてトラックの中へ入っていく。
トラックの電脳へ入ったのかな?
ゲームでは確かスバルを追いかけ回してたな〜。スバルが暴走するトラックから避けずにコダマタウンを周回していて当時は爆笑したものだ。
とはいったものの、流石にこのままではまずい。
まずはルナとキザマロを救出する必要がある。
てっとり早くトラックへと近づき中に入った途端に周波数を変えて実体を持つ。急な速度の変化に身体がついて行かずトラックの壁に衝突したがそこまで大きなダメージではない。
普通に痛いけどね。
次いでトラックの壁を思いっきり殴り風穴をあける。
『今度はなに!?』
壁越しにルナの声が聞こえる。
だってアニメのやつでモノレール持ち上げてたんだもん。できると思いました。悪いとは思ってます、後悔はしていません。
これで退路は確保完了。
あとはルナとキザマロを担いで逃げるだけだ。
流石に今度は殴るようなことはせず、ちょっと力を入れて壁を破る。
これは子どものころ障子を破った感覚と似てるね。
「ひっ!?」
キザマロの短い悲鳴。
ルナとキザマロからしたら、ゴン太が怪物になったと思ったら壁から腕が伸びてきた…ってそれなんて怪談?
「おっす」
「怪物…ではないですね」
「どう見ても人だろ」
「鏡見てから言いなさいよ!」
「とにかく、ここから退避するのが先決だ。事故なんて起こしたらたまったもんじゃないだろ?」
外見を馬鹿にされたことはなんとも言えないが、なんとかルナを抑えることに成功した俺はキザマロとルナを片手で担いでトラックからジャンプする。
怪我するだろそれ…と思うかもしれないがアニメを見ていた俺は知ってる。ロックマンって電波変換するだけで超人になれるんだよ。
モノレールを両手で受け止められるくらいにはすごいんだよ…。
ルナがもっと優しくとかいってるけど敢えて無視してやった。
お姫様抱っこもできなかったわけじゃないけど、キザマロもいるしなんか癪だったのでやめた。
2人を安全な場所まで送り届けると元いたウェーブロードへ戻る。
「君は!!」
「ロックマンだっけ、またトラブルのようだね」
スバルは俺をみると戦闘態勢に入る。ウォーロックにいたっては完全に警戒してしまっている。こちらに敵意がないことを示すように両手を挙げる。
スバルは暴走するトラックと俺を見比べると戦闘態勢を解く。
優先事項は向こうだと直感したようだ。
「安心しろってルナとキザマロはちゃんと助けたから、あとはあの牛島ゴン太ってやつだけだろ?」
ついいつもの調子でルナとキザマロと言ってしまったがゴン太だけはフルネームで呼んでみる。
それにしてもモノレールの次はトラックか。
特に、暴走したのが車だというのが許せない。父さんを失ったあのときを思い出す。
「モノレールの次はトラックって乗り物大好きかな? …許さんぞ」
「どうすればいいの、ロック」
『暴走したトラックを止めるには電波変換したオックスを止めるしかねえ。トラックの電脳へ入り込むんだな』
「あんな速い物体にどうやって飛び込めっていうのさ!」
「勘違いしてるよ。俺たちは電波。速度は文字通り光の速度だ。暴走しているとはいえトラックなんぞに遅れをとることはないはずだ」
『そいつの言う通りだ。ツベコベ言わずやるしかねぇ』
ウォーロックがスバルの腕を引っ張ってトラックへ向けて突っ込んでいったのに続いて俺もトラックの電脳へウェーブインした。