流星のファイナライズ 作:ブラック
エピローグの後が入ってるからモーマンタイ。
あれぇ、これってもしかして【曇らせ】ってやつなのか…。
幕間のお話はこの話を含めてもう一つの予定です。
どちらも流ロク2に繋がる為のお話です。
もう一話もお楽しみに。
失意と決意
ドリームアイランドの地下で幾つもの計器が、けたましくアラームを鳴らしている。
天地さんが天地研究所から持ち出した幾つかの自立型のスクリーンには、白衣姿のおばあちゃんや天地研究所のスタッフらしき人が映っている。
白衣姿のおばあちゃんのモニターがついたのは、今から数分前のことで、『マモルちゃん。緊急事態よ』と険しい顔をして天地さんに話しかけていた。
どちらのモニターも忙しなく人が背後の人が走り回っているのが、見える。
だけど、天地研究所のスタッフさんの声音が急に変わる。
『天地さん、アマケンタワーに電波の受信──あぁ!救出保護用トランサーにロックマンです! それと…電波体? 電波体がいます!』
「スバルくん!」「スバル!」
ルナちゃんとゴン太くんやキザマロくんの喜ぶ声が聞こえる。
私も『なんとか帰って来れたんだ』と胸に手を当てて安堵の息を漏らす。
「よかっ──」
だが、モニターから続いた言葉に空気が凍る。
『ブラックエースの姿がありません! ロックマンと電波体だけです!』
「そんなまさか!? 黒夜くんは…まさかまだ宇宙ステーションか!?」
天地さんとスタッフの人とのやりとりが遠くに聞こえる。
『送信用トランサーとのアクセスライン、と、途絶えました!!』
『!!! もう一度メテオGの観測の準備。急いで!』
もう片方のモニターに映し出された白衣のおばあちゃんが、一段と険しい表情を浮かべて、別の研究員に指示を飛ばしている。
『あぁぁ、博士! やはり間違いありません! 宇宙ステーションきずなは数カ所に別れて崩壊しています! うち三つは地球への落下ルートに入ります!』
『推定空間ノイズ率測定できません! トランサーの観測プログラム、機能を停止しています! これでは空間そのものがノイズに侵食されてしまいます!』
『……これだと一つは大気圏で燃え尽きるわ。NAXAと連携の準備は──よろしい。落下地点の予測急がせて。大雑把で構わないわ。時間がないもの。とにかく落下予測が確定次第、サテラポリス科学部門からからアラートを出すことが先決よ』
白衣のおばあちゃんの後ろで、叫ぶような声が幾つも響いている。
『博士』と呼ばれたおばあちゃんはどうやらサテラポリスの人らしい。そして、周りの人はおばあちゃんの部下ということがわかった。
冷静に指示を飛ばす、おばあちゃんだが、時折何かを気にするようにチラチラとモニターには映っていない何かを気にしている。
『緊急事態』『崩壊』という単語が、余計に私の心を騒つかせる。
この状況の中で、スバルくんは戻ってきた。
それなのに、黒夜くんだけが、戻ってこない。
呼吸が、荒くなる。
「ほ、崩壊!? それじゃ、黒夜くんは…」
「滅多なこと言うんじゃないわよ! あの馬鹿星がそんな簡単にくたばってたまるもんですか!!」
「そ、そうだよな、委員長」
あの黒夜くんが、負けるはずない。
地球に侵略してきたFM星人たち、全員を一人で倒せるだけの力がある黒夜くんが、負けるはずなんてない。
決戦の前日、コダマタウンの展望台でハープから聞かされた言葉が頭に浮かぶ。
『これは推測になるのだけれど…蓄えられるノイズには限界があるはずよ。彼に思いもよらない不測の事態があって、一気に限界を超えるような事があれば、
もしも本当に、黒夜くんの身体に異変が起こったのだとしたら?
両の手をギュッと握りしめる。
握りしめられた両の手に頭を押し付ける。
だが、祈りは届かなかった。
「あ、あぁぁぁ!? く、く、黒夜くんのブラザーバンドが!?」
キザマロくんの声が響くと、その場にいた全員が自らが着けているトランサーに目を落とした。
ボタンを押して、ブラザーのリストを確認してみる。
そこに黒夜くんがいない。
いつも見るたびに吹き出してしまいそうになる、気怠そうな顔をした黒夜くんの顔が無くなっている。
【Signal Dissconnect】
何度も更新をかける。
だけど、表示は何も変わらなくて。
「嘘…嫌、嫌だよ黒夜くん」
平衡感覚がわからなくなる。
「ミ、ミソラちゃん!」
「ちょっと!」
お願い神様。
これ以上、私の大切な人を連れて行かないで。
私は、再びモノクロの世界に突き落とされた。
◆ ◆ ◆
目覚ましの騒がしい音が暗闇から私を引っ張り上げる。
時刻を確認してみると既に朝の7時を回っている。
あの絶望の日から二週間。
私は、まだ立ち直れずにいた。
鏡をみれば、ボサボサに乱れた髪と目の下の隈が目に入る。
「酷い顔」
自重するように笑い、『今日はどうしようか』と考える。
体調不良と偽って、しばらく学校に行っていない。
『出席日数とか割とギリギリだったな』なんて考えたが、何もできる気がしない。
そう考えてもう一度ベッドに倒れるように横になる。
布団の中で丸くなる。
何も聞こえないように、何も考えないように
寝転がってみると何故だか背中に伝わるヒンヤリとした感覚。
どうやらびっしょりと汗をかいてしまったらしい。
『はて、そんなに汗をかくようなことがあっただろうか』…そう自分に問いかける。
昨日は、歌って、走って、疲れて、泣いた。
確かに汗はかいた。
でもシャワーを浴びるようにハープに怒られて、いやいやシャワーだけ浴びたはず。
その後は…。
そう、その後はそのまま寝てしまった。
それから…夢を見た。
『明星黒夜は
思い出す。
真っ白な景色で見聞きした不思議な光景。
異様なプレッシャーを放つ、三体の巨獣の影。
隣にはスバルくんがいて、ウォーロックくんがいて、ハープがいた。
そして、呼吸が止まったかのように錯覚したあの瞬間を。
「ぁ──」
涙が溢れる。
決壊したダムのように堰き止めることができない涙が頬へと伝っていく。
まだ安堵してはならないというのに、まだ会えたわけではないというのに、一筋の希望の光が差し込んだかのように思えた。
『ミソラ!』
一人でに電源が入ったトランサーには、ハープの姿。
それでも、ハープが側にいて声を掛けくれるだけで、まるで頭を優しく撫でられているかのように錯覚する。
昨日も、一昨日も、その前も泣いたはずなのに、堪えきれない涙が溢れて止まらない。
「く、黒夜くん、い、生き…てるって、ハープ」
『………えぇ、そうね。だから、シャンとしなさいミソラ。あのお馬鹿が戻ってきた時に、しっかりとお灸を据えられるように』
『ゔん』と嗚咽を漏らしながらハープに頷く。
ハープは泣き止むまで、側で私を見守ってくれる。
今思えば、ハープもまた
そして、FM星とケフェウス王を裏切ってまで、私の側にいて助けてくれた。
『さぁ、まずはシャワーを浴びて来なさい。そんなんじゃ風邪を引いてしまうわ。喉はボーカルにとって命よ、ミソラ』
「…ん、ありがと。ごめんねハープ」
『いいのよ。それにしてもあの坊や。うちのミソラをこんなにしちゃって…どう料理してやろうかしら』
「あ、あはは…」
ハーブのおかげで私は気づいた。
黒夜くんは今ここにいないけれど、私は一人じゃない。
ハープが…私を支えてくれる新しい家族がここにいる。
トランサーを見れば、『ポカン』とした顔のスバルくんだっている。
不思議な空間で見たスバルくんとウォーロックくんの横顔は『シャン』としていた。
きっと、二人だって諦めていない。
ブラザーバンドリストを眺めていると黒く塗りつぶされた一つのパネルが嫌でも目に入る。
スバルくんと対角線状の私を挟んだその先の黒いパネルには、あの日から変わらない【Signal Dissconnect】という白い文字。
黒夜くんが生きている。
それだけで、今を生きる希望が持てる。
ハープの言う通り、戻って来たときにお灸を据えられる私でいなきゃ。
脱衣所に入り、適当に服を脱ぐ。
シャワーを頭から浴びる。
心地の良い温度の雨は、私の中に溜まっていた嫌な感情も一緒に洗い流してくれているように思えた。
身体と心が浮き立つように、軽くなる感覚。
顔にシャワーから溢れるお湯に打たれながら、もう一度不思議な出来事を思い出す。
影…サテライトの管理者たちは確かこう言っていた。
『あの男は、ノイズのみで構成される世界…』
「ノイズウェーブ…だっけ」
ノイズの嵐の中、黒夜くんは歩いている。
一人ぼっちで歩き続けている。
私も負けていられない。
自分の頬を叩くと乾いた音が響く。
両手の拳を胸の前で握りしめる。
「私の歌、どこまでだって響かせてやるんだ」
例えそこが、ノイズの嵐の中だろうと。
こうして彼女は、再び歩き始めた。
世界は再び震撼することとなる。
響ミソラの活動再開。
突然の芸能界への復帰に各スポンサーが挙って動き始める。
暫く彼女の声は聞けないのだと絶望していたファンたちが、踊り狂いながら喜び叫ぶ。
活動再開を告げる復帰ライブが決まるまでに、そう時間はかからなかった。
場所は、ロッポンドーヒルズ。
その中に建てられた、ニホンで一番高い建物…TKタワーでライブをすることが決定したのだった。
ブラザーである星河スバルがこのことを知るのは、何故かもう1ヶ月ほど後でのことである。
あ、これは予約投稿です。