流星のファイナライズ 作:ブラック
次回以降は二部に突入です!
のんびり楽しくやっていこうと思いますので、よろしければお付き合いください。
この世界には三つのサテライトがある。
サテライトは地球のあらゆる電波・通信を管理しており、そのおかげで人類の通信環境は飛躍的に向上した。
サテライトペガサスの管理者ペガサス・マジック。
サテライトレオの管理者レオ・キングダム。
サテライトドラゴンの管理者ドラゴン・スカイ。
三基のサテライトにはそれぞれに管理者がついており、
だがしかしFM星との和解により、三賢者との協定は終わりを迎えることとなる。
故郷であるAM星の復興を約束したFM王ケフェウスと共に旅立つこととなる。
長く地球を支えてくれた盟友とも呼べる三賢者を思えば、嬉しい話ではある。
しかし、今を生きる地球人からすれば非常に頭を悩ませることになる。
それだけ、電波社会におけるサテライトという存在は重要な物だったのだ。
少し前からNAXAはこのような事態を危惧しており、サテラポリスに協力体制を要請していた。
それが、サテラポリスとNAXAの本部統合計画…通称WAXAの設立案だ。
当初は難色を示していたサテラポリスであったが、FM星の侵攻をきっかけにヨイリー博士を始めとした賛成派が逆転する。
FM王との和解が済んだ頃、漸く賛成多数によって、WAXAの設立が可決されることとなった。
しかし、サテラポリスも一枚岩ではない。
皆から慕われるヨイリーではあるが、組織というものは人間の集まりでできたもの。
反対派の中には、天才たるヨイリーを疎み、嫌う者もいたのだろう。
新設されたWAXAの実務運用には、賛成派筆頭であったヨイリー…つまりはサテラポリス科学部門が任されることとなった。
そうして、前述したサテライトの管理という難題が、一番初めの責任重大な仕事として降りかかってきたわけである。
三賢者が旅立つ前日。
これはFM星との戦いの直後と次なる戦いの前とを繋ぐ、描く重要な物語である。
◆ ◆ ◆
見渡す限りの白の空間。
椅子も何もない中で、何故かヨイリーは地べたに座ってお茶をすすりながら、巨大な3つの影と対面していた。
『我らの願いを聞き入れたこと、礼を言う』
巨大な3つの影を代表するかのように1つの影が低い声で話す。
サテライトレオの管理者、レオ・キングダム。
ペガサス・マジックとドラゴン・スカイも同様に小さく頭を垂れる。
「いいのよ、レオちゃん。私たちもいつかは来ることだと思っていた。貴方たちのお陰で地球の技術の進歩は何十年と加速した。これからは、貴方たちの技術を私たちが磨いていくわ」
まるで三賢者が謝っているかのように見えてしまったヨイリーは『よっこらせ』と腰を叩きながら立ち上がる。
『レオちゃん』と呼ばれたライオン姿の巨獣の影が、ピクリと動きを止める。
その姿を見てか、今度はペガサス姿の巨獣の影が、ヨイリーに話しかける。
『…だが、我らの遺産、サテライトは一体どうするつもりなのか』
ペガサスの疑問は尤もだ。
サテライトと呼ばれる人工衛星といえば聞こえはいいが、あれもまた、AM星の技術を注ぎ込んで造られた。
謂わばオーバーテクノロジーの塊のような代物だ。
「貴方たちのデータとシステムだけをフジ山頂のWAXAニホン支部基地に移管させるわ。宙に浮かぶサテライトは、やっぱり使わなくなるわね』
『…其方が言うのならば、可能なのだろう』
「もちろんよ、ペガサスちゃん。私たちは、サテライトサーバーと名付けることにしたわ」
三つのサテライトから必要なシステムとデータだけをWAXAニホン支部基地に設置予定の膨大なデータ容量のサーバーに移管する。
肝になるのが、階層別にデータを保管できるようにする事だ。
そうすることで、必要なシステムとデータを重さや強度で使い分けて供給することができるようにする。
「階層別にデータとシステムを分けたことには様々な意図があるのだけれど…いずれは電波変換の探知と管理にまで漕ぎ着けたいわね」
ヨイリーは常々考えていた。
「強力なZ波が、どの端末から、どの場所から、どんなパーソナルから発生してくるのか。この仕組みを解明する為にも、貴方たちのシステムは最大限に活用させてもらうわ」
『…』
『このシステムがきっと、これからの電波社会に必要なことだと思うのよ』とヨイリーは笑う。
ロックマンの正体が黒夜と同じ小学生ということには驚いたが、どちらも善と呼べる。
だが、これが悪になってしまった場合、電波社会は秩序を失う。
FM星との武力衝突のような事件がまたいつ起きてもおかしくない。
だからこそ、電波と人体の融合となる電波変換をサテラポリスで管理する必要がある。
三賢者が顔を見合わせる。
やがてドラゴン・スカイがゆっくりとヨイリーに顔を近づける。
『不可能…とは言わぬ。だが、それだけでは不十分だ』
「やっぱりそうよねぇ…。ドラゴンちゃんが言いたいのは、社会の
ヨイリーとて、実現の為の鍵が足りていないことを知っている。
現行型のトランサーの技術では、サテライトサーバーを十全に使い切ることは不可能だ。
現在のトランサーを第一世代だとすると、第二世代で実現は厳しそうだ。
第三世代のトランサーでようやく完成するといったところか。
地盤…要は環境を最適化することによって多くの問題は解決する。
しかし、同時に新たな問題が生じる。
新しい環境に適応した、より強力な電波ウィルスの出現だ。
『
「…ダメよ。目の前で黒夜ちゃんを失った彼を今利用するわけには行かないわ」
『正体を知ってなお、声をかけない理由はそれか』
ヨイリーは再び真っ白い空間にちょこんと座り直すとどこからか湯気がたったお茶を取り出して啜る。
先程からの行動を見るに、どうやら夢と現実の狭間のこの世界のことを深く理解しているようだ。
「話を変えましょうか。技術的なことは、貴方たちとの会話から答えを得たわ。そのあたりはWAXAで頑張ってみるとして…例の件、貴方たちから考えてみて、どう思うかしら?」
鋭い眼光がAM星の三賢者に突き刺さる。
『それは、明星黒夜のことを指しているのか?』
『それとも、ブラックホールのことを指しているのか?』
どのことをヨイリーが聞きたいのか、知っていながらも三賢者はそれぞれが意図をなげかける。
「勿論、両方よ」
ヨイリーがニコリと笑って答える。
『どうやら長い話になるようだ』とレオ・キングダムがヨイリーのように地面に座る。
すると残りの二つの影も大きな影を動かして『ペタリ』と地面に腰を下ろした。
三匹の巨獣の影がお茶を啜る老人を囲む。
なんとも言えない奇妙な空間が完成した。
『明星黒夜は、ノイズウェーブに落ちた。人間では生存はできぬ。だが、明星黒夜に限っては話が変わる』
レオが語る。
『本来のあの小僧ならば、自らの力でノイズウェーブを作り出すことができる』
ドラゴン・スカイは何かを思い出すかのように忌々しげに語る。
『つまりはノイズに適応している。ノイズに適応している明星黒夜ならば、帰るべき道は自ずと示される。後は本人の気力次第だが…』
そんなドラゴン・スカイを横目に見ながら、ペガサス・マジックは歯切りの悪い言葉で終わらせる。
「やっぱりブラックホールにメテオGが呑み込まれたことが原因ね」
ヨイリー博士湯呑みを置き、顎に手を当てる。
『あの場所は、遥か昔から全ての惑星の電波が行き着く終の墓場。何百年という古の電波の死骸が、あそこには渦巻いているのだ』
『もしもメテオGにアクセスしていたサーバーが
「廃人に成り果ててもおかしくはない…よね」
ヨイリーの仮説は、間違っていない。
故に、どうなってしまうのか。
検討がつく。
『ヨイリーよ。奇跡が起きたのならば、明星黒夜のデータを探れ』
『電波障害児というだけで、あれだけのノイズの器と成り得ることはない』
『必ず、仕掛けがある。小僧の全てを探るのだ。それが、明星黒夜について我らから言える全てだ』
「心に留めておくわ」
ヨイリーは頷いて、心にしっかりと刻み込む。そして、一瞬のうちに必要な設備と必要なプランを頭に思い浮かべる。
厄介なのは電子機器を拒む彼の体質。
彼専用に開発する必要が出てきてしまうが、それも今後の電波社会のため。
ノイズの研究の為にも、大いに役立つことだろう。
それらを行う為の予算も、全て建設を開始したWAXAニホン支部基地の補正予算にでもぶち込んでしまえば…なんとかなるだろう。
これで先日の赤いトランサーについても、回収する理由が一つ増えた。
考えを一瞬のうちに頭の中でまとめて、一度思考を区切る。
ヨイリーは『よっこらせ』と再び立ち上がった。
「最後はブラックホールね。今回は私の仮説を先に話しましょう」
いつの間にか、ヨイリーの背後には黒い電子黒板と電子ペンが置かれている。
ヨイリーは背伸びをしたり、どこからか取り出した脚立を使って図と数式を記していく。
どうやら、随分と長い間のブラックホール拡大の変遷や今後の見通しについてが記されているようだ。
【仮説 ブラックホールには、明確な意思がある】
ブラックホールがFM星まで迫るまで、残る日数は限りなく少ない。
人類はそれまでにブラックホールに対抗する希望を見出さねばならない。
この1ヶ月後、電波社会は目まぐるしい発展を遂げることになる。
WAXAの建設は途中だが、サテライトのシステムは無事に先んじて整えられた大容量データ保管機へと移管された。
擬似サテライトサーバーの運営の開始、それに伴う電波社会の大型システムアップデートによって、通信技術は大幅に向上した。
同時に、ヨイリーと著名人達との間で共同開発された新型デバイス…スターキャリアーが完成したのであった。