流星のファイナライズ   作:ブラック

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おはようございます。
まずは感謝と御礼を。ここ数日でたくさんの評価とお気に入り、感想をいただきました。
そして日刊ランキングにも載せられてもうびっくりです。

ありがとうございます!


FM編 3 キグナス・ウィング
天地研究所


あれから数日が経った。

 

ゴン太は特に怪我もなかったようで元気に学校へ通っている。もちろんキザマロやルナと一緒にだ。

そういえば、ルナだがアニメのようにロックマンにハートを奪われてしまったようだ。どのタイミングでスバルの姿を見たのか疑問だが、一部を見ていたのかもしれない。

 

あれ、助けたの俺だよね?

 

これからのことを思うと前途多難だがそこは恋する乙女…きっとどうにでもなるだろう。

 

どちらかと言うとむしろスバルがかわいそうになってくる。ルナが徐々に素直になってくれることを願うばかりだ。ルナは根はとてもいい子なのだが、なにかと一言多い。あとは家庭環境のせいで自分にプレッシャーをかけている。

そのせいで立ち振る舞いがあんな感じになってしまうのかもしれない。

 

「それでですね!星河スバルはどうやら明日天地研究所へ行くらしいんですよ!」

 

「なるほど、そこまで遠い距離じゃないわね。キザマロ、あなたの姿本人には見られてないわよね?」

 

「当たり前です。僕がそんなヘマをするわけがありません」

 

「よろしい。じゃあ明日はその天地研究所へ私たちも向かいましょう。名目はそうね…社会科見学の下見とでもいえば言いわ」

 

うん、良くはないよね。

それは先生の役目なのでは?

 

でもスバルの動向をつかんだキザマロにはナイスと言いたい。最近は星を見に行く以外に何もしない様子だったから全然スバルの動向を把握できてなかった。

ウィルスバスティングとかまったくしないんだよ、あの子。ウォーロックはさぞ暇そうだ。

 

天地研究所ってことは宇田海さんとキグナスのやつかな?

 

宇田海さんとは天地研究所の所長こと天地さんの後輩に当たる人物で過去のトラウマから人を信じることができなくなってしまっている。

確か、信用していたブラザーの上司に自分の発明を盗まれたんだったっけ。

 

キグナスは確か白鳥座のFM星人。

 

多分すでに宇田海さんはキグナスと出会っている。この時には確か天地さんとブラザーを結んでるはずだからね。

 

余談だが未だに俺のブラザーは0である。

 

「じゃあ明日の朝8時にバス停で待ち合わせましょう。ゴン太、遅刻は絶対ダメだからね!」

 

「き、気をつけるぜ…」

 

ついて行くのもいいと思うんだけど、そうするとまた面倒なことになりそうだ。特にルナが怒りそうなので今回は電波変換して天地研究所へ行こうかな。

 

時間もかからないしね。

 

▼ ▼ ▼

 

時刻は朝の8時15分。

今日もとても良い天候に恵まれ、本来ならば怠惰を貪るはずだったのだが…。

 

「あれほど遅刻はするなって言ったでしょ、ゴン太のバカ!!」

 

「ご、ごめんよ委員長〜」

 

「あ、バスが出るみたいですよ!」

 

「どうしてこうなった…」

 

ルナトリオとともにバス停に向かって走る俺。

 

思い返すのは昨日の放課後。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

『どうやら白金が社会科見学の下見に行くそうなんだ』

 

『はぁ』

 

『白金はとても優秀な子だが時折周りが見えなくなることがある。クラスの子もみんな彼女を信用しきっている節もあるから注意しないだろう。そこでだ。いつもなにかと衝突してる君に同行を頼もうかと思ってね』

 

『俺ですか?』

 

『委員長である白金がここに決めたと言ったら誰も反対しないだろう?悪いところだったら反対するが、うちの学校は自主性を重視している節もある。そこで本当に社会科見学にふさわしい場所かどうか君の意見も聞きたいのだよ。一応休日ってこともあるから白金を止めることもできないしな。頼まれてくれないか?』

 

『わかりました』

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

とまあこんな感じだ。

結局スバルが乗るはずだったバスに乗ることは叶わず、一本遅らせて天地研究所へと向かう。今日は休日ということもあって幸いバスはいつもよりも多かったようだ。

ルナはご機嫌ななめだったが、バイチュウあげたら機嫌を直してくれた。

 

現金なやつめ…あれ、でもちょっとかわいい?

 

バスに揺られて15分。

天地研究所はアマケンと呼ばれ地元の人に親しまれている。科学博物館のような場所で一般人向けに解放されていることや展示物やイベント…特に無重力体験装置はメディアにも取り上げられ最近非常に人気の場所だ。

バスから降りてみると見知った人物が入り口で職員の人と話をしている。

 

スバルだ。

とするとあの職員の男性は天地さんか。現実だと結構イケメンだ。若干小太りなのは御愛嬌。

 

「あら、奇遇ね」

 

「ゲ…」

 

これから中へ入ろうとするスバルにルナが声をかける。

対してスバルは『またこいつらか』と嫌な表情をする。どうやらその態度が気に食わなかったようでルナのひたいに青筋がピキリと浮かぶ。

 

「あなたも社会科見学の下見かしら?」

 

さっきの『ゲ』が結構癪に触ったらしいよスバル。

 

「スバルくん、友達かい?」

 

『友達』という言葉に反応したルナは目の前にいたスバルを押しのけて天地さんの前に立つ。友達なのに押しのけるってあまりに塩対応すぎない?

 

そこに痺れる憧れる!

 

「ええ、クラスメートですわおじさま。私は5年A組委員長の白金ルナ。よろしくお願い」

 

「そうか、そうか!スバルくんの友達か!なら一緒に案内しないわけにはいかないな!それに大勢の方が楽しいからね。よし、じゃあ行こうか」

 

「ぜひお願いします!」

 

上機嫌な天地さんはそのま中へと入って行く。後ろについていくルナトリオを見送って俺はガックリとしているスバルの肩をポンと叩く。

 

「君は確か…」

 

「明星黒夜。ルナは相当君にお熱らしいよ」

 

いろんな意味でね?

最近はロックマン様、ロックマン様ってちょっと度がすぎるからね。

 

「余計なお世話だよ」

 

「俺もそう思ってるよ。というか俺だって育田先生にルナのお目付役なんて頼まれなかったら寝てたさ…」

 

そんなことはないけどね。

多分電波変換して来ただろうけどね。

 

「君も大変なんだね」

 

なんかごめん。同情させちゃって、ほんとごめん。

 

若干心を痛めながら天地研究所の中へと入って行く。玄関はとても広く、チケット売り場や受付はもちろん、お土産やさんもここに集まっているようで多くの人で賑わっていた。

 

「どうだい、すごいだろ?」

 

「た、たくさん人がいます」

 

「はは、休日だからね」

 

キザマロの言葉に満足気に笑う天地さん。

 

「そんな休日の中でも今日は特別だ。君たちは無料で招待しよう」

天地さんの言葉に一同喜ぶ。

一同とは言ってもスバルを除いてだけど。

 

え、俺は宇宙好きだからとっても嬉しいです。

 

株主優待…みたいなものと捉えよう。

某遊園地も招待券とかあったしね。

 

「ん、あそこにいるのは…おーい宇田海、こっちへ来てくれ〜」

 

「な、なんですか…天地さん」

 

天地さんが呼んだのは細身の男性だった。話し方はよそよそしいというかぎこちなく、顔色は悪い。さらに深々とくまができている。

髪の毛はボサボサでさながら、徹夜をしていた研究員のような感じだ。

 

「彼は宇田海。ここの研究員で僕の助手だ」

 

「…こんにちは」

 

この男性こそが宇田海さん。今回のキーマンだ。宇田海さんは挨拶だけ済ますと一歩後ろに下がる。

 

「さて、こうのんびりしていては時間がなくなってしまうかな?後で僕の研究室も案内しよう。まだ未公開の発明があるんだ」

 

「「「未公開!?」」」

 

ルナトリオが興奮して声を上げる。キザマロなんてメガネがズレ落ちてリアクション芸人みたいになっている。

 

…ダッフンダァ…。

 

「……」

 

宇田海さんは楽しそうに話す天地さんをじっと見つめていた。

 

う〜ん、これはキグナスの誘惑待ったなしかな?

 

▼ ▼ ▼

 

まずは玄関にある展示物を見て回る。

とはいっても玄関にある展示物といえば現物の宇宙服だけなのだが…。

この宇宙服は実際に宇宙で活動したものらしい。どうやら有名な人が着用していたようだ。

 

「ふむ、君も宇宙に興味があるのかい?」

 

「はい。宇宙は好きなんですよ。特に天体観測ですね」

 

「ほー、それはいいことを聞いた。今日のプログラムには無重力体験装置があるからね。綺麗な星も見えるし面白いと思うよ」

 

そういえばそんな場所があったことを思い出す。確かそこで誰かが何かさせられていたような。

 

あれ?

宇田海さんが電波変換したとこだっけ?

 

そうだ、擬似宇宙空間だっけ。

やったぜ、めちゃくちゃテンション上がる!!

 

「遅いですよ黒夜く〜ん!」

 

「食堂は待ってくれないんだぞ黒夜!」

 

いつの間にか先にゲートへと行っていたゴン太とキザマロが俺を呼ぶ。ゴン太の側にはスバルもいる。

連行されているようにしか見えないのはなぜだろうか。

 

ルナの姿が見えないが、一人で行ってしまったのだろうか。

 

食堂は待ってくれるとか館内で大声出すなとか色々言いたいことはあるものの、ゆっくりとゲートへと向かう。

 

因みに食堂が早朝から空いてるかどうかは知らない。

 

ゲートに天地さんからもらったQRコードをかざすと扉が開く。室内の照明が暗くなっているのは宇宙の雰囲気を出すためだろうか。

あちらこちらにウェーブホールがあるあたり、ここらの展示物の多くは電波が通っているんだろう。

 

未だ見ぬミステリーウェーブがここに…。

 

電波変換して探索したくなる衝動を抑える。ゴン太とキザマロがハイテンションになって他の人に迷惑をかける前になだめつつ、スバルとコミュニケーションを取ろうと努力する。

 

そうしないとものすごく気まずい雰囲気になる。

スバルが原因であることは言うまでもない。

むしろこの3年間コミュニケーション取ってなかったことを考えるとこうもなるかな〜。

 

ゆっくり時間をかけてほぐしていく必要があるね。

 

話を振ったときに大事なのは口挟まないことだ。説明してくれる時はちゃんと聞く。決して話の途中でズバズバと質問するのはよろしくない。質問をするなら一通りの話が終わってからだ。それでいてYESやNoで終わる質問や、同じ内容を聞くのではなくて場を盛り上げるような質問をしていく。

いつの間にかゴン太は話に飽きて先へ行った。キザマロは話を聞きたそうな様子だったが、ゴン太に首の根っこを引っ張られて退場していった。

 

スバルが展示物の方を向いて説明している間に行ったので不快な気分は与えていない…と思う。

もともと質問をしていたのは俺だけだしね?

 

「ブラックホール発生装置って…人類はそんなことまでできるようになったのか」

 

「なんだよその口ぶり…故障中みたいだけどね」

 

「そうね。それで、いい加減終わったかしら?」

 

いつの間にか呆れた様子のルナが俺たちに声をかける。

 

「ええい、また俺の邪魔をするかルナ!」

 

「あ・な・た・が邪魔してるのよ!!まったく、私の計画がめちゃくちゃだわ」

 

「ほ〜う…してその計画とは?」

 

「もちろん社会科見学の下見の計画よ」

 

一瞬どもったものの、うっかり漏らすようなことはしないらしい。

スバルはルナと俺を交互に見つめて少し顔を赤くする。自分が夢中になっていたことを思い出したのかもしれない。

 

「というわけですまないスバル。どうやら有意義な時間は終わりらしい」

 

「…そう」

 

せっかくいい雰囲気になっていたところだったんだけどな〜。

 

時間にして40分くらいかな。

一室を回るにしては随分と長い時間をかけたのも事実。ここは素直にルナに従うとしよう。

 

さて、次はどこを回るのかな〜。

おっとその前にトイレに寄るふりをしてミステリーウェーブでも探索してこようかな?

 

あ、ブラックホール発生装置の故障の原因を探ってみるのもありだね。

 

▼ ▼ ▼

 

次に案内してもらった場所はなんと天地さんの研究室だった。

 

場所は先ほどの展示室から玄関に戻った先。職員専用ゲートを通り抜けるときのドキドキはしばらく忘れられないかも。

ゲートを通り抜けて二つのエレベーターを使って上がった先。そこが天地さんの研究室だった。

 

地面にはスパナやドライバー、設計図や模造紙が乱雑に散らばっていた。それが尚更、日頃から使っている研究室だということを物語っている。

 

こういうジャンクなのほんとに好き。

きっと価値あるものばかりに違いない。

 

お、あれは宇田海さんの未発表研究、フライングジャケットだ。

 

「ここが僕の仕事場だ。散らかっているのは許してくれ。近々未発表研究の公に出す予定でね。その準備をしているんだよ」

 

この中で未発表の研究といったら宇田海さんのフライングジャケットと後ろの大きな作業台に乗せられたロケットくらいかな。

 

そんなことを考えていると早速キザマロが目をつけたようだ。

 

おっと、このあたりからボイスレコーダーで音声拾っておかなきゃ。

 

「これってなんですか?」

 

「お、それこそまさに僕が今開発している未公開研究の一つロケットの設計図だよ。まだエネルギー効率の見通しが微妙なところで…って難しかったなごめん、ごめん」

 

はい、今どこかで宇田海さんが昇進してキグナスに洗脳されました。

 

「な、なるほどこんなに細かいんですね。ん?これはなんです?」

 

流石キザマロ、目の付け所が違う。

 

「それはさっき紹介した助手の宇田海が開発しているフライングジャケットというものだ。僕の目から見ても非常に完成度が高くてね。うかうかしてると賞を逃しそうだよ、ハッハッハ!」

 

天地さんは本当に気さくな人だな〜。

確かにフライングジャケットって相当すごい代物だよね。だって、今まで不可能だった個人での自立飛行を確立しちゃうようなものだもん。

まあ、これが出回った未来は道路交通法だけじゃなくて空路交通法とかもできそうだけどね。

 

「おっと、そろそろ擬似宇宙ツアーの時間だ」

 

「擬似宇宙?なんだそれ食べれんのか?」

 

食べられるわけないでしょうこのおばか。

ほら見ろ、ルナが拳を構えてるぞ。耳真っ赤で恥ずかしそうだぞ、逃げろゴン太!

 

「ハッハッハ!ゴン太くんは本当に食べるのが好きなんだね。残念だけど食べられないよ。黒夜くんには言ったんだけど、擬似的な無重力を味わうことができる。宇宙ツアーというからには宇宙服だって着れちゃうんだぞ〜」

 

天地さんの言葉にみんなの喜ぶ声があがる。このあとになにが起こるか知っている俺はほんのすこしだけ同情したくなった。

 

あと、ゴン太はすこし悲しそうだった。


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