昨日からご飯を食べていない。理由は簡単、食べるものがないからだ。
死人しかいないあの島に留まるのが嫌で、島を飛び出したのは良いものの、家から持ち出した食べ物はもう食べきってしまった。
港にあった小船を奪うのは気が乗らず、そもそも舟を漕ぐ技術なんてないので、背中のカバンに詰められる、つまり手持ちできる量しかもっていなかったのが仇となった。あの日を過ぎ、手に入れた不思議な力で空に浮かべる、空を飛べるようになったというのも後押しをした。もしそうでなければ、あの島から出るためにどうしても小舟を奪わなければならなかっただろう。
いや、その時は海の藻屑になっていただろうし、今は「飛べること」に感謝すべきか。
飛べる、移動できることは温情だ。前に上陸した島は無人島で、食べられそうな果物もなかったし焼けばこの際食べられそうな動物もいなかったけれど、水は汲めた。
どこかの島の孤児院とかで保護してもらえればいいものの、前の島では話も聞いてもらえず、2度「撃たれた」。もう関節も痛くないし、たぶん、というか間違いなく治ったとは思うのだけれど、それでも私の肌はまだ三分の一ほどが白く染まっていた。
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もう3日はご飯を食べていない。切羽詰まって盗みを行ったものの、2日で島中の人に恐れられ、追い出された。昨日は頑張れば食べられそうな海鳥を見つけて、何となく使い方がわかってきた能力で仕留めるまではできたのだが、海に落ちて怪魚に食べられた。
だから、これは仕方ないことだったのだ。
「私は『悪魔の実の能力者』だ!船と、お金と、ご飯を寄越せ!」
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ある日のことだ。変なガキがあたしの店にやってきた。あたしがやっているのは海上酒場「カルーア」。そう。「海上の」酒場だ。子連れ客ならつゆ知らず、子供一人でやってくるなんてまあ珍しいったらありゃしない。船でも使わなきゃ来れないんだからな。
服は上等、だがボロボロ。それに、服と似合わず顔をぼろ布で覆っている。うちの店には民間船も海軍も、また海賊もやってくるが、だとしても奇妙。今泊まっている船は海賊船1隻と海軍の軍艦1隻。海賊なら売られて奴隷か何かになっていたろうし、海軍ならきちんと保護されて服の洗濯くらいはさせてもらえただろう。どちらもまあ、正直「強い」側ではないが、だとしても10かそこらのガキが忍び込み、「密航」できるほど甘くはないだろうし。船を漕いでくるのはなおさら無理だ。
まあ、来る者は拒まない。それがあたしが決めた、この店のルールだ。どんなに曰く付きの奴だろうが、金さえ払ってもらえるならば飯と飲み物くらいは出してやる。さすがにあの歳のガキに酒を出すのは憚られるが。
そう、ほろ酔いの頭で考えていたところに、
「私は『悪魔の実の能力者』だ!船と、お金と、ご飯を寄越せ!」
女児らしい、高い声が、響いた。
そして次の瞬間、笑いが起こった。
「嬢ちゃんが『能力者』ぁ?この俺様、『鉤爪のベディ』様もまだ食えてねェのにか?羨ましいなァ!」「ああ、まったくだ。悪魔の実でも食べていれば、すぐにでも貴様を牢獄に送ってやれるのにな。」「バカ言えウィーン!言い訳にもならねえぞ雑魚中佐ァ!」
飛行系能力者。希少ではあるが、まあ、軍艦に乗り込み密航したり海賊船に乗り込み密航するよりはマシな答えだ。大方どこかのお嬢様で、クーデターか、海賊の襲撃か、あとは権力闘争か何かで一家皆殺し。たまたま悪魔の実を食べていたガキが逃げ延びた、という話だろう。
悪魔の実は確かに希少ではあるが、だからといってそのへんの幼女が食べているのは、一笑に付すほど珍しくもない。名だたる海賊、海軍は大体能力者だし。それに悪魔の実を食べたから成功できるわけでもない。だから、悪魔の実を食べた一般住民という存在も、実はそんなに珍しくはないのだ。
だから、笑いごとで済んだんだ。たとえ能力者であろうと、なかろうと。一文無しのガキが酒場に入ってきた。其れだけの話で。
鉤爪のベディの腕に、黒い斑点が浮かびだすまでは。
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仕方なかったのだ。このままでは私は死ぬ。だから、ある程度の実力行使は仕方ないことだったのだ。
この1週間で把握した私の能力。「肉体を『病気』に変え、感染する」。追ってきたおじさんは倒れこみ、飛ぶ海鳥は墜落する。出力を上げれば死病になり、出力を下げれば風邪になる。私が
「うわァァァァ!」「船長!」「薬を持ってこい!今すぐ!ありったけだ!」
偉そうで、悪そうな人を選んだんだけど、船長だったみたいだ。
「私が欲しいものをくれるなら、治してあげる。」 そこに銃声!一瞬で、交渉は決裂した。
「なにッ!効かな…?」
私の左胸に空いた穴を、黒い煙が埋めていく。
次善の策だ。こんなことはしたくなかったが、命には代えられない。『全員
客たちがこちらに銃を向ける。カウンターに座った長身の女性が憤怒の形相で爪を噛む…あれ、指しゃぶってるよね?
だが、関係ないのだ。睨んでも、銃を向けても。ただ、一声ですべては終わる。
『
客たちが一斉に倒れこむ。その肌には黒い斑紋が浮かび上がる。
客たちが?
次の瞬間、私は、壁にぶつかっていた。
『うわばみ酔拳『荒走り』』
その女の拳は、黒斑よりも黒く染まっていた。
己のことを無敵だと勘違いしてきた自然系の寿命は短い。
若いうちに知れてよかったね!ラミちゃん!
いや、「北の海」のただの海上酒場に武装色の覇気が使えるやつがいる方がおかしくてですね…