目を覚ますと、そこは海の上だった。わたしは、海の上をゆらゆらと漂っていたのだ。思い当たることはない。昨日だってよく眠れた。体に合わせて形を変える、やわらかで上等なベッドの上で。それが今はどうだ。海の上だ。やわらかなベッドはどこへやら、背中にあたる感触はただただ硬い。鉄のような質感だが、そこまで冷たいわけではない。海と同じようなあったかさだ。そして揺れている。つまるところ、これは船だ。わたしはどうやら、いつのまにか1人乗りの小船に乗せられて、大海原へと冒険の旅に飛び出してしまったらしい。
なんです?
大海原へと。冒険の旅に。すごいエキサイティング。
ひとつ不満点があるとすれば、もうこの小船には財宝が載っていることだ。冒険のロマンというものが失われた気がする。水も食料もあるのだ。3日分はあるだろう。こういうのをなんて言うんだっけ。無粋?
だからわたしは、船を捨てて、冒険の旅に「歩き出した」のでした。
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「なぁ。レイリー。なんで
この人はレイリーさん。偉大なる航路のコーティング職人らしい。
「だいたいレイリー!お前、金はどうした!ツケが溜まってるんだ!まだ払えねえのか!」「ああ。流石に金は持ってきてる。今日の飲み食いの分はな。」「結局ツケは払えないんじゃねェか!」
そして、ダメ人間でもあるらしい。ステアさんの昔馴染みらしく、ツケが溜まっていても海に捨てられずに済んでいる。首根っこは掴まれているけど。
「流石にタダ酒を飲ませるわけにはいかねェんだ。」「タダで出せるのにか?どうせ能力で出したものだろう?」「そういう問題じゃねェんだよ。原価で酒が飲めてたまるか。まあ、レイリーなら海に落ちても問題ないだろう。」
ステアさんはレイリーさんを掴んだままバルコニーに出た。本気で海に捨てるつもりだ。
そうやって一歩一歩レイリーさんの処刑が近づいて……
「ん?」少女と目が合った。ここは海の上。船の上でないにもかかわらず。キャンディのような水色とピンク交じりの髪の、浮世離れした少女と。「なにしてるの?」少女はそう問いかけた。
「いや、お前が何してるんだ」「えーっとね、歩いてきたんだけどね、道に迷っちゃって。」歩いて?
よく見ると海面からバルコニーの高さまで、グミ状の塊が持ち上がっている。それが意味することはただ一つ。
「そうか。あたしはこの悪ぅいオッサンを海に捨てるところなんだ。ちょっとそこをどいてくれるか?あれ?」
しかし、レイリーさんはすでにその腕の中にはいなかった。すり抜けるように腕を抜け、元の場所で悠々と酒を飲んでいる。
「でも、悪いおじさん、逃げちゃったよ?」「そうだな。次は容赦せず捕まえるとしよう。」
「そうだね!わるいひとなら、やっつけなきゃね!」
『ジェリーロール』。
少女の腕から発生した莫大な量の液体が、濁流となって店の中のモノを押し流す。対象となった「
そして。
ぶち抜かれた扉の前で、少女は笑う。さも善行をなしたかのように。
「わたし?わたしはね、『シャーロット』・ジュレ!プルプルの実の『ゼラチン人間』!」
「あたしの店が……あたしの客が……」「せっかく掃除したのに……!」
悪い人はやっつけたよ!と言わんばかりの満面の笑み。
「「出てけ!」」
そして、自分が悪い人になったことに気づかないのは、少女の、少女ゆえの業であった。
【プルプルの実】:超人系「ゼラチン人間」
・体をゲル質に変える能力。
・原形を留めない特殊な超人系。
・触れた液体をゼリー状に固めることができる。そのため、能力者には珍しい海への耐性を持つ能力の一つ。
モチモチの実の相互互換。粘着質を失った代わりに水と炎への耐性が上昇。
何だこの店……物理攻撃が誰にも効かない……(作者の趣味です)