ガールズ&パンツァー 恋愛戦車道   作:肉球小隊

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う~ん…今回は過去最低の下品さかも……。
R-15で大丈夫かなぁ?


第七十話   戦車(へんたい)プレイ

『Love Gunとピンク・ハーツ2両だけでも大変だったのに、全車揃ったAP-Girlsの相手を私達だけでするなんてソレ一体どんな無理ゲーよ!?』

 

『あのⅢ号ってどんだけ魔改造してんのよ!?』

 

『だから何でアレが避けられるのよ!?』

 

 

 AP-Girlsを追って来た小梅率いるパンターの追撃部隊は誘われるように草千里ヶ浜に突入すると、即座に近接戦闘に持ち込まれ、自由自在、好き放題に奔り回るAP-Girlsにいいように弄ばれていた。

 この敵味方入り乱れた状態ではマウスも迂闊に手を出す事が出来ず、どうしたものかと手を拱いていた乗員達は、今は車外に出てその乱戦を高みの見物しているのであった。

 しかし黒森峰側が何故こうも統制の取れぬ、いっそ無様といってもいい状態に陥っているのか?

 その理由は突入する直前に部隊長たる小梅が、ラブのエロ仕掛けのパフォーマンスにより撃破されていたからに他ならなかった。

 

 

『うぅ…ラブ先輩……早く着替えないと……もし…もしバレたら私の人生終わっちゃう……でも、でも…もう一回されてみたい……♡』

 

 

 瞳をハートにして内股でキュンキュンする小梅に真面に指揮が出来るはずもなく、6両のパンターは統制の取れぬ動きでその持てる戦闘力を全く発揮出来ずにいるのであった。

 

 

『駄目だ!撃っても全部避けられる!オイ小梅!小隊長!一体どうした!?指示を出せ!』

 

 

 無線でそんな声が飛び交っているのだが、心ここに在らずな小梅から出される指示は的外れなものばかりで、他の車両が小梅に代わり何とか手を打とうとするがAP-Girlsに翻弄されそんな事をする余裕は与えて貰えずにいた。

 手を出せないマウスと指揮系統の麻痺したパンターの部隊、いきなり詰んでしまったかに見えた黒森峰であったが、まほ率いる本隊が到着した事でその状況も一転した。

 

 

『戻れ赤星、体勢を立て直すのだ』

 

 

 まほのいつものクールな声が耳に届くと、それまで完全に統制を失っていた6両も秩序だった行動を取り始める辺り、骨の髄まで叩き込まれた鉄の掟と鋼の心が垣間見えた場面といえよう。

 

 

「小梅あなた……」

 

「…エリカしゃん……」

 

「…されちゃったのね?ラブ先輩に……」

 

 

 合流を果たした小梅のピンクに染まりハートを浮かべた瞳を見たエリカは、それだけで彼女の身に何が起きたかを悟りガックリと項垂れるのであった。

 何故それだけで小梅の身に降り掛かった事が何であるかエリカに解るのかといえば、それは嘗て彼女も同様の経験をしているからであり、その恐るべき破壊力はその身を以って体験しているので小梅の今の状態は充分に理解しているのであった。

 

 

『可愛そうに…小梅、あなた今夜眠れないわよ……?』

 

 

 憐れむような目でエリカは無慈悲な予言をそっと呟いたが、小梅が寮で直下と同室であった事を思い出し、巻き添え必至な直下の運命に心の中で合掌するのであった。

 黒森峰本隊が到着しパンターが手を引きそちらに合流して行くのに合わせて、AP-Girlsもまた草千里ヶ浜の奥側へと移動して陣取り、今は500m程の距離を置いて互いに睨み合う体勢となっている。

 

 

「よし、それでは行くぞ!パンツァーカイルを組め、本物を味あわせてやるのだ!」

 

『了解!』

 

 

 やっと落ち着きを取り戻したまほが不敵な笑みを浮かべながら命令を下すと、一気に黒森峰の隊員達の目に鋭いものになって行く。

 

 

「本隊の進発と同時にマウスは砲撃を開始、全弾撃ち尽くす覚悟で砲撃せよ!」

 

『了解!』

 

 

 長い事待っていた分マウスの乗員達の鼻息も相当に荒く、それを聞いたまほもふっと笑った後に高々とその右手を掲げ、一拍置いた後に力強くその手を振り降ろし前進の命を下す。

 

 

「パンツァーフォー!蹂躙せよ!」

 

『jawohl!』

 

 

 地響きを立て最強の楔が前進を始める。

 そこには容赦とか手加減などといった甘いものは、一切存在してはいなかった。

 なぜならばラブがそれを望まず、まほもまたそれを充分に解っているからだ。

 だがまほがそこまでする理由は、やはり幼少期一緒に暮した事が色濃く影響しているのだろう。

 悲しみのどん底にいたラブを喜ばせたい、ラブの望みは全て叶えてやりたい。

 ラブの騎士であったまほは、今もその精神の奥底に自ら叩き込んだ行動理念に従い、些か極端ではあるがその当時と変わらぬ想いでラブの望みを叶えるべく行動しているのだ。

 

 

「うふふ♪まほったらはりきっちゃって……パンツァーカイルなんか組んじゃってさ、大盤振る舞いもいいとこじゃない」

 

「だから何でこの状況で嬉しそうな顔をするワケ?」

 

 

 一列横隊で黒森胸と正対するAP-Girlsの中心にいるLove Gunの上でラブが心底嬉しそうに微笑む姿に、左隣に停車しているイエロー・ハーツ上の凜々子はその心境が理解出来ず呆れ果てた顔でマジマジとラブの顔を見ていた。

 

 

「え~?なんだそんな事~?まほはねぇ、私の騎士なのよ~♪だからまほは私の為だったら、どんな事でも願いを叶える為に全力を尽くしてくれるのよ~♡」

 

 

 ラブの天真爛漫且つ夢見る少女な笑みに、胡散臭そうに目を向けていた凜々子はその笑みを直視してしまい、ドキリとして慌てて目を逸らすのであった。

 

 

『あっぶなっ!油断してると直ぐあんな表情見せて来るんだから……』

 

 

 ドキドキする胸と頬が朱に染まるのを誤魔化すように、凜々子はそっぽを向いたまま背中でラブの話の続きを聞いていた。

 

 

「だからね、今回もああして全力で私の事を叩き潰しに来てくれてるのよ~♡」

 

 

 恍惚の表情でラブの唇から洩れた言葉に些か歪んだものを感じた凜々子は、その飛び抜けた感性を持つラブという少女の心の底が見えず一抹の不安を覚えるのであった。

 

 

『さすがに背負わされたものの量が量だけに、直ぐ綺麗さっぱりって訳には行かないか……』

 

 

 口には出さぬが内心複雑な想いを抱いていると、ラブと愛を挟み右翼の一番端にいるブラック・ハーツの鈴鹿と目が合ったが、彼女もまた何とも微妙且つ複雑な表情をしており、おそらくは自分と同じ心境でいるであろうと凜々子は思った。

 

 

『私も鈴鹿と似たような顔してるんだろうなぁ……』

 

 

 思わず自分の頬を撫でてしまう凜々子であった。

 

 

「来るよ!」

 

 

 ラブのそれまでとは違う声音での注意喚起と同時にマウスの128㎜が再び目を覚まし、その巨大な肉食獣の凄まじい咆哮が辺り一帯に轟いた。

 AP-Girlsの後方への弾着は、深々と草原を抉り冬枯れの牧草を天高く撒き散らした。

 

 

「大穴ね…それじゃあ始めよっか……」

 

 

 振り向いて今出来たばかりのクレーターを見たラブも、さすがにこればかりは嬉しくなさそうな表情を浮かべ、AP-Girlsに前進の指示を出した。

 AP-Girlsにしては少し間隔の広い一列横隊、そしてその進行速度はドラムと共に進む擲弾兵のようにゆっくりとしたものだ。

 

 

「さすがに凄い圧力だな」

 

 

 上空からの映像で見る黒森峰のパンツァーカイルは美しく、強固で桁違いの迫力を誇っていた。

 

 

「それに引き替えラブのあれは一体どういうつもりですの?」

 

「知らん」

 

「知らんって、あなたね……」

 

 

 その投げやりとも取れるアンチョビの返答にさすがにダージリンも唖然とするが、彼女とてラブの考えがそう簡単に読めないものである事は解っていた。

 やはりラブと相対した時、当事者にとって一番の苦労はこれに尽きるだろう。

 そしてそれは今まさにラブと対峙しているまほにも当てはまる事で、彼女もラブの真意を測りかね、その迷いがパンツァーカイルの進行速度にも微妙に影響を与えている事に気付いていなかった。

 

 

「ふふっ♪考え過ぎよまほ、考え過ぎて面白い顔になってるわよ~?」

 

 

 単眼直進ズームのスコープでまほの様子を盗み見たラブは、クスクスと笑いながらAP-Girlsに対し一時的なリミッターカットとダッシュの指示を出した。

 

 

「さあ行くわよまほ……ちゃんと付いて来なきゃダメよ」

 

 

 蹴飛ばされたような加速で黒森峰との距離が瞬く間に詰まって行くが、それに合わせ周囲への弾着も激しいものになって行く。

 どんな手を使って来るかと警戒していたまほであったが、ラブは何の捻りも入れる事はなく真っ直ぐにまほ目掛けて突進して行く。

 目を吊り上げたまほがラブを睨み付けながら攻撃の指示を出し続けているが、AP-Girlsは踊るように飛来する砲弾を回避しながら突進を続け、遂にはそのまま黒森峰のパンツァーカイル対し逆に鋭い楔を撃ち込むが如く斬り込んで行った。

 

 

「ラブ!」

 

 

 双方の隊列が交錯する瞬間まほの鋭い声にラブは極上の笑みを浮かべながら、投げキスと共に全速力で駆け抜けて行くのだった。

 そしてその隣、エリカのティーガーⅡの横をすれ違って行ったピンクハーツの車上では、愛がエリカに向かってにっこりと実に可愛らしい笑顔を見せていた。

 

 

『困った子ねぇ……』

 

 

 動じる事なく腕組みをしたままエリカだったが、その顔はどちらかというと面白そうではあるが苦笑いを浮かべていた。

 

 

「マウスが狙いか!?このまま時計回りに旋回せよ!隊列を乱すな!」

 

 

 出し抜かれまほであったが彼女もそれで動じる事はなく、至って冷静に指揮を執っている。

 何人にも止められぬ強力な破壊力を秘めた楔が、一糸乱れぬ機動で一体の巨大な生物のように180度の大転回を見せる。

 その壮観な光景に、観戦エリアでも大きなどよめきと共に拍手が巻き起こっていた。

 

 

「やっぱりアイツの頭のネジは、飛んでると云うより最初から付いてないだろ?」

 

 

 近接戦闘を得意とする厳島流にとって相手の懐深く飛び込むのは常套手段ではあるが、ラブ程それを大胆且つ派手に実行する者はいなかった。

 

 

「ラブもあなたにだけは言われたくはないんじゃなくて?」

 

「うるさいよ」

 

 

 こういう時に嬉々として首を突っ込むダージリンに、アンチョビは仏頂面で短く返すだけだった。

 

 

「けどあそこまでやるって事は、ラブも何か策があるってことでしょ?」

 

「しかしカチューシャ様、AP-Girlsとっては過去最大の難物だと思うのですが……私達(プラウダ)でもどうにも出来ない代物相手に一体どんな策があるというのでしょう?」

 

「……」

 

 

 一度は勝利した相手とはいえ、それが本来望む形で得たものでなかった事はカチューシャが一番よく解っており、実際自分がその怪物(マウス)と相対したとしても有効な対応策を見い出せずにいるのが現実であった。

 全国大会決勝で大洗が取った策も、味方の犠牲の上に成り立つ決して上策と呼べるものではなく、それは実行したみほも自覚している事であった。

 しかしあの時はそれをやるしかない程に追い詰められた状況、まさに背水の陣であった訳だが、同じ奇策を多用するタイプでありながらもその思考が大幅に異なるラブが、果してどんな策を以ってマウスに挑むのか一同の興味は尽きなかった。

 

 

「あら!?マホーシャの動きが速いわ!あの展開速度、明らかに全国大会頃より速いわよ!」

 

 

 見る者の予想を上回る軌道を見せる黒森峰に、皆大きく目を見開いている。

 

 

「お姉ちゃん凄い……」

 

 

 卒業を前にして尚、高みを目指す事を忘れぬまほの姿勢にみほの背も自然と伸びる。

 

 

「Hey!AP-Girlsもマウスに仕掛けるみたいよ!」

 

 

 確かに黒森峰の展開する速度は速かったが、交錯してそのままマウスに向かったAP-Girlsにはどうしても今一歩及ばなかった。

 木製の柵を薙ぎ倒し土手を一気に駆け上がり、車道に出る直前のドリフトで一列横隊から一列縦隊に瞬時に移行すると、その鮮やかさに観戦客の間からも拍手が沸き起こった。

 だがここで黒森峰も手を拱いてはおらず、一列縦隊で側面を晒したAP-Girlsに対して砲撃を行なっており、痛打こそ浴びせる事は出来なかったが、彼女達の行き脚を鈍らせる効果は得ていた。

 

 

「今の攻撃も実に良いタイミングでしたわ」

 

「ええ、お蔭でホラ、マウスが駐車場出入り口に砲を指向するのが間に合いました」

 

 

 ダージリンとアッサムが、まほの迅速な部隊運用によりAP-Girlsも今までのように、楽に動けなくなりつつある事に感心して頷き合っていた。

 しかし側面から集中砲火を受けながらも、それらを全て搔い潜りマウスが居座る駐車場へと突入して行くAP-Girlsもやはり一筋縄で行く相手ではないのであった。

 

 

「わ!わ!わぁ!お願い香子堪えて~!」

 

 

 モニターの中、傾いたラブの姿と絶叫で観戦エリアも騒然となる。

 駐車場の入り口を180度の五重連ドリフトターンでクリアしたAP-Girlsに対し、マウスの128㎜が耳をつんざく発射音と共に放たれた。

 それは避けようのない一撃に見えたのだが、先頭を走り直撃コースにいながらもドリフト旋回の慣性エネルギーを活かし、そのまま横滑りで見事白旗必至な一撃をLove Gunは躱していた。

 だが至近への弾着で生まれた爆発のエネルギーまでは避ける事が出来ず、Love Gunは横転寸前の片輪走行に陥ってしまっていた。

 深紅のロングヘアーを振り乱し、涙目のラブがコマンダーキューポラから落ちないよう必死にしがみついて上体を支えている。

 

 

「うわ!あぶなっ!ラブ姉!」

 

 

 自身も転げかけながらも砲手の瑠伽は、血相変えて咄嗟にラブのスラリと伸びた長い脚を、半ばしがみ付くようにして抱き抱えラブが転落せぬよう押えていた。

 

 

「あ……!やん、瑠伽ぁくすぐった~い!」

 

「馬鹿言ってる場合じゃない!香子!」

 

「ま、待って!後ちょっと!……おりゃあ!」

 

 

 片輪で蛇行を続けていたLove Gunは、香子が繰り出した超絶技巧により奇跡的にその姿勢を復元する事に成功したのだが、着地の衝撃が思いの外強かった為にそれが原因でちょっとした悲劇というか喜劇がLove Gun車内で発生してしまったのであった。

 

 

「きゃ!?あん♡」

 

「うぶわっ!?痛っ!」

 

「ちょ!瑠伽!?あっ…う、動かな……あぁ~ん♡」

 

 

 浮いていた履帯が地面に叩き付けられた瞬間、ラブはその衝撃で特盛のたわわがコマンダーキューポラの縁に引っ掛かったものの、砲塔バスケット内に落っこちて行った。

 そして不幸な事にその直下では必死に瑠伽がラブの脚を抱えていた為、逃げ場のない彼女はその顔にラブのお尻の急降下爆撃の直撃を受ける事になってしまったのだ。

 狭い砲塔バスケット内で複雑な()()でラブに顔面騎乗されてしまった瑠伽は、ラブのミニスカの下で突如鼻と口を塞がれた為に、何とか呼吸をしようと必死だがラブがはまり込んで動けなくなっているので息はどんどん苦しくなる一方だった。

 

 

「ん~!んん~!」

 

 

 何とか呼吸しようと足掻く瑠伽が激しく頭を振った結果、彼女の高い鼻が愛と朝からユリユリし過ぎて敏感になっていたラブの秘密の場所を激しく刺激してしまった。

 

 

「いや~んやめてぇ!あ、あぁん……らめぇぇぇ♡」

 

 

 ガクガクと痙攣しラブが力なく崩れ落ちると、そのラブを押し退け青い顔をした瑠伽が荒い息で必死に這い出して来た。

 

 

「ゼェゼェ…し、死ぬかと思った……」

 

 

 荒い息が中々収まらぬ瑠伽がどうにか一言絞り出すと、我に返ったラブも恥かしさのあまり顔を真っ赤にしてその身をプルプルさせていた。

 

 

「うぅ…最低……踏んだり蹴ったりとはこの事よ……」

 

「ひ、ひどいわ瑠伽……」

 

「酷いのはどっちよ!人の顔に@☆●ω(ピー)押し付けといて!」

 

『うわ────っ!』

 

 

 ブチ切れた瑠伽のセリフに慌てた美衣子と花楓と香子の三人は、その露骨なNGワードを掻き消そうと同時に大声を上げていた。

 しかしそれを切っ掛けに試合中であるにも拘らず、ラブと瑠伽のちょっとした言い合いが始まってしまうのであった。

 

 

「ええと…あ……いや、鈴鹿聞こえる?悪いけど暫く指揮をお願い」

 

『ナニ?どっかやられたの?』

 

 

 通信手の花楓は独断で指揮権を一時的にブラック・ハーツの鈴鹿に移譲すべく、無線で彼女を呼び出したが、鈴鹿の問いに対する返答で言葉に詰まってしまった。

 

 

「あ~、えっとね……」

 

 

 困り果てた挙句他に何も思い浮かばない花楓は、トークボタンを押しっぱなしにしてLove Gun車内の様子をそのまま無線で垂れ流しにした。

 

 

『…りょうかい……』

 

 

 状況を察したらしい鈴鹿がうんざりしたような声で短く答えると、即座に隊列の先頭がLove Gunからブラック・ハーツへと入れ替わった。

 

 

「Why?何よ?今のでLove Gunにトラブルでも発生したの!?」

 

「そんな感じには見えなかったがなぁ……」

 

 

 ケイとナオミが故障発生かと、モニターに映るLove Gunの様子に食い入るように見入っている。

 だが走る姿には別段おかしな所は見受けられず、他の者達も揃って首を捻る。

 そしてその目の前でAP-Girlsは、マウスに一切手を出す事なくギリギリ掠めるように駆け抜けて行き、その不可解な行動に一同更に首を捻るのだった。

 

 

「何かあったのは間違いない…間違いないとは思うんだが果たしてそれは何なんだ……?」

 

 

 アンチョビがその思考をフル回転させているが、さすがに彼女にもこればかりはあまりに斜め上過ぎて読む事は出来ないだろう。

 

 

「あら?また花楓がコマンダーキューポラに収まったわよ!?」

 

 

 Love Gunのコマンダーキューポラから通信手の花楓がひょこっと顔を出す瞬間を目撃したカチューシャが、モニターを指差し声を上げる。

 以前にも同様の場面を目撃しているがその時とはまた状況が違うので、また何かラブに問題が起きたかと、俄かに彼女達の間に緊張が奔った。

 

 

「って、あれ?花楓のヤツ普通に指揮してるな?おいおいおい…鈴鹿のヤツもマウスをスルーして通り過ぎちまうしコレも何かの仕込みなのかぁ……?」

 

 

 AP-Girlsの謎の行動に、アンチョビの頭上に特大のクエスチョンマークが浮かんでいる。

 散々彼女に振り回された者達にとってそれは何か裏のある策の一環として映っていたが、実際の処はすっかりいじけたラブを宥めるのに苦労しているだけであった。

 なにしろとんでもない()()()で逝ってしまっただけに、その恥かしさと余韻で感情の抑制が出来なくなったラブが、べそを掻いたりキレたり忙しくそれを宥めるのにLove Gun装填手の美衣子は途轍もなく苦戦しているのであった。

 

 

「も~!瑠伽のバカぁ!」

 

「被害者はこっちでしょうが!」

 

「何よ!私にあんな事……うわぁ~ん!」

 

「私は危うく窒息するトコだったのよ!」

 

 

 だが、宥めようにもラブと瑠伽の言い合いはエスカレートして行き、収拾が付く見込みもなく美衣子は目が完全に死んでいた。

 狭い砲塔バスケット内で抱き合う形で言い合いを続ける二人は、もう耳まで真っ赤になっている。

 もし戦車が透明な素材で出来ていたとしたら、狭い空間で超の付く美少女二人が抱き合って罵り合うなどというレアな光景を、ケダモノ達は絶対に放っておかないであろう。

 まず全員ごはん三杯はお替り確実だし、アンチョビのメモを取る手は止まらずダージリンなどは、何としてもその間に入り込もうとするはずだった。

 しかし現実問題として彼女達は現在戦車道の試合中であり、相手が強豪中の強豪黒森峰である事を考えれば、一刻も早く事態を収拾せねばならなかった。

 だが肝心のラブがアクシデントとはいえ試合中に逝ってしまい、恥かしさのあまりプッツンして元に戻らない状態ではそれも絶望的に思え、美衣子は死んだ目で臨時車長としてコマンダーキューポラに収まる花楓に助けを求めた。

 

 

「私に頼らないでよ……愛、ちょっといい?」

 

 

 美衣子の縋り付くような視線を窮屈な車長席で必死に躱しながら、花楓は渋々といった感じでピンク・ハーツの愛を呼び出すのであった。

 

 

「なんだありゃ?今度は何をするつもりだぁ?」

 

 

 アンチョビが素っ頓狂な声を上げるが、それも無理のない事で彼女の視線の先のモニターには、隊列の二番手を走行していたピンクハーツがその列から離れ、Love Gunの隣を接触ギリギリの距離で併走する姿が映し出されているからであった。

 

 

「何を……え?あ!オイ!?」

 

 

 走行中のピンク・ハーツのコマンダーキューポラからスルリと抜け出した愛が、アンチョビが何をする言いかけた瞬間、並走するLove Gunに向かって軽々と飛び移ったのであった。

 

 

『きゃあ!』観戦エリアのあちこちでそんな悲鳴が上がったが、軽業師以上のバランス感覚を発揮した愛は何でもない事のように余裕でLove Gunの砲塔に取り付くと、花楓と二言三言何やら言葉を交わし、開けてもらったサイドハッチから砲塔内に潜り込んで行った。

 

 

「ま、またあんな危ない真似しやがってぇ!今日は帰って来たら、マジでアイツら全員フルコースで説教してやるぞぉ!」

 

 

 またしてもやらかしたAP-Girlsに、ブチキレたアンチョビが声を荒げている。

 しかしAP-Girlsその間も、鈴鹿の指揮の下マウスの周囲を挑発するように走り回ってはいるが、手を出す事は一切なく状況が読めぬ黒森峰本隊も困惑気味に全車停止して、そのAP-Girlsの意味不明な行動を警戒しながら注視していた。

 

 

「愛!アイ!あい~!聞いて、酷いんだよ!瑠伽ったらねぇ──」

 

「駄目じゃない、瑠伽は恋の事を必死に助けてくれたのよ。ちゃんとお礼を言わなきゃ駄目よ?」

 

「う゛……」

 

『ナニ?この愛のお姉さんぶりは……?』

 

 

 ロリフェイスでラブに対してお姉さんぶりを発揮する愛に、他のLove Gunメンバーが呆気に取られる中、それまで手が付けられなかったラブが急速にトーンダウンして行った。

 

 

「瑠伽、ホント助かったわ……さっきは私もヒヤリとしたもの、恋を押さえてくれてありがとう」

 

 

 そう言うと愛は狭い砲塔バスケット内に身を乗り出し、瑠伽の左の頬にお礼の口付けをした。

 

 

「え?えぇ!?愛!?」

 

 

 驚いた瑠伽が大きく目を見開くと、もっと驚いたラブが大きな声を上げた。

 

 

「あぁ!?愛ダメぇ!」

 

「駄目よ恋、さあ、あなたも早く……瑠伽は恩人でしょ?」

 

「…うぅ……その…瑠伽、ごめんなさい…助けてくれてありがとう……」

 

 

 ラブも愛に再び窘められ一瞬しゅんとした後、申し訳なさそうな表情になると直ぐ目の前にある瑠伽の右の頬に口付けするのだった。

 

 

「と、とにかく怪我がなくてよかったわ!」

 

 

 瑠伽はまたしても耳まで真っ赤にしながらそう言うのがやっとだった。

 

 

「さあ恋、指揮を執って。いつまでもまほさんを待たせては駄目よ」

 

「まほ…まほ……あ──っ!そうだったぁ!」

 

 

 驚くべき事にラブは、試合中である事が本当に頭の中から抜け落ちていたようだった。

 

 

「しっかりしなさい、頑張ったら後で私が恋にご褒美をあげるから」

 

「ごほうび…?ゴホウビ……ご褒美!よっしゃやるぞぉ────!花楓、バトンタッチよ!」

 

 

 愛に耳打ちされた言葉でスイッチが入りやる気が爆上げしたラブは、クワっと目を見開き鼻息も荒く高らかにそう宣言した。

 

 

「それじゃあ頑張るのよ、私ももう戻るから」

 

「うん♪」

 

 

 すっかり機嫌が直りニコニコ顔になったラブが見送る中、愛は再び軽やかな跳躍で宙を舞いピンク・ハーツへと戻って行った。

 

 

「愛のヤツまだやるかぁ!?帰ったら覚悟しておけよぉ!」

 

 

 更にキレるアンチョビに、ダージリンが呆れながらも落ち着くよう声を掛ける。

 

 

「周りに迷惑でしてよ?まずはお座りなさいな。それにホラ、よくご覧なさい。どうやらLove Gunのトラブルも解消したようですわ」

 

 

 ダージリンが言う通りピンク・ハーツも既に隊列に戻り、花楓に替わり再びラブがLove Gunのコマンダーキューポラに収まっている姿が見えた。

 

 

『それはいい……だけどあの下心満載なエロい顔は何!?』

 

 

 それを見て一同何が起きたかは解らぬが、最低な決着が付いたであろう事は想像が付いたようだ。

 愛のご褒美の言葉に発奮したラブは、やる気満々の顔になっている。

 そして試合もいよいよ最後のカオスへと突入して行くのだった。

 

 

 




ホント、よくこれで試合中止にならないなぁw

でもおしりネタは最終章のアレで思い付いたんですよねぇww
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